ガープスサイバーパンク ガーディアン・オブ・アグノシア



ニコ「シュプル!」



倒れている少年の元に駆け寄るニコ。
血みどろの少年―

息は―無い!
ニコ「くそ!」

ニコは諦めない。


蘇生の為の心臓マッサージを―効果が無い!


不安げにニコを見るコシロー。祈る気持ちで様子を訪ねる?
コシロー「どう!?ねぇ、どんな感じ?」

アクロスは眉を潜める。いつまでも動くニコの手を見る。
スズは達観したものだ。ため息混じりに見下ろし、疲れきったように肩をすくめる。


―やがて
ニコの手に、シュウの手が添えられる。
ニコもその答えをわかりはじめていたが、否応なしに告げられたようで踏ん切りがつかない。
ニコ「……」


ニコはもう手を動かさない。シュウも言葉をかけられない。押し黙る。
…誰にも言葉がない。


―そんな中にスズの言葉。
スズ「見てみ?」

アゴでしゃくるように、ぞんざいにシュプルの顔に視線を向けさせる。


穏やかなシュプルの寝顔。子供の寝顔だった。

《エンディング》

―そして―


「出来立て組織の急場のチームプレイにしては上出来だよ。君たちご苦労様。」

報告をするアクロスにその男はモニター越しに労いの言葉を告げる。
高い声のやせ型体形中年貴族…それが彼バルシュタインである。不健康そうな肌 に病的にやつれた男は、その報告を聞いて、やけにあっさりと答えた。




《回想〜葬儀〜》

雨が降っていた。
肌を冷やし心も冷やすかのような雨だった。

こんな事件があると、皆無口になってしまう。
いたたまれない事件。
でもどこにでもある事件。
シュプルに別れを告げたその日は雨が降っていた。
傘もささず、雨に打たれる一同。
ずぶ濡れになる中、アクロスはシュウに言った。

「満足?」


もっと上手いやり方もあったと言いたいのか―
シュプルに関わらなければ良かったとでも言いたいのか―

ニコはアクロスの様子を見る。アクロスは俯き加減になりがちな瞳をシュウに向 けていた。
睨む、というよりもっと別の感情を滲ませている。

ニコ「アクロス…」



アクロスは一同に背を向けた。コートを羽織直し、言葉をつむぐ。
始め口ごもった言葉を吐き捨てる。
アクロス「…あなたが、やろうとしていることは…実のならぬ種を蒔くようなも のよ―」


雨に打たれる寒さに身を震わせるアクロスは、まるで泣いているように見えた。




《庭園:コシロー》

「あれから数日の時が流れた。色々なことがあったようだけど、スラムの様子は さして変わったようには見えない。こんな事件も埋もれて忘れられていくんだろ う。」


庭園のベンチに腰をおろす二人の姿。
休日のコシロー。パーカーにハーフパンツ、至ってラフな姿であった。
シュウはいつも通り着物姿である。

コシロー「あぁ〜、なんかガッカリ。無駄だったのかなぁって思っちゃうよ。俺 。」


―呟き、独り言、でも耳を貸してほしい。―



シュウはチラリとコシローに視線を送る。
いや―頭をわずかに振っただけの動作がそんな風に見えるのだ。

コシロー「なんか意味あったのかなぁ」


シュウはまた公園に向き直ると、袖に腕を通して組む。そして子供に聞かせるよ うにゆっくり話す。

シュウ「―コシロー。
子供がちっちゃい時には、何かと危なっかしいものだが…
不思議なもので、子供が転ぶと必ず1度親を探すんだ。そして親がいることを知 って、“安心してから泣く”らしい。」


(シュプルはバッカーナに殺されそうになった時、俺の顔見てからえんえん泣い たな…)

コシローは思い出す。



……

………

…悔しい

あとちょっとで“シュプルのヒーロー”だったのに。




シュウはうつむくコシローに向き直る。

シュウ「…シュプルはもういない。…だから全部ダメだったのか?
―違うだろう。
お前はシュプルが辛い時、寂しい時、心が張り裂けそうな時…
隣にいてやれたじゃないか」



コシロー。目を真ん丸にする。

シュウ「正義のヒーローは、何かができたではなく、ただいるだけで―
いてくれるだけで素晴らしい。そうだろう?」


コシロー。
気恥ずかしいやら、照れ臭いやら、でも…

コシロー「そーね♪
あ、でもなんかスッキリした。」




コシロー「ところでスズは?」

とさっきまでの難しそうな顔は何処へやら、思ったことを口に出す。


シュウは何度か頷いてから天を見上げる。

シュウ「アジトにはいなかったな…
だが、そっとしといてやろう。多分クリスの墓前に報告でもしてるんだろう」

コシロー「それは絶対無いと思う」




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