ガープスサイバーパンク ガーディアン・オブ・アグノシア

《廃工場》

廃工場が稼働しなくなって年月が立つ。電源が落とされて随分と時間が経つ。
赤茶けた錆を浮かべた建設機械の数々が動くことはもう無く、かつての作業光景 が甦ることはもう無い。
今では巨大なシルエットとなってスラムの一角にそびえるだけのコンビナート地 帯であり、かつての賑わいはナリを潜めている。
今のここは殺害現場のベスト10に入る犯罪の温床であり、この危険地帯には警察 官もノータッチである。

そして今日も、ここに集まる人々は黒い仕事にどっぷりと身を浸かっている。


裏取引は通常武装しているとはいえもう少し騒がしく無いところだが、今日のと ころは随分と物々しかった。


スラムには似合わない特上の背広の男。この薄暗い工場内でもサングラスを外す 様子はなく目線は隠したまま。汚れを気にする様子もなく廃材に腰を降ろす。

その男の前には、複数の少年達。ボロボロの衣服、痩せた肌の少年達。瞳だけは ギラギラとして、輝いていた。
少年達が男の前に出したのはサイボーグの内臓部品。

「証拠は全部回収して来たぜ。バッカーナ。」

少年達のボスなのか目深に帽子を被ったコートの少年はポケットに深く手をつっ こんだまま話す。
少年はぶっきらぼうに言ったが、その自信の程は表情にはまだ隠せないでいる。

男は上物の長巻タバコを取り出すと、それをくわえては火をつける。煙を吐いて ようやくの言葉。

「いつも悪いな」
と小さく洩らす。
少年はもっと労いを期待してふてくされた目付きをしたが、男は長巻を少年に進 める。
少年の嬉しそうな笑み。
それをくわえると、火をねだった。男のくわえたタバコの火が少年にうつされる 。

バッカーナとはこの男の名前である。
少年と男はビジネスパートナーだったが、少年は決まってこの瞬間、バッカーナ の目線・大人の視点にたったような錯覚に酔う。



バッカーナの体が動き、廃工場の闇に向き直る。それを見て少年は異変を気づく 。他のストリートキッズが気が付いたのはそれからである。

「…だが、詰めが甘かったようだな」


廃工場の闇から現れたのは武装したサイボーグ達だった。数は20人あまり、手に は大型の武装を持ち、戦闘用の改造がなされている。



★ところ変わって―

アジトにたどり着いたニコとシュウ。荷を解いて、中身を倉庫におさめに行く。 ガレージのシャッターを手で持ち上げるシュウの背後で思い出したように話をす るニコ。
ニコ「そうだ。さっきのサイボーグ。既に先に解体していたコソ泥がいたみたい でしたけど、なんで他に集まっていた奴らは、残った部品を解体していなかった んですかね?」


シュウ「ガイシャはギャングの構成員だからな。部品を売って、流れた部品から かえって犯人と疑われたり、余計な因縁を…
おかしいな。誰が持っていったんだ。ジャンクヤードの奴なら誰もがそう考える だろう」

ニコ「じゃ、第一発見者はジャンクヤードの人じゃないんでしょ。」



★犯人は探しは既に始まっていたのである。ジャンクヤードのギャング達も同様 に考えていたのである。

「ジャンクヤードで起きた殺人事件。死体から持ち去られたパーツは発見されて いない」


「出回れば第一発見者は特定できる。しかしそれは無かった。今までも無い。」


「何故第一発見者はその部品を持ち去ろうとしたのか。売買目的で持ち去ったの ではないのか?」


「持ち去る必要があったからか?」


「では、持ち去ったのは誰」


「持ち去られたのは『何』」


@ジャンクヤードのギャング達の捜査では持ち去られたのは、知覚素子や身体機 能に影響がある重要なパーツのいずれかであった。
→最後の記録がわかればよかったのだが、戦闘の様子はわからない。戦闘のプロ にしては無防備に殺されている。
ギャング達は知覚素子に問題が起きていたのではと推論した。

A被害者は過去サイバネ医師の手で戦闘サイボーグ化されていたが、医師は別物 であった。
→しかし納入業者の点では共通点があった。盗品と思われる違法パーツ。非正規 品である品であり、品を卸したのは下町で最近勢力を広めつつある名うての『ス トリートキッズ』達であった。
ストリートキッズは情報屋として活動していたためにギャングの抗争に関係があ るとは思えなかった。
しかしこれが盲点であった。ストリートキッズ達は、誰かの手下として暗躍して いたのである。



今にも始まりそうな緊迫した雰囲気、目前の銃撃戦を見下ろす影は一つ。
光学明細に身を隠し陽炎の揺らぎのような姿のコシローは困り果てていた。
コシロー「ストリートキッズ発見。でも…ヤバいよね、コレ。」



コシローは悩む。みんなに連絡して間に合うかな…。
コシロー「あ、そうだ、近くを巡回中の警察に電話しよう」

そうと決めると、直接巡回中の警官のダイヤルにコールをかける。ちょっぴり怪 しいが、気にしていられない。


直ぐに電話に出る男の声。
スズ「はいはい」

コシロー「えぇっと、今廃工場で子供が殺されそうで―」

スズ「それで?」

―と電話ごしの女の声

「何?どうしたの」


スズ「いや、下水がつまったって」

コシロー「銃撃戦が始まりそうだってば!」

―やる気の無い警官。となりの女の声。


「スズ…本当?」

不信感一杯。

コシローは大声でどなる。

コシロー「子供が殺されそうだ!助けて!!場所は廃工場!」

電話の主は女の声に代わり
「OK!すぐいくわ!」
と急発進の音が響く。


途端に銃声。隠れている天井に銃弾の雨が降る。

「上に誰かいるぞ!」
と戦闘サイボーグの声。

コシロー
「あちゃ〜」

今になって大声を出したことを悔やむ。当然の結末。…こりゃ頑張らないと。

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