あらすじ・というか、話の流れ

貴族ドノヴァンのもとに現れる幽霊の調査を依頼されたPCは、それが幽霊による事件ではなく、ドノヴァンに恨みを持つ人々のおこした事件であることがわかります。
歌姫好きなドノヴァンが歌姫欲しさに没落させた落ちぶれ貴族ラヴォーグ家。その生き残りは、戦死したかと思われていた黒騎士・兄と愛人の子という情報欠落部分の妹。この二人がドノヴァンに復讐していたのです。
この二人とであった時PCはどう判断するのでしょう。
→ 悪人ですが、法で裁けないドノヴァン、何も生み出さない復讐に駆られる二人。どう結論するかがテーマです。

さてさて、蛮族大好きアンチヒューマン。あくまで上から目線のゲルニカ様は今回も上から上から。
今回は人里に下りて事件に首を突っ込むあり型迷惑ボランティアな係わり合いをします。
ゲルニカのいるトロル村出身のPCは若干導入長いですから。

登場人物

ドノヴァン

元々は金貸しをしている商人なのですが、貴族をゆすったり取立ての末没落させたりしています。ある意味凄い人間なのですが、その才能を見込まれて帝国では男爵の地位を手に入れています。男爵となった後は、帝国に逆らう貴族達を合法的に追い込む仕事をしています。あまりいい人では・・・というより、ぶっちゃけ最低の人間です。
彼はこの権力を乱用しています。歌姫に関心がある彼は、ラヴォーグ家の娘・エレノアの関心を持つと、家を取り潰しました。しかし、エレノアが従わないと、監禁し、最後は殺してしまいます。
しかし、その後、彼女そっくりの歌声が聞こえ、彼は幽霊として一同に依頼するのです。

エレオノール・ラヴォーグ

帝国軍人でザイアの騎士です。帝国の中では他国を制圧することには反対な人物ではありますが、戦場では殺すこと専門の黒騎士として名をはせています。現在の皇帝とは仲が悪く、還元したために死地に放り込まれてしまいます。
帰ってきてみると、ドノヴァンによって家を取り潰されており、怒り狂って復讐鬼となります。
妹のエレノアは大切にしていましたが、愛人の娘で妹にあたるエイムンはその経緯から嫌っています。
しかし、一族の苦難から二人は和解し、ともにドノヴァンに復讐します。

エレノア・ラヴォーグ

エレオノールの妹で歌姫と呼ばれる貴族の令嬢です。明朗快活な性格で明るく人々を照らす太陽と呼ばれるほどの人物です。庶民の間にも人気があります。美しい容姿と歌声が災いして、ドノヴァンの欲望の対象になり、家は取り潰され、売り払われた上に、監禁生活→餓死という目も当てられない結末を辿ります。

ミランダ

ラヴォーグ家の当主の愛人で、娘にエイムンをもうけました。当主の愛を受けましたが、息子のエレオノールとは仲が悪く、恨みを買って家を追い出されました。ラヴォーグ家の窮地には、残された娘エレノアを守ろうとしますが、結局エレノアは売り払われてしまいます。

エイムン

エイムン・ラヴォーグ

ミランダの娘。つまり愛人の子供です。エレノアとは二人一組でも曲を作るのはエイムンの仕事でした。下町のみすぼらしいバラックに母と二人で住んでいますが、聖歌隊では有名な人物です。
行方不明のエレノアを探しドノヴァンの館で歌を歌っています。つまり、幽霊事件の元凶です。
兄・エレオノールからは一方的に嫌われていましたが、この事件を経て和解します。

ゲルニカ

ゲルニカ

白銀の髪・白い肌、ミスリルメイル装着の上、愛馬はペガサス。
角を隠す気もなければ、世を忍ぶ気も無い、ナイトメアの冒険者ゲルニカは、蛮族集落「トロル村」で生活する学者です。
ライフォス・ティダン・キルヒアをはじめ結構いろいろな司祭達と、穢れ理論を論じる人物ですが、その蛮族好きぶりは異常と周囲を畏怖させます。
浮き世離れを通りこして最近は神がかり的になりつつあります。

ジョン

ジョン・ローランド

冒険者とも仲良く付き合える帝国の騎馬隊の指揮官です。
何かと天上人の帝国の士官達の中ではかなり庶民的な人で、休日は冒険者まがいのことをやっては世直しをしている人物です。
ラヴォーグ家とは交友があり、家の没落には心を痛めていたのですが、帰ってきたエレオノールが復讐鬼となっていたから、さあ大変。
使命感から、彼を捕えるか。それとも同情から見逃すか。悩み果てます。

プロローグ

冒険の途中のことです。
ゴブリン達と遭遇します。ゴブリン達は冒険者が来るなり、大挙して逃げ出しますが、一匹貧弱で痩せた禿げ頭のゴブリンが転び逃げ送れます。一同はそのゴブリンに追いつくと見下ろします。
そのゴブリンを見るなり、ある事件のことを思い出します。

トロルの集落のPCの導入

この導入はトロルの集落に澄んでいるPCが参加者であった時の導入です。ゲルニカのシナリオを今までやってきたPCならばトロルの集落に住んでいる場合があるでしょう。その時にお使いください。

場所の説明

場所はルキスラ帝国の郊外にある山林です。
ここは山岳地帯になっており、街道は通っているものの、山は以前険しく人間の生活範囲は制限されています。
ここには街道を通る宿場町が一つ、その先には蛮族に備えた砦があります。宿場町から山へと登ると、この地の蛮族を追い払ったという英雄の遺跡がありますが、残念ながらそこは現在蛮族に占領されています。
・ この山にはトロルの集落があり、大規模な数を誇っていますが、今のところトロルの指導者は人間への攻撃をする予定はないようです。

トロルの集落で生活しているPC。ここでの生活も随分と馴染んできました。
トロルの集落は崖に作られた砦のような作りをしており、周囲は丸太を組んだ3mばかりの塀で囲まれています。見張り塔は二つあります。砦内部の中央広場にはいくつかの建物があります。馬小屋や、倉庫などです。
崖の側面を登る通路を登るとコボルト達の段々畑へと出ます。現在は風車までが作られ、麦が作られています。
・ これらの文化的な生活はゲルニカという指導者がやっています。
・ この導入の人々はゲルニカについて知っていることでしょう。
→ 現在ゲルニカは「魔剣の英雄」の遺跡にすんでいます。遺跡は飛行騎馬を使えばすぐですし、またトロル達はさほど苦労せずその場所まで訪れますので、距離は気になりません。
ゲルニカにしても、時折帰ってきます。

今や自分には付き従うトロルも現れ、ボガードは指揮の高い兵士として役に立っています(逃げないのはたまにキズですが。)従者には怠け者で言うことを曲解してしか理解できないゴブリンがいます。
・ 時は昼間なのでトロル達は集落の中の洞窟で眠りについている時間です。この時間はボガード達が周囲を歩き回っているのですが、ボガードはとにかく闘争本能が強く、やたらめったら戦闘を挑んで事態を難解にする天才です。ある意味一番気が抜けない時間でもあります。

ゲルニカからの頼みごと

ゴブリン達が陽気に談笑している姿が見えます。ゴブリンを見るとゲルニカのところの従者です。
ゴブリンに訪ねるとゴブリンは用事を思い出します。
・ 「ゲルニカから相談した伊ことがあるので来てくれないか」という話です。
これを逃した場合、傷付いたボガード達が帰還してきます。ボガード達は「強敵と戦ったと自慢しています。」
ボガードの話によると大変強い人間の戦士と戦ったというのですが、その獲物はゲルニカに横取りされたといいます。
今騎士はゲルニカの神殿にいるそうです。

ボガードに尋ねなかった場合、思い出したゴブリン達が報告します。
どちらにせよこの時点でゲルニカからの連絡は入ります。

ゲルニカの神殿

ゲルニカの住んでいる英雄の遺跡はかつては蛮族を倒し、この地を切り開いたという「魔剣の騎士」の伝説の遺跡です。 大きな洞窟になっており、正面は開けたホール状のつくりになっています。ここは馬車はおろか騎竜なども入るほどのスペースです。(現在はゲルニカの騎獣である、ペガサスの姿があります。)
奥には大きなホールがあり、蛮族の住居後の洞窟と地下階へと続いています。
ゲルニカが住んでいるのは地下階です。地下には神殿となるホールともその奥に続く小さな部屋があります。小さな部屋を私室に使い、ホールは神殿としています。
また地下には地下水が流れる鍾乳洞などの場所もあります。

PCが訪れると一匹のボガードが迎え入れます。ボガードの中では理知的で物静かな印象を受ける彼の名はガガックといいます。ゲルニカとは度々関わってきたボガードで、現在もゲルニカの身辺を警護しています。ここには彼の仲間であるボガード5体の姿も在ります。
・ガガックはPCを神殿のゲルニカの元まで案内します。

銀髪に白い肌・角を隠さぬナイトメアのゲルニカは、ミスリルの鎧を着ては法衣を羽織っています。それはただのローブなのですが、彼女の白とあいまって法衣と見えるのです。
彼女の前には数人の冒険者と思われる人々がいます。
 冒険者達はこの環境に抵抗を覚えているのかおっかなびっくりです。

冒険者達はここには偶然訪れました。
彼らは駆け出し冒険者で、あまり経験を積んでいません。今回は貴族の依頼である事件を調べているというのです。
・ 冒険者はドノヴァンという貴族の下に現れる幽霊について調べています。
・ 彼らの話によると悪徳商人ドノヴァンはあこぎな金貸しで有名ですが、彼の館には時折深夜に幽霊が現れて歌を歌うということです。ドノヴァンは幽霊退治を依頼しました。
・ この遺跡の英雄は蛮族を撃退したという伝説があります。蛮族はアンデット達を率いる吸血鬼だったそうです。
ここの吸血鬼が歌を歌う女のアンデットを使うという噂を聞いてやってきたのです。
→ この事件は第4話にて解決していますので、完全な誤解です。
・ 冒険者達は犯人をここの蛮族の可能性もあると考えたようです。そこで調べにやってきました。

冒険者の話によると、
● 幽霊を目撃したものはいないが、歌声を館の住人は聞いている。
● 正確には幽霊を探しにいったドノヴァンの手下の騎士が5人いるらしいが、2人は行方不明。3人は殺されたらしい。
● 館の中には幽霊は現れないし、歌声も他の人を害さない。冒険者達はそれがどういうわけだろうと考えて、ここで何かがつかめるのではと考えています。
● ドノヴァンは大変な嫌われ者で。ドノヴァンの依頼というと、大抵は冒険者達も非協力的になってしまい、「お前達も手を引いたほうがいい」と逆に忠告されてしまうほどです。

話をしていれば気がつくかもしれませんが、幽霊かもしれませんが、幽霊ではないかもしれません。
@ 穢れを持つアンデットの類が守りの剣に守られた都市に出没するのはおかしなものです。もし出没するというのならば、よほどその場に束縛されているのでしょう。それならば、現れるといわれる場所を調べてみるべきです。
A ゲルニカもドノヴァンという貴族の噂ぐらいは知っています。あまりいい噂は聞きません。
★  セージ技能+知力ボーナス+2dで目標値12です。

→ドノヴァンは悪名高い貴族です。彼は元々は金貸しでしたが、貴族に対しての金貸しで手に入れたコネを使い、ついに男爵の地位を手に入れました。
・ 男爵となった後も彼は目上の者に対して賄賂を送り、弱みを見つけたら漬け込むというやり口で、男爵とは思えない権力を振るいます。今ではドノヴァンを法で裁いても、大体は釈放か軽い罪状しか問えないのが現実です。
当然ドノヴァンに恨みを持つものは多く、誰もが憎しみを抱いています。

これを考慮すれば、恨みを持つ人間の反抗という可能性が大きいことはわかります。
※ ただし、ドノヴァンでも恨みを持つ誰かの嫌がらせと考えるのが普通です。それが幽霊だとドノヴァンが騒ぐというのはおかしなことです。

もし、PCがアンデットによる犯行と考えている場合、ゲルニカは「その事件を調べてみてたほうがいいかも」と考え、またボランティアで事件に首を突っ込みます。
・ ちなみにこの冒険者達はモブのようなものなので、自発的な調査はあまりしません。

もしPCが人間の反抗であると告げた場合、冒険者達は納得して引き上げます。
普通よそ様の怨恨の事件には首を突っ込まないのがゲルニカの考えなのですが、彼女は何かひっかかったのか、その日の夜PCの元を訪ねて考えを述べます。
「確かにあの事件は人の手による事件のような気がする。」
「しかし、だ。ドノヴァンは地位も権力もある。普通に裁きを与えることはできないだろう。犯人が我欲で悪事を成し、法によって裁かれるものであるのならばそれはそれでいい。しかし、もし私怨から罪を犯すのなら、人の世の掟を破るもの。そして、もし法の手に委ねて裁かれぬことを知り、それを受け入れられねば、心にはわだかまりと穢れを生むだろう。」
「そうなると嘘が真になるやもしれん。残念し(死後も念がこの世に残ってしまうこと)、悪霊になるということもある。」

「ドノヴァンは罪にこそ問われないが、およそ善人とはいえぬ人物。欲も強く、周囲には波風たち、巻き込まれるものも少なくあるまい。そのような人物の周りには、何かと穢れが溜まるものよ。」

→ ゲルニカはやはりこの事件に対して調査を依頼するのです。
 ゲルニカも自分のやり方なりには調査をしてみるということですが、多分聞き込み調査のようなものは彼女はやらないでしょう。


導入

冒険者の店のルーサーは珍しく持ってこられた依頼に難色を示しています。
ルーサーはいかつい髭面をいじりながら、考え込んでいます。
依頼人はどこかの貴族の従者らしく、大変身なりのいい人物です。執事か何かでしょう。彼はルーサーに依頼を出して欲しいとせがんでいます。勿論ルーサーの立場からはそれを張り出すのが仕事なのでしょうが、それを渋るというのだから何か理由があるのでしょう。
・ 一同がルーサーに訪ねるというのなら、その従者は逆にPCの方に事情を説明し、どうにかこうにか依頼を取り付けようとしてきます。

貴族の従者より依頼。

・ 彼はまず礼儀正しく自分の身分を明かします。
・ 彼は貴族ドノヴァンの従者で、主人の依頼を受けてやってきました。
・ 報酬は一人1万ガメル。経費は支払います。
・ 依頼の内容は、ドノヴァンの館に時折現れる幽霊を退治して欲しいというのです。
幽霊は時折ドノヴァンの館の表に現れては歌を歌うのです。
ドノヴァンはそれが恐ろしくなって夜も眠れなくなりました。幽霊を退治しようと、配下の騎士達が向かったのですが、5人の騎士が行ってついに一人も帰ってきませんでした。ドノヴァンはその話を聞いていよいよ恐ろしくなったのです。

ルーサーより

「ドノヴァンは人間のくずだ。俺の店にきたら。たたき出してやろうと考えていたんだが、さすがの俺も困り果てた従者を放り出すのはいかがなものかと思ってな。」
・ ドノヴァンは悪名高い貴族です。彼は元々は金貸しでしたが、貴族に対しての金貸しで手に入れたコネを使い、ついに男爵の地位を手に入れました。
・ 男爵となった後も彼は目上の者に対して賄賂を送り、弱みを見つけたら漬け込むというやり口で、男爵とは思えない権力を振るいます。今ではドノヴァンを法で裁いても、大体は釈放か軽い罪状しか問えないのが現実です。
・ 当然ドノヴァンに恨みを持つものは多く、誰もが憎しみを抱いています。

ドノヴァンの館

ドノヴァンの館に行けば、詳しい情報が得られます。
ドノヴァンの館は、帝国の一角、周囲を庭に囲まれた豪邸で、3階だての建物には塔があり、ちょっとした城とも思える代物です。周囲の庭は庭園に森というつくりをしており、その財の多さが窺い知れます。
・ 一同がやってくると、館の従者は大いに喜び、ドノヴァンに紹介します。
→ 従者は一同を「魔物退治のプロフェッショナル」と紹介します。
ドノヴァンはでっぷりと太り禿げ上がった頭の男で、目つきは悪く、相手を値踏みするかのような嫌な視線を送ります。一目見て猜疑心の塊という印象を受けます。また、ドノヴァンは大変趣味が悪く、紫色のコートにタイツという服装で、男爵を演出していますが、見るからに気品など感じられません。
・ ドノヴァンは一同が来るとすぐに説明に入ります。本人は当然引き受けてもらえると考えているのです。
・ 毎晩ではないが時折深夜に怪しい歌声が聞こえてくる。あの歌は自分を呪う亡者の歌に間違いない。
・ 歌い手は女の声で、たいへん澄んだ声をしている。
・ 自分にはまったく心当たりは無い。
・ 薄気味が悪く、警護の騎士二人を派遣したが帰ってこなかった。二人は今も行方不明だ。
・ さらに3人の腕利きを派遣したが、いずれも帰ってこず、現場に衛視達と警備兵を送ったところ、3人が倒れていた。詳しいことは衛視に聞いたほうがいいだろう。

ドノヴァンの館の住人に話を聞いたところ
ドノヴァンの館の住人は何かわけありの住人が多いようです。

NPC新米冒険者達の動き

●トロル村のPCの新米冒険者とともに調査する導入を使っている場合
彼らはドノヴァンの館への聞き込みでは、ドノヴァンという人物が信用できるかを話し合っています。
この館でこれだけ話をすると、当然ドノヴァンの耳にも入るでしょう。あまりいいことにはならないでしょう。

従者の話

従者は大変弁舌が立ち、ドノヴァンの前で愛想笑いを絶やさないのですが、ドノヴァンの元を離れると、とたんに愛想が悪くなります。本人はドノヴァンに好意を寄せてはいないようです。

・ ドノヴァンについて
「ドノヴァン様。ご主人様を悪く言うのはどうかと思いますが、人間のクズですよ。転生のハイエナというか・・・そう弱い奴の匂いに敏感なんです。それこそ私など足元にも及びません(と失言に口元を隠す。)」
「ドノヴァン様は元々はかなり音楽は好きな方で、その音楽を独占したいという欲求をもたれていました。目をつけた歌姫などを手に入れるために随分と強引なやり口もしていました。」

・ 幽霊について
「ドノヴァン様は大騒ぎしていらっしゃいますが、館の住人は別に、なんとも思っていません。綺麗な歌声じゃないですか。それより還ってこなかった5人の騎士のほうが・・・気になります。だって衛視の話によると3人は少なくとも殺されたって言うじゃないですか。私まで巻き込まれちゃかないません。」

従者の設定
従者は詐欺師であり、ドリヴァンに取り入って財産を巻き上げようとした経緯があります。それをドノヴァンに見抜かれ、逆に従わされるようになりました。従者もドノヴァンを利用しているのですが、元々人に感謝する性格ではないので、恨み言しか口からは出てきません。


メイドの話

メイドは黒髪艶やかな美しい女性です。しかしどういうわけか瞳は翳り、暗く落ち込んだ様子があります。また首には首輪が付けられています。
・ ドノヴァンについて
「館の主人です。金融業を営んでおられます。また帝国に大しても多額の献金をなさっている方で、中でも騎士団や軍部に対しての献金などは多く支払われています。」
・ 幽霊について
「とても優しい歌声です。まるで痛みを癒してくれるような歌声に聞きほれてしまいます。しかし、ドノヴァン様はあまり好きではないようです。」
「ドノヴァン様は元々はかなり音楽は好きな方で、その音楽を独占したいという欲求をもたれていました。目をつけた歌姫などを手に入れるために随分と強引なやり口もしていました。」

メイドの設定
ドノヴァンが買い入れた奴隷で、元々は別に身を売るような人手はありませんでした。ドノヴァンに目をつけられたのが運の尽き、借金を背負わされ、家族は離散。彼女は異国で奴隷競売行きのところをドノヴァンに買われました。ドノヴァンへの感情はあきらめです。もうどうすることもできないと考えています。彼女はドノヴァンを怖れ、ドノヴァンのこと知ることを避けています。


町の衛兵より

ドノヴァンからの通報は彼らも聞いています。彼らに情報を聞けば、いくらかの情報がわかるでしょう。

帝国の詰所となると非常に大きなものです。出入りするもの巡回するものも多く、前には常時何頭かの馬がつながれています。内部は部署ごとにわかれ、治安維持と犯罪などで項目が部屋が分かれているようです。
・ 調査を担当した兵士は不機嫌です。この不機嫌は一同ではなくドノヴァンに対して向けられています。

ドノヴァンからの調査指示
・ ドノヴァンは調査に対して非協力的です。兵士が館に入ることは嫌っています。元々よからぬことをして財を成したドノヴァンだけに、兵士を嫌うのも無理も無いことです。
・ ドノヴァンは幽霊だけを調べろと指示を出しましたが、兵士達は幽霊の姿を確認してはいません。確認しようと館の進言してもドノヴァンが受け入れなかったからです。これでは調査の使用がありません。

幽霊について
・ 幽霊の歌声は館の住人は聞いているものの、兵士達はしりません。本当に幽霊がいるのかは眉唾物です。しかし、ドノヴァンの話だと、あれは間違いなく幽霊だと言う話です。
・ 信憑性の無いドノヴァンの話でしたが、ドノヴァンの配下の5人の騎士が失踪することで、現実味を増します。幽霊の調査に向かって2人の騎士は失踪。続いてその後幽霊を追った3人の騎士は惨殺されて見つかりました。

3人の騎士について
・ 3人の騎士は鋭い刃物によって切られていました。幽霊よりも現実的な相手なのではないかと考えています。
・ 衛兵は3人の騎士を発見したときに彼らの顔を見て愕然としました。タチの悪いは山賊で人殺しとして手配されていた過去がある人物でした。それを上に報告したところ、既に恩赦が出ているとして、その件での調査は禁止されました。衛兵には我慢のならない事態です。

衛兵の考え
・ 犯人は幽霊とは考えていません。恨みをもった人物が嫌がらせをしているのでしょう。そのぐらいならば逆に見逃してやりたいと衛兵も考えていますが、人が死んでいるとなると無視できません。
・ 犯人は恨みを持つ人物でしょう。彼が取り潰した貴族とか、借金を背負わせて自殺や一家離散に追い込んだ誰か・・・という可能性もあります。
・ 犯人の逮捕は使命なのですが、調査はドノヴァンによって邪魔もされています。すぐに上からストップがかかるのです。こうなると衛兵の手には負えません。冒険者が引き受けてくれるというならば、彼らも感謝しますが、忠告もします。

「ドノヴァンは死んで当然の男だ。後味がいい話になるとは思えないぜ。」
「もし犯人に情状酌量の余地があるのなら、そっちで自由に話をまとめてくれ。何もこっちに話を通さなくてもいいぞ」

ドノヴァンの館に泊まる

ドノヴァンの館で深夜・見張りをした場合
ドノヴァンは後ろ暗い人物なので、騎士団が館に泊り込む、中へと立ち入ることは嫌いますが、冒険者は金でどうとでもなる者達と考えています。かりに冒険者が何か不正を摘発しようとしても権力の後ろ盾の無い人々ではドノヴァンを追い詰められないでしょう。そのため泊り込んで調べたいという考えは、受け入れます。
ただし、館の内部の部屋はあてがわれますし、歩き回ることも禁止されます。

ドノヴァンから与えられた一堂の部屋は非常に豪華なものです。一同への好待遇というよりは他の部屋がないのでしょう。
部屋は個室で人数分用意され、中はベッドに彫刻の刻まれたテーブルとイス。クローゼットと酒を収められた棚などがあります。窓はありますが、広がる森が視界を多い、あまり見晴らしはよくありません。これはどの部屋も同じです。
・ 館の視界が開けた側は向かって正面になります。ただしそこは入り口から中庭までの道のりです。
・ 歌声が聞こえるのはどうやら裏手の森側のようです。

NPC新米冒険者達の動き

●トロル村のPCの新米冒険者とともに調査する導入を使っている場合
彼らはドノヴァンの館の宿泊は純粋に楽しんでいるようです。なんだかんだ言っても豪邸ですから。
お互いの部屋を行き来したり、こちらの部屋に顔を覗かせます。「こんな豪邸だ。晩飯が楽しみだ」などと呟きます。

ドノヴァンの生活

一同が滞在して数日の間は何もおこりません。
一同はその間館の光景を目にします。
朝食の時、低血圧のドノヴァンは不機嫌そうです。一同と顔を合わせても挨拶一つしません。
ドノヴァンは用意された豪華な朝食に対してさも自然に食べ始めますが、スープが熱いと怒鳴り始めます。その怒りは一番の弱者メイドに向けられ、ドノヴァンは一同の前で容赦なく鞭をうちます。

昼までの間はドノヴァンは私室にこもり忙しく仕事に打ち込みます。勤勉といえば勤勉です。
館の表には、ドノヴァンへの借金のある人々が集まり列をなします。内容は返済期限を待ってもらいたいというものです。
・ ドノヴァンはそれを許さず追い返します。

やがて冒険者というよりならず者の一団と言うべき10人の男達が入ってきます。男達はドノヴァンが新たにやとう警護の傭兵です。しかしその正体はやはり山賊です。ドノヴァンは使えるとなれば山賊でも使います。
・ 彼らの情報は衛兵に聞けば確認できます。ただし、衛兵も彼らを捉えることはできません。
・ マイナーな山賊なので、自分達が知っているかは冒険者レベル+知力ボーナス+2d6で15を目標値とします。

午後はドノヴァンは外出し外回りをします。貴族のもとを訪れてはこまめに挨拶をし、関係を深めるのです。この間に従者は男達に仕事の説明をし、取り立ててに向かわせます。随分乱暴な取立てになることが予想されます。
・訪ねるならば、前にいた5人の騎士も動揺の仕事をしていたと教えてもらえます。

夕暮れ前に帰ってきたドノヴァンは従者に声をかけると黒塗りの馬車を用意させます。
従者はなるべく人目につかないように、館の中から誰かを連れてきます。フードをしており顔はわかりませんが女性のようです。従者はそれを馬車に乗せ馬車を走らせます。
・ 従者に訪ねても説明しません。
・ ドノヴァンは「知らなくていいことは知らないほうがいい。長生きできないぞ」と脅します。
・ メイドは周囲に人がいた場合は話しませんが、二人だけの場合は説明します。
「ドノヴァン様は奴隷の売買をなさっているのです。貴族の令嬢などを買い取っては売り払います。飛びぬけた容姿・何かの才能をもった人は高く売れるのです。」

夜に響く歌声

ある晩、夜分も遅く皆も眠りにつくなか(見張りをしていたものがいるのならば、まず気がつくでしょうが)、歌声が響きます。歌声は澄んで清らかですが、ただ美しい歌声というだけではなく、何かもっと切実な思いを訴えかけるかのようです。それは心を害するようなものではなく、まるでキズを癒すような安らかさすら感じます。
・ 声の出所は森です。
・ 館の住人はそれほど歌声を恐れてはいません。ただ「また始まった」と考えているのです。
・ ドノヴァンは一人半狂乱になります。一同を呼び寄せては頭を掻き毟り、「あの女が生き返った」と呟きます。
→ 問われても事情は説明しません。「今度こそ殺して来い」と意味不明なことをいいます。
※ このドノヴァンの様子は確かに以上です。髪が抜け、血がにじむまで頭部を掻き毟ります。

夜の森の中を進むと、暗がりの中に何かの姿を発見します。暗がりの中に浮かび上がるのは血染めの黒い鎧の人物です。騎士のようにも見えますが、顔は窺い知ることはできません。歌声は黒騎士の後ろから響いています。
・ 一同が訪れる騎士は剣を抜きます。「お前達にしかるべき報いを・・・」と祈りの言葉か呪いの言葉を呟きます。

黒騎士は聞く耳を持ちません。
彼の正体はドノヴァンの没落させられた貴族の生き残りです。名前をエレオノールといいます。
エレオノールにはエレノアという妹がいましたが、妹のエレノアは歌姫として類稀な才能をもっており、美貌でも知られる人物でしたが、その噂はドノヴァンの耳にも入りました。ドノヴァンはエレオノールの一族を没落させるために動きます。兄エレオノールは遠く戦地に派遣されました。残った一家には借金づけにされると、家財を売り払い爵位までもが売られるはめとなりました。エレノアはかくしてドノヴァンに見受けされてしまいました。
・ エレオノールの騎士団は戦場で切り捨てられると壊滅します。しかし、奇跡的にエレオノールは静観すると、その事実を知ります。エレオノールはドノヴァンに復讐するつもりなのです。

歌い手の正体

歌い手はエレノアの双子の妹のエイムンです。エイムンは腹違い妹であり、愛人の子供でした。エイムンとエレノアは仲良しでしたが、二人の教育は天と地ほども違いました。エレノアは貴族の令嬢・エイムンは愛人の子供で、庶民的な人物です。しかし二人の容姿は良く似ていましたし、二人ともに歌には類稀な素質がありました。
表舞台にたつことの無いエイムンを思って、二人は二人で一つとして活動しました。エレノアが歌い、エイムンが曲を作るのです。
二人を引き離したのは、兄エレオノールでした。兄は愛人をもった父親が許せなく、日々エイムンとその母親に憎しみを向けていたのですが、ついに父親は折れて、二人を追い出してしまいました。二人の関係はそれからも続きましたが、この家の受難からエイムンが逃れたのはその受難からでもありました。
エレノアがドノヴァンにさらわれたことをエイムンも知っています。エレオノールと再会したエイムンは、二人が背負った運命ゆえに和解しました。
・ エイムンはエレノアを想い、勇気付けるために歌を歌い(死んでいる可能性が大きいことはわかっています。)
・ エレオノールはエレノアが死んでいると思い、ドノヴァンに復讐を誓いました。
→ 考え方の違う二人ですが、取るべき道は同じようです。

黒騎士エレオノールとの戦い

黒騎士エレオノール

生命点80 生命抵抗16+2d:固定値23
精神点80 精神抵抗18+2d:固定値25

●攻撃
「剣で斬る」 命中16+2d ダメージ18+2d点 効果:ダメージ分生命点が自分の回復します。
「武器破壊」 命中16+2d ダメージなし     効果:18+2d相手の打撃力を減少します。0で折れます。
「薙ぎ払い」 命中14+2d ダメージ18+2d点 効果:周囲5人までに攻撃。ダメージ分自分の生命点が回復。
「フェンリルバイト」 命中16+2d ダメージ12+2d点 効果:1Rに1回の噛み付きによる補助行動。
「リカバリー」効果:11点回復します。
「神聖魔法」 ザイアの神官騎士です。魔力13です。魔力撃もでき、ダメージ+13も可能です。

●防御
「回避する」 回避 9+2d 減少点 16点    効果:なし。
「捨て身」  回避 ・・・・ 効果:回避せず攻撃を受けたのちに攻撃できるようならば、反撃します。1R1回。
※ エレオノールは不屈です。気絶しません。
死んだとしてもアンデットとなって戦います。その場合は生命点80のアンデットとなります。
・ エレオノールと戦えば、鎧には家紋があり、騎士であることがわかります。
・ またエレオノールが人間であることもわかります。
戦闘中のイベント。
A あまりに鋭い一撃は、エレオノールは避けません。体を前に突き出して、深深と刃に体をうずめると、そのまま斬りつけてきます(捨て身)。またその武器が刃のものならば、筋力判定20に失敗した場合、武器が抜けません。
B エレオノールと話し合おうとしていると、雇われ傭兵団の半数5人が現れます。彼らは一同の戦いの成り行きを見届けますが、もし一同が和解などをしようとしているのならば、横槍をいれます。
・ 彼らは風に毒を流します。吸い込むと生命判定20をチェックし、失敗すると両手の武器を落してしまいます。
・ この毒で黒騎士エレオノールも武器を落してしまいますが、そこへ5人組みは襲い掛かります。
エレオノールはそれでもフェンリルバイトで戦います。
C この戦いの間に歌声は、止んでしまいます。歌声が止んだことを気がついたエレオノールはさっさと引き上げてしまいます。
・ 一同がうまく説き伏せないと、傭兵団との高いになります。傭兵団はPCとの戦いを望みませんが、いざとなれば残る5人とあわせて戦うことを脅します。彼らのデータは山賊の頭領です。
・ 普通に戦えばたいした事の無い敵なのですが、彼らは毒などを駆使します。これは彼らが購入したものです。
・ また魔法も覚えていますので、彼らはスパークを使います。魔力6でダメージは11点です。これを全員が使います。

NPC新米冒険者達の動き

●トロル村のPCの新米冒険者とともに調査する導入を使っている場合
彼らは戦闘が始まると一同に助力しようとしますが、とても自分の手におえる相手じゃないと理解し、歯噛みして口惜しがります。できるのは毎ターン10点単体対象の回復魔法と、5点のダメージ魔法のみです。直接攻撃はあたりません。
PCが黒騎士と話し合うつもりならば、自分達も武器を納めますが、傭兵達はそれを裏切りと考えます。傭兵達は冒険者にも攻撃を加え、冒険者達はなす統べなく倒れるでしょう。
どちらにせよ、冒険者達はこの事件にはこれ以上係わり合いを持ちたくないと考えます。ここでリタイヤします。

残された剣

傭兵団の毒によって黒騎士(エレオノール)は武器をおとしてしまいます。武器は柄に彫刻が刻まれた黒曜石の剣です。これは大変珍しいものなので、調べれば何者かわかるでしょう。
・剣には紋章もあります。

ドノヴァンに事情を確認する
ドノヴァンはこの件には一切応えません。したがってドノヴァンから入る情報はありません。

紋章について調べる

紋章についてはすぐにはわかりません。騎士団のことなのであまり詳しい情報はありません。
調べる場合は、書庫がある場所にいくか、騎士団の知り合いを探すしかありません。帝国内部にはそういったことを調べる場所はいくらかあります。衛兵達に尋ねても、調べることができます。
→ その場合はセージ判定で調査できます。この判定は重要なので、成功するまで毎日振ることができます。
★ セージ技能+知力ボーナス+2dで目標値15です。

→ ザイアの神官がセージ技能を持っていた場合、聞いたことがあるかもしれません。
★ セージ技能+知力ボーナス+2dで目標値15です。

黒騎士の噂

・ 黒騎士の名前はエレオノール・ラヴォーグといいます。
・ 黒い鎧を纏い、死を恐れぬ働きぶりで知られます。蛮族からも黒騎士として恐れられる人物で、その戦振りには定評がありますが、いつも損害の多い戦いになってしまうので、縁起が悪い人物としても知られています。
・ これには理由があり、彼は騎士団の上にいる将軍達とは仲が悪いことでしられています。
彼は自国領土以外に兵を派遣して、地方の平定に務めることは国益にならないと進言しています。しかし統一主義を掲げる帝国にとっては、その意見は受け入れがたいものでした。
・ 彼は危険な戦地に送られ、行方不明となりました。またその一族もその後借金から取り潰されてしまいました。

ラヴォーグ家の紋章

ラヴォーグ家は古くから騎士として帝国に使える一族で、敬虔なザイアの信者でした。戦では獅子奮迅の活躍をし、地にまみれた黒い鎧を人々は黒騎士と呼び畏怖しました。
ラヴォーグ家は古参貴族であり、現在は落ちぶれていますが、一人息子のエレオノールは大変武名の長けた人物です。
エレオノールは無理な任務を命じられ、遠く異国の地で死んだという噂があります。
一族にはエレノアという歌姫がいますが、エレノアは貴族の間でも評判の歌姫でしたが、彼女の人気は庶民にもあります。彼女の歌声は貴族社会だけでなく人々にも受け入れられるものだったのです。
一族は両親の死後・エレオノールの戦死を経て、多額の負債を背負い、ついにはたえてしまいます。
エレノアがどうなったのか誰もしりません。

ここで10人の傭兵・および従者達には動きがあります。
・ 傭兵10人は一同の追跡や尾行をします。一同を信用していないということもありますが、相手の正体にいち早くたどり着きたいためです。
・ 従者は実は心当たりがあります。しかし、そのことを口にするつもりはありません。ラヴォーグ家の生き残りがいル可能性があるということをPCに聞き出したら、ドノヴァンに報告します。ドノヴァンは暗殺者を派遣するでしょう。

ラボォーグ家の跡地

ラボォーグ家は既に廃屋となってしまっています。数年前までは落ちぶれたとはいえ、喰うに困らぬ貴族だったのですが、今はもうただ廃屋なったうち捨てられた館があるばかりです。
・ PCがその館に訪れると。ふと後ろから声がします。
「かつては栄華を誇った館が、今ではこのように打ち捨てられているとは・・・あわれなものじゃのう。」
・ 後ろには石に腰掛ける一人の老人がいます。それは農夫か何かのような印象を受けます。もうこの歳では働くことはないでしょう。

老人
・ 「わしは若いころからお役を退くまで、ここで庭師をしていたものじゃ。」
・ 「ラヴォーグ家はかつてからザイアの騎士の一族として戦いつづけてきた。しかし、帝国はいつのまにか守りの盾よりは剣が欲しくなったのだろう。蛮族ありき併合政策も今の世には流行らん。それを問いただしたがためにこのような末路を辿ったのだ。」
・ 「当主も奥方も、病に倒れ、後継ぎのエレオノール様も遠く戦地、二人のお嬢様ももうここにはおらん。」
→二人のお嬢様・・・)老人は悲しそうに首を振るばかりです。
ふと背後に人の気配がします。
そこには、白銀鎧のナイトメア(ゲルニカ)の姿があります。ゲルニカの後ろには、花をもった壮年の男の姿があります。
・ ふと気がつくと老人の姿はなくなっています。ただ老人が腰掛けていた石があります。どうやら墓石のようです。
・ ゲルニカとその男はここに墓参りに来ました。男は庭師の老人の息子です。

庭師の息子

・ 「自分は庭師の一族でこの屋敷は父が生涯を過ごしてきた場所です。」
・ 「父はここ無理な取り立てにあった時に抵抗して、その際に発作を起こしてなくなりました。死に際もここにいたいと呟きつづけていたので、ここに埋葬しました。」
・ 「父はエレノアお嬢様が見受けられるのをなんとか救いたいと奔走していましたが、その望みもやはり叶いませんでした。」
・ 「今はここには父の思い出があるばかりです。その館ももうあの様子じゃ・・・あんまりじゃあありませんか。ねぇ?」 ・ この庭師の息子にものを尋ねると、エレノアの素性がわかります。
・ 「エレノアお嬢様は、まるで太陽のような方でした。私達にも降り注ぐ光。そこには身分の違いなどないのだと、そう教えてくれました。私達にも常に礼儀正しく接してくれた方です。」
・ 「社交界では歌姫として知られていましたが、それが悲劇のはじまりだったのですね。その歌声と美貌がドノヴァンの目に入り、家に受難が訪れたのです。」
・ 「戦地に送られた兄上・・・、取り潰された家・・・、売られたお嬢様。全てトノヴァンが手を回したのです。もうラヴォーグの家には後ろだてはいないのですから・・・」
・ もう一人のお嬢様?)「え?!、わ・私は何も知りません。」
→ 庭師の息子はもう一人のお嬢様・愛人の子エイムンを知っています。しかし、エレノアお嬢様の運命を知れば、そのことを口には出せません。

ここでゲルニカと初めて出会うものは自己紹介を受けることになるでしょう。
ゲルニカがこの事件に興味をもったのはまったくの偶然のなのですが(トロル村のPCなら知っていますが、)ゲルニカはそれをあまり説明しません。
「私はゲルニカ。どうやら同じものを探しているようだね」
「この館の人々のことを知りたければ、ここに3日留まりなさい。」

→ 以後ゲルニカはパーティに加わります。

1日目の夜

館の中を調べてみるといくつかのコトがわかります。
●館の柱にはキズ後が残っています。キズ跡は二つあります。
・ 背比べの跡です。この館には同じくらいの年頃の二人の子供がいたようです。
・ ふとゲルニカが視線を移すと、そこには庭師の老人の姿が見えます。老人は笑顔で、二人の少女の背を比べるための線を引いています。「おじいちゃんズルしちゃ、やーよ」「私のほうがおおきいよね」「エレノアのほうが大きいよ」と二人は話をしていますが、その姿は掻き消えてしまいます。

●館の中には肖像画があります。そこには当主と奥方。そしてその息子エレオノールと、娘エレノアの姿があります。
・ この絵を見ればエレオノールが黒騎士であることがわかります。そこには傷付きやつれる前のまだ若いエレオノールの姿があります。

二日目

この館の前に一人の騎士と衛兵が一人訪れます。
衛兵は自分とも面識があるかもしれません。ドノヴァンの事件を担当していた衛兵です。
その場合一同をみかけると「いよぉ」と気楽に声をかけてきます。

もう一人の騎士は、口ひげの黒髪の騎士で、壮年。見るからに熟達の騎士という雰囲気がありますが、その動きには貴族の気品というよりはざっくばらんな雰囲気を感じます。
・ 彼の名前はジョン・ローランドといいます。
ジョンはラヴォーグの一族とは付き合いのある騎士です。ラヴォーグは黒騎士として切り込みの重役を担う騎士でしたが、ジョンの騎馬隊も帝国では名の知れたものです。二人には交友がありました。
ジョンはラヴォーグ家が取り潰されるのを救えなかったという後悔の念があります。
ここへはエレオノールのことを探しに来ました。

ジョンより
・ 「戦線から連絡があってエレオノールが失踪したと。もしかしたら命令無視して帰還している可能性があるとの通達があったんだ。もし帰ってきているのならばここにいるはずだ、と思ったんだがな。」
・ 「エレオノールを責めるつもりは無い。何か力を貸すことはできないかと思ってな。」
・ 「エレオノールが何か・・・問題を起こしているのならば、どうにかしないと・・・とも思っている。」
・ 「しかし、今でもなんと言って声をかけていのかわからんのだ。帝国の忠誠を誓い・・・捨てられた騎士に、帝国騎士の私がなんと言葉をかけたらいいのだろうとな。」
・ 「もし、エレオノールを見つけたら・・・、いや、君達は君達の仕事をするといいだろう。」
→ よく見るとジョンは剣を帯びていません。エレオノールと出会い、何か取り返しのつかない問答になっても、彼を切らない。彼がジョンを斬るのなら、斬られてやろうという考えです。
ジョンはしばらく待ってから、衛兵と共に引き上げます。

その日の夜のことです。
夕暮れ時から降り始めた雨はやがて、しのつく雨・土砂降りにとなっていきます。
★ 冒険者技能+精神ボーナス+2dで目標値13です。
深夜のことです。その雨の中口論が聞こえます。
母親と娘が一人の青年に突き出され、雨の中表に放り出されている姿が見えます。
「薄汚い目狐が、うせろ。どこへなりとも消えるがいい。」青年はそう怒鳴り散らします。
・ 絵画を見ていれば、これがエレオノールであるとわかります。
母親と娘は雨の中抱き合い、震えています。「坊ちゃま・・・話を話を聞いてください」
「お前が何を話そうって言うんだ!。母さまの後釜座るつもりなのだろう。この売女め!
お前も、お前の娘も相応しいところに帰るんだ。そして二度と私達の前に姿をあらわすな」
そう言って二人の荷物を雨に投げ出します。出て行く二人もないていましたが、荷物を投げ出し、二人を追い払ったエレオノールも泣いているようにみえます。
→ これもやはり幻覚です。調べようと思えばそれが幻覚であることはすぐにわかります。

3日目

遠くから館を見る人物が現れます。
それはどうみても騎士などとは係わり合いの無いような一般の人・おばさんです。
乱れた黒髪をまとめ、昔は美しかっただろう顔も痩せこけ、顔色は大変悪いものです。咳き込んでいるのが遠くからも、伺えます。
・ 彼女は館の入り口の門に積んできた花を捧げ、かえっていきます。
・ →彼女は、エイムンの母であり、当主の愛人でした女性です。名をミランダといいます。今でも無くなった主人を愛しており、花を捧げに訪れているのです。
・ 一同が声をかけると、彼女は青くなります。彼女は逃げ出そうとしますが、病んだ体では息が続かず、咳き込んで座り込みます。彼女は一同をドノヴァンの手下の騎士か冒険者であると考え、逃げ出したのです。

彼女に素性を明かせば説明をしてくれます。
・ 自分の名前はミランダ。館の主人の愛人であったこと。
・ 自分は息子エレオノールの怒りを買って館から追い出されたが、今でも主人を愛していること。
・ エレノア一人となった館を守るために彼女は帰ってきてドノヴァン達と話し合ったり抵抗したりしたが、それも全て無駄だったということ。
・ ドノヴァン手下の5人の騎士はこういう地上げじみたことをしていたので、その関係かと思ったと説明します。
・ もし、娘エイムンのことに関わる話題を持ち出されたら、彼女は顔面蒼白になります。何があっても娘のことはしゃべりません。乱暴な手に訴えるならば自決してでも黙秘します。

ミランダの返り道をつけるのならば、エイムンと出会います。
愛人である女が向かうのは、帝国の内部でも最下層の人々がすむ貧民街です。この帝国に望みを託してあつまった多くの人々がここに流れ込んでいます。建物は乱雑に組まれたバラックばかり、家も長屋のような場所にあります。
・ ミランダが向かうのはある教会です。

教会は随分みすぼらしい建物であり、屋根の上に聖印を掲げただけの場所です。そこはライフォスもザイアもありません。 周囲にも出入りする人々の姿があります。地域の集会所としても使われているのです。

中からは清らかな住んだ歌声が響きますどうやら、合唱団が練習をしているようです。
 中から響く歌声は祈りです。誰とも言わず、何に祈るとも知れず、合唱団は祈りの歌声を上げます。
「それでも、祈りが必要なのです」

残された一家は聖歌とともに

ミランダの視線は一人の娘にそそがれています。それはその人々の中にあって抜群の歌唱力を持つ娘です。容姿もボロを纏っているのですが、おそらく美しくなる可能性を秘めたダイヤの原石です。
・ 娘は練習が終わると、母親を見つけ走ってきます。「母さん!? 寝ていないとダメじゃないの」
・ ミランダは苦笑するばかり。「今日は調子がいいのよ」と返します。
・ エイムンはミランダを背中に背中に担いで、運ぼうとしますが、エイムンも痩せているので思わず二人は倒れかかります。するとどうでしょう、二人の倒れる体に手を差し伸べる男がいます。
エレオノールです。彼は衣服を着替えているせいもあって、殺伐としたところはありません。いたわるようにミランダを腕に抱いては持ち上げ、エイムンを片手で立ち上がらせます。
→ この後、エイムン達は、自分のボロの住処に帰ります。
 しかし、もし一同が接触を取ろうとするのならば、エレオノールは二人を先に帰らせて一同との対決を考えます。

エレオノールはすでに覚悟を決めています。いまさら話をするつもりなどないのです。
・ 「自分は帝国から切り捨てられた身。この国の法は俺を救うことはないだろう。」
・ 「俺はドノヴァンを斬る。それを邪魔するのならば・・・まずはお前らから斬らなくてはならんな。」
★ エレオノールとの対決
この場合、一応エレオノールは剣を持っていますが、鎧はつけていません。防護点は0となります。

黒騎士エレオノールとの戦い

黒騎士エレオノール

生命点80 生命抵抗16+2d:固定値23
精神点80 精神抵抗18+2d:固定値25

●攻撃
「剣で斬る」 命中16+2d ダメージ18+2d点 効果:ダメージ分生命点が自分の回復します。
「武器破壊」 命中16+2d ダメージなし     効果:18+2d相手の打撃力を減少します。0で折れます。
「薙ぎ払い」 命中14+2d ダメージ18+2d点 効果:周囲5人までに攻撃。ダメージ分自分の生命点が回復。
「フェンリルバイト」 命中16+2d ダメージ12+2d点 効果:1Rに1回の噛み付きによる補助行動。
「リカバリー」効果:11点回復します。
「神聖魔法」 ザイアの神官騎士です。魔力13です。魔力撃もでき、ダメージ+13も可能です。

●防御
「回避する」 回避 9+2d 減少点 0点    効果:なし。
「捨て身」  回避 ・・・・ 効果:回避せず攻撃を受けたのちに攻撃できるようならば、反撃します。1R1回。
※ エレオノールは不屈です。気絶しません。
死んだとしてもアンデットとなって戦います。その場合は生命点80のアンデットとなります。

PCが理解を示し、事情を尋ねるのならば、エレオノールは全てを話します。
・ 今までの経緯が説明されます。
・ 歌姫を求めたドノヴァンがラボォーグ家を取り潰し、エレノアを買ったこと。
・ 戦場から帰ったエレオノールと愛人の子であった妹エイムンの二人で歌声を歌いドノヴァンの反応を見たことです。
・ エレオノールはドノヴァンの手下として、館の取り潰しに関わった5人の騎士を殺しています。

●エイムンからは、館に囚われた姉のエレノアを探すためにやったという話を説明されます。
エイムンは騎士殺害には直接関わってはいませんが、そのようなことになっているのではとも考えています。
それを見逃した意味では、罪が無い訳ではありません。

●エレオノールは恐怖にかられたドノヴァンがエレノアを確認しに、エレノアのいる場所へと向かうのではとも考えています。歌声を亡霊とドノヴァンが考えている時点でエレノアは多分死んでいるのでしょう。ですが遺体はどこかにあるでしょう。エレオノールはせめて遺体だけでも取り戻し、埋葬したいとも考えています。
・ 遺体は今も館の地下に放置されています。
・ ドノヴァンは言うことを聞かないエレノアを監禁していたのですが、エレノアは粘りますが最後は衰弱死してしまいます。ドノヴァンは生死定まらぬエレノアを放置し、歌声の流れ始めた現在は、逆にその場所を禁忌の場所として忌み嫌っています。

●ゲルニカは復讐には賛同できません。
「この悲劇に対し、何か自分の中で納得を得たいというのならば、協力はしよう。」
「しかし、最後は怒りも悲しみも己で乗り越えなくてはならぬ。全ては自分の感情であると、忠告しよう・・・。」

別方向からのエイムン・エレオノール発見。

●ミランダを尾行しない場合の合流方法です。
@ラヴォーグ家
ラヴォーグ家の存在をPCが伏せていた場合、ドノヴァンのところに帝国の騎士団から報せが入り、エレオノールが生還した可能性があると知らされます。これによってドノヴァンもそれを調べることを考えるでしょう。

Aミランダの存在
ミランダの存在は中々にわかりません。愛人の話は有名ではないのです。ですのでドノヴァンらはあてがありません。
しかし、傭兵団はラヴォーグの館跡地を見張り始め、ミランダを発見します。
その情報は従者の口よりPCにも入ります。

B下町へ
本来は傭兵団ではなくPCが先に二人に接触を取ることが望ましいのですが、その気が無いようなら傭兵団が先にその場に向かってしまいます。傭兵団は戦闘し結果、話は大事になるでしょう。多分巻き込まれたミランダは命を落すでしょう。
→ ここまで来ると最後は館に再び顔を出すエレオノールを倒し、エイムンを捕えるというだけです。シナリオ方向は「展開1:エレオノール・エイムンを捕える」という方向に向かいます。
  こうなるとPCは、自力ではエレオノールに到達できなかったということにもなりますので、シナリオクリアというか疑問はありますが、そこはGMの最良に任せます。



選択すべき時

ここで全ての状況がわかったことでしょう。PCとすればどうするべきか選択する時です。
また何らかの方法でここまでの情報を入手したり、エレオノールとエイムンにコンタクトをとった場合も選択に入ります。 参考までに帝国の考えは―
・ 事件に関する帝国の扱いは、ドノヴァンへの借金が返せなくなった当主不在のラヴォーグ家は、借金を踏み倒して国外逃亡をした。しかし、財のないラヴォーグ家は他国で奴隷の身分となり、それをドノヴァンが買い求めて館に置いていた。
・ ドノヴァンが奴隷を買い戻したのは、悪事ではなく、他国の法律に従ったまで。むしろ、奴隷の身分にも借金返済能力があると考えていたのだから、商人としては評価すべき人格者である。
・ エレノアの死は仕方のない事故としても、エイムンとエレオノールの二人は明らかに逆恨みの私闘。さらに貴族に仕えるとはいえ、帝国の騎士5人を殺害した罪は大きい。
・ よって二人は極刑とする。
―というものです。

★展開1「エレオノールとエイムンを捕える」

二人は情状酌量の余地があろうとも法律的には殺人犯ですから、それを捕えるという選択もまた妥当な選択です。
その場合は二人を捕えなくてはなりません。

エレオノールとエイムンはその後も館の外で歌を歌います。
これを待ち構えて再び対決し、エレオノールを倒せば、エイムンは難なく捕まえられます。
・ 二人はやはり処刑されることとなります。
・ もっともエレオノールは最後の最後まで抵抗し、死後もアンデットとなって襲い掛かるでしょう。

エイムンの処刑

エイムンの処刑の日、ドノヴァンは子飼いの騎士団に囲まれ、磐石な状態でその場に訪れます。
この報せを聞きつけた人々も刑場には集まりますし、中には興味本位で見に来る人々もいます。
・ 処刑方法は火あぶりとなります。
それは兄がアンデットと成り果てても戦ったためでしょう。彼女もまた穢れたものとしてみなされたのです。
→ 当然ライフォスなど良識ある司祭達はそれに反対しますが、裁判から処刑があまりに早いために、もはやなんの手段も通じません。

刑場に引き出されたエイムンは大変怯えています。足取りもおぼつかず、時折倒れそうになりますが、人から手を貸されることだけは固く固辞します。
・ ここでは申し合わせたような形式だけの判事とのやりとりがあります。
判事  「汝エイムン・ラヴォーグは貴族ドノヴァンに対する脅迫及び、襲撃に関わったことを認めるか」
エイムン「はい」
判事  「汝の兄、エレオノールは蛮族に成り果てた。その思いに穢れがあったことを認めるか」
エイムン「はい」
→ 判事はそれだけを問うと、エイムンを火刑に処すことを言い渡します。

エイムンは引き出される手を拒み、やはり刑場まで、自分で歩くことを選択します。「全てを神に委ねます。」
自ら靴を脱ぎ捨て、その身を運命に投げ出します。

炎と聖歌

エイムンは火を放たれる中にあって、歌を歌い始めます。それは普段から歌われていたなじみの深い聖歌であり、人々もその歌にはどこかで耳にしたことがあるほど馴染のものです。心穏やかな聖歌はその場にそぐわぬものなのですが、人々の乱れた心を整えるようなものです。荒々しい憎しみが消えると、周囲の人々にも彼女への哀れみが向けられます。
・ ドノヴァンはその歌を耳にするなり、頭を掻き毟り始めます。ドノヴァンはそれこそ恐怖に気が狂わんばかりに頭を掻き毟ります。
・ まず音を運ぶ耳を自らの手でひきちぎってしまいます。さらにそれでも届く音に対しては、頭を掻き毟る癖が悪化し、頭髪がはげ、皮がめくれて血が流れるほど頭を掻き毟ります。

エンディング1「そして、その夜も歌声が・・・」

条件:エンディング1は、PCが仕事と割り切り、ドノヴァンの依頼を完遂した時のエンディングです。
   ドノヴァンが生きていることが条件です。
   また、エイムンやエレオノールへの共感や理解が無かった場合のエンディングでもあります。
一言で言えば「因果応報」
味わい深いエンディングなので、それはそれでいいでしょう。

人々の声にも嘆きの声が聞こえます。炎は彼女の足に燃え移り、衣服を焦がします。それでも彼女の歌は止まりません。
彼女の体が完全に炎に包まれても歌はやむことはありません。彼女はもう歌など歌えるはずがないことは、処刑人達は知っています。判事もその言葉に神の奇跡を感じ祈りを捧げます。

数日後のことです。
ドノヴァンのもとに再び一同(ゲルニカも)が呼ばれます。
ドノヴァンは既に頭部が禿げ上がり、今も血を流しつづけています。頭部を掻き毟る癖が悪化しているのです。そして歌声は今もドノヴァンを責めつづけています。
「・・・金はいくらでも払おう。頼む、歌声を止めてくれ。夜な夜な響くあの歌声を止めてくれ。」
エイムンの歌声は彼の脳裏についてはなれません。彼は今もその歌に心を蝕まれています。
・ このドノヴァンにどのような言葉をかけるのもPCの自由です。
・ どちらにせよ、ドノヴァンは相応しい罰を受けているのです。

ゲルニカはアンデットに詳しいとして呼ばれましたが、ここでドノヴァンの申し出に背を向けます。
引き止めるドノヴァンに対し、ゲルニカは冷酷な言葉で返します。

「死ね! 死んで蛮族に生まれ変わるがいい。そうしたら、今度はお前の話を聞いてやろう。」


それからしばらくたった後、ドノヴァンは亡くなります。死因は掻き毟る手が頭蓋骨を割って、脳を掻き毟ったためだといわれています。結局彼は自分の犯した罪から逃れることはできませんでした。

★展開2「エレオノールと共闘する」

ともにドノヴァンを倒そうとする考えです。これはあきらかに帝国を敵に回してしまいます。
この考えにはいくつかバッドエンドの要素があります。
エレオノールは復讐のためなら自分の命などどうなってもいいと考えています。
@ これでは復讐を終えた後も彼が生きている可能性があるわかりませんし、共に事件に向き合うエイムンの安否など気にしなくなってしまうでしょう。
A ドノヴァンの罪を問うというのは、無理があります。ドノヴァンは帝国の子飼いとして悪をなす人物であり、帝国もそれを利用していますから、ドノヴァンのことを罪に問うつもりはありません。

ここで重要なのは、どのようにしてこの事件に決着をつけさせるかです。
エレオノールの復讐が終わり無きものになるのなら、それはなんの救いにもなりません。
 ドノヴァン殺害や騎士団の対決などになっていけば、もう終わりの無い泥沼になります。
 たとえどのように同情したとしても、未来の無い人生を歩くことを許容すべきではありません。
→ この大切な一点はゲルニカからもよく忠告されます。
これはエレオノールには見えていない心の闇なので、PCに対して告げられます。
エレオノールを止めるのはPCなのです。

ドノヴァンとの対決の方法の一例

・ ドノヴァンの館にエイムンを招き入れるなどをすれば、ドノヴァンは大変怯えます。
従者は傭兵を呼び、騎士団への通報もします。
時間の問題で騎士団が来るでしょう。

・ ドノヴァンはエレノアを確認すべく、秘密の地下室に向かいます。そこには白骨化したエレノアの遺体かあります。
→ 当然、エレオノールは怒り狂いますが、どうしてもドノヴァンを殺すといいます。
   当然傭兵団は襲い掛かります。傭兵団の数が何人になっているかわかりませんが、ここにいる残りの傭兵はそのボス達です。彼らはみな正騎士のデータであり、さらにボスは怪力無双の腕自慢です。

戦闘になればエイムンなども巻き込まれるでしょう。
   これ以上ここで時間を使っているのは騎士団と鉢合わせの危険があります。
エレオノールがドノヴァンに拘れば、エイムンは殺されてしまうかもしれません。
しかし、怒りに目の曇ったエレオノールはエイムンよりもドノヴァンの死を望みかねません。
★ 復讐のために全滅を覚悟で戦うのならば留まるべきでしょう。
ドノヴァンは殺せるかもしれませんが、騎士団の到着とともに、今度はこちらが全滅するかもしれません。
★ もし、エレオノールへ説得し、生きることを選択肢に加えた場合エレオノールはここから脱出します。

ドノヴァンを殺す

説得しない、有効な説得ではないとGMが判断した場合、戦闘を継続・エレオノールはドノヴァンを殺そうとします。
・ ドノヴァンはその歌を耳にするなり、頭を掻き毟り始めます。ドノヴァンはそれこそ恐怖に気が狂わんばかりに頭を掻き毟ります。頭を掻き毟る癖が悪化し、頭髪がはげ、皮がめくれて血が流れるほど頭を掻き毟ります。
→ 助けを求めるドノヴァンに対してゲルニカの言葉は冷酷なものです。
「死ね! 死んで蛮族に生まれ変わるがいい。そうしたら、今度はお前の話を聞いてやろう。」

もし戦闘した場合、傭兵団+ドノヴァンを撃破するのにしばらくかかったこととします。
これを終えるころには表には騎士団が待機してしまいます。
脱出する場合は一同はこのまま騎士団との戦いになだれ込みます。騎士団は100人として扱います。
ここに突入してしまった場合、エレオノールはただの復讐鬼です。次々と相手に襲い掛かり死を恐れず戦います。
また一同が止めようとしても手を振り払い、無理して止めようとするのならば斬りつけてきます。

●データは正騎士です。
後ろには何人かの部隊指揮官がいます。部隊指揮官は、指揮またはバトルソングなどで支援するので、相手の命中補正は+2されてしまいます。

こうなるとまず生還できないでしょう。また生還したとしても帝国にいることはできないはずです。
・ 死に物狂いで戦うエレオノールはアンデットとなっても戦いつづけ、逃亡は拒否します。結果は死以外ありません。
・ エイムンは兄を見捨てられません。共に残ろうとし、それは彼女の死を意味します。

エイムンがエレオノールを止めようとした場合、エレオノールは敵と誤解して、エイムンを刺し殺してしまいます。
エレオノールはここで初めてエイムンのことを思い出しますが後の祭りです。
エレオノールは騎士団に囲まれて切り殺されますが、騎士団が不利な場合、エレオノールとジョン・ローランドが対決します。
ジョン・ローランドはエレオノールより腕は落ちるのですが、エイムンを殺した後のエレオノールは心は散々に乱れています。この状態でならば、ジョンはエレオノールを倒すことができます。

PCは重要な関係者ですが、相手は優先して襲ってきません。
万が一生還することができたのならば、ゲルニカのいるトロルの集落には逃げ込めます。
ゲルニカは必ず、トロルの集落に帰還します。

エンディング2「そして、この世に残るもの無し」

その後の展開
未来を捨てて復讐をした黒騎士は命を落とし、エイムンもおそらくもういないでしょう。
ドノヴァンはいなくなりましたが、同じような話は絶えません。ドノヴァンの後を引き継いだ新しい男爵は、ドノヴァンよりもはるかに強引なやり口をしているといいます。

めまぐるしく回った事件は終わり・世界はやはり変わらずです。
ゲルニカ「そして、今はドノヴァンは無く、ラヴォーグの一族の生き残りもない。そして、世はこともなく・・・か」 「誰一人、己の業からは抜けることはできなかったのだな」
そしてエピローグです。

ドノヴァンを殺さない

一同を捕えるべく集まってくるのは騎士団の騎兵隊隊長のジョンと衛兵です。
エレオノールはもう降伏します。これ以上騒ぎを大きくするつもりはないのです。
・ これは彼の意思なのです。
→ 降伏するエレオノールに対し、ジョンは受け入れて迎え入れます。

ジョンは一同に対しては罪を問わない方向で話を進めます。一族とは関係の無い部外者ですし、ドノヴァンさえ死んでいないのならば、話を大事にしなくて済ませられそうです。
・ただし、エイムンとエレオノールがどのような罪に問われるかはわかりません。二人は帝国からしても目の上のこぶに なりつつあります。

二人の処刑

やはり二人は処刑されることになります。
二人には後悔はありません。全てを理解しています。ただ、こうなってしまったということが、互いを救えなかったという重いが、僅かに悔いとして残りますが、互いがそのように思っていることもわかり、口にすることもありません。 「後は全てを神に委ねます。」

処刑の日、ドノヴァンは子飼いの騎士団に囲まれ、磐石な状態でその場に訪れます。
この報せを聞きつけた人々も刑場には集まりますし、中には興味本位で見に来る人々もいます。
・ 処刑方法は火あぶりとなります。
ドノヴァンは犯人をエレオノールとエイムンに加え、幽霊エレノアとします。
それはエレノアをアンデットとして事件の中枢に据えることで二人をまた穢れたものとして重罪にするためです。
→ 当然ライフォスなど良識ある司祭達はそれに反対しますが、裁判から処刑があまりに早いために、もはやなんの手段も通じません。

刑場に引き出されたエイムンは大変怯えています。足取りもおぼつかず、時折倒れそうになりますが、その手は兄・エレオノールが支えます。
・ ここでは申し合わせたような形式だけの判事とのやりとりがあります。
判事  「汝エレオノール・ラヴォーグ、エイムン・ラヴォーグは貴族ドノヴァンに対する脅迫及び、襲撃に関わったことを認めるか」
二人  「はい」
判事  「汝の一族、エレノア・ラヴォーグは蛮族に成り果てた。その思いに穢れがあったことを認めるか」
二人人は返事を返しません。「全てを神に委ねます。」
→ 判事はそれだけを問うと、エイムンを火刑に処すことを言い渡します。

二人は引き出される手を拒み、やはり刑場まで、自分で歩くことを選択します。
自ら靴を脱ぎ捨て、その身を運命に投げ出します。

炎と聖歌

エイムンは火を放たれる中にあって、歌を歌い始めます。それは普段から歌われていたなじみの深い聖歌であり、人々もその歌にはどこかで耳にしたことがあるほど馴染のものです。心穏やかな聖歌はその場にそぐわぬものなのですが、人々の乱れた心を整えるようなものです。荒々しい憎しみが消えると、周囲の人々にも彼女への哀れみが向けられます。
・ ドノヴァンはその歌を耳にするなり、頭を掻き毟り始めます。ドノヴァンはそれこそ恐怖に気が狂わんばかりに頭を掻き毟ります。
・ まず音を運ぶ耳を自らの手でひきちぎってしまいます。さらにそれでも届く音に対しては、頭を掻き毟る癖が悪化し、頭髪がはげ、皮がめくれて血が流れるほど頭を掻き毟ります。

エンディング3「そして、この世に聖歌がともる」

人々の声にも嘆きの声が聞こえます。炎は彼女の足に燃え移り、衣服を焦がします。
しかしどうでしょう。その時天がくもり始め、見る見るうちに雨雲が立ち込めると、天からは大粒の雨が降り注ぎます。 それは前上がる二人の体の火を消してしまいます。
判事はそれに大いに驚き、神への祈りの言葉を捧げます。
・ PCは・・・たぶんこういう状態になれば、誰とはいわず助けに行くでしょう。
・ PCが助けるのを躊躇っているのならば、ゲルニカで背中を押してあげましょう。このような選択をする場合はまず助けるでしょうが。
焼け爛れた足、赤黒く出血した足はもはや廃物と成り果てています。しかし、二人の命には別状はありません。
治療の魔法を使えば痛みを消すこともできるでしょう。
・ もしPCが高位の司祭であるのならば、今回ばかりは大きな効果を上げます。キズはたちまちに癒え、その廃物になりかけた足は、正規を宿らせて色鮮やかに戻ります。
・ PCが治療しなかった場合はゲルニカが引き受けるでしょう。やはり同様の効果をもたらします。
★ これはゲルニカが知らずにもたらしてしまう力の一つです。
自分の側で戦う人々の助力をし神聖魔法を強化してしまうのです。ゲルニカが行う場合は、ただふれるだけです。ゲルニカの東部にある一角獣の角は、言葉も無くともキズを癒します。

多くの兵士達はそれを傍観するでしょう。奇跡のような光景を目の当たりにしたのですから、彼らにはそれを阻むことはできません。しかし、騎士の中には、それを阻むもの達もいます。この処刑を強行しようとしたドノヴァンの仲間・口利きの貴族や将軍達です。
→ この兵士達を追い返すような言葉が必要です。
例としては「処刑したものを二度までも殺すのか?!」
「神がお許しなされた罪を、再び人が裁くのか?!」などが考えられます。
★ ここはPCには威勢良く啖呵を切ってもらいたいですね。

啖呵を切らなくても、二人が歩き出せば、自然と輪は広がりますが、まぁ言葉で追い返してしまいましょう。


さて刑場を後にした一同ですが、分かれ道までたどり着くとゲルニカは足を止めます。
天からはペガサスが訪れ、ゲルニカを迎え入れます。
「名残惜しいが・・・別れのときだ。」と皆に向き合います。
「世とはまったく不思議なものだ。この道にたどり着くには、幾多の罪と偶然があったのだろう。罪無くば起こせぬ奇跡、たどり着けぬ地もあるのだろう。」
「罪は心のうちに宿る穢れが表れたもの。心の穢れが落ちれば、いかような罪であれ、外見であれ、清く生きられることをお前達は証明した。」
「二人にはまだ苦難が訪れだろう。無事を祈ってはやれないが、清く生きる二人のもとに、苦難が訪れた時は、再び誰かがそこに集まることを信じ、名も知らぬ神に祈る。」

「えー差しあたっての苦難だが、思うに奇跡は見るものを諭すが、知らぬものには効果は無い。ドノヴァンは手を引くだろうが、帝国は追っ手を送るだろう。」
「もし、行く当てがない時は我が土地を訪ねると良いだろう。
それは新たな苦難を呼び込むことになるかもしれんのだがな?」

ここで一同に対しては二人から感謝の言葉を送られます。
・ エレオノールは帝国にはもはやいられません。帝国を出ることを決意します。
ゲルニカのところが蛮族の土地だとは知らないエレオノールは、いい人だと誤解して、ゲルニカの土地へ向かうことにします。説明したとしても、にわかには信じられません。まして100人のトロルがいるとは・・・。
・ エイムンは病の母親がいます。母親を守り、住み慣れた土地で生きていくことにします。エイムンはエレオノールの一族ですが、なんのつても無いので、帝国も意味も無くエイムンを処罰しないでしょう。そもそもエイムンの処刑はすでにすんでいるのですから。
→ エレオノールは、傍に入れない妹を案じます。
「ザイアの騎士である自分は、今こそお前を守るべきかとも思う。しかし、今の私にはその力は無い。
そして今は別の思いもある。私がどこかで生きることがきっとお前の支えになるだろう。傍に入れない兄を許してくれ。」
・ 都市にいるPCに対してはエレオノールは「妹を頼みます」と頭を下げます。

報い

それから数日後、それぞれ別々のところで生きる一同に報せが来ます。ドノヴァンが一同に是非会いたいというのです。 ドノヴァンは既に頭部が禿げ上がり、今も血を流しつづけています。頭部を掻き毟る癖が悪化しているのです。そして歌声は今もドノヴァンを責めつづけています。
「・・・金はいくらでも払おう。頼む、歌声を止めてくれ。」
エイムンの歌声は今や聖歌となって町に流れます。大手を振って歩く彼女と聖歌隊は町での人気者になました。
しかしドノヴァンにはその歌声がゆがんで届くのです。それはエレノアの歌声となって彼の脳裏についてはなれません。彼は今もその歌に心を蝕まれています。

・ このドノヴァンにどのような言葉をかけるのもPCの自由です。
・ どちらにせよ、ドノヴァンは相応しい罰を受けているのです。

ゲルニカはアンデットに詳しいとして呼ばれましたが、ここでドノヴァンの申し出に背を向けます。
引き止めるドノヴァンに対し、ゲルニカは冷酷な言葉で返します。
「死んで蛮族に生まれ変わるがいい。そうしたら、今度はお前の話を聞いてやろう。」

それからしばらくたった後、ドノヴァンは亡くなります。死因は掻き毟る手が頭蓋骨を割って、脳を掻き毟ったためだといわれています。結局彼は自分の犯した罪から逃れることはできませんでした。

エピローグ

どのような結果であれ、最後はこのエピローグにたどり着きます。

『冒険の途中のことです。
ゴブリン達と遭遇します。ゴブリン達は冒険者が来るなり、大挙して逃げ出しますが、一匹貧弱で痩せた禿げ頭のゴブリンが転び逃げ送れます。一同はそのゴブリンに追いつくと見下ろします。
そのゴブリンを見るなり、あの事件のことを思い出します。

ゴブリンは追い詰められる頭部を掻き毟り、半狂乱になるほど怯えます。
妖魔語で助けをもとめ、許しを懇願します。
・ 一同がそれに対してどのように感じるかはわかりません。
・ PCが殺そうとするのならばゲルニカはそれを止めます。
「約束を守ろう。今度はお前の話を聞こう。」  〜FIN〜』

経験点は1000点です。
報酬は・・・ありませんねぇ。相変わらず、金に縁がありません。
一応、エイムンが生き残りメジャーになれば、2000ガメルづつ支払うことができるでしょう。
ドノヴァンの依頼の場合は一人1万ガメルの報酬が支払われます。

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