Middle phase・2

           

【人狼咆哮】

帯刀がいた。
新月の帯刀にはもはや力はない。人間と同じはず。
その帯刀の刃が、オーバードを切り裂き、銃弾を刀で弾く、既に力量は伝説の剣豪の域まで至っている。


GM: というか夏樹さんとほぼ互角なんだね。


疲労は目に見えてとれる。
地下の研究室で帯刀が探すものがあった。
あの日失われたはずの妻の姿。娘のカガリが生きているなら……という淡い期待。


士朗:うわ〜。かわいそうだねぇ。

サクノ:見つけた瞬間に……。

カナタ:匂いはわからないんだよな?

GM: わからないねぇ。はい、というわけで。


帯刀が地下におり目にしたのは、彼にとって地獄の景色だった。
地下にはバラバラになった妻の臓器だけがあった。
遺伝子情報だけで、カガリを……カガリのコピーを産み続けていた。
カガリのコピーはカガリに至れず破棄され続けていた。


士朗:産み続けてる?

カナタ:ぅわぁ〜……。

GM: これがクローンなんだね。帯刀は声にならない悲鳴を上げた。絶叫は喉を裂いた。地獄の光景だった。

士朗:う〜ん。


唇を噛み締める牙、血涙を流す苦悶の表情は人であるはずなのにまるで悪鬼のようだった。
今、帯刀は人への憎しみを剥き出しにしていた。


カナタ:なんとか繋ぎ止めたくて手を置くけど……声も出せないんだ。


背後から、足音が聞こえる。追い付いたウイリアムズである。
「人が悪であるというなら、その通りだろう。我々はやはり悪なのだ。
しかし、これが人類を救う未来になる。私と君の因縁もこれで最後になると思うと少々名残惜しいがな」


士朗:うぇ〜! ここはウィリアムズか。


さらに彼の後ろからあらわれる小柄な影が8つ。
カガリに良く似た姿。無表情の冷たい瞳。カガリのクローンである。
「所長いわく失敗作だが、お前を倒すぐらいは役に立つだろう。」

カナタ:これは……キツイわ。

GM: はい、中の警備用システムが一斉にそっちに銃口を向けるんだね。

カナタ:ここは数が多いのか。

GM: 「おまえがそこまで機械を扱えるとはな」という風に唇を噛んだ帯刀だが、ウィリアムズは胸元を僅かに開く。脳が埋まってるんだね。




士朗:え、胸に?

GM: シンジの脳が。

カナタ:間に合わなかったか……。

士朗:うわ〜確かにシンジ、機械使いだった。


「帯刀君。私は君と戦うためにこの体を得た。今の私なら君を抑止できると自負している。もっともそんな予定ではなかったがな」


GM: 帯刀、絶叫するんだね。「貴様は血の一滴までもが借り物だろうがぁ」と刀を抜く。

カナタ:ふ……ぅ!


帯刀の様子がおかしい。口からは牙が剥き出しになり、カギ爪が刃のようにのび、体一回り大きくなる。人狼化である。
ウイリアムズは驚愕する。「そんな!? バカな! 新月だというのに、人狼化だと!」

「貴様等は俺に悪鬼になれと望むのか!
確かに俺は悪鬼羅刹よ。妻も子も手にかけなくてはならん俺は畜生にも劣る化け物だ」


GM: というわけで、君たちのルートのボス帯刀この時に一気に駆けるんだね。


獣人になるのだ彼が。新月にもかかわらず。虐殺である。
壊す! 壊す! 壊す! 殺す! 殺す! 殺す!
もはやその叫びは止まらない。


カナタ:ぅわ……。

士朗:あ、もう暴走してるんだ。


ウイリアムズ。顔色は青ざめ、その有り様を眺めている。


GM: というわけで、カナタのラスボス、ベナンダンテ。

士朗:うお〜? PCごとにラスボス違うのか。

GM: だから、ここでやると帯刀がジャーム化していなくなって終わりになっちゃうかも知れなかったんだよ。

士朗:え、ひょっとして……。

GM: ラスボスってイメージじゃなかったんだよね。ラスボス高田主任かも知れない。カガリ……高田主任。

士朗:あ、みんなここで違うの?

カナタ:これは……。

GM: 帯刀に一撃でも当てられればいいけど、帯刀は物凄く強いです。

カナタ:一撃か。

GM: かすることができなければダメです。

士朗:あ〜。





1ラウンド

GM: 帯刀、カガリのパワーアップ版なんです。まずセットアップで《フルパワーアタック》《ヴァイタルアップ》を使うよ。侵食値が700を超えてHPが300上がり。

士朗:げ〜。

カナタ:300?

GM: そうだね。だからHPは800を超えた。

士朗:減らせねぇよそれ。


GM: 襲い掛かってくるよ。《加速する刻》でイニシアティブに攻撃。マイナーアクションで《完全獣化》《究極獣化》《破壊の爪》で肉体を形成。《マシラの如く》《アタックボーナス》《獅子奮迅》《一閃》《獣の力》《神速の鼓動》もう、いきなり10なんで1Dで放っても……(コロコロ)命中48の全体攻撃。

カナタ:48!

GM: カナタを狙ったわけじゃない。君は巻き込まれただけ。


もはや何が起こっているかわからない。死の旋風である。
姿すら見えず、ただ生き物が血の雨へと変貌していく
嵐の空間が広がっている。
GM: ダメージは190点。ウィリアムズだけがガード。《電磁障壁》《ショックアブソープ》《ピンポイントガード》で100点止めて、貫通して、…なんとか絶命しないでいる。という具合。


カガリ達を紙のように引き裂き
ウイリアムズを吹き飛ばし
胎児の我が子を握り潰す。
妻を再び殺す有り様は、まさに地獄の鬼に等しい有り様であった。
流され続ける血涙。


カナタ:(コロコロ)……とりあえず《リザレクト》これで100%を越え……。これシンジって死んじゃってる状態なのかな?

GM: ああ、実はね。シンジのロイスが残っているので、シンジのこの状態は生きてるとみなすんだね。

士朗:えぇ〜!

サクノ:おぉ〜。

GM: 言い換えてみるとシンジが助かる可能性は限りなく低い。でも、これを死んでるといわないこともできるんだ。

カナタ:……なるほど。

GM: 希望は残ってる。それがシンジのロイスの意味だ。

カナタ:タイタスを使うべきか。

サクノ:タイタスにした瞬間に死ぬんだよ。「ぎゃああああ!」


GM: 次は……ウィリアムズが帯刀に果敢に挑むね。マイナーアクションでシンジの《ポルターガイスト》今回は警備システムを武器として扱う。ダメージがあがる。《イオノクラフト》で足からジェットを出して飛び。 フライングジェントルマン状態になる。で、メジャーアクションで《マルチウェポン》《ヴァリアブルウェポン》両手の指からチェーンガンを撃ちます。

カナタ:……ジオング。

GM: 判定は省略。彼の目標値ではあたらない。帯刀はカウンターで蹴り上げウィリアムズを天井に叩きつける。


カナタの目には『ウィリアムズが消えた』と思った瞬間
天井がクレーターのように凹み衝撃が広がって全てのパネルが割れる。
その中央のウィリアムズは血を吐いて崩れ落ちる。


サクノ:「……なんだこれは」

士朗:(笑)あっさりエキストラにされた!

GM: データあるんだけど、ダイスを振る意味の無い実力差なんだ。帯刀がイニシアティブフェイズにまた攻撃する。《加速する時U》なんだね。命中値もう簡単に言っちゃうよ?(コロコロ)クリティカルするんだけどさ。

カナタ:(笑)

GM: (コロコロ)またクリィティカルしてるんだけどさ。

士朗:強いんだけど!

GM: 命中は61。

士朗:えぇ〜!? 絶対避けられない。

カナタ: 《リザレクト》はもうできない。せっかく取ったから回避をしてみる。(コロコロ)ん〜微妙。

GM: 当たった?

カナタ:当たりましたよ。

GM: このままじゃロイス全部刈り取られてバッドエンドだよ。君が死んだ時PC1の出番だからね。

士朗:この状態の親父と……。

カナタ:まずい……これ実際は一瞬しかタイミングが無い。一回を外したら、次の猛攻で、全部のロイスが奪われちゃう。

GM: 「できるはずがない」とウィリアムズが言う。「私が人生を賭けても彼のそばにいる事もできなかったのだから」

カナタ:私は……今あんたの言葉を完全にシャットダウンしウィリアムズのロイスを取り、タイタスに変える!

GM: 「話を完全に無視したな」

一同:(笑)

士朗:こいつどこらへんまでがカッコいいのかよくわからん。

カナタ:……こいつはね、やれる事はやってるよ。UGNらしいカッコよさだね。

GM: 結構悪い事してるけどね。

カナタ:悪いし、ちょっともう許せない人なんだけどね。

士朗:だってお腹に脳みそだもんね。

GM: カルマの塊みたいな人だけど、でも善良なカルマの塊。多分こいつはジャームになりそうな気がするよ。

士朗:だね。真面目すぎるんでしょ? ジャームになる。義理堅すぎる。


カナタ:でも……今はそんなことどうでもいい。みゆきのタイタスを切り、クリティカルを1下げる。ここが私の帰る場所みたいだ!(コロコロ)1回は出た。(コロコロ)……お! これで止まるのか!

GM: 回避は32。避けたね。

カナタ:……まずい。ロイスを切ってまでして挑んだのに

GM: ウィリアムズ「見ろ……あれが人狼だ。もう止まらない。誰も止めることはできない。」「私は殺されるべき男だ……だがお前達は逃げろ。」

カナタ:「……聞く耳持たないね!」


2ラウンド

GM: やはりセットアップは《フルパワーアタック》でダメージを上げ、イニシアティブで《加速する刻》で40と言って攻撃だよ?


『ただそこに存在しているだけの旋風は、ただそこにいるだけで否応無く全てを殺すのだ。』


カナタ:40だね?

士朗: いや〜わかんねぇよこれはGM。そもそも生き残れるかどうかが。今、カナタがヤバイ。

GM: わかんないね〜。カナタが一気にやばくなったね。

士朗:相当ヤバイ気がする。まさかラスボスと一騎打ちになるとは思いもよらなかったよ。パーティ戦を想定してたから。

カナタ:(コロコロ)やった! 回避は44!

GM: 避けた。

サクノ:……避けるの?

士朗:えぇ〜!?


GM: 君の番だ。

カナタ:はっ!(コロコロ)結構回らないなぁ。40!

GM: 帯刀の回避は41!

カナタ:「広い世界を見て来いって言われたけど……あたしには今はここしか見えない!」悪いけどサクノさんのロイスを切り、達成値を1D上げる!

GM: 当たったね。

カナタ:「帯刀ぃ!」




GM: しがみつき、体が砕け散るかと思った。


帯刀は吠え声を上げた
遠吠えのように天に吠え、
姿は人へと戻る。
膝を折り地に手をつく、床を涙が濡らす。


カナタ:ふぅぅぅ。

GM: ウイリアムズは「バカな……」と呟く。

士朗:一撃!?

GM: いや、人に戻すだけなんだよ。触れられない、という相手なんだよ。

士朗:あ、そうなんだ。だからあんなに回避が高かったのか。

GM: 高い。触れられない相手で、ただロイスを切られ続けるという。

士朗:ある意味適任だったかも知れないね。カナタだったのは。

GM: まあ、HPダメージじゃダメだからね。


建物の崩壊が始まる。次々と崩れる天井。


GM: 帯刀は……この場から姿を消そうとしてる。

カナタ:「あいつには会っていかないの?」

GM: 「士朗か」

カナタ:「おまえの息子。帰りを待ってるんじゃないの?」

GM: その話を聞くと「士朗にはこの光景は見せられない」

カナタ:「この光景は……あぁ」

GM: 妻とカガリを殺しまくってる自分の姿とそして今まさにもう一度死んでしまった……彼の妻の。「もしあいつが来るなら『ここには来るな』と。もう一度……エンディングフェイズに会いに行くと伝えてくれ」

士朗:メタなんですけど(笑)。コンコンコンコンって上から足音が聞こえてくる。それに匂いでわかるだろう。

カナタ:「会いに来てくれるんだったら……それでもいいけど」

GM: 「会いに行く。必ず」髪掻き揚げておでこを付けるよ。

カナタ:「必ず……」


GM: 「かっこいいセリフをまだ決めてないんだ。どうやって再会しようかって。もう少しだけ時間を稼いでくれ」

カナタ:「ふふっ……」(苦笑)

GM: 「こいつを灰にするまでな」

サクノ:今度こそ時間を稼げ!

カナタ:今度こそ?(笑)ふぅ〜……。


士朗:ウィリアムズはどうした?

GM: ま、彼の方は殺されても仕方がないけどね。

カナタ:というか、この脳みそをどうにかしたい。

GM: 帯刀は一応彼を担いでくれるんだね。「後で直す方法を考えよう。それは学者にでも任せればいい」ウィリアムズは「殺せ」とか言ってるんだね。すると帯刀「いや、おまえには何の恨みもない」

カナタ:帯刀……。

士朗:あ〜「殺せ」って言うのにね。


GM: はい、というわけで下から上がってくるカナタの姿だね。

士朗:じゃあ、そこで「おまえは!? カナタ?」

カナタ:「士朗……来たんだね」

士朗:「地下に父さんは?」

カナタ:「いるよ……でもダメ。もう一度……戻ってくるって……」

士朗:「無事なんだ?」

カナタ:「……無事だよ」

士朗:「じゃあ急いでここを脱出しないと」と地下に行こうとする。押しのけて。

カナタ:「……待って!」

士朗:「なんだよぉ?」

カナタ:「ちょっとだけ待ってあげて……」

士朗:「なにを待つって言うんだ」

カナタ:「……必ず戻ってくるって約束したから」

士朗:「約束って……そんなの! こんな場所でぐずぐずしてられっかよ!」

カナタ:「そうだよね。わかってる。けど……(長い沈黙)……ごめん……今だけお願い」

士朗:じゃあ、そこまでされると、じゃあこっちも……う〜ん。じゃあカナタの頭にちょっと手を。「わかった。おまえが親父とどんな約束を交わしたのか知らねぇ。でも、それが親父の意志であり、おまえの願いだって言うんなら……俺はここで親父には会わねぇ」

カナタ:「ぅぅ……」

士朗:「もう一度誓ってくれ。親父は本当に無事なんだな」

カナタ:「うん。……無事だよ」

士朗:「今はその言葉を信じる。親父にはまだ、言ってやらなきゃならない事が山のようにあるからな」

カナタ:「帯刀も……そう言ってたよ」(苦笑)

士朗:「だったらいいや。この10年間しぶとく生きてたんだ。親父のしぶとさだったらいやというほどわかるさ。じゃあ、俺の向かうべきはこっちじゃない」って今度は上の階段をバッと見よう。

カナタ:「どこへ!?」

士朗:「これから、カガリとサクノさんを追う」ああ、そうだな。FHの事知らないんだよね。

カナタ:うん。

士朗:「サクノさんは俺を助けてくれた。それにカガリは俺の大切な妹だ。あの二人を連れて、このUGNビルを脱出する」

カナタ:「そうか……あいつ、おまえの妹なんだ」

士朗:「ああ、なんとなく似てるだろ?」

カナタ:「……そうだな」

士朗:「おまえもあの夜みたいに、力を貸してくれないか?」

カナタ:「わかった」

士朗:「頼りにしてるぜ」「じゃあ、一気に行くぜ!」って言って「掴まってろ!」


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