Middle phase
【サクノ〜10年前〜】
GM: というわけでPC2の過去。そしてPC1の過去か。
士朗:侵食率は増やすんですか?
GM: 過去のシーンなのでここは振らなくていいです。「駄目だ。彼女はジャームになる! 助からない」「処分するぞ」「待て」というのがサクノの記憶にあり。
サクノ:ああ。
慌ただしい物音の中、額に手が当てられる。
熱っぽい頭にはその手が気持ち良く、周りの喧騒も気にならない。
いつしか、穏やかな眠気につつまれて、眠りに落ちる。
気が付いたら真っ白い部屋の中だった。やはり白いベッドの中で寝ていた。
隣には銀の髪のお兄さんが椅子に座り、何かの雑誌を読んでいた。
イケメンだ。夢の中の光景みたいだった。
GM: 「気が付いたか?」と声をかける。
サクノ:「う……あ、うん」
GM: 君は10年前だから10才。
サクノ:「おじさん誰?」
GM: 「おじさんか。俺は大神帯刀。寝起きで悪いが、見てくれ」と言って雑誌を見せるね。
サクノ:「ああ」
GM: 渡したのは子供用ランジェリー雑誌で。
サクノ:……ラ……ンジェリー(笑)。
GM: 簡素なものから可愛いもの、どぎつい物まであるという。「俺は女の子の趣味がわからないんでな」と……。
サクノ:そしたらページをめくらず、その開いて渡されたページだけを見て、見た後にこう顔を向けて「……おじさん……変態?」
GM: 彼の方は「あのなぁ。俺はおまえの下着のサイズをだな。だいたい、おまえ、まだ自分が女だと主張するような年じゃないだろう」
サクノ:「はあ……」
一同:(笑)
サクノ:そしたら雑誌をベッシ!顔に! 顔に投げつける。その上から蹴りをかまそう。
カナタ:ぶおっ!?
GM: 蹴りをかますと気付く。裸なんだね。彼の方は弁解。「ちょっと待てって! 誤解するな!しばらくは研究所暮らしで外出はできないんだ!だから必要な物は通販で買う!おかしな事は言ってないよな?便利だぞ! 丸を付けるだけでいいんだ!」まる――ってやり方を教えてくれる。
士朗:そういう問題じゃない(笑)。天然ボケだな親父は。
GM: そうだね。というわけで、帯刀はその日から結構一緒に行動を取ることになる。
サクノ:うん。
GM: 彼は説明してくれるんだね。お湯と粉ミルクと格闘しながら説明してくれる。
サクノ:お湯と……粉ミルクゥ!?
GM: 「おまえはオーヴァード不適応でジャームになったんだ」
サクノ:「はあ」
GM: 「俺が連れ戻すまでの一年は色々あったらしい。安定するまでの暫くは俺が面倒を見る。何、お前ぐらいの子供の面倒はよく見ていた。男の子だけどな」――と言って哺乳瓶を渡す。
サクノ:「……ふぅ〜ん」 何を渡すって!?
GM: 哺乳瓶だね。
カナタ:ちょっと待て! いくつだ!?(笑)
士朗:7つだから! ちょっと待て!(笑)
サクノ:そしたらそれを受け取ってしばらく固まりながら……ブシュッ。(ぶっかける)
士朗:あうっち!(笑)
サクノ:ぶん投げるよ!!
GM: 君の期待したような男ではなくて、彼は甲斐性なし。ロクに仕事もできない。彼が役に立つのは対オーヴァードとしての活躍だけであり。
サクノ:ああ……。
GM: 当然の成り行きで子守り兼で君のそばにいる。
サクノ:ああ〜でもあれなんだな。でもそういう風なやり取りをしつつも。それでも世話を焼こうとしてやってるってことはやっぱり(どっかズレてるこいつ。このおっちゃん変態なんじゃないの?)――と思いながらも まあ親が親だったんで……そういう生活を繰り返してる上で、段々と懐いていく。
GM: そうだね。彼も彼なりに気を遣ってるんでしょう。多分。
サクノ:うん。
GM: というわけで、以来彼と一緒にいろんな研究を行う。自分がジャームからどうやって戻れたのかとかいうチェックが多いね。
サクノ:ジャームに一回なったということを知って、ジャームになったのに戻れたっていうことが、どんだけ凄いことかっていうのは知ることになるわけだね。
GM: 帯刀と一緒にいる以上、その奇跡とやらを見ることになるのだが、それは……うまくいかないことの方が多い。ジャームから人へと回帰することを、彼は『悪魔祓い』と言っていたが、帰ってきても人間性が喪失してたり、「これを人と言っていいのだろうか…」みたいな。
士朗:廃人になっちゃったりするわけだね。
GM: ロイスを失ってる……人間としておかしくなっちゃってるのかな。
サクノ:なるほど。
GM: 彼との生活の中で自分のUGNの仕事が始まっていく。戦う事とかそういった事も本来望んだことじゃないけど、彼が月のない晩には役に立たないこともあり。
サクノ:うん。
GM: 時々サクノにも引っぱたかれて倒れるというか。
士朗:そんな弱まるんだ。
GM: 新月の時は体調も良くない。月が出てる時の方が体に適応してる人で、無い時はすごく不調みたいな。
サクノ:じゃそういう時は「やれやれしょうがないな〜」って感じで、ゴッツイ銃器をゴトリと持ち上げながら行くわけだ。
士朗:大型拳銃だな!
GM: 「気を付けろよ」なんて言いながら付いてくる帯刀。
サクノ:「ま、今にも倒れそうな人は大人しくしてなさいよ」
GM: 彼は、なんかすごくプライドを傷付けられたのか唇を噛み、睨みながら付いてくるわけだ。
士朗:意外と大人気ないなぁ。
GM: 子供ができて始めてパパになったからね。
士朗:ああ〜。
GM: そしてあの日を迎えるわけだ。そんな生活は長く続いたが、この日は自分に取って忘れられない日になるだろう。
サクノ:ほう。
GM: 帯刀が自分を連れて外出することを許されると。
サクノ:あ〜。
【〜紡がれる二人の思い出〜】
GM: 表に出てもいいと君は言われた。帯刀もそういう意味で面倒を見てくれるので、これで研究所暮らしも終わりかなってところなんだ。
サクノ:じゃあ研究所の外に出たわけだ。
GM: うん。ようやく出られるその時に、君が服装なんかを選んだり通販で買い込んだりしてるわけだ。これ着れるだろうと。
サクノ:カキカキカキ。
GM: その時研究所のドアが開き、入ってきたのはスーツに髭の恰幅のいい英国紳士風の男。
士朗:これだ〜!(イラストを指差し)
GM: ウィリアムズだね。
士朗:過去シーンで登場とはな。
カナタ:今も生きてるんだろうか?
サクノ:「誰あなた?」
GM: 「サクノちゃんだね?」
サクノ:「ん」
GM: 「私はロバート・ウィリアムズ」
サクノ:「うん」
GM: 彼は少し困った表情で「君と同じ『エージェント』だな」
サクノ:「はあ。『エージェント』?」
GM: そうだね。彼もこの施設の職員だろうが、どちらかといえばボディガードというか、お目付け役なんだね。
サクノ:うん。
GM: 「君達二人が出るということに関して話を聞いているよ」と言い、帯刀は「ウィリアムズ。おまえは付いて来んな」
サクノ:うん。
GM: ウィリアムズは君の方に行って服装を正してくれたりして「外で問題を起こしたらどうするつもりだ? この子はこう見えても一応ジャームなのだぞ?」
サクノ:「はあ?」
士朗:ああ、そういう認識なんだね。
GM: 「まあ、高田所長がジャームじゃないって言っただろう? それでいいだろう」と帯刀が返し、ウィリアムズはしばし考えて「高田所長の判断には従う」
サクノ:「会って早々人のことをジャーム扱いとはいい度胸じゃないの」
GM: 彼も困った顔をするね。「失礼なことを言ってしまったね。でも私にも君達がなんなのかよく判断できていないんだ」
サクノ:「ふぅん?」
GM: 「ま、できることなら一緒にうまくやって行く仲間でありたいものだね」と言って手を握り。
サクノ:「ま、そう願うわ」と言いながらもこちらも手を……軽く握るけどすぐに引っ込めよう。
GM: 帯刀「おいサクノ」と声をかけて「さっさと行くぞ」
サクノ:「うん」
GM: ウィリアムズのこと、あんまり好きじゃないみたいだね。
サクノ:そうね。私も。
GM: ウィリアムズはそれに対して、溜め息をつく。「嫌われてしまったかな」と、衣服を整え、彼は表に出て行く。
士朗:ジェントルメンだ。
【〜病院にて〜】
遊園地とか動物園とか気の利いた大人だったら普通は気がつきそうなものなのに帯刀さんは、そんな大人じゃなかった。
それでも、この日に紡がれた想い出は彼女にとって大切なものになるだろう。
GM: というわけで、紹介される日なんだ。これこそ君にとっては最悪の日である。帯刀が連れて行った先は病院なのである。
サクノ:うん。
GM: 病室には妊娠中の彼の妻と、そして息子がいた。
士朗:ああ、妊娠してたのか……?
サクノ:妊娠中の……。
GM: そして君よりちょっと上ぐらいの女の子が一人いるんだね。
サクノ:……ああ。はいはい。
GM: 君にとっては帯刀はほとんど『自分の帯刀』と言ってもいい生活をしていた。
サクノ:うん。
GM: 彼、君と一緒にいた何年間、本当に家にも帰れないんだね、あんまり。
サクノ:ははあ。
GM: 研究で。
サクノ:じゃあそっか。そしたらそんな……あれ? そういう話は聞いてたのかな?
GM: あ、全然話してない。帯刀はUGNに自分の家族のこと話さないんだね。
サクノ:う〜ん。
GM: 表に出る時もなるべく周りに気を遣っていたり、付いてこないかなとチェックをしたりしていた。じゃ、士朗くん登場!
士朗:そしたら、俺は10年前だからヒーローだ(笑)
GM: ヒーローだね。さっきのガキみたいな(笑)。
士朗:なんかヒーローっぽい人形持って、いかにも頭悪そうに遊んでんだよ。「ドシュー!!」とか言って。「ぶぅぅーん! がぁぁぁーん!」もう片方は歩く型のロボットで!「ガッシーン! ガッシーン!」
一同:(笑)
士朗:ロボットやめよう! 走り回ってますよそこらへん。病院とかってさ、病気の人用に手摺りとかあるじゃん。手摺りの上に上がって「よっ! ほっ! 母さん見て見て〜!」
GM: 「7才でもこんなにバカな子は少ないらしい」
士朗:7才でしたね! いや6才だよ6才!
GM: 「頭の悪いところだけは誰に似たのかわからない」
サクノ:「……あんたに似たんじゃないの?」(ボソッ)
GM: 「俺がこいつのために哺乳瓶をいつまで渡し続けたか」
サクノ:「ああ」
GM: 「整合性が付くな」
一同:爆笑!
士朗:まって! まって!(笑)あ、ちなみに親父のこと知ってんのかな? こっちは。
GM: 親父のことは知ってるっていうか、時々帰ってくる。知ってるけど思い出はあんまりないっていう。
士朗:じゃあクルッと手摺りの上で一回転してると、そのまま帯刀の姿が見えて、なんとなく興醒めしたようにピョンと飛び降りる。で、母親の元にタタタと走ってって「母さん、また父さんが来た」
サクノ:また。
GM: 帯刀はすごくヘコむね。
サクノ:しょぼーん。
GM: なんか、サクノが見てるだけでも可哀そうなくらい膝が震えて。
v
士朗:そこまで!!(笑)ちょ……ちょっと考えさせ……。親父にこういう感じに会うってのを全然想像してなかったからな。
GM: 「……そうだよな。俺も……」
サクノ:そうだなぁ。そしたら、あれだな。私はその頃ちょっと背が高い系だから、帯刀の腰くらいまではあったかな。じゃ腰のとこに手をギュって。(支える)
GM: 倒れないように。
サクノ:隣に立ったらポンポンって。
士朗:サクノもいるからね。「母さん。……父さん来たけど……知らない子連れてる……」このほうがいいだろう? 合流しやすい!
GM: まあね。背中に手を添えてもらったんで思わず帯刀は『困ったな』という顔をする。多分、こういう時の表情がすごく自然な顔なんだ。
サクノ:ふんふん♪
GM: この表情を見ると『自分達はチームだな』って気がするね。
サクノ:ふぅん?
GM: あの、お互いの感情が、ちょっと感じる、と。
サクノ:ふん〜♪
GM: 病室まで入っていき、お父さんと息子はなにか微妙な意識の仕合いをやってる。
士朗:そうだね。
GM: お父さんからしても子供へのコミュニケーションは取りたいけど、うまく取れてこなかった。ずっと不在だっから。
士朗:こっちも、お父さんあんまり帰ってこないから、やっぱり母親に懐いてる感じだよね。
GM: そうだね。
サクノ:えとなに? じゃあそこに同席させて貰ってるんだ。
GM: そうだね。「紹介しよう。妻の……」夏目さんの方が「大神夏目です」「そして息子の……おい、おまえだ」
士朗:「し……士朗だ!」
サクノ:ふぅん? あれ? 夏樹さんは?
GM: そうだ。「爺さんの孫。士朗の従姉妹の夏樹さんだ。俺の子じゃない」と言うと「帯刀〜!」という風に夏樹さんが言うんだね。
士朗:(笑)
GM: 「その説明はやめて!」と言って頭をぺちぺちと叩く。
士朗:夏樹さん、昔は結構キャラクターが違ったなぁ。
サクノ:じゃあ、この場が今まで知っていたのとは全然違う感じな空間なわけだ。
GM: うん。
サクノ:ほんとに、その家族の空気。どこかあったかい安心するかのようなのが素であって、なぜか自分がとても居心地が悪いような感じがしちゃう。
士朗:じゃあそこに話しかけてやろう。「父さん。誰だよその子。父さんの……あ〜……隠し子って奴か?」
GM: 子供かぁ。子ども扱いするとサクノは怒りそうだと気を使ってだな。「いや、違う。ただの男と女だ」
一同:(笑)
サクノ:いやいやいや?
士朗:ハテナハテナ?
サクノ:そう言っちゃったんなら、支えてるとこをゲシッと蹴り倒して、居住まいを正して「……大神帯刀さんにお世話になっている冬郷サクノと申します」
士朗:「チームを組んでる」と帯刀。「はあ?」って顔をするほかの一同だけど、お母さんだけがまあ納得……頷くしかないっていう感じ。
士朗:「男と女ってなんだ?」
GM: 「男と女っていうのは」っていう風にこう……。
サクノ:(さえぎるように)「そのまんまの意味でしょ。性別を見ればわかるでしょ。そんなこともわかんないの?」
士朗:「いや、それはわかるけど」
GM: 「それ以上でも以下でもない。おまえが想像している事はなにもないからな」
士朗:いや、そこ想像しないから!
サクノ:壁に叩きつけよう。ベチーン。
士朗:「父さんはいつも何を言っているのかよくわからない」
GM: 「父さんの年になればおまえにもわかるさ」
士朗:この頃は『ボク』かな?「ボクが父さんの年? へ〜」とか言って。
GM: 「あっという間だ」話をしてると、そうだね。
士朗:「そうなの? 母さん」
GM: 母さんは「知りません!」と言うね。
一同:(笑)
サクノ:そりゃそうだ。
GM: 家族の話は……生まれてくる赤ちゃんの名前を決めるなんて話をしてるんだね。夏樹ちゃんが「赤ちゃんの名前、私も考えていい?」って尋ねるが、帯刀は「ダメだ」と言うね。
士朗:じゃあ、ここで夏樹さんを庇おう。「なんでだよ〜?」
GM: 「おまえだ。おまえのせいだ」
士朗:「夏樹姉ちゃんが折角考えてくれ……な? なにがボクのせいなんだよ?」
GM: 「よく聞け。おまえの名前を士朗という風に決めてしまった時、俺はすごく後悔した。犬の名前みたいだってな」
一同:(笑)
士朗:「どこがだよ〜! 父さんの変な名前よりマシだぁ!」
GM: 「いや、犬の名前みたいだ。俺が決めたんじゃあない。これを決めたのは夏目なんだ。夏目が、そういう名前が可愛いと言って決めた。だがな、俺は嫌だったんだ」
一同:(笑)
GM: 「だから次の子供は俺が決める」と言い、彼は聞いたこともないような発音で言葉を喋ると、唸り声を発するわけだね。「ガルルルル」と。夏目は「何語よ。日本名だからね」と言うと、彼は悩み始め……。
士朗:問題外だ!(笑)トンヌラレベルの名前つけようとしてんじゃないかよ!?
GM: 「5ぉ、4、3、2ぃ!」と突然叫んだ夏目さんは「はいダメ〜! 私が決めるわね」と言って「男の子なら×××。女の子なら○○○よ」帯刀の方は無表情で憮然とした雰囲気。唇を噛み、拳を握り締めて血管を浮かべる。
一同:爆笑!
士朗:「かあさん。九朗はやめてね。クロは」(笑)
GM: 「いい名前かも知れないけどさすがにお母さんもそこまでバカじゃないわ」
士朗:「やっぱりここは夏樹姉ちゃんに選んでもらうのが一番だよ。ね〜夏樹姉ちゃ〜ん」とか言って超懐いてる。
GM: そうだね。夏樹さんのほうに行くと夏樹さんは嬉しそうに「それじゃ名前は……」などと話をしてるけど、帯刀は……夏樹の方を睨んでるんだね。
カナタ:(笑)
士朗:で、まあそこでなんとなく、サクノが入りづらい幸せオーラを出してしまった。
GM: という状況になった。でもね、帯刀さんはサクノを紹介するつもりはあったし、手を握ってるんだね。
サクノ:んと?
GM: ほっとくと表に出そうだからね。
サクノ:ああ、出て行っちゃいそうだね。っていうかこれを常に見せ付けてるの?そうだね、じゃあずぅーっとこう、離そう離そうとしてるんだけど、がっちりガードされてるから「え? なんで?」みたいな感じでチラチラ、チラチラ見ながら。
士朗:おっしゃ! ここはちょっとあれですよ!当時はガキ大将っていうかリーダーだったから、そこらへんの直感力は子供でも鋭いだろうな。夏樹に懐きつつも……夏樹に懐きって笑えるな。知らない子が父親の手を必死に引いてるのをいい加減目に留めるかな。で、そうだな。なんて言おうかな。「サクノって言ったっけ?」
サクノ:「ん? うん」
士朗:「おまえはどう思う?」
サクノ:「へ?」
士朗:「だから名前だよ」
サクノ:「名前……」
士朗:「ボクの妹か弟の名前」
サクノ:「……って」
士朗:「夏樹姉ちゃんが考えた……」なんて名前にしようか。
GM: 夏樹姉ちゃんはずっと考え込んでる。大切なことだ。一気に緊張してる。
士朗:あそっか。「夏樹姉ちゃんが考えた、この二つの名前と、さっき父さんが言った★※♪〜とどっちがいいと思う?」
サクノ:そしたらそれに対して戸惑ってるんだけど、それはどっちにしたらいいかっていう戸惑いじゃなくて、なんで私にそんな話を振るのかっていう感じの戸惑いで、こうちょっと、シドロモドロってる感じ。
GM: 帯刀「よく考えて決めろよ。俺との関係が大切か」
サクノ:そしたらジロリとそっちを見て「ちゃんと名前としてわかる名前がいいと思うわ」って。
GM: 「……裏切り者」
士朗:「だよね〜?」とか言ってニッコリ笑う。「ホラ見ろよ〜。夏樹姉ちゃんが考えたのが一番だってこのお姉さんも言ってるぜ」
カナタ:「いや、言ってないだろう?」とか言ったりして。
GM: 怒り出すね。立ち上がって「コーヒーを買ってくる」
カナタ:(笑)
GM: 彼もやっぱり居心地悪いんだろうね。
サクノ:はあ。
士朗:「あれ? いじけちゃったかな」
サクノ:じゃ、そしたらそれに付いていこう。
【〜廊下にて〜】
暖かい日差し差し込む病院の通路。廊下の途中の休憩所。自販機を背景に二人の思い出が紡がれていた。
GM: 自販機とか並んでるコーナーだな。帯刀「不愉快な思いさせたか?」
サクノ:「ん〜っていうか、えっと、ホント帯刀さんって不器用よね」
GM: 彼も苦笑し「コーヒーでいいか? ミルクは入れる?」
サクノ:「うん♪」
GM: そうだね。自販機で飲み物を買ってくれる。君にそれを差し出し「パートナーだからおまえにも色々話をしておかなきゃならないと思っていたんだ」
サクノ:「うん」
GM: 「俺が初めて人狼になったのは12の頃だ」
サクノ:「うん……」
GM: 「その時、誤って両親を殺害した」
サクノ:あぁ……じゃあそこは「ん」って息を呑んだ感じで。
GM: 「はじめは血を恨んだ。」
サクノ:「……」
GM: 「俺は人狼化を抑えようと思っている。だから……このUGNに入った。」
サクノ:「うん」
GM: 「あの子も……息子も、いつかおんなじように血に目覚めていくことになるだろう」
サクノ:「うん……」
GM: 「あいつがおんなじような運命を背負わないように協力したいと思ってる。それが俺の理由だ」
サクノ:「……うん」
GM: 「パートナーなんだから話をしたいと思ってた。UGNのみんなには話してないが、おまえにだけは……俺の事を教えておこうと思ってな」
サクノ:「うん……わかった」
士朗:じゃそこでちょっと割り込ませてもらっていい?「あ、いたいた」とか言って、その自販機の前に。でそこでトトトッとサクノのそばまで走ってって、なあこれやるよとか言って飴玉を2、3個手渡す。
サクノ:「ん? いいの?」
士朗:「さっき味方してくれたお礼」とか言ってニパッと笑ってます。
GM: 「その敵の前でか」
一同:苦笑
士朗:「え?」(わかってない)
GM: 「その敵の前でか!」
士朗:ああ〜。敵だとは思ってないんです。(やっぱりわかってない)それで自分のポッケからまた同じ飴玉を取り出して、口の中に入れて「うまいぜ〜」とか言ってる。
サクノ:「ん」
GM: そのように二人が話をしている時、不意に帯刀の携帯から音がするんだね。帯刀は携帯を苦労して取り出し、どれが通話ボタンなのかな〜なんて調べながら。
サクノ:そしたら横からニョッと手が出て通話ボタンをパシッと押そう。
GM: ウィリアムズの声が響く。「帯刀くん、ちょっと出てこれるかね?」帯刀は「今か?」と言うが、サクノには「すまない」と目線を送り。
サクノ:うん。
GM: 表に出て行く。
サクノ:「……さ、私達は病室に戻りましょう」って感じで「お母さんに付いていてあげなきゃダメでしょ」士朗の手を握って引っ張っていこう。
士朗:「なあ、父さんまた仕事か?」
サクノ:「そうよ。大人は大変なんだから」
士朗:「そうか……次はいつ帰ってくるんだろうな」
サクノ:「……それはわからないわ。そういう仕事だもの。帯刀さんが帰ってこないとやっぱり寂しいのかしら?」
士朗:「べ……別に寂しくないよ。ボクは男だからね」
サクノ:「ふぅん」
士朗:「ボクは寂しくないけどさ、母さんが……寂しがるんだ」
【〜拉致〜】
GM: と病室に戻る。帯刀はずいぶん帰ってこないのである。1時間や2時間経っても帰ってこない。
サクノ:うん。
GM: おかしいなと思ってる時の事である。病院内の物音がすごく静かになるんだね。
士朗:うわ……。どうしようかな。子供らしく寝ちゃおうかな。
GM: 寝ちゃうか。
士朗:じゃあお母さんのベッドでスースースースー寝ちゃいましょう。
GM: 夏樹さんが「寝ちゃダメだよ」って言ってるところ、夏目さんが「まあいいかな」って顔をする。表の方ではサクノも見たことのある、UGNが任務で使う車が停まり始めてる。
士朗:(笑)
GM: で、黒服の男達が出てくる。
士朗:あらあら。
サクノ:じゃあ、窓際で一緒に見てるわけだ。
GM: 彼らはこちらの病室を真っ直ぐ目指して来る。表の方からいかつい連中が来るのを見て、夏目さんも顔色を悪くするのね。
サクノ:私はアレかな。ここで覚醒するの?
GM: いや、覚醒はもうしてる。相棒だからね。
サクノ:そしたらあれだな。背中辺りにゴツイ銃を。
士朗:ああ、あれだね。まだこの頃は一丁拳銃なんですよ。
GM: 「あなた達すぐにここから出るのよ!」と夏目が士朗を揺する。
士朗:「う〜ん……」
GM: 夏樹さんが君を抱え、表に出ようとするけど、男達が向かってくるのが見える。
士朗:あ、じゃあ夏樹さんにおんぶされていることにしよう。
GM: 夏樹さんの方はいけないと思い、ロッカーを開け、中を確認。物が入ってる。入れない。すぐさまベッド下に滑り込む。
士朗:ふんふん。
GM: ドアがバンと開き、入って来るのは何人かの黒服の男達と、左右で色の違う瞳の男。
カナタ:こんな昔からいたんだぁ。
士朗:プロトタイプじゃないんすか? おんなじ人なんですか。
GM: おんなじ人なんですね。で、丸眼鏡に口髭の博士がいるわけだ。
士朗:ああ〜。ミスター高田じゃないですか。
GM: 「帯刀君のご家族の方だね?我々はUGN。帯刀君の治療をしているものだ。彼の友達だよ。君のお腹の子供に関心がある」「出て行ってください! 人を呼びますよ!」と言おうとした瞬間、突然火花が走り、血飛沫が飛び散るんだね。くぐもった悲鳴。
士朗:うわ……。
GM: 「理解して欲しい。君には関心は無い。僕はね。無駄なこと、邪魔なものが無性に煩わしい。今も君に話をしているわけじゃないんだ。お腹の赤ちゃんに説明しているだけだ」夏目はどこかを撃たれたんだろう。君の方からは見えないけれど。彼女はシーツを垂らして、ベッドの下を隠そうとした。その動きがナースコールでも押そうとしたように見えたのだろう。物凄い焼け焦げた匂い。何かがボトリと落ちるんだね
士朗:うお〜。
サクノ:そしたらあれだな。ここ口挟んでもいいシーン?
GM: そうだね。
サクノ:いきなり問答無用で撃つとは思ってなかったが、こっちも反射的に背中の銃をシャカッと抜く! もちろん、外にお出かけだからサイレンサー付!
GM: (笑)
サクノ:パスパスパスッて感じで向こうの人影に撃つわけだ。
GM: うん。
サクノ:黒服一体ぐらいは倒したいんだけど。
GM: そうだね。
士朗:高田の股間、撃ちぬくってどう?
GM: こうすればいい。高田は何かの理由で膝を壊したんだよ。
サクノ:ああ。じゃあ、そん時に高田の膝の両方を。
GM: タタタンと。
士朗:「あああ痛い〜」
GM: 高田は「おお〜!」と呻き、思わず床に手を付き、でも幸運にもシーツが垂れていたんで士朗と夏樹達には気付かず。ただ、その眼鏡の向こう側が一瞬見えるわけだ。
士朗:ああ〜なるほど。じゃあボクどうしようか。夏樹さんに手で口を押さえつけられてるところで。
GM: 夏樹さんは恐るべき意志の強い人で、自分の口の中に自分の手を噛み締めて、声を出さず、君の口も押さえてる。
サクノ:で、そういう風に撃った後に自分の衣服を一部裂いて、吹き飛んだ腕を。
GM: ああ、夏目さんの傷の手当てだね。
サクノ:巻いて、ギュッとやるんだけど、そんなことをしている間にドガッと。
GM: そう。頭を押さえられる。
サクノ:って無力化されてしまう私。
士朗:ああ、さすがエキストラ(笑)。
GM: お母さんの方は抵抗空しく、なにか光がピーピー飛んだ後に、動かなくなり、そのまま連れていかれる。
士朗:うわ〜。
サクノ:その時に私も連れて行かれるわけだ。
GM: そう。連れて行かれる。「彼女はどうしましょう?」「なぜ私に対してこのような行為をしたのかそれ『だけ』がわからない。しかし、彼女はジャームじゃない。話せばわかる子だ」
一同:(笑)
士朗:わかっちゃってるけどさぁ。で、夏樹さんは苦虫を噛み潰したように……。
GM: そうだね。
士朗:涙を流しながら必死に士朗の口を抑える……おぉ〜?
GM: こりゃ『トラウマ』だね。
士朗:これが俺の……。
カナタ:トラウマどころじゃねえ!?
士朗:『あの日のことはよく覚えてない……』
サクノ:いきなりナレーションで引き継いでどうすんだよ!?
【〜UGN〜】
GM: というわけで、その後のことである。サクノは特殊な部屋に閉じ込められてしまう。あれだけの行為をしたからね。
士朗:真白な部屋に。
サクノ:じゃあ拘束具を付けられてこういう風に。
GM: などということになる。この事件ではあまり君の事は優先されないので、しばらく放っておかれたのだが……その時、建物の中で凄まじい喧騒が響く。なにかが起こっているのだろう。
サクノ:ほう。
GM: 暫くすると、ドアを易々と蹴破り、帯刀が姿を見せる。この時、半分獣人になってる。狼男みたいな姿だ。サクノの方をチラリと見る。手に刀を持っているから理性はあるようだ。
サクノ:ふん……。
GM: 「サクノ」と声をかける。とその姿は一瞬で人の姿に立ち返る。
サクノ:ギャグボール噛まされてるから言葉出せないわけだ。「あうあうあう」
士朗:……ギャグボールなんだ。
一同:(笑)
士朗:なんでそんなSM道具みたいなものを。普通に猿轡でいいじゃん。
サクノ:じゃあ猿轡で。
GM: 片手にはグシャグシャになったウィリアムズを持ってるんだね。
カナタ:うわぁぉ。
サクノ:おお〜。
士朗:ああ! もう死んだ!?(笑)
GM: そう。すでにグシャグシャになっており、上半身が僅かに残っている。それを帯刀はムンズと掴んだままだ。
士朗:重要キャラだと思ってたのに。さっきいなかったよね?
GM: 事情を聞くんだね。「なにがあった?」
サクノ:喋れるようになったら……とりあえず状況をそのまんま話します!あの、UGNの博士がやってきて問答無用でこう……身柄を確保して行ったと。
GM: それを聞くと、帯刀は「すぐに妻を探し出そう」と君の拘束を外し、痣を軽く摩る。一歩前に出た後、一瞬君を振り返る。
サクノ:うん。
GM: 「お前は……どうする?」という意思表示だね。ことと次第によってはUGNに居辛くなるからね。
サクノ:うん。
GM: 来る?
サクノ:そしたら……そうだな。今丸腰だよね。
GM: 丸腰だね。銃を回収してからでもいいけどな。……回収してる暇無いだろうな。このタイミングは。
サクノ:どうしようかな? 結局、帯刀とは決別するわけじゃん。どういう風に別れるかな?
士朗:今のままだとちょっとね。帯刀と。
GM: 別れられないかもしれない。
士朗:別れられないね。こっち結構、深く絡んじゃったから。
サクノ:う〜ん。
士朗:俺もちょっと懐いちゃったし。
GM: 懐いちゃったしね。
サクノ:そうするとじゃあなんだろう。帯刀はまだあれだっけ? 奥さんがどこに拉致されているかとかわかんないで探し回ってるんだよね? そしたら……。
士朗:あ、その前に子供達の無事を聞かない?
GM: 聞くだろうね。「あの子達はどうした?」
サクノ:「それについてはわからないとしか言いようがないわ」
士朗:ベッドの下に隠れてたのは見てた筈だから。
サクノ:「それが発見されていない限り大丈夫だと思う。まだ居場所を掴んでいるというわけじゃないなら、一緒に行動していては時間のロスだわ。二手に分かれて探しましょう」
士朗:ああ、うまい。
GM: そうだね。
サクノ:「連絡場所を云々」みたいなことを言って別々に行動するというわけで。
GM: というわけで帯刀とこの時別れるんだね。彼は言うわけだ。「士朗を頼むぞ」
サクノ:「うん」
GM: と言って別れた後に、その日、そのUGN支部は壊滅する。
カナタ:壊滅ですか。
GM: 帯刀が何でそんなことをしたのかも、ちょっとわかってる。ホルマリンに漬かっている彼女を見つけちゃったんだね。
士朗:ああ〜。
GM: 原型はわからなかった。でもその時、高田所長はこう言ったんだ。「終わってしまったことだ。運ぶ途中で適切なサイズに切除した。残り物もサンプルとして保管しているが……それが何か?」と言って、それが怒らせたらしい。
士朗:そりゃ普通怒るわ。そこでキレない奴は人間じゃねぇ。
残酷な光景だった。
人間が残酷だと言うなら、これがその証明なのだろう。
帯刀は叫ばなかった。
ただ表情が消えていた。
これは決別なのだろうと分かる。
ホルマリンに浮かぶ彼女は人目では原型はわからなかったが、
それは先程話した唇で――
指輪が通されたままの薬指で――
多分一つ一つが帯刀の大切な思い出の全てで――
それがバラバラだった。
それから先はよく覚えていない。
帯刀の殺意が伝わり、施設の窓ガラスが割れ、割れ行くガラスと一緒に全ての職員が引き裂かれ、舞あげられた。
帯刀が高田を放り捨てていた。高田もバラバラだった。
雨が降っていた。
舞あげられた死体の血が雨となって降り注ぐ。
サクノは開けた場所で天を仰いでいた。建物が崩れている。
手足も折れているようだった。
この日。
施設の職員2000人の内1993人が死んだ。僅か10秒程の出来事だった。
士朗:生存者7人!
GM: 帯刀はこの時暴走。彼が壊し尽した後にどこに行ったのかわからない。施設に残ってたとすると、サクノは骨折してるね。止めようとしたかどうかわからないが、触れてしまって相当ヒドイ怪我を負った。かろうじて生き残ったと言ってもこんな感じね。
士朗:で、記憶が吹っ飛んでるんだよね、そこらへん。
サクノ:そしたらその瓦礫の中から掘り出されたことにしてほしい。
士朗:あ〜なるほど。
サクノ:そして一部の記憶を失っていた。
GM: なぜ、高田主任がこの状況で生き残ったのかはわからない。
カナタ:よく生き残ったね!? 一番殺されそうだよね?
GM: というのが過去だ。
サクノ:じゃあ、この『記憶の中の誰か』というのはやっぱりベナンダンテ……帯刀。じゃあちょっとこれまとめちゃいますね。そうするとポジティブ感情はやっぱり『懐旧』だな。そしたらネガティブは『劣等感』じゃなくて『隔意』になるのかな。
GM: なんか、埋められないな。
サクノ:埋められないなにかができてしまったんだ。
GM: でも今は、帯刀の研究してるわけだ。
サクノ:う〜ん。結局、だからやってるのがその、どういう研究なんだっけ?
GM: 『オーヴァードを人に戻す』なんだよ。
サクノ:そうすると……結局。
GM: やってることはおんなじなのかも知れないけどね。でも、帯刀の理由は『子供を助けたい』だからね。
サクノ:子供? ああ、子供。
GM: そう。
サクノ:じゃあ、そうだな。よし、こういう『隔意』にしよう。『帯刀』を助けたいんだ、私は。
GM: う〜ん。
カナタ:業深き女よ。
サクノ:自分自身じゃなくって……帯刀さんは誰かのために頑張って傷付いてるみたいだけど、私はその『あなた』を助けたいから、頑張ってるんですよ〜……みたいな。
Copyright(C)ゴスペラードTRPG研究班 (c) 2018.