ガープスサイバーパンク ガーディアン・オブ・アグノシア

《コシロー@》

桜の花舞う庭園にて、二人の男が向かい合う。
二人共に東洋人。一人は長い黒髪の男。40代であろうか。もう一人はまだあどけ なさの残る童顔の若者。
二人の手にはそれぞれ刀が握られている。

刀を両手で構え、迎えうつのは壮年の男。身を低くし、小振りの刀を片手で低く 構え、今にも飛びかからんと身構えるのは若者。若者が刃を背に回したのは間合 いを悟られぬためである。
爪先だけでにじり寄る若者。男はあくまでも動かず。
不意に若者が飛びかかる。刃は鋭い。男の太刀がそれを防ぎ、若者がその隙に放 つのは掌の内に隠した手裏剣が5つ。
男はまるで知っていたかのように全ての刃を弾き落とす。
両手を添えた受けの構え―。
そう若者が判断した時には男の体躯は迫り、刃が振り下ろされる。
打ち合わされる刃。
片手構えの若者は刃を弾かれる。さらなる男の刃。
若者は身を翻して避けを試みる。
しかし、男の刃は中空を跳ね、振り下ろし様に三太刀目へと変化する。


電脳世界のその光景/画面をマジマジと見るアクロス。興味本意で除き込むニコ 。
ニコ「今の一秒ですか?凄いっすね。シュウさん」


この黒髪の男はシュウである。姿は生前のものが使われている。
アクロス「稽古とか言っても、体使ってガチャガチャやらせるのもどうかと思っ てね。彼らの場合は趣味だから―」


ニコ「もう一人の人。若いですね。子供?」

アクロス「日本人よ。みんな童顔だから子供に見えるのよ。名前はコシロー」




稽古を終えた二人は、台座から身を起こすと再び顔を会わせる。
白いサイボーグとなったシュウはコシローに称賛の言葉を送る。
「考えたじゃないかコシロー。あの手裏剣は良かったぞ」

コシロー「刀で受けさせて死角を狙ったんだけどなぁ!あーもう悔しい!」


コシローは両手のグーを上下に振って悔しさをアピールする。こうやってみると まるで子供だ。
その二人に歩み寄るアクロスとニコ。
アクロス「紹介するわ。彼はコシロー。こっちのはニコ」


コシローは「へぇ…」
と笑顔でニコを見た後、上から下まで見回す。

コシロー「なんか…弱そう」



たじろぐニコ。
ニコ「いいだろ〜そんなん。最近サイボーグになったんだからさ」

コシロー「俺人間だし」

とニコニコ顔のコシロー。全然悪気は無い。

アクロスは二人のやり取りに関心無い様子。
「コシロー。この間の件。ヨロシクね。もう口座には入金したから。」

コシロー「あいよ!ってなんだっけ?」


アクロス「しっかりしてよ。」

コシロー「ごめんなさい。ホントにわかりません!」


両手を上げる万歳のコシロー。ため息肩をすくめるアクロス。
「いい?
スラムで新組織として立ち上げしてるストリートキッズのアジトを見つけてもら いたいのよ。なるべく穏便にコンタクトを取りたくて…」

アクロスのキツい視線がシュウに向く。
「誰かさんは別件でお膳立てしたコンタクトをメチャクチャにする始末だから。 」


シュウは思わず目を反ら…しているようである。



そして―

コシローはジャケットを羽織ると、笑顔で手を振り出ていく。
ニコ「情報屋ですか?」

アクロス「フリーのエージェントよ。日本の忍者の話、知ってる?
彼がそうよ。」

ニコ「ニンジャ?Oh!」


半信半疑のニコ。続けるアクロス。
「金を払ってる間は仲間よ。期間限定的な仲間。」



表に出たコシローは手袋をつけ、ジャケットのジッパーを閉める。フルフェイス メットを被り、イヤホンから聞こえるこの会話に呟く。
コシロー「ヤだな〜。俺ずっと仲間だよ〜。シュウさん強いし、ここは金払いも いいしさ!」


そして、衣服の機能を解放。ステルスが発動すると体は完全に消え、後には足跡 すら残らない。
そして跳躍。コシローの体は文字通り宙に消えた。

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