奴隷の反乱




GM:その日の晩、寝付けず見ていた窓の外に、夜の闇に赤い炎が浮かび上がっている。

フィンチ:「え!?」

GM:「これは……もしや」

フィンチ:「誰か!」

GM:と出て行っても王子様に説明する人がいるわけではない。

フィンチ:情報収集!

GM:いいとも目標は12だ。

フィンチ:(コロコロ)14。出ました。

GM:では――「ジィク! 大変だ。きてください」とハバリク。表は天を焦がす炎が見える。火災の炎だ。ヒルダガルデは既に鎧を着ていた。「奴隷の反乱よ。鎮圧に向かう」ヒルダはそういって答えたが、狼狽の色は隠せない。

フィンチ:「姉さん! 奴隷! 反乱!?」

GM:と混乱の中、君はヒルダの元までやってくる。

ジィク:「場所は!?」

GM:枢機卿の館で大規模な奴隷の反乱が起こっているらしい。

ジィク:「姫は……」ってここにいてほしいけど、きてしまうよな。あの姫だから。横に走っていって「離れませんよう」

GM:「命令だ。準備しろ」威圧する言葉で無理に飲み下させる。ゴダは「くそ! 何だってんだ。もう少し待ってくれれば俺らがなんとかしてやったんだぞ!」と斧を持つ。

フィンチ:僕は……行ってみる! 飛び出していこう。自分で確かめたい。




GM:大きな混乱が起きる。とてつもない大火災と奴隷達の反乱がバストラールの夜を焼き、人々を恐れさせた。

シルヴァナ:火はタタールの武器。私にも想像はつくぞ。

GM:通りには既に部隊が派遣されていた。シルヴァナも通りに配置され、反乱の鎮圧を行っている。これはタタール族の反乱なんだ。

ジィク:あの奴隷たちか……! これはガルデンの指示なのか!?

GM:枢機卿は突如として従順だった筈の奴隷に反乱を起こされていた。これほどの奴隷を保有していたことを国が把握していなかったことから、この惨事は多くの被害を出す。彼は完全にメンツを失った。

シルヴァナ:ガルデンは何故こんなことを……


GM:そして反乱は鎮圧。騎士団の素早い対応が功を奏し、タタール族はほどなくして全滅する。反乱は小規模であったが、バストラール市民を恐怖に陥れたこの反乱は後に多くの物議を醸し出す。

シルヴァナ:なんて後味の悪い……


ジィク:昔はいがみ合って殺し合いをした部族だったが……こんなことを望んだわけじゃなかった。ガルデンも加わっているのか?

GM:ガルデンは……中には居なかった。

シルヴァナ:私は館に戻りガルデンを探す!

GM:鎮圧もそこそこ目処をつけた君は後任に任せ、帰宅する。ガルデンを探すためにだ。別邸に向かう君、部屋にその姿がある。窓から光景を見ていた。

シルヴァナ:「ガルデン!」私は駆け出す。そして詰め寄る「何故だ!これがお前のしたかったことか!!?」襟首を掴み……

GM:「違う」とその手を掴んだ。

シルヴァナ:「……!!」

GM:「俺の望みじゃない……戦士たちの……望みだ」

ジィク:多分あれは部族の意志なんだ。ガルデンはそれを黙認した……そんな気がする。

フィンチ:僕はここでガルデン……アグニのもとを訪れる。ここで答えがわかるんじゃないかと。いいかな。

GM:いいとも。鎮圧前に飛び出したというのに、随分と手間取ってしまった。フォレスティ家にフィンチが到着した時、既に口論が始まっていた。


フィンチ:二人の口論を見上げて「全部あなたの差し金なんですか!!この奴隷の反乱も!」

GM:「関わっていないというなら嘘になるな……」階下の君を見下ろすガルデン。隣にはガルデンに怒りと不信の眼差しを向けるシルヴァナの姿。


フィンチ:「あなたなら、止められるんじないんですか! あれじゃ無駄死にだ」

GM:「無駄にするかどうかはこれから決まる」

フィンチ:「どういうことですか?」


GM:「王子、誰にでも、自分にしかできないことがある。そしてやらなければならないこともな。お前もやることがあるんじゃないのか?」


フィンチ:「僕ができること……?」そうか……僕に無駄にするなといっているのか。でもだからといって……









GM:そしてそれから後日のことだ。顛末が報告され王宮では会議が行われる。奴隷制度全体に波紋が広がる暴動だ。

ジィク:枢機卿は?

GM:国内では非難の嵐、国外でも糾弾が始まる。奴隷の大手買取の危険性も論議が上がった。多民族国家になりつつあるこの国家で、制度のひずみが明らかになっていった。

シルヴァナ:そうかぁ……


GM:「という顛末にございます」宰相は報告した。カルディアは髪をいじりながら話を聞いていた。「さてさて、どうしたものか」と口で入ったが、まったく考えている素振りはない。宰相は顔色を悪くする。

フィンチ:「このままじゃ何も変わらないじゃないですかっ!」

GM:当然大臣・学者・宰相は驚く。君が声を上げたのは初めてのことだ。そんな中カルディアが君を見る。「考えがあるのか?」

フィンチ:具体的にはないけど……でも出来ることはあるはずなんだ!「はい……」

GM:「ではお前に任せる」とカルディアは言うと、手にしていた小さな杖をほうる。全権を委ねるの意である。杖がフィンチに手渡される。

フィンチ:「え、僕が?」僕は杖を見つめて。そうか……


ジィク:ガルデンは、この奴隷制度自体に問題を提起する波紋を投げかけたかったんじゃないのか。この国は奴隷と戦争を主産業にする国だったんだ。ガルデンはその文化と戦ったんじゃないか……

GM:あれを黙認することで?

フィンチ:重いな……





シルヴァナ:後日なら、私もガルデンと話がしたいんだ。


GM:いいとも。家ではあの暴徒鎮圧も手柄となったこともあり、父も鼻高々であった。母親は王都での前代未聞の事件に肝を冷やしたようだ。シルヴァナはガルデンの部屋に立ち寄るのはもはや日課のようになっているみたいだね(苦笑)。

シルヴァナ:そうかも。色々話がしたいし、わからないことばかりで、毎日のように考えてる。

GM:毎日のようにガルデンのことを?

シルヴァナ:うん。毎日。

GM:あの……それって


シルヴァナ:私はあれからどういう人が反乱を起こしたのか、全体をわかるように整理したいと書類を作っている。でも個人のことはわからないからガルデンに聞こう。そして部屋を訪ねた。

GM:ガルデンの書斎を二人で囲むと机は実に狭いと実感する。「あれは一度は奴隷に連れて行かれたところを俺が助けた者たちだ」

シルヴァナ:「枢機卿に面識があったのか……」

GM:「ああ。あいつらは戦士だ。戦う覚悟は出来ている死ぬ覚悟もな。だが何のために命を使うかは自由だ。あいつらはバストラールの制度に一矢報いたかった。俺は……協力し……段取りを組んだ」口取りが重たい。


シルヴァナ:「ガルデン。反乱を起こした者たちは、無駄死にしてはいない。確かに新しい流れが生まれていっているよ」と手を……うん、と。「私はあれからよく考えるのだが……よくわからないんだ。お前は時代を進めたかったのか? 時代に一石を投じたかったのか?」

GM:黙るガルデン。

シルヴァナ:「でも……お前は……この後、謁見に挑む。何か残すのかもしれない。でも、そうしたらお前も……」

GM:「俺は負けたか?」シルヴァナの手を掴む。

シルヴァナ:「え!?」

GM:「俺はまだ負けていない!」

シルヴァナ:「……!」

GM:「お前の目の前にいるのは、最後のタタールだ。全生命とタタールの歴史を背負った俺こそ、最後にしてタタールの全てだ」

シルヴァナ:「ああ」

GM:「タタールは滅びない。俺が死ぬまではな!!」

シルヴァナ:「でも死んでしまったらそれ以上は戦えないじゃないか」

GM:ガルデンの目には強い意志がある。

シルヴァナ:う…ん。止められないな。「はぁ……お前を慕っている者たちの中では報復をする者はいるだろうし、その生き方に影響を受ける者も後を絶たないだろう。戦になるぞ」


GM:「本当は、そうなって欲しくないと俺も願った。だが、何を感じるかは自由だ。俺は俺だ。そして他の奴も、自分のために生きて答えを出すならそれでいい。後々の人々の生き方は、結局彼らに委ねる」

シルヴァナ:「だからアルテイに任せようと思ったのか……」

GM:「アルテイが部族を率いれば、それは俺の戦いじゃない。あいつらの戦いだ。それは止められない」


シルヴァナ:奴隷の反乱を、武装蜂起と被せなかったよな……。お前は本当は戦争を望んでいないんじゃないのか?




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