GM:一時本陣に帰還したタタールの部族。部族全体がキャラバンのように移動しているようだ。族長のガルデンがいない時は、老いた父と、幼い弟が部族を動かしている。

ジィク:これがタタールか……

GM:天幕の中、暖かい光が迎える。この時ばかりは戦士の緊張感も和らぐ。しかし、ある一言から場は険悪になる。「援軍? 貴様気は確かか?」



ジィク:やっぱりか「役割は果たした。今度はそっちがはたしてもらう番だ」

GM:「カルディア本隊はこちらよりも遥かに兵が多い、正面から飛び込めばひとたまりもない」

ジィク:「だが!」

GM:ガルデンは手で制する。「俺はこのままバストラール本国に兵を進めてカルディアの動揺を誘うことを考えている」
シルヴアナ:動揺?

GM:「バストラール遠征軍は長期戦はしたくないはずだ。すれば敵対的な近隣諸国が動くかもしれん。また補給の意味でも不利が生じる」

シルヴァナ:こいつ冷静だな。

ジィク:ウルスには無い発想だ。領地を出て戦うなんて。



GM:「カルディアが我らに兵を割けば砦の勝算も見えてこよう。士気の高い兵だが、動じた時、確実に隙が生じる。それをつくのだ」

ジィク:戦略的にはさすがだ……ウルスは玉砕するために突撃しているだけだった……。

シルヴァナ:状況を一手一手好転されていく。

ジィク:かといって援軍がこなければ……

GM:ウルスの心は折れる。戦にもならないだろう。



ジィク:ウルスの運命は決まった……。 援軍を呼んだら……大局的には戦に勝てない。援軍を呼んでも、ウルスに出来るのは人を逃がすぐらいだ。降伏して生き残るのと……何が違うんだ……。俺はどうしたらいい。

GM:ガルデンはその悩みこむ君の姿をじっと見ている。傍に居るキヌバもガルデンも言葉こそかけないものの、静かに黙り、雨の音だけが響いている。

ジィク:どう考えても、俺たちウルスとタタールは相容れない。考え方、発想が違う……。俺としては失敗だが、引き返すしかない。



GM:引き上げの為に荷物を纏めたジィク。最低限の傷薬や、武器の磨きなおしは行ってくれる。そんな君の元に一団が訪れる。年若い若者や・老人。いずれも武装している。

ジィク:「これは」

GM:普段はタタールの守りに残している人々のようだ。タタールは遊牧のように移動するので、集落の指揮を取る人々が常駐している。その人々だ。ガルデンも戦の支度をしている。「援軍を出してやる」

ジィク:「ほぅ……いいのか?」

GM:「俺はバストラールの後方を突く。まだ突破できるだろう。お前の援軍はそやつらだ」老人と子供を指す。

ジィク:「こいつらか?」援軍になるのか。

GM:顔を見て、わかる。ガルデンの父や弟達ではないだろうか。 残していた人々……家族を出しているのか。

ジィク:そうか「失礼なことをいったな。礼を言わせてくれ」

GM:「前後から挟撃する。これ以上は手を貸さん」ガルデンの表情には余裕はない。ガルデンは相手の軍勢の背後に回り、カルディアの後方を攻撃する作戦のようだ。

ジィク:背後からバストラール本隊を叩くのか。

GM:用兵の上手いガルデンにして、この作戦は荷が重過ぎる。自分の勝算を投げ捨て、天運をウルスに委ねる戦なのだ。ウルスが反撃してくれなければ、やがて矛先はガルデンに向く。

ジィク:厳しいな……ウルス次第か。うちの連中はそういう考え無しだからな。

GM:ガルデンはさっさと馬に乗る。「礼には及ばん。俺もお前も、今日死ぬか明日死ぬか程度の身だ。そやつらもな」キヌバだけは君を見送るようだ。「決着がついていない。生き残ったら決着をつけよう」

ジィク:「ああ、そうだな」間に合ってくれるといいんだが、帰ったら全滅していたではしょうがない。そうすれば何もかも水の泡だ。



GM:ジィクが援軍を引き連れてきた時、砦のウルス族は既に死を覚悟していた。「援軍が来たか!」「なんだこれは!子供と老人ばかりではないか」

シルヴァナ: (老戦士)「我々に死ねというのか!!」

ジィク:グイ! ここで騒ぐ奴は黙らせる。「族長!!」俺が説明しよう。

GM:ガイウスは納得する。そこには老いたりといえど、前のタタールの族長の姿があったからだ。そして全員に号令をかける。「ここは戦士として名に恥じぬ戦いをしようぞ! 時間を稼ぎ部族の女子供を逃がすのだ。我々が死んでも我等の子供が遺志を引き継いでくれる!」

ジィク:うーん……俺は素直には賛同できない。俺自身は討ち死に覚悟だからそれでいいんだ。だが、タタールの連中に、ウルス族を逃がせと頼むのか……?

GM:ガルデンの父は反対した。「まて、ガイウス。タタールはこの戦いの勝算をウルスに賭けて挟撃を練った! タタールは無駄死にではないか!」

ジィク:まぁ当然だよな。

シルヴァナ:部族の考え方が見事に違う……

GM:ウルス族の主張はこうだ。「このまま戦って、妻子が命を落とせば部族が絶える。この命は明日のために使いたい」対してタタールは反論「バカなことを言うな!! 息子は今も戦っているんだぞ! 勝ちを捨てるな」

ジィク:「そういう話はそっちでやってくれ、俺はやるべきことをやるだけだ」と俺は背を向けて切り込む用意をする。「ここまで来たらやることは決まっているんだ。できることは決まっている」



GM:その日の戦いで、この戦は終結を迎える。

タタールの奇襲を皮切りに開始されたこの戦は、カルディアが後方支援に部隊を送ったこともあり、一時ウルスの優勢を作り上げたが、ウルスは人々の避難を優先。



GM:この戦いに参加したウルスの戦士は君ぐらいだ。

ジィク:そうか、ほとんどは女子供を逃がしたのか。

GM:優勢な時期はわずかな間だった。というわけで、この戦の最後となる砦の入り口たる橋の攻防へと入ります。





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