それから――
GM:ジェームスはその日は館に帰ってこなかった。帰ってこれるはずはない。彼にしても人生はメチャメチャだ。そのジェームスを迎えたのは実はガレス王子なんだけどね。憔悴したジェームスを手当てして館に泊めているという感じだ。
アルテイ:ガレスって部下を大切にするのかな?
GM:父親も放心・そして動揺。「誰か私に説明してくれ!!?」と館の使用人たちに詰め寄るわけだ。母親の死という重たい事実に父親は愕然としている。そして数日が経過する。
アルテイ:これ、この家を引き抜けるのかなぁ……
GM:父親は部屋から出てこない。多分抜け殻になっている。ジェームスも戻ってこないが、ガレス王子が面倒を見てくれているらしい。王子は事情を知っただろうに、事を公にしないつもりのようだ。
アルテイ:俺のせいだ。
シルヴァナ:いや…私の…せいだよ……。
GM:ガルデンは君の手当てをし、横の椅子に腰掛けている。色々と家族にも気を配ってくれているらしい。そんな彼の口から、言葉が漏れる。「すまなかった……」
シルヴァナ:「お前の……せいじゃない……」
GM:「しかし、……何故だ?」
シルヴァナ:「まぁ……な。一番簡単なのは……約束だから。でももう一つは、私が何も考えていなかったんだ」目線をベッドに落として
「うう、私は家が被害を受けないと……どこかで思っていたんだ」
GM:「シルヴァナ」
シルヴァナ:「今わかった……戦っていうのは、そういうことなんだ」
GM:「シルヴァナ」とガルデンは肩を掴む。
シルヴァナ:「支離滅裂だな。ああ、今のは……聞き流してくれ」
GM:ガルデンも同様に悩んでいるのだろうね。シルヴァナの家族を害したいわけじゃなかった。まして家族が争う骨肉の戦いなど呼び込みたくはなかったのだろう。
「家族で争うぐらいなら、お前は……俺を売れば良かったのだ……!」
GM:自然と家族と距離を置き、別邸で療養するシルヴァナ。
アルテイ:謁見はそのまま話が進むんだ。
GM:多分ガレス王子が何か手回しして問題ごとを隠滅しているんだろう。不穏で距離のおいた関係のまま、その日は近づいていく。
シルヴァナ:……
GM:謁見まで日が近づく中、元々無口なガルデンもより無口になっていく。「来るな」とは言わない。ただ、悩んでいるように見える。
シルヴァナ:「行くな……と?」
GM:シルヴァナがガルデンと行きたいと願うことは、ガルデンにも十分分かっている。でもそれはガルデンの死、そしてシルヴァナの死でもある。
シルヴァナ:「行くよ」私は傷ついた体を起こそう。「私は……お前がガレス王子に復讐しなかった時、それが恨みじゃないと分かったんだ」
GM:「俺もずっと、悩んでいた。はじめは憎しみに苦しみ、未来を見失い、あがいていた」
シルヴァナ:「うん」
GM:「俺はまもなくいなくなるだろう。まもなくタタールという歴史も文化もこの世界から消えるだろう。俺は消え去ろうという部族の全てだ」
シルヴァナ:「ああ、わかるよ」部族の時代も終わりを告げているのだから。
GM:「俺はこの時代の激流に挑戦していたのではないかと思う。多分、カルディアという未来に、俺という過去が挑んでいるのだ」
シルヴァナ:「私はお前がタタールというだけじゃなくて、一人の男として女王に挑んでいるとわかっていた」
GM:「だが、お前は、それでいいのか。俺を止めることが騎士としての生き方なのではないのか?」
シルヴァナ:「ああ……でも女王は殺させはしない」と微笑む。
GM:「ふ。好きにしろ」
シルヴァナ:「私は……どうしてしまったのだろうな」でも、もう笑顔しか出てこない。お前の前だと。
GM:「どうしようもない矛盾を抱え、それを言葉にもできない。そういう気持ちが俺にもわかる」
シルヴァナ:「私もお前の気持ちがわかるわけじゃない。でもわからないわけじゃないんだ」
GM:不意にガルデンの唇が重ねられる。
シルヴァナ:びくっ目をしばたたかせるよっ!
GM:「今、この時は……」
シルヴァナ:「私もお前をもっと近くで感じていたい! そんな風にずっと思っていたんだ!」
こんな近くにいるのに、お前のことがわからないんだ。
もっと知りたいんだ!

GM:「これが許されるなら、俺たちは――」
シルヴァナ:「しばらく、こうしていて、いい?」
シルヴァナ:あの本を誰かに届けたい。私達の物語を
GM:「誰に届けたい?」
シルヴァナ:私はカルディア女王に――
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