大召喚祭 前編

登場人物

メリッサ

メリッサ

遺失魔法を使う魔法使い。導師の資格を持ち、不老の肉体を持つ。普段は正体を隠しているが、背には翼を持ち、天柱のような剣を持っている。若い弟子達に魔法を教えつつも養育する反面、家事全般を人任せにしている。
魔法使いの中ではモラルが高い人物で、また性善説を信じている。どうやらライフォス信仰か旧マーファ信仰かのいずれを保有しているらしい。
今回は魔法を使い悪夢を物理的に治療する方法を編み出し、それが元で皇帝ユリウスの悪夢の治療を行うこととなる。


デュマ

デュマ

魔法使いメリッサの弟子で、道化のような格好をしており、いつも手に人形をもっている。目つきが悪くどこかひねくれた考え方をする。基本的に性悪説で生きており、人間にはなんの期待もしていないのだが、メリッサや動機の見習魔法使いとは仲がいい。

・魔法はゴーレムのような人形の類を使役する魔法が多く、直接的に本人が戦うことはない。
・ 今回は魔法を使い悪夢を物理的に治療する方法を編み出し、それが元で皇帝ユリウスの悪夢の治療を行うこととなる。

ユリアン

ユリアン

魔法使いメリッサの弟子で、寡黙で内気な少年。
引きこもり体質で本の虫、人との交流などは極端に嫌い、人見知りも激しい。いつも手に本をもっている。
メリッサに呪いをかけられており、善行を積まないと大人になれない。


黒の導師

黒の導師

魔法使いメリッサの師匠で、具現化魔法を使う。弟子のメリッサとは犬猿の中で、「善のために己をいましめる」と説くメリッサと反して「欲望が人を強くする」と説く。魔法の実験で多くの国を滅亡させてきたが、今回はルキスラ帝国に目をつけ、諸悪を具現化する魔法をルキスラ帝国にて行おうと考えている。結果ルキスラ帝国が沈んでも責任は取らずさっさと逃げ出す算段の人物。4人の弟子をつれている。

ハームート

ハームート

ルキスラ帝国では名前を知られた大魔法使い。
のちに魔法使いメリッサの弟子となり、具現化魔法をいち早く習得する。
具現化魔法はその人物が心の内に持ち、いかに再現できるかで完成度が問われ、自分で何を作るかが選択しづらいもの。
彼の場合は金貨が無尽蔵に出てくる。
普通は限りがある具現量をほぼ無制限に出せるのは彼の強欲からなのだが、それは外見からでは想像できない。

・ 子供たちを兄弟子と呼び慕う、たのもしい爺さん。
  ゴーバッシュ

ゴーバッシュ

ルキスラ帝国の騎士で、非常に勇猛で強く、皇帝が何か指示を出す場合、直接呼び出されるような人物でもあります。
騎士団の地位としては侍従方という、近衛ではなく、皇帝専属便利屋という仕事ですが、騎士としての地位もあり、軍事的な動きはしないものの、無視できない存在です。
13レベルのファイターであり、筋力は人間の域を超えています。
魔法使いメリッサに依頼する立場の人です。

皇帝ユリウス・クラウゼ

ソードワールド2.0では有名なルキスラ帝国の皇帝。若くして野心に溢れ、地方諸国の併合政策を掲げる若獅子だが、今回は悪夢にうなされたり、混命を出したりと、今ひとつぱっとしない。 ・ 魔法使いメリッサの思念を具現化する魔法に目をつけて、軍事利用を考えたのだが、魔法使いの予想以上の暴走で、自身の地位すら危なくなってします。


具現化魔法

具現化魔法は心の内にある感情や思いに仮初の体を与えて具現化する魔法であり、生み出されたものはほぼ現実で存在しているものと判別できないほど正確なものとなる。
ここのうちにあるシンボルや感情を具現化するので、何でも出せるわけではなく、大抵の場合限られてしまう。
・ 例えば「これが俺の店の味」と同じラーメンを出しつづけるラーメン屋はそのラーメンは出せても、他の料理は出せない。大工の棟梁は大工道具を具現化しても、調理器具などは出せない。剣士は使い慣れた剣は出せても、何でも切れる名刀は出せない。
・ 感情から出てきたものにろくな物はない。飢餓感からグールが出てきたり、怒った時ならオーガバーサーカーが出てきたりしてしまう。しかも言うことは聞かない。使役する魔法ではない。
感情で呼ぶとしても、それが形を持つことはほとんど無い。現実感かないとできない魔法なので、大人であればあるほど、飢餓だからといってグールは呼ばない。ただし夢などは例外で、大人でも現実的に受け止めてしまう。そのために悪夢にうなされている人にかけるのなら、だいたいモンスターが出てくる。

具現化魔法を送還する魔法もあるが、具現化魔法の送還は非常に困難。高位の魔法使いでなくては中々できない。
また呼び出した人物がいなくなると具現化されたものは解き放たれる。

特殊な例
具現化されるものが時として実在するものである場合がある。
・例えば死んだ母親とか、古代の英雄とか。この場合呼び出されるものは、具現化された体を母体に降霊してしまう。
その世界にアニマとして概念的に確立しているものがあり、その世界に見えなくても存在しているものと考える。
具現化魔法は、意思を媒体に器を作り、アニマを付与する魔法である。
実は、物質を作る時も同様の概念だが、物質抵抗しないが霊魂・精霊は抵抗する。


あらすじ

魔法使いメリッサとその弟子達(PC)は感情を具現化させる魔法を使い悪夢を物理的に癒す仕事をしていた。
時おなじく皇帝ユリウスもまた、政務と心労のすえ悪夢にうなされる日々を過ごしていた。
噂を聞きつけた皇帝はは一同を呼び、これを治療させその効果に大変な衝撃を受ける。
そして、その魔法の別の可能性を考える。

ユリウスはその秘術を盗むために一同を顧問魔法使いとして雇い入れ、ルキスラ帝国内部の魔法使いを弟子入りさせることとするが、帝国の魔法使いはその習熟に苦しんだ。
そこに訪れたのはメリッサの師匠である。
あらゆる欲望を容認し、「欲望こそが人を成長させる」「欲望を扱いこなせての皇帝」と論じる彼にシンパシーを感じた皇帝ユリウスは、彼を登用し、一同の解雇と秘儀の独占のための口封じを考える。

しかし、皇帝ユリウスの予想だにしない方向へと話は進む。権力を手に入れたメリッサの師匠「黒の導師」は帝国の全ての負の感情を具現化することを決める。皇帝は魔法使いの暴走を止めようとするが、その皇帝のもとには既に「黒の導師」の手が忍び寄っていたのだ・・・
   ―がこの前半です。


真相

このシナリオでメリッサは具現化魔法を皇帝にかけますが、皇帝に魔法をかけた直後からは皇帝の夢を具現化した世界となります。このシナリオの舞台となるルキスラ帝国は、実は全て皇帝の頭の中から出てきた創造物なのです。
これは皇帝だけの力ともいえません。なぜなら皇帝はこの世界の負債を背負い込む役割にあるので、そういう人々の意思は皇帝に集まっているのです。その悪影響から皇帝は悪夢を見たのです。
・ メリッサはそれを見抜きました。人々の負債なのですから現実的には皇帝がルキスラの諸問題を解決することでしか救われないのですが、メリッサは自分達が関わったことの体験が皇帝の孤独を癒すと考え、あえて急場の処置・具現化魔法を使いました。
・ 皇帝の夢治療がシナリオなのですから、皇帝の夢の治療の際にはPCが全員揃っていなくてはなりません。

では一同は現実のものなのか・・・というと実は例外もいます。
ユリアン・デュマ・そして弟子のPCはメリッサが具現化した思念体です。そこに、一同のアニマが引き寄せられて、一同は知らず知らずに分身の体で冒険をしているのです。
後半部でユリアンやデュマが死んだとしても最後には出会えるはずでしょう。

導入

PC1「魔法使いの弟子」

●メリッサの弟子です。メリッサとともに帝国の顧問魔法使いとなります。基本はこれで書かれています。

PC2「弟子入り志願」

●今までのPCを使用するなら、メリッサのもとに弟子入りしようとする魔法使いなどでもいいかもしれません。
⇒ 基本的な導入はすでに弟子入りした後から始まるのですが、プロローグとなる「伯爵令嬢とキノコ」において、メリッサと出会い、弟子となるというやり方でも構いません。

PC3「帝国の騎士」

● これも導入には含まれていません。悪夢にうなされる皇帝の治療のために色々奔走していた騎士達が、メリッサの噂を聞きつけて、一同と出会うというやり方もいいかもしれません。
⇒ 導入はやはり、プロローグとなる「伯爵令嬢とキノコ」において、メリッサと出会い、そのことを上に知らせ、依頼責任者となる。という展開がいいかと思います。

PC4「警護の冒険者」

● これも導入には含まれていません。メリッサは治療のために、悪夢と物理的に対決することになりますが、直接戦闘になる場合も多いという問題があります。そのため自分の身を守るという護衛を雇う必要があります。それが彼ら冒険者・・・としておきましょう。
⇒ 導入はすでに依頼を受けており、報酬として5000ガメルを受け取っている、という設定からはじめていけばいいかと思います。同行するのは初めてなので、「伯爵令嬢とキノコ」において、おおいにカルチャーショックを受けるでしょう。皇帝の依頼を受けた時も警護として依頼しましょう。

オープニング

地方最大であるばかりか大陸においてもこれほどの規模の城を有するのは、この国だけではないか。大国として躍進を続け地方諸国をその傘下に組み込むぺく統一政策を取るこの国家こそルキスラ帝国である。
野心と欲望を喰らいひたすらに肥大化する帝国。

皇帝ユリウス・カイゼルはその日の朝も朝日を腰掛けたイスの上から見ていた。どこか憔悴しているかのような面持ちは、最近続く不眠からのものである。皇帝と言う物は元来悩みの多いもの、うちに秘めた野心の分心はさいなまれるものなのだ。それでも皇帝ユリウス・カイゼルは若く、それゆえその野心に耐えられるだけの若さゆえの傲慢さも持っていた。
しかし・・・
今のユリウスはやはり憔悴していた。
きっかけは季節の変わり目に引いた風邪であったのだが、体調を崩し、長引くに連れ、弱気の心が首をもたげる。
「まったく。・・・人とは体に束縛された生き物なのだな。」
眠気覚ましに茶を立てる。毎夜繰り返す悪夢と、日々絶え間ない政務において皇帝は弱りつつあった。

1・伯爵令嬢とキノコ

導師メリッサと、彼女に魔法を習う弟子達がある貴族の館に呼ばれる。
その3人の少年がその館にたどり着いたのは、もうすぐ昼という時間であった。
よばれて訪れる客人である彼らには都合よくお腹も好き、食事時の客人という嫌われる条件を満たしていたにもかかわらず彼らは躊躇うことなく館に踏み込む。
「お腹すいたね」と本を抱える内気な少年。流れる髪は青く水のように艶やかである。
彼の名はユリアン。
「さっさと仕事して、食事しよう。ここは伯爵の館だからご馳走にありつけるぞ」と目の下に隈のある道化のような少年がニヒヒと卑屈な笑みを浮かべる。
彼の名はデュマ。
(そしてPCの容姿の自己説明)
そしてPC。

本から声が響く。「ちょっとちょっとあなたたちもうお昼じゃないの。約束の時間には遅刻よ?!」
顔を見合わせる、弟子達。仕方無しというように本を開ける。
メチャクチャに慌てた様子で、飛び出してきた女性。
広げた翼ははためかされてローブになっては背を隠し、着崩れた服装は変化のためではなく、だらしなさから。
その人物は、美しいというよりは嫌らしい部類の衣服を見事に着こなしている。雰囲気佇まい・異貌は彼女が魔法使いであることを考えれば、馴染んだものであったために、彼女はさほどおかしな人間ではない。

伯爵の館

一同が訪れた家は貴族の家。爵位は伯爵号を持ち、財力も中々。
そんな彼の悩み事は、娘の見る悪夢。箱入り娘のご令嬢はそのことを説明しようとはせず、毎夜やつれていくばかり。
というわけで父も母も気が気でない。夢魔だのなんだのと話は盛り上がりかくして魔法使いの出番である。

貴族は一同が現れると救いの神にすがるかのように、ひざまづいて衣服のすがりつき、助けを懇願する。
「導師。お救いください。」

事情

・ 娘は最近まで完全な箱入り娘として伯爵の家で、「一切表に出ることなく、幸せかつ安全に暮らしていた。」
・ ところが、やはりそれではあまり良くないだろうと、ついに先日社交界デビューしたという。
・ それが良くなかったのか、数日後から悪夢に見舞われ、夜には叫び声を上げるありさま。
・ 眠れない娘は日々やつれるばかり。夢魔にでも襲われているのに違いない。

子供たちの様子。

・ 食事がないかと文句をいいつづけるデュマ
・ 入り口に積み上げられた箱を見上げて、興味津々のユリアン。
→ 令嬢を心配して、送られてきた贈り物らしい。なかにはなんか臭いものもある。
「なんかこれ臭い」 (精のつく食べ物が入っている。こんのものを放っておいたら腐るのも当然。)
どうやら送り主は全て騎士の家系・若様です。

伯爵

「そちらのかたは、社交界であった貴族の方で、あまり私は知りませんが、娘とは仲が良かったようです。」
「あのような状態になってからは、娘はその話はしたがらないものなのです」

そんな話をしていると、館に客人が現れる。
噂をすれば影、貴族というにはいささか男臭い。美形というにはモミアゲがキツイ、しかし、フェロモン漂う美形の紳士・・・というよりかは騎士があらわれる。まさにその騎士こそは、贈り物の送り主なのである。
「お父さん・・・いえいえ伯爵様、お嬢様の身に何か大変なことが起こったとか。」
「おいお前、いまなんと口走った」
「お嬢様の身に・・・」
「その前だ。コラ」

彼は自己紹介します。

「俺は・・・いやさ私し、男爵位を持つ貴族のアンドレと申します。
お嬢様とは社交界で出会ってより文通する中ですし、もはやお父様もご存知ないとは思いませんた。」
 伯爵「野郎、いけしゃあしゃあと!!」

メリッサは事情を聞くと
「サー・アンドレ。ご一緒します? これから私もお仕事にかかります。お嬢様の夢魔払いをね。」
アンドレ勿論とうなづく。

かくして一同がその一室に入る。普通ならば箱入り娘の令嬢の寝所になど簡単に入れるものではないのだが、ここの一同は例外中の例外。なぜなら眠りにつくこの令嬢にこそ用があるのだから。
「伯爵様・アンドレ・剣に心得があります?」


導師メリッサ。たちまち魔法を唱え、衣を渦巻き舞い踊る。
たちまち周囲に浮かび上がるは魔法文字。歌う言葉は呪文の詠唱。
呼び誘われるは令嬢の、うちに潜んだ魔物なり。
「さぁて、お立会い。蛇が出るか邪が出るか」

そして娘の苦悶の顔の、頭上よりつむぎだされた文字達が、渦巻き・集まり・ラセンを描き・形を成すは異形の体。
まさしく娘の悪夢の現況。


巨大なキノコとの戦い

出てきた化け物を見るなり、メリッサは「あれはまるで・・・」と口元を隠して顔を赤らめニタリと笑う。
伯爵「まるで二つの鉄球を車輪にした・・・」 アンドレ「大砲・・・というより、アレは」
 こっそり覗き見る奥方「まぁ」
 メリッサ「黒くて太くて大きい・・・」
 子供たち「キノコだー!」

戦闘。データはドゥームを使用します。(PCのレベルが高いようならウォードゥームを使用してください。)
これを撃滅すれば令嬢は嘘ように悪夢から覚めます。
アンドレはしばらく放心し青い顔をしていたが、令嬢が目を覚ますのを確認すると、「お嬢様」とひざまずく。
お嬢様は「アンドレ様・・・」と声を震わせ、顔を赤らめ恐る恐る手を伸ばす。
そして手を伸ばそうとして情況を確認。自分の姿に気がついて悲鳴を上げる。
メリッサは両手をふるい、風を舞い上げると、風はベッドを囲むカーテンを閉ざし、お嬢様を隠すではないか。
男集は風に追い立てられて、部屋を押し出される。

「とりあえず、これで彼女は悪夢を見ることはないでしょう。今はね。ただし、これから先もそうとは限りませんよ?」
「それと」とアンドレのほうを向き直るメリッサ。
「若いことは大いに結構。ですけれどあまりお嬢様を怖がらせてはいけませんよ。ガツガツしていては相手を怯えさせるだけですから」

真っ赤になるアンドレ。真っ青になる伯爵。
たちまちに剣を打ち合わせる両者。それを尻目に引き上げる一同。
デュマ「ここでご飯食うんじゃなかったの?」
ユリアン「あの殺伐とした空気で食べるの嫌。あとあのキノコ凄く臭くてあそこにはもういたくない」
この人物・導師メリッサが高位の導師であることは、出合った人物ならば誰でも知ること。
そして彼女はまた、ただの導師ではなく、失われた遺失魔法を使いこなす大魔法使いなのである。
彼女が使う魔法とは、思念の具現化魔法である。具現化された思念は、悪夢・祈りなどの内在する感情を表に表出する。そしてこれらを出した人は、すっきりするのである。

一度やったらやめられない。憑き物おとしの快感はたちまち帝国をにぎわす噂となっていった。


メリッサの魔法屋はほとんど人に知られることのない場所にある。
大量に積み上げられた本の一つに無造作におかれたメリッサの本。
メリッサは本から声を出す、「もう、そんなトコロに置いてくとまた無くすわよ」

PC3「帝国の騎士」の追加シーン

● 帰ってきた帝国騎士はこのことを上役の騎士に報告することになる。

帝国侍従官の部屋
皇帝の侍従官の部屋の一角にあるその場所は、本来は血の気などない平穏な侍従官という仕事には珍しく、騎士団の部署という様を呈していた。
皇帝の侍従官を勤めるその部署は、皇帝付きの武官という顔も持っている。そのためここの騎士は単身でも使命を果たせるものか、冒険者としての別の顔を持つものが多い。
●PCの上役・ゴーバッシュ
一目見て暴力の権化のような男は、全身にいかついカタナキズを浮かべ、その重厚な板金鎧を衣服のように着込んでいる。その堀の深い顔に隠された双眸は暗がりから光をのぞかせている。
彼の名前をゴーバッシュという。
・ ゴーバッシュはPCの報告を受けると、その話を熟考。興味関心を持つと、皇帝の悪夢の治療を考える。
・ 皇帝に得体の知れない人物を近づけることの危険を問われた場合。
⇒ 「皇帝の悪夢はいかな医師・魔法使いでさえわからなかった奇病。心の病ということで話にはなっているが、呪いの類である可能性もある。優れた魔法使いの意見を聞いておきたい。」
  「国内のレベル10以上の魔法使いの見立てでは、魔法ではないということだったが、これは新しい切り口になるだろう。」

⇒ PCはこうしてゴーバッシュとともに依頼に赴き、またPCの監視と責任者となる。



2・眠れぬ皇帝

魔法使いメリッサの下に訪れたのは帝国での重鎮とも言える騎士の一人であった。
そんなある日。一人のフードの男が現れた、一目見て暴力の権化のような男は、全身にいかついカタナキズを浮かべ、その重厚な板金鎧を衣服のように着込んでいる。その堀の深い顔に隠された双眸は暗がりから光をのぞかせている。

・ デュマ「ちょ、まっ、殺さないで」 ユリアン「ころさないで」 たちまち二人の合唱が置き男は狼狽する。

・ 男「まってくれ。おじさんは悪い人じゃない。帝国の騎士だ。名前をゴーバッシュという」
「そうだ紹介状を持っている。」
といって懐から取り出したのは・・・ゴブリンの頭である。
慌てて投げ捨てるゴーバッシュ。
「ゴメン。ゴメン。違った。さっき殺したゴブリンロードの御印をうっかり懐にいれてたっけ」

・子供たちはもう泣くなんてもんじゃない叫び始める。「ママー!!」

再び何かをあさり始めるゴーバッシュ。
「ああ、こっちだこっち」とやはり懐から取り出したのは血塗れのスクロール。それを手に迫ってくる。
「ホラここ。伯爵から紹介されたんだ。憑き物落しをしてくれるって・・・」
べっとり血のついた地図を手に迫るゴーバッシュ。字なんてとてもよめる状態ではない。

・ 子供たちは「ギャー」と悲鳴を上げ逃げ始める。

「待ってくれ坊や達」と迫るゴーバッシュ。突然に天が黒くなると巨大な鉄柱があらわれ、ゴーバッシュの頭上へと落ちる。完全のゴーバッシュの姿を消え、鉄柱と血溜まりだけが残る。
「大丈夫。あなたたち」と背後から悠然と顔をあらわす。メリッサ。子供たちも鉄柱の傍に集まる。
「死んだの?」


鉄柱を消すメリッサ。下には大穴が空いており、ゴーバッシュはその下の階で大の字になって倒れている。

依頼人ゴーバッシュ

ゴーバッシュからの依頼は以下の通り。
・ 最近悪夢続きのとある人物の体調を見て欲しい。人物の名前は明かせないが、見て欲しい。
・ 謝礼は10万ガメルし払う。これには口止め料も入っていると考えて欲しい。
メリッサはそれに対してしばし熟考する。

依頼を引き受けることにしたメリッサと弟子達は、馬車で連れられて現地に向かうこととなる。
夢ということもあり、現地に向かうのは夜。
集合時間に現れた。窓の無い黒い馬車はまるで箱のようであるが、秘密厳守ということもあり、これもまた仕方なし。
並走する馬車もない。
★ レンジャー技能+知力ボーナス+2d →目標値19
どうやら馬車はあえて遠回りの道を選択しているようである。
待ち合わせの場所(市外)は石畳にあり、石畳を抜けて、土の足場へと訪れるが、夜間に城門を抜けていくのは困難であり、多分方向感覚を狂わせるためだろう。城門を抜けるための停止時間が無かったのは、彼らの失敗である。

悪夢に囚われた青年

一同が目隠しを取られたのは、石畳と石壁の殺風景な地下室から。今まさに後ろの扉は閉じられている。
一同を案内するのはゴーバッシュと騎士たち。騎士達の反応を見るからに、ゴーバッシュは偉いらしい。
一同はその建物の内部を移動し、螺旋階段などをとおりながら、どうやら目的地までなるべく窓のない道を通っていくというつもりなのだ。

訪れた一室は、かなり高い場所にあるらしく。その場所は他の場所とは随分と様相の違う大きな部屋であった。
絨毯と豪華な調度品を見るからに、部屋の主が高位の人物であることは予想されたし、それだけの人物の館であるのならば、先ほどの殺風景な通路は隠し通路のようなものだろう。
・ ベッドに横になり、汗を流す青年の姿がある。まるで病でもあるかのように熱に浮かされ、荒い息を立てては、居心地悪そうに何度も寝返りを打つ。
・ 室内にはゴーバッシュと配下の騎士、そして何人かのローブの人物がいる。

メリッサはなんの躊躇いも泣く上着をひん剥くと、臍の上に手を乗せる。
「汗を」と弟子達には汗を拭うことようにと指示する。
・ やがて青年の息は落ち着いていく。
→ ゴーバッシュは「奇跡だ」と騒ぎ始める。周囲も驚きの面持ち。
 メリッサ「違うから。ここに手を当て心を落ち着けると子供は安心するものなのよ」
 「見てくれは大人。才能もあり、知恵もある。内に秘めた野心も十二分。あなた方を率いようというのだから、さもありなん。でも、野心が歳に不相応で、どこかにしわ寄せが来るものなのよ」
「さしずめ、失ったのは今という時間か、過去の時間かいずれかでしょう。」
※ 一同は正体をさっせられたと重い顔色を変える。

メリッサは一同に対し一言告げる。
「悪夢は罪悪感よりもいずるもの。それを無くしてしまって本当にいいのですか?」
一同は「かまわん。早くやれ」と指示する。

導師メリッサ。魔法を唱え、衣を渦巻き舞い踊る。
たちまち周囲に浮かび上がるは魔法文字。歌う言葉は呪文の詠唱。
呼び誘われるは青年の、うちに潜んだ魔物なり。
「出るわ出るわな。魑魅魍魎。さぁて、お立会い。鬼が出るか邪が出るか、後は結果をごろうじろ。」

中からあふれ出てくる者は、骨と皮にやせ細った人々の姿。飢えと乾きからたちまち周囲に襲い掛かり、カーテンだの衣だのをつかんでは食べ始める。
・ 弟子のPCは経験上。これを餓鬼という魔物であることを知っている。しかし、普通はこれほどの量は個人が有していることはない。普通は個人の飢えなのだ。
★ セージ技能+知力ボーナス+2d →目標値15
ルキスラ帝国のみならず地方で広がった飢饉に対し、いくつもの集落が滅んでいるという。時の権力者はその対策を提示したが、資本と野心があるルキスラ帝国はその中でも大きな援助を申し出ていたが、それは効果を上げてはいなかった。この援助がただの援助ではないことは明白なのだ。
メリッサ「なるほど、ただの野心家・・・というわけではないのですね」

ここではデータはグール達を使う。ただし大飢饉ということもあり、グールは+3の補正強化を受けている。
数は50体。騎士達も戦うのでPCが相手にするのは20体でいい。さっさと蹴散らせ。
・ メリッサは飛び掛るグールの首をロックとすると、捻ってへし折ったりとしている。
あまり魔法使い的な戦い方ではない。
・ 弟子達は知っているが、メリッサの得意魔法は大火力であるために室内では今ひとつつかいづらいのである。

戦闘が終わった後、ふとみると青年の寝顔は安らいでいる。
騎士やローブの人物は「おお!奇跡だ」と再び騒ぐ。
メリッサ「全部ではないのだけど、まぁ今日はこの辺でいいでしょう」
ゴーバッシュ「今日は?」
メリッサ  「見たところ、飢饉のことだけが悩みの種ではないでしょうし、またうなされますわね。」

一同の帰り道

・ デュマ「おい2万5千ガメル何に使う?」(既に分け前勘定)
・ ユリアンは既に眠っている。デュマ「寝るなよ。話の途中だろ?」とどつく。
・ メリッサに訪ねるなら。
ユリウスは飢餓なんてどうでもよくなるのか)
「そうねぇ。残念だけど。飢餓で人が苦しんでいるという大切なことを忘れるかもしれないですわね。
でもそういう諸々の問題は根っこは残るものなのよ。体験としたことは残るもの。
苦い心の傷も、嬉しい思い出も失わない。ただ、その場の中に残ってこもる感情の坩堝だけが取り除かれたの。
(弟子なら)
あなたには難しいことかもしれないけど、人は本来そういう悲しみや苦難を思い出にできる生き物なのよ。
若い自分は、それとどう付き合っていくか、わからないの。
いいえ。これは歳をとっても・・・あまり変わらないわね。」

数日後ユリウスは復帰し、帝国の政務は滞りなく進んでいったという。そんなある日のこと。
一同の下に帝国から、使者が訪れる。使者である騎士は一同に宮廷に出仕することを指示する。

3・帝室顧問・魔法使い

王座に腰掛ける若き皇帝ユリウスは、先日のような弱々しい姿などどこにもなく、それでいて、野心溢れる瞳をらんらんと輝かせる若獅子となっていた。その笑みには余裕すら見て取れる。
「先日は世話になった・・・そうだな」
・ ユリウスの話は以下の内容である。
・ ユリウスは今回の魔法によってユリウスの体調は回復に向かっている。
・ ついては一同を帝国王室顧問魔法使いとして取り立てたいということである。
★ここで報酬が支払われる。
→ 聞けば心を除く術を使っているという一同。「こちらが皇帝であるということは既に知っているだろう。」と考えたユリウス。すると、野放しにしていいわけはないのだが、ここで首を刎ねるのもあまりに惜しい。というわけで、配下として仕官しないか・・・という話。
→ この申し出は本来メリッサとしては受けたい内容ではないのだが、だからといって拒んだら「捕えて首を刎ねる」という考えはすぐにさっしがつく。
騎士団は、ここで逆らったら捕えたり・首を刎ねなければならないので、戦々恐々である。
皇帝という身分の人物が、登用を口にしたのなら、それを拒むというのは無作法の極み。
断れば処刑となるもの。
 メリッサは歌舞伎者というわけではないので、ここで意地を張る気はなく、また穏便にすますことを望む。
メリッサは相手の嘘を即座に見抜く魔法をもっていることもあり、この手に話はわかってしまうのである。


帝室顧問

そうして帝室顧問となった魔法使いメリッサと弟子達であったが、確かにメリッサの魔力はすさまじいものであった。
こうして一同の宮務めもはじまることとなる。
はれて公認となったメリッサの魔法は帝国の内部に浸透を始めていくこととなる。帝国もまたメリッサの遺失魔法の秘儀を知るべく特別魔法院を設立。その秘儀の研究が行われる事となる。

メリッサから魔法の授業

場所は新設された魔法院。いまやここには帝国からの選りすぐりのエリート達が集まり、その秘法を解き明かすために一心に耳を傾けていた。表向きは従順であったが、誰もが野心に目を血走らせている。
メリッサはテキストを使いながら魔法の講釈をし始める。
・ 「具現化魔法は非常に高度な魔法で、おいそれと唱えることはできません。発動したとしてもそれを思い通りに動かせるとは限らないのです。そもそも具現化する魔法と使役する魔法は別物なのです。」
・ 「具現化した魔法は意思や感情に起因しますが、何が呼び出されてくるかはあまりわかりません。相手の心を読むとか、入念な下調べをするとかして唱えなくては帰って危険なものとなります。」
・ 具現化したものを送還する魔法もありますが、それは非常に高位の魔法です。皆さんにはまだ難しいでしょう。
また具現化したものは、呼び出したものを倒されると解き放たれることにもなります。送還は非常に困難になります。
複数で呼び出した場合などは困ったことになる場合はしばしばです。
・ 「さて具現化されるものが時として実在するものである場合があります。例えば死んだ母親とか、古代の英雄とかです。この場合呼び出されるものは、実在の存在の影響を非常に大きく受けてしまいます。
「反魂の魔法・または召喚の魔法となって、具現化された体を母体に降霊してしまうのです。」
→ 学生   「人の心から呼び出すというのに、実在するものの影響を受けるのですか?」
メリッサ 「そうなのよ。驚くべきことだけど、もともとは概念的に確立しているものは、その世界に見えなくても存在しているもので、存在への干渉という側面があるの。いわば、仮初の肉体を与えて、そのアニマを降ろす魔法なの。」

魔法実技

学生達はさっそく実技へと入っていく。まず進み出た老人に学生からは驚きの声が広がる。どうやら帝国でも名前のしれた偉大な導師であるらしいのだ。
名前はハームートと言う。
・ すさまじい力みとともに、顔を真っ赤に染め上げたハームートが魔法の言葉ともにに印を組む。頭上に浮かび上がった糸のほつれは次第に結びあがると、何かの形を為し始める。 ・
やがてそれは金貨へと形を変えると、ジャラジャラと降り注ぎ、ハームートをたちまちに埋めてしまう。
・ 「また。失敗だ」「何度やっても思念獣を呼び出すことができん」と他魔法使い達はテキストを片手に話を開始する。
→ あれは成功をしているのである。その証拠にハームートは大喜びしている。
大人の欲望はより現実的であり、具現化しても即物的欲望になってしまう場合が大きいのである。

心が読めるメリッサは一見して声をかけないし、注意はしないものの、その心根が何を呼ぶかは確認しているのである。
生徒達は、出てきたものに一喜一憂。思い通りにならない結果に舌打ちをしたり、大笑いしたりしている。
どうやら秘奥義を奪う・・・などという当初の目的はなくなりそうである。

★「みんなに教えてしまってもいいの?」
メリッサは一同の心配の中、目線を向けると笑顔を見せます。
→ 「所詮皆には扱いきれない魔法なのよ。」
    「いいえ、彼らだけではなく。私にも使いこなせない魔法なの。
大人というものはね。ある程度、現実の線引きをして生きていくものなの。現実的なこと、実現可能なことと線引きを繰り返し、輪郭を作っていくのだけど、完成するものは常識の圏内を越えないし、作られるものは自分がよく知っているものになるのよ。」
「では子供でも作れるかというとそういうわけでもない。なぜなら、子供にはこれほど高度な魔法は使いこなせないのだから。」
「私が魔法を使う場合は、大体が、対象のものを引きずり出すだけ。悪夢とは本人にとってリアルで現実的なものでしょう。具現化はもっともしやすいものなのよ。」
「事実。・・・私はこの魔法を万能としては使っていないし、正直万能としても扱えないわ。扱いようが無い魔法なのよ。」
★「彼らは悪事を働かない?」
「人は大なり小なり悪事を働くものよ。その時はみんなで解決しましょう。そのくらいのほうが気楽でいいわ。」 「それに・・・今、みんなは初めて魔法を覚えた時のような手ごたえを感じているはず。
今が一番楽しい時よ。水を差さないであげましょう。」
「もしかしたら・・・私達が道を誤る時、彼らが助けてくれるかもしれないわよ。」

最後に

「人間は善であるか・・・これは私達の命題だわ。事実、人は善でも悪でもないのだけど、力を持つものはそれらと向き合わなければならない。だから、魔法使いは、自然と自分の可能性の限界に挑戦しながらも、自分のモラルと戦うの。」
「神がおつくりなった人は、ちょっとおかしなところもあるのだけど、神の愛した世界を同じように愛せると信じるわ。」

皇帝の新たな悩み

帝国の新設魔法院は盛況であったが、より帝国にとって危険なトラブルメーカーという側面ももっていた。これらの問題のほとんどは帝国が厳選して選び推薦したエリート学生が起こしているために、皇帝ユリウスも誰を責めたらいいのか悩み果てていた。ともかくユリウスとしては早くあの魔法を会得したいのである。
そんなある日帝国の朝廷に一人の老人が現れた。細い線の痩せこけた老人は、くぼんだ瞳に野心を満たし、ほくそえむと皇帝に拝謁・その考えを得々と皇帝に語り、皇帝の野心をくすぐった。

4・巨悪現る

一同が呼び出しを受けたのはそんなある日である。
皇帝のもとに呼び出される魔法使いメリッサとその高弟達・二人の少年とPCそして、学生から新たに弟子として名を連ねたのはハームートである(金貨を作れる)。
そこには既に客人がいる様子であった。一人は黒い衣服を羽織った老人で、体は幽鬼のように揺らめいている。
そして黒いフードの4人の人物が後ろにつき従う。
→ 一同がそこに訪れるとメリッサは顔色を変える。「げぇ、あなたは!」と老人と向き合う。
老人「くっくっく・・・久しいなメリッサよ」
・ 老人はメリッサの師匠である。
メリッサ「この爺は私の師匠。うちに秘めた悪は現在暫定的にルキスラ1よ。」

・ 皇帝はここで新たな考えを上げる。
皇帝「今までは邪念を具現化するたげだったが、今後は、具現化した兵士や軍隊を作っていくことにする。それらの秘法はすでに彼の手によって完成しているというではないか。」
師匠「左様。野心を束縛する忍耐の道などすでに古い。野心は鎖につないで飼いならすのがよい方法です。」

・ メリッサは「バ、バカな」と狼狽するも。師匠は突然に腰を捻って尻を向けると、ポンポン叩いてあざ笑う。
「うわっはっは。もうお前は用なしだ。どこへなりとも失せるがいい。」
・ 皇帝は冷酷な瞳で見下ろす。
「確かにお前は私を悪夢から救い、帝国の魔法使いに技術を教えてきた。
しかしだ、逆に技術が他国に流れるほうが危険なものであるということがわかった。」
→ 皇帝は「やれ!そのもの達を捕えよ」と手首を曲げて指差し、騎士に命じると、兵士達を向かわせる。

 

正騎士達との戦闘となる。

その数はおよそ50人である。
正騎士達は現れると間合いをつめる。彼らはこの数を見せれば降伏することを考えるのである。
・ ハームートはさっそく魔法を唱えると、現れ出でたのは大量の金貨の山である。金貨の山は濁流となって流れると、騎士達を流し城内の階段を流れ落ちていく。たちまち城内は大混乱となる。
「さぁ導師・兄弟子(子供たちPC)!今のうちに」

ゲルダムの群れ

皇帝はチラリと目線を送ると、メリッサの師匠である老人はうなずく。
老人の後ろから一人のフードの人物が顔をのぞかせる。気味の悪いかえるのような瞳をギョロギョロさせて、魔法を唱え始める。その周囲から現れたのは、巨大な魔人の姿である。一匹だけでも手におえないような魔人が3匹・4匹と現れはじめる。
・ 15レベルモンスター「デーモン:ゲルダム」達である。
→ ところがゲルダム達は思いもよらぬ苦難に襲われる。城内の騎士達はわけもわからず、突然現れたゲルダムを戦闘を開始する。そういうこともあって、幸運にも追っ手はこないのである。

城内を走り回るゲルダムを発見したゴーバッシュは「ゲルダムだ!」と叫び、剣を抜くと悠然と襲い掛かる。
 ゴーバッシュの獅子奮迅の活躍・騎士団の戦いは事態を混迷へと駆り立てていく。

ビジュアルシーン〜剣の守りはきかないの?〜

皇帝は考え込んで訪ねます。
皇帝「何故・・・剣の守りが効かんのかね」
師匠「あぁ、アレでしたら、封印しました。じゃないと、ゲルダムは呼べませんから。」

引きつった表情で狼狽する皇帝。ひたすら早口でまくしたて、怒鳴りつける。
皇帝「なんてことを!なんてことを!君はなんという過ちをおかしたんだ。こいつの首を刎ねろ!!」
師匠「私しか、封印をとけません」
皇帝「(処刑人・騎士に対し)待った!」

魔法院封鎖?!

一同が魔法院に帰還する時は、すでに魔法院は騎士団によって包囲が始まっている。
騎士団は攻撃するつもりもなく、メリッサなどが帰還することも妨害する気はない。あえて裏門をあけさせて一同の期間を促した後に包囲、軟禁する予定である。
・ 一同は魔法院で逃げ支度を始めます。ここにいる全員が危険なのですから。とはいえ帝国の人々である魔法使い達が簡単に祖国を捨てられるわけでもなく、家族も財産も捨て置いて・・・とは選択できません。魔法使い達の意見はわかれます。

・ また、一同に対しての追っ手はいつまでたっても訪れず、どうやら処分保留であることがわかる。
困惑する一同の下に現れた騎士は、「一同のうち関係者は問いただすがそれ以外は館にもどって構わない」と告げ、一同の切り崩しに入ります。

それから・・・
@ 皇帝ユリウスは魔法院には罰は与えないものとする。一応魔法院の立場は悪くなり、周囲を騎士団が固めて拘束状態へと入る。一般の人々へは、御政道に触れる研究をしたとして、噂が広められる。
※ 皇帝はメリッサの処分を保留します。メリッサの師匠がちょっと問題があることに気がつき始めたため、牽制できる要素をとっておこうと考えたのである。

A 一方表では帝国で新たな顧問として「黒の導師(メリッサの師匠)」が選ばれる。
黒の導師と4人の弟子によって、思念の具現体騎士団が作られ、思念獣の兵士達や魔物たちが軍隊として編成されていくことがしらされる。
⇒ この流れは情収集などを行った場合も容易にわかる。

5・呪われた皇帝

帝国の騎士・ゴーバッシュからの依頼

・ 帝国の騎士であるゴーバッシュは一同に対して好意的であり、一同に対して情報をもってあらわれる。
「帝室魔法顧問は、信じられん計画をぶちまけたぞ。帝国内部に存在する悪を具現化し、それを自壊させることで帝国を善の国にしようというのだ。」
全員が、どういう表情をしたらいいか困っている魔法使い達。
ゴーバッシュ「た、助けてくれ!」

皇帝陛下はよく許したね)
「言い方を変えていたんだよ。『欲望の無理の無い有効利用と統括術。これは政治の本質である』とか言って丸め込んだのだ。なまじユリウス皇帝も自信があるから、ある程度管理できるようにしたいという願望があったんだろうな。」

ユリウス皇帝・・・今は狂乱

皇帝ユリウスは、目の下に隈をつくり、頭を掻き毟ってはその報告を聞いていた。
「はぁ?何をやっているんだあいつら。すぐに止めさせろ!」
「は!」騎士は敬礼して走っていく。
そして、かえってきた騎士は再び敬礼する。「ダメでした!」
「ダメじゃないだろ!何しにいったんだ。私は皇帝だぞ!」

メリッサ

「それはゆゆしきこと・・・。皇帝陛下はお気づきでないかもしれないけれど、この世の悪を具現化するというのは、大邪神の召喚と等しき行為なのよ。大邪神など、呼ばれたらそれこそ帝国はなくなってしまうわ。」
・人々の悪意から呼ばれるものが悪神以外の何者でもないことは明白である。
→ メリッサは熟考すると、皇帝に対し、もう一度接触を取り、助力することを告げます。
「皇帝陛下のお力にならないといけませんわ。
陛下は魔法使いではないし、この手の分野を解決するには魔法の力が必要。
けれど私達が独断で解決することは、必ずしも正しくは無いわ。
皇帝陛下はことの顛末を理解し、解決を承諾するべきだし、そうしないとならないのよ」

●ちなみに
・ユリアンは前の皇帝の様子から、助けに行っても危害を加えられそうで不安がる。
・デュマは皇帝が嫌いになったのでいきたくないと主張。 

ゴーバッシュは皇帝に会うための道案内を引き受けます。
ゴーバッシュが案内するのは、はじめに一同を皇帝のもとまで案内した通路を使うようです。

皇帝の下にはメリッサ・弟子(ユリアン・デュマ・PC)とゴーバッシュが残る。
魔法使いの取りまとめにはハームートが残るという感じである。
・一同の出発は夜。なるべく騒ぎにしないようにしていく。

秘密の通路 〜水車小屋〜

一同がまず向かうのは、水車小屋である。
水車小屋は人工的に作られた滝にいくつもの水車を連ねたようなつくりをしている。帝国内部の生活用水の循環に使われている場所の一つである。

・ この場所には見張りの兵士らしいものはみかけられないが、その実はここに刺客がいる。水の中に住むウンディーネはすでに黒の導師の刺客となって一同が来るのを待ちわびている。

@ この中に入るには、水を止めて、中に馬車を通さないとならない。
水を止めるために水門を閉じるのは、ゴーバッシュの配下の騎士が行い。止まった水に浮かび上がる石畳を馬車が走るのである。
→ この時、一同が入った後、ウンディーネは上の騎士達をおぼれさせ、水門を再び開くと、石畳を静め始める。

A 一同の馬車の動きが悪くなり、足元に水が染み出してくる。表では、まず馬車の馬が水に引き込まれ、おぼれ死に、続いて御者も襲われる。おそらく一同が気がつくのは、馬車の止まったこの時点であるが、馬と乗り手が死ぬまで1分とかからないので、一同にはリアン時間での判断が迫られる。

B ここでウンディーネを3体倒せば、一同はここを突破することができる。
ゴーバッシュはウンディーネを撃破した後、水場を歩いて、一同を案内します。

秘密の通路 〜地下道〜 

前回の時は馬車を止めて中に入っていった通路に出ます。
この通路は幅も狭く、そのために大型の武器は振り回せません。窓らしいものはなく、一同はただまっすぐと歩いていくばかりです。

・ この場所は、すでに具現化魔法の力で変更されており、罠が設置されています。

@ 安全と道案内していた一同の足場が、抜け、落下します。ゴーバッシュは咄嗟に折畳式ツインランサーをひろげて壁にはさむと足場として、こらえ、一同の落下もキャッチします。足元には槍が剣山のようにたっています。

ゴーバッシュ「罠など無かったはずなのに・・・」 
メリッサ  「ダンジョンクリエイトでしょう・・・。腕の立つ弟子をもっているようですね」

・ 通路を真っ直ぐ進んでいくとT字路に出る。

T字路右

★罠・スカウト技能+知力ボーナス+2d →目標値15
つり天上。突然落下してきて一同を押しつぶす。この罠は発見できても解除できない。
ゴーバッシュがいるときは支えてくれるので、即死はしないものの、激突で20点のダメージを受ける。
→ このつり天上の上には部屋があり、鎖を巻き上げている間に上って上を見ることができる。 

鎖を巻き上げているのはアイアンゴーレム達である。
このアイアンゴーレム×2体を撃破しない限り、吊天上はやたら感度よく落ちてくる。
→ この先にはレバーがあり、このレバーを引かないと、反対側の扉は開かない。

T字路左

★罠・スカウト技能+知力ボーナス+2d →目標値15
左右から槍が突き出すトラップ。ダッシュで駆け抜けるか、衣服でもはさんで固定しない限り、解除できない。
刺さるとダメージは15点。
解除は ★罠・スカウト技能+器用ボーナス+2d →目標値15
ダッシュ★冒険者技能+敏捷ボーナス+2d →目標値13

正面は鉄製の扉があるが、鍵穴らしいものはなく、開く様子も無い。
T字路右にあるレバーを引けばあきます。非常に簡単な作り。

!!!

皇帝にかけられた呪い

皇帝は大の字になってベッドに身を投げ出していた。
さすがに最近は疲れが溜まる。こうも手におえない事件ばかりだとイライラも募るものである。

「子供の頃に戻れたらな・・・。ふ、バカなことを、私が皇帝をやらずにだれがやるというのだ。」

そういって目をつぶったと同時に、突然煙が巻き起こる。ゲホゲボと咳き込み、飛び起きる皇帝。
しかし、どうしたことだろう。衣服にもつれて転び、床に転倒する。

「いてて」と腰をさすり、ふと目線を上げると、入り口に見慣れない男が立っている。
男はニタニタと笑いながらこちらを見ている。見たところ顔立ちは整い、理知的で美形ともいえるフォルムだが、
その表情は獲物を物色するような汚らわしいものである。

悪魔アデリード

一同が螺旋階段を上り終え、ゴーバッシュの案内の元・皇帝の部屋へとたどり着いた時、そこからは悲鳴が聞こえていた。一人の男が子供を組み伏せ、子供が衣服の裾をばたつかせて抵抗している。

「誰か?!」

・ 男は一同が救出の意思を見せると飛びのき、コートの埃を払うと立ち上がる。
男は見覚えがあり、確か黒の導師の後ろにいた4人のローブの人物の一人である。
彼は礼儀正しく、深々と頭をたれて挨拶する。
「私はアデリード。帝室顧問たる黒の導師の召喚に応じ、馳せ参じた悪魔です。」
・ この少年は「無礼なるぞ!」と怒鳴りつづけるが。どうやらこの少年こそが皇帝ユリウスのようである。
アデリードはニタニタと笑い、少年の様子を見る。
・ アデリードは事情を説明する。
「先ほど願われたのではありませんかな。陛下。お望みどおり子供に戻して差し上げました。今の陛下は無力な子供。どこへなりとも御行きなさい。そして好きなように暮らすといいでしょう。」

   ユリウス「帝国はどうする?!!」
  アデリード「ご安心を、陛下御一人いなかったとしても、まぁうまくやっていきますよ。」
→ 精神まで子供に戻っているユリウスは「そんなの嫌だー」と泣き始める。(びえーん)
⇒アデリードはその話を終え、一同に詰め寄られる前に、機先を制する。そしてとる行動は、窓から身を投げ、背にコウモリの翼を広げ、羽ばたいていくのである。

皇帝は泣きじゃくり困惑。「どうしたらいいか」わからなくなる。
・ メリッサは何か呪いを説く方法があるのではないかと、考え、一時魔法院へと皇帝を連れ帰ることを考える。
・ しかし皇帝 「余がいなくては政務がたちゆかぬ」というなり、袖をバタバタはためかせて廊下へと駆け出していく。

表の騎士達はそれを発見すると、皇帝とはわからず「どこから入ったこのガキ」などといって皇帝を捕える。
当然皇帝の抗議も虚しく効果はない。「放せ!余はユリウス・クラウゼなるぞ!」
・ 騎士達とは戦闘になるだろうが、皇帝は救出できる。
騎士達はその子供が皇帝であるとは認めないし、理解もできない。
またゴーバッシュですら、困惑するばかりで、理解に苦しんでしまう。
・ 一同は皇帝をつれて脱出しなければならないが、それは一同の立場を悪くするものでもある。

まぁ順当には脱出ですね。


偽皇帝現る

その事件の翌日。一同は幼子となった皇帝を守るべく思案に暮れるが、その一同のもとに入る報せは事態をさらに難しいものにしていく。
早馬が街中を走り、張り出される張り紙は、その日の午前中・中庭で行われたという「皇帝」の演説によるものであった。
若き青年が演説する。その演説は高らかで、自身に満ち溢れている。
オーバーアクションの身振り、仰々しい式典も全て皇帝のカリスマを高めるため。
その中、演説する男。ユリウス・クラウゼである。
しかし、はたしてユリウス・クラウゼなるものなのか。

「帝国は今、人類の先駆者として新たな道を踏み、人々を導かなくてはならない。
私ここに古代魔法王国の秘法を用い、穢れの完全浄化を作戦を立案する。
あらゆる悪をあぶりだし、あらゆる偽善を駆逐する。そして我々は千年王国をこの地に打ち立てるのだ。」

かくして彼の背後には黒の導師と4人の高弟の姿があった。

前半部分終了 〜天を恨むユリウス〜

ユリウスは魔法院の一室で天を恨んでいた。暗雲立ち込める天を見上げていた。
皇帝を名乗る偽者。帰るべき家を失った境遇、それらを思うとひとりでに瞳にはじわりと涙が溜まる。
突然の稲光と轟音。皇帝は思わず尻餅をつき、耳を抑えてしくしくと泣き出す。
⇒ それを見たPCの反応をどうぞ。
やさしくするなり、突き放すなり、好きにロールプレイしてくださいな。

この時点で途中経験点とするのがいいだろう。
経験点は通常1000点。

ちなみに、サンプルシナリオの場合、このシナリオのみのPCなので、経験点は5000点としました。

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