秘密の場所



GM:かくして船は目的地の一つに到着する。切り立った崖、入り組んだ岬には絶壁。とても船を止められるようなところじゃない。

シルヴァナ:(フランク)「どこですか」

GM:ボートを下ろさせてヘルメスは降りる。ビルダーは青い顔をしながらオロオロしている。「マズイですよ。ここは悪魔の国だ。蛮族たちがうようよしていやがる」「一番蛮族みたいな顔して何いってんだい。あきれたね」とヘルメス。

シルヴァナ:(船員)「俺はまだ死にたくねぇ!! 死ぬのはまっぴらゴメンだ!!」ドブン!

フィンチ:「誰か落ちたよ?(笑)」

爆笑!




フィンチ:「僕も行っていいですか♪」

GM:「好きにしな」とヘルメス。フランクは「僕は……留守番します」と震える。

ジィク:弱っ!? どこでもついていくんじゃなかったのか。

フィンチ:「フランク。酔い止めもらってくるよ」

GM:というわけで船員達とボートに乗り込む。船員の中には端正な顔の男がいる。どうやら船長の補佐をしているようでローウェンと言うが、彼が説明してくれる。「ここはウルス族の縄張りです。近年併合されたといえ、ここにはあの蛮族たちが住んでいる」

ジィク:ウルス!?

GM:「彼らは閉鎖的で、近づいた人々を情け容赦なく殺すという噂である」

ジィク:うーん。そんな物騒な部族だったのか。

GM:世間の噂はね。

シルヴァナ:あなたのあの戦いを見たら……大抵は肝を冷やします。

ジィク:あ……そうか。俺が実例か(笑)

シルヴァナ:ウルス族は怖いよ? 絶対に逃げないから(笑)

GM:どうやら、遊びに来たわけではないようである。ヘルメスは金の鉱脈を見つけているようだ。鉱脈には工夫が借り出され、作業している。

フィンチ:「おおーこれが金脈!」

GM:「内緒だからね。ウルスの連中も誰も知らないことなんだよ」

フィンチ:納得した。豊富な資金源を見つけていたんだ。

GM:「ああ、この土地がほしいね。今は姿を隠すのに必死にならなきゃならないんだよ」とヘルメス。

フィンチ:僕は知ってしまってもいいんだろうか。

GM:課題がいっぱいある。@海路を取ってきたから君は道が分からない。Aこの土地はまだ服従していない。取りにいって戦になったら、意味が無い。

フィンチ:そうだね。

GM:その日はウルスの領地の町に泊まる。

フィンチ:へぇ。初めて。初めての異文化。


GM:うず高く積み上げられた死体は腐敗し蝿がたかっていた。

フィンチ:「うわぁっ!?」え……なんなのこれ。

GM:埋葬する人々も無いまま、それは放置されていた。

ジィク:もしかして……俺の故郷か?

GM:わずかな食事を求めて放浪する人々。吊るされた人々。ネズミを奪い合う子供 そんな貧困が町を覆っていた。

フィンチ:これがウルス……の土地?

GM:「バストラール人も相当流れ込んでいるよ。貧民や階級の下の奴等がフロンティアを目指して流入しているんだ」とヘルメスが解説をする。

フィンチ:「じゃあウルスの人々ばかりじゃないんだ」ここは森は無いの? 森とかが広がっているかと……

GM:石畳に壁。近代化が始まっている。

フィンチ:「海もあって森もあるのに、どうしてこんなに貧しいんですか?」

GM:ヘルメスは手下に宿の確保に向かわせる。そして君の質問に答える。「ここの連中は必要以上のものは取らない。流通するだとか、取引するだとか、そういう発想が無い」

ジィク:森と一緒に生きている。狩猟民族だからな。

フィンチ:「食べるものだけ取ってきた。それで生きていけた……」

GM:「でもバストラールは違う。ここで手に入れたものをどっかとどこかに持っていく。そういう発想なのさ。流通って言うのはね。アンタの国の繁栄の皺寄せの一端だね」


フィンチ:「どうして! どうしてこの国の人は表に出て行かないんですか!?」あ、大きな声を上げちゃった。

GM:「表に行っても居場所が無いしね。何より表に行く気が無い……ってアンタ、もしかしてこの人々は可哀想な人だとか思っているんじゃないのかい?」

フィンチ:「え」……「そうじゃ無いんですか?そのここには何も無い」

GM:「例えばフロンティアスピリットがある。生活の知恵や歴史もある。部族の誇りもある。卑屈になることなんてどこもない。全部が上手く纏まるには時間がかかるってだけさ」

フィンチ:でも、あの人々は。

ジィク:都に行って奴隷になるよりはいいんじゃないかな。

フィンチ:奴隷……かぁ。

GM:「どんな生き方をしてもいいんだ。私は吊るされた人々を見ても可哀想なんて思わないよ」

フィンチ:「自由の代償なんですね……」

GM:「文句の一つも言って誇り高く死ぬのもよし、生きて新しい時代を見るのもよしさ」



フィンチ:そうか……「うん。僕少し街を見てきますね」

GM:ヘルメスは元気に走り出す君の背に声をかける。「歩き回るんじゃないよ。アタシはあんたの保護者じゃないんだからね」

ジィク:もう保護者だよね。

GM:「走るんじゃないよ。転ぶよ!」

爆笑!




GM:「橋に気をつけるんだよ。手すり壊れてるから。次落ちたら助けないからね」

ジィク:完全に親じゃないか。

フィンチ:どこかにこの地方独特のナイフが売っていないか探しに行く。情報収集振っていい?

GM:いいとも。目標は10だね。

フィンチ:(コロコロ)15。ナイフを集めるのが趣味なんだ♪

シルヴァナ:(部族の人)「これタタールのナイフ。首いっぱい刎ねた」

フィンチ:「これはやめようかな」

GM:追いついたヘルメスがお金を支払ってくれる。

フィンチ:「あのね。別にナイフマニアとかじゃないんだよ」

GM:「でもアンタ一杯持ってるじゃん(笑)」

ジィク:ランカスターは王子が凄く興味を引きそうだよね。世界を知っていて物知りなんだから。

フィンチ:うん。ここに来てよかった。
でも虫が嫌だけどね。
ハエとか、ウジとかすごい嫌。
森だからどこにいってもいるんだよ。






GM:翌日。あんまりにも虫が怖いと煩かったんでさっさと船に帰ることにした一同。

フィンチ:「虫だぁ。いやぁあああ。フランク! フランクー!」

爆笑!




GM:船に帰ってくると「王子ー! 王子ー!」ふフランクが走ってくると二人が抱き合う。

シルヴァナ:フランクはハエとか蚊から王子を守っていたんだな(笑)。

フィンチ:「なんて頼りになる奴なんだ」

ジィク:ヘルメスはきっと生暖かい目で見ているよ。


GM:その日は晩。ランタンの下、ソロバンをパチパチ打つヘルメス。

フィンチ:「それなんですか?」

GM:「アンタ何にでも興味持つね? 東方の計算機だよ」手を止める。「王子様。あんた将来王様になったら、どんな王様になりたいんだい?」と今度はヘルメスから聞いてきた。

フィンチ:「僕はまだ、よくわからないんだ。どういう国がいいのか。でも母上の生き方……政治のやり方を僕が継いでいけるとはとても思えないんだ」

GM:「母上のやり方って?」とワインを自分のグラスに注ぐ。

フィンチ:「正直よくわからない」パンに刺さっているナイフをじっとみて、「あ、ナイフ」

ジィク:ブレないな王子(笑)

シルヴァナ:(船員)「あの王子が来てからナイフが少なくなりました」

フィンチ:「あ、聞きたい! 聞きたい!」(挙手)

GM:「へ」とパンを咥えるヘルメス。

フィンチ:「ヘルメスはどんな世の中にしたいですか?」

GM:「んー……そうねぇ……」考え込む。

フィンチ:「……」

GM::……

フィンチ:「……」

シルヴァナ:本当に悩んでいるよ。

GM:「ま、言ってみりゃここにいるのは海賊ばっかりだ。善人とは程遠い連中だ」いっせいふんぞり返る男たち。

シルヴァナ:(船員)「照れるな」

爆笑!




ジィク:何をそんなに誇らしげにする!?

GM:「でもアタシは気に入ってる。こんなクズどもを目にかけてやるのはアタシぐらいだろう?」

シルヴァナ:(船員)「へへへ」

フィンチ:「えー」

GM:「命は大切って言葉があるだろう? そりゃ誰だって命は惜しいさ」

フィンチ:「うん」

GM:「でもアンタは許せるのかい。いい人も悪い人も命を大切にできるのかい?」

フィンチ:「うーん。国としては……悪い人は」

GM:「いいかい。私は、いい人だけじゃなくて、悪い人も好きなのさ」

ジィク:常識的に考えたら「ねーよ!」っと言っちゃう発想だわな。

シルヴァナ:ねーよ!

GM:「バストラールのようにこういう人が良い人、こういう人が悪い人としたら――アタシ達はのびのび暮らせない。アンタとはドンパチやる日がくるだろう」

フィンチ:「そんな!!」

GM:「――でもハンパもののアタシは適当に生きるさ。勝ったり負けたりね。大切なのは楽しいか。人生と同じ。楽しくない人生なんてつまらないだろう?」

シルヴァナ:そうか、この人は宰相の政治に反発しているんだ。


フィンチ:「でもそんな考え方……自分の都合じゃないですか……」

GM:「そうだよ? みんな自分の都合で生きている。アタシの中ではアタシが王様さ」

フィンチ:「でもみんなにとっての王様も……」

GM:「民主性とかそういう夢もあるとは思う。でも本当の民主主義は『皆に自分の責任を持ってもらう事』じゃない。『自分が皆の責任を持つ』ってことだ。そして誰かが責任を背負ってくれないなら……それは本当に夢になっちまうんだよ」

フィンチ:「国民も責任を持つべきってこと?」

GM:「そうだね。小さいところじゃ仲間っていうのは、そこからが始まりだ。大きくなって国だ」





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