部族の英雄
GM:ここは深い森にある堅固な砦。境部族の戦士達はみな最後の戦いを意識してか、着飾っていた。その中にジィクの姿もあった。
ジィク:ああ。
GM:族長のガイウスは炎の灯りを前に戦士達と顔を合わせて作戦を立てていた。壮年の戦士が現状を説明している。「砦の防御にはいささかの有利がある。しかし、数の差は歴然。長期戦になれば勝てない」
ジィク:俺もその戦士の輪の中に腰を下ろしている。「敵はもう来ている。うだうだ言うのは無駄なことだ。俺はやることをやるだけだ」
GM:ガイウスは苦々しくもらす。「タタールの部族に援軍を頼んだ」
シルヴァナ:(部族の戦士)「ええ! あのタタールに?」
GM:「正気ですか? 族長!?」
ジィク:で、タタールって?
タタール族はウルス族を含むほかの近隣部族にとって脅威であった。彼らは略奪部族であり、周囲の部族から略奪することで営んでいた。部族はほとんどが戦士という意味では、この辺境最大の勢力である。
ジィク:なるほど……「だが何もせず手をこまねいていては、ただ滅びるだけだ」
シルヴァナ:(部族の戦士)「何をバカなことを……バストラールが来なければあいつらと戦っていたものを」
GM:族長は重い口を開いた。「タタールの若き族長ガルデンに娘のアルフォンシーナを嫁がせるとして話を進めている」
シルヴァナ:(部族の戦士)「何をバカな!」
GM:――と部族の男達は忽ち顔を紅潮させて怒り出す。「バカな。タタールは長年の宿敵。手を携えるだけでもじくじたる思いなのに、シーナ様を差し出すなど……気でもふれられたか!」老戦士がクチを挟む。「言ってはならんことだぞ」
シルヴァナ:(部族の戦士)「お考え直しください! あの娘は私が狙っていたのです!」
GM:一斉に袋叩きに合う奴が一人いる(笑)
爆笑!
ジィク:アルフォンシーナ?
GM:祭祀として部族を率いていた族長の娘のアルフォンシーナである。いつか自分はアルフォンシーナを妻にしようと思っていた。しかし、その夢は儚くも絶たれてしまった。
ジィク:俺が守るべき人だったんだな。家柄なのか? 優れた戦士でも、次の族長にはなれなかったんだな。
GM:作戦が話し合われる。ある男が言う。「森に誘い込んで火をかけたらどうでしょう」老戦士は反対意見を上げる。「森が無くなれば部族は生活はできない。自分達は勝っても飢えと戦うこととなるだろう」
ジィク:もっともな意見だな。
GM:「砦に誘い込んで、砦ごと焼くというのはどうだろう」
ジィク:「それぐらいしか手は無いんじゃないか?」俺もそう思う。
GM:老戦士が言う。「砦はこの地方を守るための要じゃぞ。失うとこの土地での防衛はできなくなる。この一回で勝利を得られない時に打つ手ではない!」皆は黙る。
ジィク:「なぁ……この爺さん士気を下げるよな(笑)」
GM:「わしは状況を正しく分析しとるんじゃあ〜!」
ジィク:この爺さんは結局文句しか言ってないだろ。「で、結論は?」
シルヴァナ:(老戦士)「死ぬしかない」
GM:一斉に袋叩きに合う奴が一人いる(笑)
爆笑!
GM:戦士の一人が口を開く。「兵糧部隊を狙ってはどうだろう」
ジィク:「兵糧?」
GM:「兵糧が無ければ長期間戦えない。ただし奇襲部隊も砦に無事に戻れるかわからない」ガイウスはジィクに尋ねる。「お前の意見は?」
ジィク:俺は状況は分かっている。勝てないだろう。ただ一矢報いたいんだ。「待ち構えるか? 打って出るかということなら、俺は打って出る。なら奇襲しかないだろう」
GM:「よし奇襲するぞ」と戦の目鼻立ちが立つ。
ジィク:しかし、心配だな。他の戦士が部族として一矢報いたいと考えているのならいいが、勝ちたいとか馬鹿げたことを言っているようなら……
GM:戦士として正しい判断だね。というか、部族はこんな大規模な戦闘に対処したことがない。全てが未経験だ。
ジィク:俺たちは狩猟民族だ。元々は獲物を追うのが戦いなんだ。どれほど個人が優れていようが、戦士が強かろうが、やったことのない戦いで勝つのは容易じゃない。それぐらい分かる。でもタタールはどうなんだ。
GM:タタールは他の部族や国と戦っている。だから戦う知識はある。
ジィク:勝ち目は分かっているんだ。だが俺は負けるのが嫌なんだ。俺は一矢報いる。そのために今を生きている。「ついてきたい奴はついて来い」とその場を後にする。
GM:若者達が「俺もいくぞ!」と槍を構えてついてくる。若者達は血気盛んだ。他にも同様に死を覚悟した男達もついてくる。
ジィク:「バカだな……」
GM:着飾った自分に武器を差し出す人影。君の剣だ。それを手に持つのはアルフォンシーナだ。火の光に照らされる彼女はどこか物憂げで、その美しさもどうにも切なさを感じてしまう。
ジィク:この人を好きだったんだがな……「ありがとう……」武器を受け取り、背を……向けよう。
GM:さし伸ばした手が宙をかき、君は背を向けてあるいていく。
ジィク:「生き延びろよ……」女子供にはできない。女子供に「死ね」なんていえない。
陣幕の裏側
GM:バストラール天幕、ランタンの灯りの中、女王を囲み、騎士達が作戦を立案している。その中に王子や騎士達の姿もある。
シルヴァナ:ほう、凄いな。身分や格式を重んじてきた名家としては驚きの光景だ。
GM:そうなんだね。若い騎士。身分や地位はあまり関係ない、生まれも育ちも肌も血の色も。その皆の前で女王は地図を広げている。取り立てられたばかりの若い騎士カークウッドが言う。
「女王。相手の軍勢は大軍の戦にはなれておりません。おそらく作戦は3つかと。普通プレイヤーは――」
爆笑!
ジィク:プレイヤーですかぁ!(笑)
GM:「別働隊による、本陣奇襲!」
フィンチ:うん。やる。
シルヴァナ:確かに。「では本陣を固めておけば大丈夫じゃないかな」
GM:特に中・高生のプレイヤーは砦におびき寄せて一緒に焼き落とす作戦をとるものです。
爆笑!
フインチ:ひどくない?
GM:私は陽動のために兵糧部隊をあえて相手にさらして攻撃を誘ってはどうかと思います」
シルヴァナ:「うん、私もそう思います。兵糧を断って遠征を頓挫させるのは定石です。相手もその手で来るかと」
GM:シルヴァナの父エドガーは「もし失敗し、兵糧を失えば色々と補給の面で厄介なことになりますが」という言葉を聞くカルディア女王。唇に指をあてしばしの思案の元「やってみろ」とカークウッドを見る。瞳を輝かす騎士カークウッド。
ジィク:まんまと乗せられたようだな(苦笑)。
GM:「はい! 吉報をお待ちください!」と勢い盛んに出て行く騎士。周りの騎士達も心配そうに進言する。「大丈夫でしょうか? 作戦は中々ですが、まだ若い。実際に指揮を取るのは始めてですよ」女王は「若いからな」と相槌を打つと、エドガーに目配せする。エドガーは頷き、「いくぞ」とシルヴァナを引き連れる。
シルヴァナ:「はい、父上」
GM:エドガーは天幕の外で、指揮官となった新米騎士に話しかける。「今回は私が副官をする」「え…あなたが来ては……私の手柄に……」としどろもどろの騎士。
シルヴァナ:援護すると悪いのかな? でも今は父上に従っておこう。私も初陣だ。
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