二つの部族




GM:山賊のアジトを目指し、サーシャを馬のセレスの背に乗せ、コニーを引き連れて森に分け入る。

アルテイ:街はワトキンスに任せておけば大丈夫だろう。

GM:そんなわけで、一同。やがて夜の帳が下りる。焚き火を燃やしていたところ、知覚判定だ。目標値は12。

アルテイ:(コロコロ)9失敗だ。なんだ獣か?

シルヴァナ:ニャー

アルテイ:なんだ猫か。……って死亡フラグじゃないか(笑)


GM:不意に草がゆれる。それは夜行性の動物と思われたが……タタールの部族の襲撃である。サーシャの首筋に刃物が突きつけられ、弓を構えるコニーの周囲から多くの弓矢を構えた戦士たちが取り囲む。

アルテイ:この戦い方はタタール。俺は槍を構えもしない。「待て! 俺は、ウルスだ。それに彼女はウルスの巫女だぞ!」

GM:男達はウルスの族長の息子だとわかると弓を収める。コニーだけは縛って木に吊るすけど。

アルテイ:(コニー)「やってらんねっス」


GM:というわけで部族に連れて行かれるんだ。

アルテイ:「今部族を率いているのは?」

GM:「ガルデン様だ」ガルデンは父がもっとも恐れたタタールの戦士だ。君より少し年上だった。

アルテイ:ずっとあの男を倒せと教えられてきたわけだ。「あのガルデンか。あいつとは切り結んだことしかない」

GM:彼らがアジトにしている場所まで向かう道のりは困難だった。



崖の上に張った縄を端として渡り、毒河に腰を浸らせて泳ぎ、道無き道を進んだ後、ようやく山の裏手にある隠れ里にたどり着く。岩肌を削って作った回廊と横穴式の住居で、山肌は天然の要塞のようだった。


シルヴァナ:「おや、新しいお客さんかな」

爆笑!




GM:ここにはウルスの部族の女子供の姿もある。

アルテイ:「みんな!」当然顔を知っている。

GM:「アルテイ様が帰ってきたぞ!」「サーシャもいる!」

アルテイ:ばつが悪そうに答える。「みんな無事でよかった」俺は何もできていないからな。

GM:どうやらここに一緒に住んでいるようだった。部族の男達の姿は見えず、全滅したという噂は本当のようだった。同様にタタールも女子供の姿が無かった。「族長の血筋絶えていなかった」と感涙する老人。

アルテイ:「長老達もよく無事で。親父のことは聞いたよ。姉さんは」

GM:「アルフォンシーナ様はここにいません」

アルテイ:「どうして! どうしてだ! 姉さんはどうなったんだ?」

GM:君を案内するのは屈強な肉体を持った邪印使いの男。確か名前はキヌバといったか、有能な戦士だ。「あれは偶然でした。手紙を出そうと街まで降りたところをつかまったのです」

シルヴァナ:なんで!

アルテイ:「なんだって! 手紙……じゃあ俺のせいか」

GM:奇妙なことはそれからも手紙と仕送りは届き続けているのだけどね。






GM:部族の戦士達の歓声が上がる。ガルデンが帰還したのだ。

戦士達の歓迎を分け入って屈強な男達が帰ってくる。タタールの戦は華やかだ。全財産の装飾品を身にまとい戦う姿は戦士であることを誇りにする。


GM:先頭を歩くガルデン。それに部族の者が耳打ちする。「アルテイが……」その表情は頑ななものとなりマユが潜められる。

アルテイ:「ガルデンか!」

GM:「戻ったのか……アルテイ。遅かったな」

アルテイ:「インダストリアは石畳で馬も走れなかったんだ」

GM:「風も通らぬと腐っていたのであろう。お前は芯の無い男だからな。お前では族長の後は継げない。帰れ。お前などいらん」

アルテイ:「おいおい。ここまで来てやったんだぞ!?」

GM:「呼んだ覚えは無い」

アルテイ:「俺もこのままじゃ帰れない!」

GM:「そうだな。ここで追い返せば、ガイウスへの義理が立たぬな」

アルテイ:「そうだぜ。タタールの名が泣くぞ!」


GM:案内するガルデン。動物の毛皮の上に腰をおろし、肘掛に持たれるガルデンは涼しげな顔を装い、迎え入れる。「今ごろ戻ってくるとはな。あの世でガイウスも泣いてる。風の名が泣くとな」

アルテイ:「まずは戦士たちの霊に祈らせてくれ」左肩に手をおいて祈りを捧げる。

GM:「ガイウスはよく戦った。勇敢で恥ずかしくない戦いぶりだった。だが奴は最後に勝負を捨て、女子供を逃がすに走った」

アルテイ:「それは違う! 女は子を生むことができる。風の民を明日に運ぶことができる!」

GM:「なんだと……」と睨みつける。

アルテイ:「そんな話をしたかったわけじゃない……」

GM:「ガイウスはバストラール女王カルディアを恐れていた。だから息子のガレス程度に撃たれたのだ。ガレスは当時13。まだまだ子供だ。オレの知る限り、ガイウスはガレス程度に打たれる男ではなかったが…負けを決めた男の末路など惨めなものだな」


アルテイ:「バストラールかぁ、姉さんは無事かな……」

GM:「あいつなら詳しいだろうな」

アルテイ:「あいつ?」

GM:自分の部屋まで案内、吊るされている彼女を指差す。「あいつだ」

シルヴァナ:「私に何かする気だな! エロ同人誌みたいに!」

爆笑!




シルヴァナ:鎖につながれている。「私に何を頼もうっていうのだ!」

アルテイ:「見たところ良家のお嬢様のように見えるが」

GM:ガルデンは鎖を解く。

シルヴァナ:「お前?」

GM:「鎧も盾もなければこの女は怖くない」

シルヴァナ:本当に怖くないよ! 只の剥き海老だよ!(泣笑)

爆笑!




GM:「この女は騎士だ。斬りかかってきてな」

アルテイ:「お前みたいな怖い奴に切りかかる女がいたとはな」

GM:「ふっ」と苦笑するガルデン。


アルテイ:よし共通語で話しかける「これでわかるか?」

シルヴァナ:「共通語だな」あ、そういえばガルデンも話したね。



GM:ガルデンは知識人のように見える。部族の知恵なのか、光源をよく取り入れた居住空間も快適なら、部族内は規律も守られ、少なくともこの土地では争い事はおきていない。文化形態は違うが、それは劣っているようにはみえない。

アルテイ:「あんた何者だ。バストラールの人間のようだな」

シルヴァナ:「私の名前はシルヴァナ・フォレスティ! バストラールの騎士だ」

アルテイ:「騎士様……ね」


GM:「数年前、進行してきたバストラール軍の指揮官の一人だな。お前は。ガレスの指揮する部族掃討作戦の中に見たという者もいる」

アルテイ:じゃあその瞬間胸倉をつかんで「お前はガレスの配下だったのか! よくも親父を!部族のみんなを! 姉さんをどこへやった!?」

シルヴァナ:「待て! なんのことだ?!」

GM:「……よせ」とガレスはその手を遮る。「女だ」

アルテイ:「すまん。頭に血が上った」そうだな……ここで心を落ち着け冷静になって聞き糾す。「アルフォンシーナというウルスの巫女を知らないか」


シルヴァナ:だいたいの状況は推測できる。だが「……知らないな。兄上だったら何か知っているかもしれないが……」

アルテイ:「何!?」

シルヴァナ:「兄上は、ガレスの副官をしている。多分、詳しいこともわかるだろう」

アルテイ:「姉さんは……アルフォンシーナは生きているのか?」

シルヴァナ:「彼は…ガレス王子は人質などとらない男だからな……」

GM:「お前が帰ってきたおかげで、ようやく俺もウルスという荷物を降ろせると思えば、喜ばしいことなのだろう。だが、見たところ、お前には奴等を養うことはできぬようだな。戦士も無く土地も無い有様ではな」

アルテイ:「シルヴァナ。あんたがガレスの部下ということは本当か」

シルヴァナ:「それは違うな。語弊があるな。私達は王族に使えている近衛だ。ガレス王子に直接仕えてはいない」

アルテイ:「じゃあ何でお前がこの土地に来ているんだ!!」


GM:「お前はフィンチ王子に仕えていた騎士なのではないか?」とガルデンが口を挟む。

アルテイ:「え?」

GM:「ランカスター伯爵に兵を向けたフィンチが敗北。捕虜になったことは知っている」

シルヴァナ:そこまで分かっているのだな……話してしまってもいいだろうな。どうせ勘付かれている。「……身代金を渡しにいくところだったんだ」

アルテイ:「金を持っていたのか?」

GM:「欲しいか? 半分やる」

シルヴァナ:「使うなぁ!!(泣笑)」

アルテイ:「じゃああんたの目的は身代金交渉か」まだその交渉話、生きている話なのか。

GM:日数は随分立っている。ガルデンの説明だ。「身代金交渉なら不可能だ。ランカスター伯爵は難癖をつけられてバストラールに狙われている身だ。王子を人質にできればいい保険になる。普通は返したりはしないだろう」

アルテイ:そうだな。ガルデンはルーラー(軍師)だったな。多分こいつの読みは適格だろう。

シルヴァナ:「ううう!?」ギリギリ。





アルテイ:「ランカスターかぁ」俺はどのくらいランカスターについて知っているのだろう。

GM:目標値10で一応の情報を教える。12ならそこそこ。情報判定。

アルテイ:(コロコロ)10。ぴったりだ。「ランカスターって奴は確か……」

GM:その値だと、一応表向きの情報かな。ランカスターはバストラールの領主の一人ながら、バストラールに何かと目をつけられている領主だ。宰相は難癖つけてランカスターの失脚を画策し、建国祭では大きな珍事をやっている。毒の杯を女王に出して互いにあおり合って対決したらしい。

シルヴァナ:ロシアンルーレットだ。

GM:勝負は結局うやむや。


アルテイ:「変な食わせ物らしいな」
そうだなぁ…ここでアルテイの方針なんだけど……。まずシルヴァナを仲間に引き込む。ガルデンと和解をしてタタールを仲間に引き込む。そしてインダストリアとランカスターとウルスの連合を組めないかな。

シルヴァナ:確かに…それは大きな勢力だけど……私は……


アルテイ:敵の敵は味方だよ。これは大勢力になる。バストラールを分断できるんじゃないかな。インダストリアには軍事力がないけど、代わりにウルスとランカスターの兵力を使えばいいんじゃないかな。インダストリアも名声と富があるし。でも手駒が足りないな。

GM:コニー達に相談しなくてもいいのかな?


アルテイ:まず目鼻立ちを決めてから説明するよ。そうだ。シルヴァナを使者に行かせて取次ぎ、そこで話を持ちかけよう。

シルヴァナ:私はそもそもランカスターの使者になるつもりだったぞ。



アルテイ:そこでガタっと立ち上がる。「ガルデン! 俺は決めたぞ!」

GM:ガルデンは立ち上がった君を見上げる。

アルテイ:「お前は俺の味方になれ」

GM:「なんだと?」

アルテイ:「俺が考えているのは、もう火とか風とか、そういうものじゃないんだ! もっと大きなものを考えるんだ。今ウルスの領地を臨時に治めている騎士ワトキンスとは話をつけてあるんだ。あいつは俺に従ってくれる」

GM:彼は距離を置くかのように黙って君を見ている。


アルテイ:「いいか! このままこの隠れ里にいてもいつかはバストラールに征服されてしまう! ガレスにだって敵わないぞ! でも俺たちとインダストリアとランカスター。この国が一枚岩になるんだ!」

GM:「なるほどな……アルテイ。確かにお前は昔のアルテイとは違うな。だが戦に勝てる布陣とは思えんな。……やるならお前一人でやれ。俺は断る。俺には俺のやりたいことがある」

アルテイ:「お前のやりたいことってなんだよ?」

GM:「……お前と俺のやり方は違う」

アルテイ:「……なんだよ。お前と俺どこが違うっていうんだよ?」

GM:「煩い奴だな」ガルデンは睨みつけ、立ち上がる。

アルテイ:「俺だってお前にびびっていた頃の俺じゃない!!」と睨み返す。

GM:睨み合う二人。「ランカスター領までは俺も行ってやる」

アルテイ:「だったら!」

GM:「そこまでは一緒だ。だが、そこからはお前がやれ」

アルテイ:「お前は俺の意見に反対なのか!」

GM:「話は終わりだ」乱暴に君を押しのけるガルデン。

アルテイ:「何故だ! ガルデン! 俺は全然納得していないぞ。なら俺と一騎打ちで勝負しろ!」

GM:「時が来たらな」

アルテイ:「時が来たらだ〜!? 仕方ないな……今は時間が無いんだ。なるべく早く答えてくれよ。というわけだ。シルヴァナ」


シルヴァナ:「ああ……状況はわかったよ……」

アルテイ:「従えば、あんたをここから解放して、使命を全うさせてやるよ。決して悪い話じゃないはずだ」

シルヴァナ:「そこまでは、な」私は断るという選択肢は無い。でも。

アルテイ:「ガルデンは資金を半分やるといった。俺の助けが必要なはずだぞ! だが、この資金は王子を助けるためじゃない。ランカスターとの同盟の為に使う!」ランカスターは見たところ賭博師だから、やっぱり俺がいかないとな。

シルヴァナ:うーん……うまくいくのかなぁ……。


アルテイ:「同盟の条件として俺が王子を助けてやる」

シルヴァナ:うーん……

GM:「では、ゆっくりとはしていられんな。どの道同盟を結んでいくつもりなら、お前が説き伏せて回らなくてはならないのだ」と彼は出発の支度を整えさせていく。拘束を解かれたシルヴァナ。


アルテイ:「この里はどうするかな」

GM:「サーシャに任せるといいだろう」

アルテイ:「え、サーシャさん!? いや、それでもいいだろうけど」

GM:巫女は元々地位は高い。地位の高い者を上にすえて政をするのは間違いではないし、それはウルスが部族の指揮をとっていくという形態へと流れるために必要な手順だろうからね。

シルヴァナ:そうか…ガルデンという男は、部族の諍いを起こさずゆっくり融和させていっているんだな。

アルテイ:ああ、なるほど納得だ。「ガルデンお前の言うとおりだ。さっそくサーシャに相談しよう」

シルヴァナ:「なぁ……ガルデン」私は荷物を纏めながら話しかけよう。「これが部族のためなのか。よしんばガレス王子を討ち取り復讐を遂げたとしても、それからは戦になってしまうのだぞ」

GM:「部族の為じゃないさ……」ガルデンは振り返る。「お前に頼みたかったのはこれじゃない。それとな……」

シルヴァナ:「それと?」

GM:「俺は、俺のために生きている」


アルテイ:「それでいいさ。それが結果的に俺たちの為になる。なぁシルヴァナ。あんたは本当にバストラールがいい国、仕えるべき国だと思っているのか?」

シルヴァナ:「む、国は国だ。バストラールは実際多くの土地を切り開いて、多くの民を幸せにしている。それが私の誇りだ」

アルテイ:「誇りね? 小を捨て、大を取っているだけだろ。法律なんてただの掟だ。それが全てじゃない」

シルヴァナ:「………」





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