Climax phase
【〜バルチモアの正義〜】
ウラヌス国王は王座に座ったまま。優れぬ顔をしていた。
独りでにため息をつく。
「ふぅ…また戦か…。息をつく暇も無いのぅ…」
バルチモアのウラヌスは陰謀家であったが、生来の文化人であった。血なまぐさい戦には辟易しており、正直、血を流さず併合したいという気持ちがあったが、今回もまた敵わぬ夢となりそうだった。
「ワシももう少し若ければ気力がついてこようが…これだけ続けると身にこたえるわ。しかし、これもバルチモアの為」
「国王陛下。使者が参られました。」
「うむ」
GM:ウラヌスは厳しい表情でシリルを出迎えた。「おう。白騎士シリル。よくぞ参った。」
シリル:「お久しぶりです。ウラヌス国王陛下。」と礼を払う。
GM:「しかし、まさか今回ことに及んで詰問しにきたのではあるまいな。今回の一件。影武者を用意し、余をたばかった不忠の臣下フレジェスを罰するのは、主君としての勤めじゃ。まさか隣国として介入すまいな。」
シリル:「いえ、私達は違う不忠者を探しております。これはバルチモアに関わる件にて、ウラヌス国王の耳に入れぬわけにはおりません。」
GM:「何!他に不忠者だと。そんなものがバルチモアにいるのか?」
シリル:「はい。フレジェス国王を謀殺した人間が。」
GM:話を聞くと重臣達の顔色もこわばる。「調べはついているのか?」
シリル:「はい。」じゃ説明します。「フレジェス国王を暗殺したのはダニエル王子です。」
GM:「な、なんと!!?」ウラヌスは思わず椅子から身を乗り出した。
ロバート:この様子ウラヌスは知らなかったかもね。
シリル:「勘当されロマリアに送られていたダニエル王子は偽者でした。本人はその時、フレジェスで国王を暗殺していたのです。」
GM:「証拠は?!証拠はあるのか!!?」
シリル:「フレジェス国王暗殺の犯人は、帰路アドホックレルムと交戦しました。その時に顔を潰されたのです」とつぶれた兜を見せる。
GM:傷口とピタリと符合する、という感じかな。ウラヌスも思い当たる。「あれはロマリアから戻る途中、遭難してあのようになったと聞いていたが……むむむ。」
シリル:「国王が呼び出し受けたときに用いられた手法も、息子でなければできぬ手法。これが調査の報告書です。」と書類を手渡す。
GM:メイジが受け取るね。
シリル:「まさかウラヌス国王はアンドレアル伯爵同様に、フレジェス国を奪うため、父殺しの王子の謀略に加担するのでしょうか。」
GM:「いや、しかし、それは、うーむ。」と歯切れが悪い。
シリル:「国王を殺しに加担したとウラヌス国王陛下が思われれば、名声を失いましょう。」バルチモアは財源を失うよね。
GM:うん。その時、傍らの道化のようなメイジが口を挟む。「国王陛下。シリルの言うことは、相違ないかと。」
シリル:何?!
GM:彼こそは国王の軍師。度々策略では対決している国の主柱。名前はレグルスだ。
メイジ・レグルスは、一件を思い出していた。
エンカウントアナザーワールドのことである。
フェイストゥフェイス。顔をあわせれば通じるものもある。
彼の中に歯切れの悪さの真相は、この真実に相違ない。
シリル:レグルス…。
GM:バルチモアのメイジの優秀さは世に知られていた。それは徹底した分析眼と、忠誠心に他ならない。
シリル:よかった。なんとかなりそうだ。
GM:では今度はウラヌスが問う。「グラニアは王子をたばかった天下の不忠者。それに組するものを討つのは当然ではないか。フレジェスの正統性は無い。その点はどう弁明する。それは私を騙したも同じだぞ?」
シリル:「はい。私はフレジェスを認めるべきとはいっておりません。私はただ不忠者を罰するのであればダニエル王子を罰しなくては筋道が立たぬと。」
GM:「それはそうじゃが…」
シリル:「よろしければ、私がダニエル王子に加担したアンドレアルを討ち、ダニエル王子を逮捕捕縛いたします。」
GM:「ま、まて、フレジェス領の問題は…」
シリル:「フレジェスを奪うことはしません。返還いたします。」
GM:「おっほ!」ウラヌスは笑顔を溢した。確かにそれなら、もっとも彼の望みに近い。そして威厳を保つために考え込んだ。「言い分はわかった。今日のところは答えは出せぬ。追ってまた知らせることとする。」
シリル:これで少なくとも援軍の派遣は無くなるな。
彼女は力なく手紙を落とした。
「これじゃダメよ…失敗したわ。ウラヌス国王陛下はおいでにならない。それどころか」
ボールスへの詰問が記されている。これはマズイ。
正義が負けるのか…口惜しい…
嫌悪感以上に国家に見捨てられた自分の境遇に、彼女は貧血すら起こしかねない有様だった。
「何が失敗だ!」ボールスは怒鳴り散らす。
「あと一歩だ!我々はただノックしてしまえばいいのだ。ルイーズ。弱小のフレジェスなど我々の力で落とせる。」
「しかし、正義は……」
ボルドーは膝をついてルイーズの両手を取った。
「勝てるわね。ボールス。」
「無論だ!」
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