ガープスサイバーパンク ガーディアン・オブ・アグノシア

《どこかの廃墟:バッカーナ》

その組織の発足は都市構想段階に遡る。
元々、国家間の法規に触れない人工実験都市として海上建設されたアグノシアは、同時に非合法活動の温床になるべく可能性を孕んでいた。

技術革新の光―

溢れた闇の側面を“合法的”に売買する闇の親善大使というのが今のバッカーナの立場だった。

かつてはそれを取り締まる側の人間であり、その正義感がこの都市の設計に大きな貢献をしてきた功労者であった彼が、今やどっぷりとこの世界に浸かったのは理由がある。

端的に言うのならば―
この実験都市は元々善悪の理念は無く、そんなバッカーナの下らない独善・偽善が上層部の鼻についた…とでも言うところだろうか。
取り締まる側がひっくり返り、今に至るのはおかしな事ではない。




4人の人物がその暗闇の空間にいた。いやここは何処かの廃墟なのだろう。
閑散として人気はなく人が生活するには困難な場所であった。


一人は背広にサングラスの男。
4人の中ではもっともギャングらしいその容貌の男こそがバッカーナである。

一人は車椅子に座る娘。色白で蒼白というのがふさわしい肌と黒いレザーの衣服を纏っている。
その背中には大型のケーブルが繋がれ背後には巨大な発電機械があった。
目付きは鋭く、冷たい印象を受ける。

一人は黒色の全身サイボーグであった。
顔は怒りを体現するかのような牙を向いた獣のような仮面に覆われており、体格からは成人男性と思われる。
時折全身を走る赤い光はまるで脈打っているようだった。
サイボーグは武装らしい武装は持っていなかった。銃や剣の類いは帯びていない。
ただ背中には放熱機のような帰還が羽のようにいくつか見えた。

最後の男はパッと見では浮浪者のようであった。
髭におおわれた汚ならしい顔、汚れを被り変色した帽子、裾が黒く染まり破れたコートを身にまとっており、と ても地位や身分のある男には見えなかった。

しかし、3人を見下ろす立ち位置―

3人の敬意を払った仕草から、その男が彼らを束ねるボスであることは見てとれた。


この組織の構成員はこの4人だけである。
他の部下や戦闘員なども存在しない。
勿論バッカーナのように必要なメンバーを補充し、使い捨てることもあるが、この4人に加えることは無いだろう。


バッカーナ「すまないが、ゴミ掃除が必要だ。力を貸してもらうぞ」

バッカーナが話しかけたのは全身サイボーグである。彼もおそらく視線をバッカーナに向け、頷く。


バッカーナはハッカーで情報員をしていた。シンジケート構想案を実質的に主導していたのは彼であった。


そしてその全身サイボーグはおそらく組織の戦闘要員なのだろう。


そして残る二人は―


「どうやら、お前の後継機が作られたらしい」

バッカーナは、黒い全身サイボーグに話しかけた。
サイボーグは反応を返さない。関心が無いのか感情が無いのか。


娘が口を開いた。
「それは貴方が言っていた私達の後釜…ということかしら?」

バッカーナ「調査中だが、前回それらしい奴を見掛けた。勘だよ」

娘はため息、理解のできない根拠を突きつける情報員に、呆れ顔である。
「そんな顔をするなよ?ナイン」



ナインというのが彼女の名前だろうか。
ナインの表情がすぐに消える。
「バッカーナ。
私も、いずれはそうなるだろうとは考えていたわ。
備えはしましょう。
でも備えるだけの根拠が欲しいわ。」

バッカーナ「分かってる」と言葉を打ちきる。


「備えは…するわ」

最後に繰り返したのは呟きだったか?
その語尾は闇に消えた。




やがて4人の姿は闇の中にかききえた。まるで始めから誰もいなかったように―



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