幻想戦記リプレイ シーザーVSレオン

オープニングフェイズA 復讐「王位の簒奪」

ユトランド 〜シーザー〜

王城の王座に追い詰められたのは一人の姫君。
あのユトランドのパーティからは年数が経ち、今や姫は若くも無く、その気位の高さから婚期を逃していた。
その姫の目前によっては平伏、そして平伏しつつもその眼光を持って威圧するのはかのネロの息子のシーザーである。
レサ夫(以後シーザー)「さて、しゃべるか。」

シーザー「姫君はかつて国の名をもって我が父を始め、この国に命をかけた同朋に報いることを誓われました。」

GM  「姫は『下がれ下郎』と強気に出ては侍従などを呼ぶが―」

シーザー「当然来る気配は無い!私が手勢で取り押さえますから。」

GM  「顔面を蒼白に睨みつける姫。」

シーザー「父上にその褒美を頂きたい。」

GM  「?」

シーザー「あなたには、今は無き父上との婚儀を執り行っていただきたい。」


前代未聞の話である。
既に死んでいる個人との婚姻など、おおよそ常識人ならば受け入れたいことであった。
シャルロッテ姫も耳を疑うばかりである。
もしこれが、まともな王国ならば、力ある騎士や領主が立ち上がっただろう。
もしこれがまともな王国であれば、義憤に燃えた人々が姫を救いに現れたかもしれない。

姫はことここに及んで大きく後悔することとなる。
自分が王家を守るために力ある貴族を駆逐したせいで、もはやこの有事を防ぐものはこの国には存在しないのだ。
また大戦の報酬をネロが支払っていたせいで、国内の勢力のうち息子シーザーに肩入れするものも多かった。
民草は姫を憎しみこそすれ、同情することはなかった。
シーザー「では姫を塔に幽閉する。『あなたはそこで枯れ果てるまで後悔するといい。・・・お母上!』」

レオン 「うわ!悪い」

GM  「固く閉ざされた扉。姫はそうして幽閉される。」


そしてこの扉は彼女の生涯開かれることは無かった。



後日談より
シーザー「一言で言えば、シーザーはやっぱり復讐の鬼だったと思う。
冷静だったり理知的であったりしたのだけど、幼少時に祖国に全てを奪われた記憶から、ユトランドのことを憎んでいたし、漠然と憎しみを抱いて生きていたのだろうと。
でも同時に義務感や使命感は強く感じていたから、立派な王にならなくてはと、前をむいていた。
ある意味、そんな自分の憎しみには目をそむけて生きてきたんだろうな。」


さて権威にしがみついた姫より王位を簒奪・・・もとい王位に上り詰めたのは若干13歳の国王シーザー。
彼は父親の仲間であった北欧の巨人族や蛮族を従えて、ユトランド国内に乗り込み、かつての仲間だった騎士達とともにクーデターを成功。国を奪ったと。
この動きは実に迅速で速いものだったので対した戦の無いまま王権は委譲してしまった。
そして普通ならば国民の指示を得られないのだけれど、今まで国の功労者だった人々や義勇兵が報われたので、下の人々は逆に歓迎しているぐらいだ。


GM  「シーザーはユトランドの王位に・・・」

シーザー「いや。そこは父上の席だから、そのとなりに立っています。今回の事件は父上の手柄なのだ。私はその父の隣にいる・・・・というつもり。」

GM  「じゃあ、空の王座のとなりにシーザー。ではシーザーの側の朝廷にはユトランドの騎士とか北欧のバイキングとかがごっちゃになって存在している。元々の貴族は少ないからちょっと異様な光景だ。

そして、シーザーの側には有能な外交官はあまりいない。一応現在まだ配下はほとんどいないからね。」

シーザー「うむ(笑) バイキングの武官ばかりだ。」


GM  「国内統治についてですが・・・」

シーザー「それは考えがある。この朝廷の前にやっておきたいのだが・・・」

GM  「どうぞ」

シーザー「下町の酒場によって冒険者達とは顔を合わせておきたいのだが?」


ユトランド王都の街はちょっとした賑わいを見せていた。国王は変わったが、これで以前より悪くなることはあるまいというのが風評である。今のところ人々の生活を直撃するような問題は起こっていない。

シーザー「王位の簒奪も血は流れなかったからな。」


GM  「そんな冒険者の店 兼 酒場の一角。冒険者達は今回のことを酒の肴に盛り上がっている。
『あのネロの息子がでかいことややりやがった』とかなんとか」

シーザー「じゃそんな時に、出て行く。私一人でいいからな。」

GM  「酒場の主人は一応シーザーが来ると、始めは誰かわからなかったようだが、やがて思い出して平服。冒険者の反応はまったく逆。『でかした』だのと騒ぎ立てる。」

シーザー「ええと・・・と赤くなって目線を泳がせる。」

GM  「あの性悪女にお灸を据えてくれて俺達の気分は晴れやかだとか、そんな話をしている。
あのネロの子供がカタキをとったんだから、悪と悪の勝負はこっちに軍配が上がったんだ、と話している。」

シーザー「皆も力をかしてくれてありがとう。今日はお礼をいいに来たのだ。」

GM  「言葉よりも・・・」

シーザー「勿論、報酬も払おう。そこでどうだろう。我々は巨人とか妖精とかで国の統治などできるものではない。
私は皆にこの国々をまかせたいのだが?」

GM  「領地くれるの? 冒険者だからなぁ」

シーザー「いや、自分達の住む土地は自分達の手でなんとかしてほしいという丸投的な考え方かもしれんぞ。
どちらにせよ。異民族に統治させていらぬ諍いを起こしたくないのだ。」


GM  「という遣り取りをしておくと。」

シーザー「うむ。同様に援助してくれた騎士達は取り立ててその土地を任せよう。勿論アバロンだろうと冒険者だろうと国に限らずだ。また中立的な貴族達の地位は奪わず、こちらの側につくのならば責めないでおこう。」

GM  「北欧で占拠しないのね」

シーザー「生き方が違うから、ここはもうユトランドで国を作る。そしていい国ができたら、私もまた国を出よう。」



GM  「じゃあまた朝廷にシーンを戻します。報告の内容を列挙してみるから。」


報告@国内の情勢

一応は安泰。元々この国の人々の声望ある功労者に指示されて王位についたのだから、支持はある。反感をもっている貴族も少なくはないが、それは功労者の騎士達に任せておけば、大丈夫だろう。

報告A現在の同盟国・イギリス=アバロンより。

イギリス=アバロンの使者は祝辞を送ってきている。自分達は支持をしますということ。でもどっちにつくかわからない国だから、いざとなればわからない。

シーザー「・・・これだけか」

GM  「はい」

レオン 「ははは!弱小国は辛いですな!」


シーザー「仕官もないのか?」

レオン 「こんだけ強引なやり口したら、普通嫌われますよ。」

GM  「シーザーはまだ実績無いしね。そもそもみんなほとんど知らない。

冒険者達はそりゃあ好意的だけど、仕官という形とは少し違う。」


シーザー「まぁ・・・いい。気を取り直して。国内のことは王位についた時に指示を出したから、それでいいだろう。
では、次の方向指針を立てるぞ。

次はフランス遠征だ!」

レオン 「ぶは!」

シーザー「幸い我々は今回のユトランド制覇に被害は出していない。兵馬は用意済みだ。
というより、ユトランドを無血短期で手に入れ、ここに用意した兵馬を使ってそのまま隣国に攻め込むのが、この作戦よ!」


さすがにこのシーザーの提案に場に並ぶ、武官・内政官は度肝を抜かれる。
フランス・ガートランド王国は、国土は広く戦続きで兵力は疲弊しているとしても北欧軍の倍以上。
さらに国王レオンは戦上手で知られる名君なのである。
弱小国が大国に噛み付くのは時期尚早とは誰の目にも明らかであった。
これにはシーザーのことを信頼する重臣達も、内心の不安を隠せない。
「この若い国王に全てを任せてしまっていいのだろうか?」


GM  「ではシーザーの傍に控える乗馬服の貴婦人のような女性。金髪たれ目に口元に黒子。後見人にしてその実は警護方という女性『コンスタンス』から意見が上がる。
『レオン王とは先代は有効な関係でしたわ。同盟関係を強化するというのも一つの手かと。』」

レオン 「そうですよ。旗揚げしたばかりなんだから。ここは足元を固めるべきですよ。」

シーザー「うむ。ただ。ユトランド貴族が逃げ込む先は、かつての同盟国フランスしかないとは考えていた。そしてレオンもこの中央に覇を唱えようと遠征してきたことも度々ある人物だ。今は友好的な関係を結べても長期的には危うい。そして私には今勝算がある。ここは攻めるべき時と考える。他に異論があるか?」

GM  「基本的に北欧援軍のバイキング・ジャイアントは反論しない。むしろ戦が無くて退屈していたので皆賛同の声を上げているという具合だ。」

シーザー「マリエラは?」


★マリエラはシーザーの父親・ネロの代から使えている武官、ネロから兵馬の権限を一任されたことのある女将軍である。
かつては隣国ロシアの将軍として活躍していたが、ネロが彼女を破りはいかに加えたという経緯を持つ。

GM  「長髪で鼻筋の通った女将軍。表情はいつもあまり変わらない彼女はここでもあまり物をいわない。ただ何か考えるところはあるようだ。」

シーザー「・・・で、あろう。じゃ後でこっそり呼ぶか。」


軍儀の師

北欧育ちのシーザーにとってこの飾り立てられた王宮は豪華なものであった。
いや豪華すぎるものであったのかもしれない。
王宮にある豪華な調度品は民の血税によってつくられている。そしてこの国の城は死んでいった多くの騎士の骸の上にそびえていることを彼は知っている。

シーザー「お父様の家を潰した奴等め!こんなに贅沢しやがって!と憎々しげに室内を見回す。」


GM  「じゃ後ほど、執務室に呼び出されたマリエラは、シーザーに対して平伏。彼女は今では兵馬の権限は変換し、シーザーの軍事の先生などをしているわけだが・・・『おや、陛下が凄く不機嫌そうだ。』」

シーザー「くしゃくしゃにしたカーテンとかを後ろに隠そう。よく来たマリエラ。これはその・・・」

GM:マリエラ「その?」

シーザー「・・・ふ、ふかふかだ(笑)」


シーザー「フランス攻略は困難と思ったか?」

GM  「はい、とマリエラ。彼女が面向かっていうと若いシーザーは立場が無いから黙っていた。」

シーザー「言わずともわかる。遠路までの遠征、兵力の不足、長期間国内を空けられない政治状況だからな。
しかし、それを理解した上で行う。お前には是非も無い。わかるか?」

GM  「マリエラはただ頷く。別に反意はないようで、ちょっと決意を固めたような表情。厳しい戦いになるぞというような。」

GM/マリエラ「昔から心を攻めるのを上計、兵を攻めるのを下計と申します。お忘れなきよう。」

シーザー「・・・なるほど。確かにただ勝つだけでは、ダメなのだな。肝に命じておこう。」


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