Middle phase・2

           

【サクノ〜孤狼〜】

GM: というわけでサクノさん。


職員の半ばが帰宅した研究所。
夜間勤務の職員と入れ替わる時間帯である。
今や一つの部署の主任研究員を勤めるまでになったサクノが一人研究所の入り口にいた。残務を処理すれば今日の仕事は終わりだ。


GM: だからこそカナタとかを置いておけるというのかな。

サクノ:うん。じゃあまたシーンの展開に入る前に情報収集を。

GM: そだね。

サクノ:情報収集はさっき言ったようにベナンダンテプロジェクトについてかな?

士朗:……夏樹さぁん。やってくれるぜ。

GM: ベナンダンテプロジェクトね。

サクノ:同じように《生き字引》を使って判定します。(コロコロ)31……だね。

GM: 凄まじい……。


レネゲイドウイルスのコントロールを目的として、研究されたプロジェクト。月齢で力が変わる人狼の研究だが、“他者のレネゲイドウイルスをコントロールできる”帯刀の力の再現がきっかけである。


GM: 君がテーマにしてた事だ。元々君はこっちの主任だから、詳しい事も結構わかるはずだ。さっきカガリのことが異様によくわかったのは目がよかったからであって、基本的にはあっちは結構シークレットな情報。 レネゲイドウイルスのコントロールを目的として、研究されたプロジェクト。結構成功してるよな。


@研究の結果。
帯刀が人狼の中でも最古でありながら、あきらかに違う生態系へと変異したものであることがわかり、再現は不可能だとわかる。
しかし、その因子は血族に継がれる。


サクノ:ほう。

GM: 要するに普通のオーヴァードをこういう風にするのはできないけど、一族ならできるみたいな。

士朗:あ、だからカガリを。じゃこっちにも可能性がある……。

GM: そうだね。


A帯刀=ベナダンティ・オリジンを失った後はベナダンティに引き継がれる。
月齢に関係ないレネゲイドコントロールを成功するが、周囲のレネゲイドを吸収する効果のため、母体は著しく疲弊。
サンプル研究は不可能になる。


GM: 帯刀は体調のいいほんの僅かな期間にしか使えないらしいんだ。

士朗:ああ、さっきやった。

GM: あの、戻すみたいな奴は。で、カガリはかなりのところまで成功しているみたい。

士朗:ああ。

GM: しかも自分もその技を使いながらコントロール上、マイナスの修正が無いらしいのね。

士朗:あはぁ。でも人には使えないよね? それだったらサクノはずっとその影響を受けてるはずだから。

GM: あの。それを普段までやってしまうと彼女、もたないみたいだ。

士朗:ああ、なるほど。

GM: 要するにもうマックス。

士朗:自分のだけで精一杯なんだね?

GM: そう。そして次に……この最終段階が一つあるんだね。


Bベナダンティプロジェクトの最終段階は、ベナダンティ因子のクローンを散布して周囲のレネゲイドウイルスを低下させるというもの。
レネゲイドクリーナーと仮名。
クリーナーはジャーム化する可能性があるために、ジャーム化したクローンの処理が課題。
対策は自殺遺伝子を強めて、残余寿命を短くすること。
→遺棄が決定したベナダンティで試験中。
自殺遺伝子を強めて、いかに早く自然死するかを研究中。


士朗:カガリみたいなのを作るって事?

GM: いや、ホントにもう微小生命体みたいなものにしてしまって、それを空中に散布したらもしかしたら……。

士朗:ウイルスを沈静化させる……!

GM: ウイルス浄化ができるんじゃないの?

士朗:あ、じゃあ目的部分は高田も狂ってるわけじゃ……あ〜狂ってるけど、的は外してないんだ。


GM: しかし、この研究。やはり高田だけあって、ここには一つの大きな問題があった。

サクノ:ほう。

GM: すぐにジャームになるんだ。

サクノ:ああ……。

GM: もし空中に散布して全部ジャームになったらどうすんの? みたいな。

士朗:あ〜なるほどね。

サクノ:ああ〜。

GM: で、そこで考えたのがその生物ってのが始めから必要な時に生きて、必要な時に死ぬように設定できたらどう? と。

士朗:あ、寿命を作って。それで今カガリをジワジワ殺しながら実験してるわけか。

GM: 一応今サンプルで試してるんだね。それがカガリ。

士朗:ふんふんふんふん。

GM: で、どのくらい早く死ぬかなというのが考えられてはいた。でも、まさかそれがカガリの事だとは……2つの情報を合わせてみて始めてわかった。

サクノ:……なるほどね。

GM: で、やっぱりね。この実験は研究サンプルがすごく不足していて、研究は止まっちゃったんだね。

サクノ:そうだろうね。一人しかいないからね。

GM: そうそう。だから、ハッキリ言って士朗も絶対捕まえなきゃいけない人で。

サクノ:あ〜。

GM: 帯刀は言うまでもなく必要だ。全員こいつを使えば……できるんじゃないのみたいな。

士朗:ありがとうを。

GM: ありがとうを言いたくて。

サクノ:……ふん。


士朗:そうだね。確かにその目的部分はUGNだね。

GM: 目的部分はね。

士朗:手段はFHも真っ青な外道っぷりだけど(笑)。


GM: そうだね。というわけでそんな君に電話がかかってくるんだ。


携帯電話が鳴る。


サクノ:プルプルプル。

GM: ピリピリピリ。

サクノ:「はい」

GM: 「知っていたのか?」という声。

サクノ:「帯刀さん?」

GM: 「お前は知っていたのか。この町の人々が今も人体実験の材料にされているのを」

サクノ:「……」

GM: 「お前は……それに加担していたのか?」

サクノ:それには…………少し沈黙を挟んだ上で「……はい。そうでなければ主任なんていう立場には……」ふと気が付く。向かいのガラスに写る懐かしい影、帯刀の姿。


士朗:うわ〜! すぐそこにいる。


後ろに帯刀がいた携帯電話を下ろし、目を細める。
近づく帯刀、サクノの腕を取る。


GM: 「お前は知っていたはずじゃないのか!?その研究の残酷さを! そのお前がなんで研究に加担する。」

サクノ:「なんで研究に加担するか、ですか。それこそわかりきってることだと私は思いましたが」今度はジロリと強くそちらを睨む。

GM: うぅ〜ん。お互い睨み合う。


腕を掴みガラスに押し付ける。
睨む帯刀。向かい合う瞳、息がかかるほど近い。


GM: 「……お前は誰を救いたいんだ」

サクノ:「わからないんですか? 帯刀さん」

GM: 「オーヴァードか!? 人か!? かつてのお前自身をか?」

サクノ:「わからないんですか?」はっきり言う。「はっきり言わなければわからないなら言ってあげます。私が救いたかったのは貴方です帯刀さん」


GM: 彼、思わず目を見開き、手を離す。

サクノ:離した手を逆に掴んで。「あなたはいつも私を救ってくれた。そして私を救ってくれたように今まで多くのオーヴァードたちを救ってきたでしょう?それはこの失踪してる10年の間もそうだったはず」

カナタ:あ……。

GM: 「……」

サクノ:「だけどじゃあ貴方はどうなの?貴方はそうし続けて誰か人のためだけに磨耗して死んでいくんですか?そんな人生でいいんですか!?」

GM: 帯刀……息を呑む。言葉をつまらせる。

サクノ:「あなたはっ……息子の士朗君の事、ずいぶんと気に掛けてましたね。彼が生まれてからその生活が一変したというのを聞きました。」

GM: 「……ああ」

サクノ:「人を愛するという事を……奥さんも含めて人を愛するという事を知った貴方が自分をないがしろにしてる姿を……貴方を愛してる人がそれを見たら……どう思うと思います?」

GM: 彼は無言になってしまう。

サクノ:「……そんな実験だとわかっていながら私が手を染めていた理由が……貴方にはわかるんじゃないですか?」

GM: 「……」


サクノ:「自分の息子を守るために非道を行っている城島を容認していた貴方ならわかるんじゃないんですか!?」

GM: 彼は「……俺に、お前を裁く資格はないな」

サクノ:「裁く裁かないの問題じゃないんです!夏目さんも、私も……誰もが……望んだ事をする。それが…人として当然の事なんですUGNの人間の言える言葉じゃないですけどね」

士朗:UGNは悪の巣窟だよぉ!(笑)

GM: そうして10年の月日を経て、サクノの手が再び帯刀の指に触れる。抱き寄せる帯刀。「……多分 おまえの言うとおりだ」


傷ついた帯刀を支えるように寄り添うサクノ。
そうして帯刀も、いつかのあの時のように笑顔を見せてくれる。


GM: あの時の笑顔。ちょっぴり困ったようなばつの悪そうな笑顔。『自分達はチームだな』って思いを抱いて、今はそれ以上のね。お互いの感情を感じる、と

サクノ:「うん……」


GM: というわけで、束の間の蜜月というか、少し時間が空く。


帯刀さんが、傷だらけになって、
腕も失ってしまって、それでも変わらなくて……
そんなことがわかるわけだ。


サクノ:あ……。


GM: 着崩した服を整えながら彼の方は「……そうだ。少し聞きたいことがあるんだ」

サクノ:「……」

GM: 「カナタとシンジって奴を探してる」

サクノ:「……あぁ」(醒めた様子で)

士朗:(笑)

サクノ:「あの捕獲したFHのエージェントですか」

GM: 「ここにいるのか?」

サクノ:「カナタという少女は私のラボにいます。今、麻酔を使って眠らせてあります。……貴方と接触のあったオーヴァードという事で、影響について実験をするように所長から指示を受けています」で、シンジか。

GM: うん。

サクノ:「シンジという男性の方は、所長自身が実験すると言って確保されました」

GM: (沈黙と溜め息)「……そうか。じゃあ……カナタを解放してもらっても構わないか?」

サクノ:「……」

GM: 「無理なのはわかってる。俺はやらなきゃいけない事があってここまで来た。もちろん、シンジやカナタを助ける事もだが……あいつらの研究を容認する事はできない」

サクノ:「……」

GM: 彼、持ってきたバッグがあるんだね。バッグと長い包みが一つ。おそらく刀と何かしらの持ち物を所持している。

士朗:あ、新月だ。

GM: そう。そうなんだ。「今が新月じゃなかったらこんな物は必要なかったのだが」日本刀とTNT火薬なんだね。

士朗:え?

GM: 爆弾。


サクノ:じゃあ……どうしようかな。そうだ、そこで「帯刀さん。一ついい?」

GM: 「なんだ?」

サクノ:「これは貴方に伝えておかなければならない事だと思うの」そうだな……この部屋には多分ないかな。「貴方が救いに来たその二人を捕獲するミッション……」いや、これは普通に言おうか。「今この支部でエースとして動いているエージェント……少女の事ご存知ですか? カガリという名前の……」

GM: 「いや、知らないな」


サクノ:あれ? 名前は聞いてないんだ?

GM: カガリのこと、彼は知らないんだよね。

士朗:名前は? あの時、士朗が子供の時。

GM: 実はあの時帯刀さんは頭がいっぱいいっぱいで、みんなの会話なんて全然覚えてるわけもなく「クソがぁ!」とか思ってたはず。


一同:苦笑




士朗:なるほど。

サクノ:「……カガリって言う名前、これは夏樹さんが考えてた名前です」

GM: 「……カガリか」(長い沈黙)「あいつが無事なら……喜んだろうが」

サクノ:「無事……とは言えません」「けど、その子が今生きていると言ったらどうします?」

GM: 「……どこにいるんだ?」

サクノ:「ここに……」あぁどうしよう。一緒に鉢合わせたら絶対バトっちゃうよね。

GM: バトっちゃうね。

士朗:カガリの方がやばい。

サクノ:越えたいと思ってるからな……。

士朗:今新月だから。

GM: 勝てないよ。

士朗:カガリの方が圧倒すると。


サクノ:「ここにいます。実験体として。そして、その命はもうすぐ尽きる」

GM: 帯刀は唇を噛み(長い沈黙)「……うん」

サクノ:「私も……つい先ほど知った事実です」こう……唇の端っこを噛み締めるような感じだな。


GM: 二人が会話をしているところ、放送が入るんだね。

士朗:ピンポンパンポーン。

GM: 「サクノくん。カガリくん。所長だよ?」って感じで。

士朗:なんでそう爽やかなんだよ(笑)。


GM: 「君たちに最後のお仕事がある。すぐに来たまえ」

サクノ:……はい。じゃあ帯刀に一応その……カナタを軟禁してある場所を伝えて「ここに彼女がいます。お連れになるならご自由に。私は最後の仕事とやらがあるので、所長のところに行きます」

GM: あ、そうだやっとかなきゃいけなかったな。あれ減らせるのは減らせるんだ。

士朗:ああ、そうだそうだ。触られたから。

サクノ:お〜。ありがとうございます。

GM: 帯刀の体調は相当悪くなってきてるね。

士朗:やっぱり新月だ。

GM: 辛いみたい。

士朗:お父さんに触られたい。

GM: なんだそりゃ(笑)。


「いい子でお留守番しているのよ」そう言って、みゆきは出て行った。
でもほんとはもうわかってた
みゆきはかえってこないって
あたしはいいこじゃいられなかったし
にんげんですらなくなっていたんだから

「おまえは人間だ」
そう言ったあいつの顔が眼に浮かぶ。
あたしはまた、留守番できなかったんだ。


GM: というわけでカナタちゃんだ。冷や汗かいているけれど、あ、体が少し楽になった。これは、帯刀なんじゃないか。拘束されているのを……まあ手荒な物じゃないよ。殺すつもりはなかったんだろうしね。

サクノ:うん。

GM: 拘束具と目隠しを取り、君が息を荒くするところを頬に触れる。


カナタ:「……ぁ」

GM: 「よう。迎えに来たぞ」

カナタ:「……ぅぁ帯刀」なんて言ったらいいのか……。

GM: 「いいってことよ」ほどいてくれるね。

カナタ:「……シンジは」

GM: 「シンジは助けに行く。お前の力も借りる」

カナタ:「……うん」

GM: 「もしかしたら帰って来れないかも知れないけどな」

カナタ:「……ぇ」

GM: 「さっき放送で『最後の仕事』とか言っていたから奴らが仕事でここを外出するかも知れない。そしたら……一暴れしないとならないな。人間の俺と、そしておまえで」

カナタ:「人間の……」

GM: 「今日はだ」

サクノ:変身できないから。

GM: 「やるか?」

カナタ:「……うん!」


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