Middle phase 

  

【〜イヴァン王〜】

イヴァンの部隊に合流し、説明をするオレグ。
「申し訳ありません。内部に潜み、有事は撹乱する手はずでしたが、味方の窮地。救援に向かいました…しかし現状は混迷を極めています」 イヴァンはオレグの肩を叩く。
「いや、お前には感謝する。我が同胞の危機を救ってくれた。だが…」

雨に打たれ、黒雲を見上げるイヴァン。
武勇に長けるアドホックレルムの勇者がこれほどの醜態をさらすことを誰が想像できただろう。イヴァンの表情に憤懣が滲む。
「如何がします?」
「オレグ。精鋭を連れ、ゴロンゾ隊の支援に回れ。俺の旗指物を使えば相手はイヴァン到来と驚き、不利を悟る。その陣形の乱れに俺の部隊が攻撃する。」


GM:ドラゴスは雷雨の中、確かに致命的に動きをする部隊の姿が遠めで見つけることができる。

ドラゴス:これはマズイ。ここで戦わないと今度はこちらが全滅する。味方に撤退を支持し、その殿を引き受けよう。…これは激突だな。

ロバート:あ、これでオープニングのシーンか。

シリル:王と王の戦いか。


雨と落雷の中、振り下ろされた剣が火花を散らす。
落雷が二人の顔を照らし出す。
ドラゴスとイヴァン。二人は鍔迫り合い、そして弾いては間合いを取る。
レルムの兵は、進軍し、騎士達と交戦。
各地で怒号と喧騒が響き、武器が打ち合わされている。


GM:「フレジェス王とお見受けする。」

ドラゴス:「いかにも、フレジェス王!ダニエル。あなたは?」

GM:「アドホックレルムのイヴァン。」

ドラゴス:「イヴァン王!…これはこれは!」

GM:「戦場では薄礼こそ至上。残る言葉は剣で語るとしよう」とイヴァンは武器を向けた。

ドラゴス:剣を構えよう。

1ターン目

行動値12 ドラゴス
行動値10 イヴァン

ドラゴス:相手は王。手加減するような相手ではない。急所攻撃を宣言し(コロコロ)命中28.

GM:イヴァンはその攻撃受ける(コロコロ)33.刃と刃が火花を散らせる。その時イヴァンの表情が変わる。

ドラゴス:何!さすがに避けるか…

GM:イヴァンの視線は、雨水を伝うドラゴスの刃に注視されている。それで攻撃の機会を逃しているにもかかわらずだ。

ドラゴス:刃…はっ!

ロバート:「貴様フレジェス王ではないな…!」だね。


12ターン目

行動値12 ドラゴス
行動値10 イヴァン

ドラゴス:バレたかも……では2ターン目。攻撃する(コロコロ)30。やはり急所狙いで切り込む。

GM:イヴァンは回避しない。直撃しつつ、シールドバッシュで殴りつける。<反動の印>

ドラゴス:ダメージは80点。

GM:それではダメージは通らない。代わりに君の胴体に盾が激突する。命中は44だ。

ドラゴス:回避できるはずがない。(コロコロ)30.無理。やっぱりラスボスクラスの実力の持ち主だ。

GM:今回はこれで死亡とはしない。ダメージは部隊を散会させた、としておこう。120点だからね。

ドラゴス:普通なら、即死。

GM:「筋はいい。どれだけ腕を上げたか。見せてもらおうか。」

ドラゴス:「いや、今ので限界です!(笑)」


GM:とそんな中、土砂降りの雨の最中、刃を打ち合わせる二人の間に伝令兵が駆け寄る。

ドラゴス:なんだ!?

GM:「どうした!?」「魔物が!!北部のバルチモア方面から」

ドラゴス:これは…まるであの時、出会ったときみたいだ…。

GM:交わされていた刃が、引かれ、下ろされる。「全軍に指示、北部の魔物に兵を向けろ。」そしてドラゴスから間合いを離し、背を向ける。 このタイミングで魔物…?まるで戦を止めるように?伝令に聞こう。

ドラゴス:「魔物は!どんな魔物だ!」

GM:「トロルです!」

ドラゴス:デジャブだよね。


ロバート:トロルってそんなに簡単に沸くものなの?いくら治安が悪いといってもさ。

GM:ではここで、何が起こっていたかというと、メイジ・エンカウントアナザーワールドはこの時、トロルを召還していたのだ。

ドラゴス:何!

GM:勿論、戦を止めるためだ。戦の渦中に魔物が現れたのなら、噂がまことならイヴァンは魔物を放置してまで戦を継続したりはしないはず。その読みは正しかった。本当は、トロルは単体なんだけど、今回は魔物が沸いた状態として表現したよ。

ロバート:おおう!

シリル:メッチャ賢い!

ドラゴス:なるほど!でもそうすると、彼はトロルを、召還獣を失ってしまうわけなの。

ドラゴス:そう。

シリル:本当に討ってしまってもいいのか…?

ドラゴス:ああ、やろう!やらなきゃダメだ!フレジェスの為にもそうだけど、自分自身のためにも。誓いを立てる。『トロルを倒すことで、過去の自分とは違うと、証明する!』。


1ターン目

行動値12 ドラゴス
行動値10 トロル

ドラゴス:いくぞ!マイナーアクション『急所攻撃』、メジャーアクションで攻撃。(コロコロ)25で命中。

GM:トロルは回避失敗。回避12だから。

ドラゴス:ブス!ダメージ。重打ちも入れる。(コロコロ)104点。武器属性。急所攻撃だから、出血もする。

GM:ダメージは74点食らって…クリンナップフェイズに50点回復回復しちゃうんだけど。

シリル:つまり24点通った。

ドラゴス:ふざけやがって!成長して尚、これだけ強いだと!?


GM:トロルの攻撃。マイナーアクションで止血して、一息ついてから、ゴルフスイングみたいに棍棒を振り下ろした(コロコロ)クリティカルした。

ドラゴス:え!

GM:命中39.

ドラゴス:「待って!待って!」食らったら即死だよ。もしくは気絶。

GM:ここで気絶しても多分捕食される。

ドラゴス:回避に天運を2使って、(コロコロ)……

ロバート:アンドレアル様のところに行くのか?

ドラゴス:(コロコロ)40.やったぁ回避!生きてる!


2ターン目

行動値12 ドラゴス
行動値10 トロル

GM:というところで2ターン目。ギリギリの死線を潜り抜け、冷たい汗が伝っているドラゴスの番だ。

ドラゴス:アンドレアル様が見えたぜ!再び必殺の攻撃(コロコロ)24.当たるよな!?

GM:命中はする。トロルの回避は12.大丈夫。耐えられる。トロルは待ち構えていた。

ドラゴス:ダメージは(コロコロ)105点。武器属性。どうだ!

GM:を、ピッタリ。一点超過して気絶。慢心したか…。

ドラゴス:やったぁああ!危なかった。


GM:というわけで、トロルの巨体が崩れ落ちる。分厚い筋肉の刃は深く食い込んで中々引き抜けなかった。それは傷が癒えることでふさがりつつある状態だったことも意味している。薄氷の戦いだったのだ。

ドラゴス:トロルって強敵なんだな。どんなレベルでも強い…。


ロバート:あのさ。今、気がついたけど、トロルと俺ってやってること同じだな。

GM:あれ。そういえば。

シリル:ダメージ食らって回復。50点。そうだね。

ロバート:アイツと俺は同じだ。アイツは……うっうっ。

ドラゴス:お前トロルなんじゃね?

爆笑! シリル:鎧の中はトロルでした?(笑)

ドラゴス:板金鎧を着たトロルかよ。(笑)

ロバート:!(笑)

GM:お前等仲間になんてことを言うんだよ!(笑)

ドラゴス:トロルでも仲間(笑)

ロバート:トロルは仲間。(笑)


魔物は程なく駆逐された。
手に武器をもっていた両雄は、この混乱した喧騒の中、視線を合わせた。イヴァン王の目線は鋭い。行き掛かりで共闘したといえど、その矛を下ろすのには至らないのだ。


ドラゴス:この状況でイヴァン王と戦うの?くそ、武器を構える。

GM:「両者待たれよ!!」

ドラゴス:何者?

GM:雨上がりの泥濘に馬で乗り入れたソレイユは両者に割って入る。「矛を下げられよ。」

ドラゴス:…どうなるの?

GM:「ソレイユ。戦は遊びで行っているわけではない。」イヴァンは武器を降ろしつつ眉を潜めた。

ロバート:そりゃそうだ。

GM:ソレイユは続ける。「此度の戦が、はたして本当の好機に行われたならば私もそれを諌めたりしない。しかし、不意な衝突が未曾有の戦火に広がることをどうして見過ごせようか。」そして泥濘に膝をついて平服する。

ドラゴス:どうする?どうする?

GM:「王よ。どうか矛をお下げ下さい。これは私だけの考えではありません。此度の戦は機を逸しております。」おお、なんということか、スターシャやイシュカ、その他の文官までもがその場に現れては平伏する。

シリル:私も平伏します。


「お前達、国はどうした!?」
「国難にあって、場に馳せ参じぬわけには参りません。」
気がつくと、ゴロンゾ、フラガッハまでも彼等を真似てか膝をついて平伏している。
こうあっては武器を抜いているのはイヴァンばかり。
イヴァンは武器を地面に突きたて、向き直る。


GM:「ダニエル…だったな。」

ドラゴス:「は、はい。」

GM:「和睦を受けるか?」

ドラゴス:「是非」


GM:ソレイユは和睦を済ませるといそいそと馬に乗りなおした。

シリル:「申し訳ありません。この度は…」とソレイユ様に一礼する。

GM:「義兄上(シリル)。イヴァン王はこの地に借りができた。それは我々家臣が返さなくてはならない借りだ。」

シリル:「はい。」

GM:「忘れぬように」

シリル:頭が上がらないな。こりゃあ。

GM:もう一つ言うなら、イヴァンが自分の非をを認めなければシリルの行いは同士討ち、それは反逆にも等しい、フラガッハも同罪とはいえ、二人には罪が問われたはず。悪ければ死罪だ。

シリル:ギョ。

GM:それを諌めるためには、王にも非がある、という状態にしなくてはならなかった。その為にソレイユは力技をして説得したわけだ。

シリル:ますます頭が上がらない。

GM:そして一方ゴロンゾだ。傷だらけのゴロンゾは岩に座り込み傷を手当していた。

シリル:「ゴロンゾさん。お怪我は?」

GM:「シリルよう。お前のことがわからねぇよ。」

シリル:「え」

GM:「親友じゃなかったのかよ。長年の付き合いのある俺より、どうしてフレジェスの連中の肩を持つ……」とゴロンゾはシリルに目を向けず、足元の泥水を凝視している。

シリル:「それは……」

GM:「俺の…仲間も死んじまった……俺にはお前が何を考えているかわからねえよ。」そう言って立ち上がり、背を向けて歩き去っていく。

シリル:ゴロンゾさん…違う、違うんです…。これには事情が、こんなことをしたかったわけじゃないんです。


雨上がりの空は、青空が広がっていた。
魔物を対峙した喜びと和睦に多くの人は安堵していたが、その中に潜む偽りを見抜いていたイヴァンは、そんな光景を苦笑していた。


GM:城壁に寄りかかっていたイヴァンはドラゴスに声をかける。「俺には散々な結果となったが、これも天の采配だ。」イヴァンが視線を下げる。「お前が何者なのかわかったぞ」

ドラゴス:「う……ダニエルです…私は…」


GM:視線の先にはイヴァンが与えた剣が、ドラゴスの腰に下げられている。「だが、どうしてもげせんのが、何故か…だ。」

ドラゴス:「それは……」


GM:「一つ質問がある。」

ドラゴス:「はい。」

GM:「このやり方がお前が辿り着いた結論なのか?それとも、行き掛かりの都合か?俺と同じような。」

ドラゴス:「私はダニエルですから、何もお答えできません。」

GM:腕を組み見下ろすイヴァン。

ドラゴス:「ですが、これは他国に流れていた経験から……成すべきことがあり、今まさに苦しむ民を見過ごして何がロードか…と…」


GM:イヴァンは僅かに笑みを浮かべる。そして踵を返した。「また会おう。」


シリルとフラガッハ。
その二人に厳しい言葉を投げかけるのは文官のスターシャであった。


GM:スターシャといえば建国からのイヴァンとの付き合いもあり、そしてその正論もあって。二人はグゥの音も出ない。「お二人共、一体どのようなおつもりですか!」

シリル:「いえ、今回のことはフラガッハ様が独走し…」

GM:「何を!?」とフラガッハが噛み付く。

シリル:「スターシャ様よくお調べいただければわかります。」


GM:めくじらを立てているスターシャは一呼吸。「フラガッハ様。イヴァン様がこれほど慎重にことを運んでおられたのはこの王国の侵略が一筋縄にいかないからです。それを無視して戦をおこし、王の身を危険に晒すとは。そのようなつもりなら金輪際出入りは控えていただきます。」

シリル:うむうむ。仰るとおり。


GM:「シリル様!あなたもです!」

シリル:「はい」

GM:「あなたはイヴァン王の危機に一番に馳せ参じねばならぬ方ではありませんか!アドホックレルムから禄を貰っているあなたが主君を見捨てて何が大義です!善悪はそもそも忠節を知るものが口にしていい言葉、それを見誤るとは恥を知りなさい!」

シリル:「それは…仰る通りです。」


アドホックレルムの軍勢は帰路に入る。
フレジェスはアドホックレルムの脅威を肌で感じ取り、その勇猛をまざまざと見たが、同時にアドホックレルムの荒削りな人間性に弱点を見出した。 一方、イヴァンもまた、フレジェスの致命的な弱点たりうる真実を看破していた。影武者の存在である。


GM:そして場面は帰路に入るアドホックレルム軍。ここでシリルには弁解の場を与えておこうか。下手すると破滅だけど。

シリル:平伏します。「イヴァン王。私がいつまでたっても成果を上げないばかりに……このような結果になり申し訳ありませんでした。」


GM:「ことの顛末を聞こう」

シリル:「はい、フレジェスよりかけられた嫌疑を晴らし、両国の間に強固な信頼関係を築こうとしていた矢先、フラガッハ様がこのように事件を起こしました。これで我々の同盟は破綻してしまいました。」

GM:同盟と言う言葉にイヴァンの表情が固くなる。「同盟といったか?」

シリル:「は、はい。私のベヘレムと彼等フレジェスが手を携えることができれば、それはアドホックレルムが強大になることも同じ。私はただただ祖国アドホックレルムの為に…」

GM:「ゴロンゾやフラガッハの命が代価か?」

シリル:「いえ、そんなつもりは……フラガッハ様に剣を向けたことは…フラガッハ様がイヴァン王のお考えを無視し、独走したことが許せず、忠誠心から刃を振るってしまったのです。これは全てイヴァン王の為を考えてのこと……」

GM:「フラガッハの行いは罰しよう。だが、お前が参戦しなかったことはどう言い訳する?」

シリル:「それは……」


GM:ふー、と嘆息したイヴァン。「お前はあの若者が王子だと信じ込んでいるようだが、ダニエル王子。アレは影武者だ。」

シリル:「はっ?」

ドラゴス:バレたぁ。

シリル:「何を証拠に…?!」といわざるを得ない〜

GM:「あの剣は、以前俺が馬術大会に出ていた若者に与えたものだ。ダニエル王子が手にするようなものではない。」

シリル:「……」(ぐにゃあ。)

GM:「お前は俺に影武者との同盟を勧めていたのだぞ?それがどういうことか……世間体を重んじるお前が知らぬわけではあるまい」


(ドラゴス:影武者って考えると、普通は黒幕だから、そうすると黒、世間的には黒か。)

(ロバート:アドホックレルムも黒。)


GM:「シリル。お前は事件の真相などお構い無しに、フレジェスとの同盟ありきで考えていた。お前の目は曇っていたのだ。」

シリル:あうあう。

GM:「お前のカウントを減じ、謹慎を命じる。」

シリル:「へいか…」


GM:「一つ言っておこう。シリルよ。このアドホックレルムでもっとも尊敬すべきものは背を預けられる戦友だ。」

シリル:「うっう…」


GM:「お前の口にする善悪など、お前の趣味にすぎん。『正義』と『理想の聖人』にでも忠誠を誓いたいなら、イコンでも祈っていろ。だが、それではこの酷寒の大地では生き残れない。謹慎中、よく考えろ。」


そんな中、フレジェスでも宰相グラニアが帰還する。
ウラヌス国王が思い腰を上げた時には、すでに戦が終わっていたとはいえ、それでもアドホックルムの脅威からフレジェスを掬ったのはこの援軍の決定にあったといってもいい。


ドラゴス:「グラニアさん。首の皮一枚でしたよ。」

GM:「お疲れ様。」とグラニアと君は王宮の会談に座り夕焼けを見ていた。

ドラゴス:「本当あなたは、のらりくらりとよくかわしますよ。」

GM:「あなたもね」

ドラゴス:「ハゲません?」

GM:「はは。大人になったらなるかも、まだ12ですから、心配していませんよ。」


ロバート:「うちのダニエル王子があのイヴァン王と引き分けたぞ!!」

GM:おおー。確かに。

シリル:結果としてはそういうことになってしまいました。

GM:ダニエルの名声は凄く高まったね。

ロバート:なんてったって、天下のイヴァン王だからね。

GM:矛を受けることすら不可能といえるあのイヴァンを無名のダニエルが凌いだの奇跡と言ってもおかしくはない。

ドラゴス:今回は相手も分裂して機能してなかったからだけどね。


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