◆◆◆ オープニングフェイズ 1 ◆◆◆ Cogito, ergo sum

(実体二元論・・・・・・この世界には、モノとココロという本質的に異なる二つの実体がある)


巨大で醜悪な生き物だった。
肥満の中年紳士、男爵ヒゲの太っちょがこちらを見ている。
巨大な瞳は極端に大きく、顔は笑みで彩られている。
男は風船のように宙に浮かびながら、コギトの首につけられた手綱を握っている。その有り様はさながら風船だった。
額がバカリと開いて牙が見える。

「こんにちわ!」


コギト:なにこれぇ!?(――爆笑!!)


人が有史を刻む前から自分達は存在していた。

自分達は意思を持たぬ言わば宙を漂う奇跡のような存在であった。
人間が自分達を知覚することはあまりない。

自分達にできることは、大したことではない。
災害を起こしたり、豊作にしたり、死んだ人を生き返らせたり、猿を人間に進化させたり。




コギト:大したことじゃないか。

GM:まあねぇ。人間にとってはね。



人間だったら大騒ぎすることなのだが、実際明確な意思を持たないのだから、そこには意味は存在しない。
さながらウイルスのようなものであり、周囲の生物に感染しては突然変異を誘発していた。
進化論はある意味正しい。
ただしそれは、生物が意図をもって進化を望み、自分達が叶えてきたに過ぎない。




GM:というわけで、コギトは今この世に初めて誕生しました。
わかっているのは、自分達がそういう存在だという事実と、持ち得ているちょっとした奇跡の……まあ存在だということだけだね。

コギト:ほう〜。我は神〜!?

GM:生き返らせたりは出来る?

コギト:いや。《抱擁》は取ってないから……。取ったほうがいいなら戻すぞ?

GM:いや、別に。そういうことも一応できる。まあ、今は関係ないんだ。まったく体が出来てないんで。

コギト:ふむ。

GM:なんでもできる状態。いわば、シンドロームもないといってもいい。

コギト:な〜るほど。なんとなく自分を見てみる……とかそういうこともできないんだな?

GM:自分を見るというか「目の前の男とは違う」とわかるね。

コギト:違うねぇ。……これはスゴク……違うねぇ(笑)。

っていうかコレはなんなの?


GM:見上げた先に浮かんでいた男は雲のように漂っていた。
実際漂っているのだろう。仮に、彼の名前を「クラウド」と仮定しよう。
これが君のロイス「クラウド」だ。

コギト:こぉ〜れ〜がぁ〜?

GM:クラウドは口を開ける。空中に情報物質が漂わされる。ネットリとした蛙の卵のような物が宙を漂っているんだね。
コレが彼の「言葉」だ。空気中の情報を得るために君は〈調達〉をしなければいけない。

コギト:(笑)〈調達〉ってのがおかしいでしょう。


GM:「話す」という器官をまだ持っていないので空気中を漂う情報物質を獲得してくれ。

コギト:目標値は?

GM:目標値は6です。

コギト:6か。それなら成功するだろう。それっ!(コロコロ)もう成功しているぞ。7で……11だ。

GM:クラウドから垂れ流された情報。仮に「話し」と仮定しておく。


クラウドは自分より早く生まれた自分自身であったが、二人の間にあいた時間が個体性を分けたようだ。
また毎秒数千億の『自分達』が生まれているようだが、形を形成できるのは奇跡のような確率らしい。

GM:蛙の卵のような物はもう一つ浮いてるんだね。目標値は少し上がって8。

コギト:なにか難しいことを言っている(笑)。

GM:時間が経っていくと情報物質は発散して混じっていくんだ。

コギト:ほう。じゃあ急がないといけないな。〈調達〉!(コロコロ)だからぁ〜サイコロの目おかしくない?13だ。

GM:クラウドは「存在しているだけでは非常に退屈なので、できることをするのがいい」と言っている。

コギト:確かにそれはそうかもしれない(笑)。話しかけてみよう。「こんにちは」

GM:「こんにちは」クラウドは君を誘うと、場所は公園に着いた。時間は深夜のようだ。



場所は公園。時間は深夜だ。
人間の若者が数名、一人の浮浪者に暴力を振るっていた。
若者は「仕事をクビになった」、「就職ができない」等の理由で「ムシャクシャ」していた。
どういう経緯でこういう事態になったのかはわからないが、今は浮浪者を襲いスッキリしようとしていた。


コギト:まあ、止めた方がいいんじゃないかな。


浮浪者は若者など比べ物にならない程の願いを抱いていた。憎しんでいた。
若者を憎しみ。
社会を憎しみ。
世界を憎しんでいた。
ただ弱りきった体は、もはや生命の維持もおぼつかないのだ。


さて、どちらの願いを叶えよう。


コギト:な……なんかマズイんじゃないの?どっちでも。

ロバ氏:こういう時はね。「力が欲しいか」って聞くんだよ。

コギト:なぁ〜るほど。力が欲しいですか?

GM:若者と浮浪者どっちの願いを叶えよう?

ロバ氏:先のある若者の願いも重要だよ?

GM:みんなこうやって爆誕していく。まあ、これがまず君にとってアイデンティティを得るための一歩だね。

コギト:なるほどねぇ。ん〜。ここはあまり悩んでもしょうがないよね。
最初考えた方向で行ったほうが良さそうだけど……どっちも良くないことが起こりそうなんだよなぁ。

GM:(笑)

コギト:……本当は叶えないほうがいいんじゃないかなぁ?まぁいいでしょう。

GM:叶えることに判定はいらない。「こっち」って言えばいいだけ。

ロバ氏:1、浮浪者。2、若者。3、何もしない。

コギト:何もしないとボクの存在が揺らぐ……。まあ基本的に専守防衛で。浮浪者。


GM:浮浪者


浮浪者は若者に襲いかかった。
ありえない状況に若者達は唖然としたが、浮浪者の憎しみは若者を逃がさない。
血飛沫が上がり絶叫が深夜に響いた。浮浪者は紙袋に若者をつめると次の獲物を探し始めた。
浮浪者は元々がなくなってしまった。


コギト:うっわぁぁぁああ!!……こんなことになるんじゃないかと思ったよ〜。

ロバ氏:あ〜あ。

GM:(笑)

コギト:「……あれは。なぁに?」

GM:これが君やクラウドの存在なんだね。こういう風に突然人の衝動を感じ取って、そしてそれをプッシュしてしまう。

コギト:ほう。

GM:例えば……本来人間っていうのはこういう事できないんだよね。こんな力を出したりとか浮浪者には出来ないんだ。
でも背中をプッシュしてしまうと結果……力を出した瞬間にもう人間を飛び出している。

コギト:ほう〜。

GM:彼は新しい自分を見つけることが出来たが、昔の自分は無くなってしまった。


コギト:パチクリ。ボクに価値観みたいなものはあるのかな?

GM:今のところは大してない。ちょっとなにか後味が悪いという「気持ち」を感じてもいい。

コギト:悪〜い。

GM:ただそれはクラウドには通じないものみたいだね。


コギト:ふ〜ん。「クラウドはどんなことしてるの?」

GM:クラウドも……今漂ってるからね。おんなじようなものみたいだ。

コギト:「どんな願いを叶えたことがあるの?」

GM:〈調達〉判定をやってみよう。一応コレは6でいいよ。

コギト:コロコロ)結構高いよ。13。

GM:死刑囚を脱獄させたみたいだね。

コギト:「へぇ〜。死刑囚」……!?

GM:執行人を殺害して、死刑囚はなんか物凄い動きをして脱獄したらしい。
物凄い事件だけど、多分世界的には知られてはいないだろう。あれは人間の範疇なのか?みたいな話。

コギト:「なるほど!いやいやいや。まったく簡単だ(笑)」

GM:サラッとやってるみたいだね。さてとPC1行きましょう。

コギト:この浮浪者とは戦うことになるんじゃないのか?





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