ガープスサイバーパンク ガーディアン・オブ・アグノシア

《ジャンクヤード》

下層都市に存在する廃材一場である。最先端の近代都市、溢れ出たゴミの最果・ 行き着く先。出所不明の商品の数々。それを求めるジャンクサイボーグ。今日も 一場は賑わっていた。

物珍しそうな褐色の肌の青年:ニコ。落ち着き無く周囲を見渡しては、先を歩く 白いサイボーグ:シュウの背中を追う。
羽織った衣を流し歩くサイボーグのシュウ。振り返えって訪ねる。

シュウ「市場は初めてか?」

初めてのはずはない。ニコの元々の職業は廃材修理のメカニックである。でも…
ニコ「え、いやぁ―」

こんなに安心して歩き回るのは初めて、と言うのも照れくさい。
ニコ「ここには何を探しに?」
と話をそらしてみる。

シュウ「今日はお前の武器を買おうと思ってな」

また歩き出すシュウ。

ニコ「…武器ですか?」

視線がシュウの武器『刀』に向けられる。

シュウ「いや、そっちじゃなくて、銃だ」




二人が立ち寄ったのは違法改造サイボーグが出入りする武器屋である。

「ウォーマシン」

と看板がある。
確かに客のサイボーグはナチュラルボーンキリンぐマシーンである。ある意味相 応しい名前なのだろう。
しかしそうであっても世が世であり、ここが凶悪犯罪の苗床でなければ、こんな に大手を振って看板など出せないだろう。

武骨な打ちっぱなしのコンクリート。乱雑にケースに銃を詰め込んだ投げ売り店 内。店内に並ぶ銃はどれも古式な銃ばかりである。
ニコはサブマシンガン1つを取り出して、埃を吐く。昔時代物の映画でみた奴だ 。
「シュウさん。こんなん効くんですか?」



サイボーグの外骨格は戦闘用になればなるほど固くなる。それこそ銃弾などでは ダメージを与えられない。今はレーザーや微小のニードルを飛ばすニードルガン 、弾丸自体が推進激突内部から炸裂するジェットカービンの時代である。
シュウ「そっちじゃない」

シュウは立て掛けられた一つの銃投げる。
受け取ったニコの手にどっしりとした重さが伝わる。長い銃身武骨な作り、組ま れた脚組。マシンガンである。とてもとても大きな、そして凶悪な風貌の。

ニコ「なんすか?銃のお化け?」

シュウ「ゲパーダ対戦車ライフルだ。劣化ウラン弾を超高速で連射する。戦闘の サイボーグを数秒でスクラップにするにはちょうどいい品だ。」


ニコ「【メタ】ちょっ、ルールブックに載ってないですよね」

シュウ「【メタ】いや、完全版重本に1行対戦車ライフルの記述がある…らしい 」


ニコ「こんなん使っていいんですか?!そのナントカ条約に…」

シュウ「確かに対戦車ライフルの人体への使用はジュネーブ条約によって禁止さ れている。
しかしニコ。ここではこれが常識だ。」



ニコの険しい表情。
今自分は被害者の側から加害者になろうとしている。突きつけられたのは嫌悪し てやまない狂暴な暴力である。受けとることに抵抗はある。

ふと目線を移す。
シュウは刀しか持っていない。刀でも用が足りるのだ。これが必要なのは自分が 弱いからだ。
ニコ「使い方を教えて下さい。」

シュウは頷く。


ボストンバック一杯にチェーンマガジンを詰め込む。肩に担いだマシンガンとい う風貌は銀行強盗のそれだ。ニコはガラスに映ったそんな自分の姿を見て、苦笑 する。
ニコ「似合ってないな」


周囲を見るとよく似合ったサイボーグがスレ違う。みた感じ、まんま凶悪なサイ ボーグだ。
ニコ「似合ってんなぁ」




ニコ「シュウさんはなんか買わないんですか。刀とか。そういえば、シュウさん 名前からすると大陸…東アジアの人ですよね。武器は刀なんですか?」

シュウ「ああ。国は上海だ。本当は私の望んだ刀剣で戦いたいんだが、私の国で は業物にたどり着くのが困難だ。ほとんど諦めているよ。
しかし日本刀は一個作りだからな、質自体がいい。望む刀剣には及ばないまでも 、業物には出会えるからな。探すなら日本刀からだ。」

ニコ「へぇ」




店を出た二人。帰路につくなか、シュウが足を止める。
人だかりが見える。
ニコ「なんですかね」

真剣な表情で、ニコがシュウの横に並ぶ。そして人混みを掻き分けて中に入る二 人。

解体された戦闘サイボーグである。既に機能は停止しており、破壊されている。
戦闘もあったのだろうが、思いの外に損傷が少ない。その綺麗な外骨格にはすで にジャンクヤードの解体屋達が群がっている。
しかし、いっこうに作業を始める気配が無い。

ニコは飛び交う話に注意深く耳を傾ける。
・どうやら殺されたのは地元のギャング…荒事を引き受けている恐持てのサイボ ーグであるらしい。
・ギャング構成員なので 誰もが恐れて手を出さない。解体屋も指をくわえたまま だ。
・最近同様の事件が立て続けに起こっている。どうやらギャング同士の抗争のよ うだ。
しかし、攻撃しているグループは未だに特定できてはいない。


ニコ「…ふぅん」

悪党達が殺し合っている。でも、だからどうだというわけでもない。
ニコにはそこに感慨は無い。

人混みから出た二人。
曇り空の下。アジトへと歩を進める。シュウは考え事をしているのか終始無口で ある。ニコには何かあの事件のことを考えているのかと想像を巡らすことしかで きかった。

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