インダストリア


周囲を石の城壁で囲んだ堅牢な城塞都市がインダストリアだ。ウルスの習慣から見れば、それは異質な光景なのだろう。


アルテイ:「何故、石の壁、あるのか。馬が走りづらい。風も止まる」

GM:コニーは振り返る。「力の無いものを守るためっス」

アルテイ:「力のない、守る?」

GM:「姫様みたいな奴が、いっぱいいる。誰もがアンタみたいには生きられないっスよ」

アルテイ:「そんなことない。風と一緒に生きているだけ、誰でもできること」


GM:都市の内部。平均的なこの時代の都市よりもそれは文明的で、そしてウルスにとっては非常に珍しい。

アルテイ:「灯りだ! なんで光る」

GM:プリメラは説明しようとして、「あれはね。あれは……コニーどうやってつくの?」と逆に尋ねる始末。

アルテイ:「なんで、地面に石をいっぱい敷き詰める。馬が走りづらいぞ」

シルヴァナ:そりゃ遊牧民族的にはね。

アルテイ:「あの服装も動きづらい」


GM:そうして案内、されたのは、この街でも一際大きな館。その入り口には手を腰の後ろに回し、片手に杖をもった壮年の男性。

アルテイ:侯爵だ。

GM:細い線は戦場に立つ男ではなく、宮廷が似合う。端正な顔立ちに残された皺は苦悩の片鱗を思わせる。しかし、アルテイにはむしろ老いた鷹を思わせる。命の奪い合いなくして培われない鋭さをどこかに持っているような気がした。

アルテイ:じゃ俺、片膝をついて額の前に両手を置く。「アルテイ・ウルス」

GM:プリメラは安堵の笑顔とともに走り、彼に抱きつく、頭を軽くなでる侯爵。そのまま手は屋敷の中へと少女を誘う。プリメラは意を理解したのか中に走っていく。
「私はお前に礼をしなくてはならないな」という侯爵の言葉のもと、アルテイは館に案内され、そして数年の月日が経つことになる。

アルテイ:そして現在に至るわけだ。


GM:ウイリアムについて説明しておこう。ウイリアム侯爵は都を収める侯爵だったが、現在はほとんど名誉職であり政治・行政は民間と連携してやっていた。

アルテイ:それって議会政治?

GM:そうだね。行政に民間が関わる。ウイリアムの政治の根幹は市民の知性の高さだ。民主的になればなるほど、質の高い国民が問われる。そういう意味で、非常に知識階層が育っている国なんだ。

アルテイ:なるほど。

GM:しかし、マイナスの部分もある。軍事的には脆弱。外交や交渉だけでは凌ぎきれないこの時代特有の難局は、最終的には戦になるのだが、決定的にその経験が国民には足りないんだ。民間人は民兵も脆弱なら士気も低い。

アルテイ:軍事化はできないんだ。戦国時代の大内家みたいな感じなんじゃないの。

GM:難解な政治やり取りはウイリアムが行っていた。同盟国も多く、一種の防衛協定も引いているし、傭兵の確保もできている。彼の国防政策は戦う理由を与えないことだ。

アルテイ:外交政策が中心なんだね。

GM:そんなわけで周囲からも名君として親しまれていた。

アルテイ:バストラールはこの豊かな富を狙っているのか。

GM:現在のところ、理由は与えていない。




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