サイドB 【バストラールの侵攻】


シーンPC 駕籠の鳥王子フィンチ
部族の英雄ジィク  





GM:戦が始まろうとしていた。

フィンチ:「なんで! 奴隷制は終わるんだ! 僕が変えるのに! なんで! なんでなんだよ!」

ジィク:本気で、ウルスはバストラールと戦うつもりなのか? 俺には勝ち目があるとは思えない!!


GM:そうなんだ。ここでウルスはタタールとインダストリアを加え、それにランカスターを加えた反バストラール連合を組織していたんだ。そういう情報が女王と一同にもたらされる。

ジィク:ウルス族は元々自分たちの部族の考え方だけで世界を回していて、国とかそういう大きな概念がないんじゃないかな。多分ウルスの人々の本音は敵討ちだろう。アルテイの国作りとは少し違うんじゃないかな。


フィンチ:「え!?」なんなの……バストラールと!? え!!

ジィク:無理だろ。もうウルスにはかつての力はない。強いっていってもそれは個人の強さだ。戦争はそれで勝てるものじゃない。そしてタタールも今はガルデンは……もういない。


GM:女王の裁可を待ち、騎士ならびに重臣も並ぶ王座の間。カルディアは方針を宣言する。「インダストリアに兵を向ける」

フィンチ:インダストリア?


ジィク:連合の一つの国だな。初めて出てきたから、よくわからないんだけど。

GM:バストラールも目をつけていた領地で、ウイリアムという侯爵が安定した政治を運営している。市民を交えた議会政治だ。バストラールも目をつけていたが、手を出す口実がなかった。それが今回のことで、王手がかかった。

ジィク:ウイリアムには寝耳に水だろうな。ウイリアムの内政方針を聞けば、この戦争……彼の取る作戦じゃない。


フィンチ:「それ、なんですか! それが平和なんですか。
そのために一杯人が死ぬじゃないですか!」


ジィク:いや、戦争っていうのは、勝つべき時に戦うものだよ。

GM:このまま辺境に進撃しても、あの辺鄙な土地では泥沼の戦い・ゲリラ戦になる場合がある。そうなると戦争の勝敗自体がわからなくなる場合もある。

ジィク:ウルスは数が少ないからな。ゲリラ戦しかないだろう。

GM:バストラールとしては、この戦、実を取る。

フィンチ:実?

GM:この連合の中核はアルテイではなく、人々の名声があるウイリアムだ。そのウイリアムを攻めるのは兵法にも通じている。

ジィク:女王は戦に関してはまるで油断も隙も無い。


フィンチ:「インダストリアに攻めてもアルテイは出てこないかもしれないじゃないか!」なんとか皆を説得しないと……!

GM:宰相は説明する。「フィンチ王子。女王は反バストラール連合を形骸化しようとしているのです」

フィンチ:「形骸化?」

GM:「死文と言い直してもいいでしょう。アルテイは連合を提案した手前インダストリアに兵を出すでしょう。さもないと連合は有名無実になってしまいます」

ジィク:そうか連合の足並みが乱れるな。

GM:「そして仮にアルテイが兵を出すなら僥倖。これはアルテイをおびき出し、磐石の構えで野戦にて辺境部族を討つ作戦でしょうな」

ジィク:確かにウルス族は平地での戦いには向かない。平地で数で挑まれたら確実に全滅だ。

GM:ウルス族に言われたら説得力あるな。

フィンチ:アルテイは兵を出すの?


GM:これは部族の戦士から得た情報なんだけど『インダストリアはアルテイの第二の故郷』らしい。拘りがあるようだ。

ジィク:それは部族には関係ないことだよな。多分大部分のウルス族は言葉も通じないぞ。援軍……というのに納得があるとは思えないんだがな。


GM:うーん。アルテイの立場で言うのなら、大義名分もある蜂起だし、圧制された人々を解放しようとしている。アルテイの構想通りいけばバストラールは分裂。バストラールと拮抗する対立連合が出来る。

フィンチ:それじゃ戦いは終わらないじゃないか。

GM:小競り合いだけで済む。そういう小規模な戦いだけに治めることが大国の専横を防ぐ手段だということだ。


フィンチ:「あの僕……ちょっとわからない。戦争って言うのは戦うだけじゃないじゃないですか。そのために色々な人々が資金とか財産とか投じて、人々も搾取される。小競り合いの戦いでもそういうことが繰り返されて、それはずっと搾取されつづけるのと何も変わらないじゃないですか」


GM:宰相も驚く。王子のしっかりした意見だ。そしてヒルダは女王に噛み付いた。「私だったらこんなやり方は取らないわ!」

ジィク:フィンチに似てる。姉弟だな。ヒルダはどうしたいんだろうな。

GM:反乱の鎮圧は避けられないとしても、こんな大火は望んでない。

ジィク:この反乱の首謀者はアルテイだ。この反乱を止めるには首謀者を止めるしかない。アルテイを斬らない限り……この戦いは治められない。

フィンチ:「僕はアルテイに会いに行きたい」

ジィク:「交渉に行っても刺されるぞ」ヒルダは若者に殺されかけた。

GM:君に目線が集まる……が皆はあまり君の出自を気にしないな。

ジィク:皮肉だ。あの時、全てのウルスが降伏していれば戦いは終わったのだろうか。女子供に未来を託すとして、残された子供が武器を手に取るとは……。

フィンチ:「なんとか戦を止められないのか……」

ジィク:この戦い。俺には勝敗の見えた『無駄な戦い』でしかないと思う。「俺の考えでは、アルテイを討って蜂起自体が下火の内に解決すればインダストリアは戦わずに降伏するんじゃないのか?」

GM:ではその意見を受けてヒルダが提案する。「私が手勢と辺境に向かいます! 軍の用意や編成も私達だけなら早い」

ジィク:勝負になるのか?

GM:「相手の数が少なければ戦になるし、私は土地に詳しい仲間もいる。こちらが少ないなら少ないなりの戦い方をするわ!」

ジィク:勿論、俺が案内する。


GM:「ランカスター伯爵はどうなさいます?」と宰相。

フィンチ:ランカスターまで攻められてしまうのか……「そんなの絶対おかしいよ。だって戦う理由なんてないじゃないか……」

GM:アグニの意図を知っていて行かせた。

フィンチ:そんな。違う。少なくともアルテイと同じ方針のはずはないんだ。

ジィク:ここで失敗するとランカスターも討たれることになるんじゃないか。


フィンチ:ああ、やはりバストラールは恐ろしい国なんだ。そして僕はその国の王子なんだ。でも行こう。「僕はランカスターの元に行く!」死ぬかもしれなくても!


GM:女王は止めない。「やってみろ」

ジィク:そういう人だ。

GM:「だが、私は予定通り、軍勢を纏めてインダストリアに出兵する。インダストリアは市民議会が紛糾するだろう。威圧して様子を見るが、場合によっては攻める」

フィンチ:「う……!?」

GM:「――がどうなるかは、お前達各々の働き如何に関わっていると思え」アルテイの援軍がこなくて、ランカスターが離反すれば、インダストリアは孤立だ。

ジィク:そうか女王はこちらにも任せてくれるのか。アルテイを止めたとしてウルスを説得できるのだろうか……いや、やるしかないんだな。キヌバは生きているのだろうか。あいつは……生きていたら辛いだろうな。

GM:「さて戦の布陣だが、その前にエドガー・フォレスティ」エドガーは跪いていた。近衛騎士の娘・シルヴァナの反逆。重罪だ。

ジィク:無念だろうな。長年抱いていた忠誠心をこんな形で疑われることになろうとは。

GM:「反乱の討伐をせねばならぬ」女王の声。騎士の表情がこわばる。「エドガー。お前にも出てもらうぞ」「は……」
「私の近衛として、先陣に出よ」

フィンチ:それは?

GM:戦においてはもっとも命を落としやすい場所。されど、女王の部隊の前なれば、それは信頼の証に他ならない。エドガーの瞳に大粒の涙がたまる。「御意」「国は宰相に任せる。各自兵を整えよ」

ジィク:ああ、やっぱり名君だな。この人は。





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