Middle phase
シーンPC フィンチ・ジィク・ネフィリア

【バストラール挙兵 〜ユニオン〜】

カルディアは窓の外に目線を移した。その表情には憂いがある。
宰相は時にカルディアが慈悲深く、年相応な繊細さをもっていると感じることがある。
その憂いは、かつての仇敵の滅びではなく……隣国バルチモアの落日を察してのものだろう。

大国が滅びようとしていた。ウラヌスが愛した子供たちが戦い、愛して守ってきた民が 国を見捨てようとしていた。
ただそれが悲しかった。

カルディアの口から言葉が漏れる。
「宰相。兵を――」
宰相は思う。やはりカルディア女王は恐ろしい方なのだろうと。
女王は徹底している。やるべきことはやるのだ。


フィンチ:お……「母上……兵を挙げるんですね。」僕は、あのバルチモアだって本当は……

GM:ジィクもヒルダの命を受け、兵を纏めている。ジィクのみならずキヌバや他の主力も結集して戦は決戦の様相を呈していた。

ジィク:「矛先はどこか聞いているか?やはり国王不在のバルチモアか?」

GM:ハバリクは答える。「いえ、それがユニオンに向かうようなのです。」

ジィク:「ウラヌス国王の遠征先か?ウラヌス国王は病でもう長くないはず。なんでそこを叩く?」

GM:「私にも女王のお考えはわかりません。ですが、バルチモア国内はこれから分裂し派閥闘争が始まることを考えると、優先は低いと考えてじゃないでしょうか。」

ジィク:「ふーむ。そういうものか。まぁ確かにアスラハンと戦うウラヌス国王のバルチモア軍の背後をつけば勝利は間違いないが……何も止めをさすまでもなく、勝敗は明らかだろうに」


フィンチ:「ウラヌス国王の背後をつく!」そんな。それで母上はウラヌス国王に会わなかったのか。「母上!」

GM:宰相が小脇を抱える。「フィンチ王子。女王の裁可が下った以上これ以上の口出しはなりませんぞ!」と眉をしかめる。

フィンチ:「ウラヌス国王を害するつもりだから会わなかったんですか?!」この作戦はちょっと!戦を知らない僕にも不満がある!

GM:戦支度をすすめる女王カルディアは卓上の地図を丸めると束ねて騎士に手渡した。側近の騎士・ジェームズはフィンチの剣幕を見ては口をつぐむ。困った顔だ。

フィンチ:「僕がバルチモアに行くのを許したのも、バルチモアとの和解のためじゃないんですね。」

GM:「フィンチ王子!」宰相はフィンチの前に向き直る。

フィンチ:「宰相。あなたも知っていて――」

GM:「あなた以外の誰もが気がついていることです。バルチモアとバストラールは並び立たぬことを。」


フィンチ:「ネフィリアを利用するんですか!」

GM:「いつ女王がネフィリア様を利用しました!!」

フィンチ:「え」

GM:「女王は滅ぼすときは自らの暴力でなされます。今までただの一度もネフィリア様を口実にしてはおりませんぞ!いかな悪名をあげようと、自らの手でことを成される方です。」

フィンチ:「……」

GM:「確かにネフィリア姫を王として擁立することは大義名分のためになくてはならない口実です。全てが終わった後にはネフィリア姫には国を纏めてもらわなくてはならないでしょう。そのことは王子も考えていたはずでしょう。」

フィンチ:「それは……」

GM:「バルチモアを滅ぼす身のカルディア様です。お心遣いを察しろとはいいません。ですが、お門違いな物言いは控えてもらいます。あなたはバストラールの王子なのです。」

フィンチ:「……」

GM:その会話を余所にとカルディアが馬上に身を翻す。「フィンチ」

フィンチ:「はい……」

GM:「来るか?」

フィンチ:「え?」戦に?

GM:……

フィンチ:……「はい。」


ユニオン郊外の戦い

GM:カルディアは号令をかける。騎馬隊を中心とした集団が動き始める。兵の数は1万。

ジィク:ウラヌス軍は?

GM:1万。アスラハン遠征軍は1万の激突だ。

ジィク:バルチモア軍の背後を突くだけならこれで大丈夫だな。これだと方向転換してバルチモア本国を攻めるのも無理そうだな。数が少ない。

フィンチ:作戦のことはわからない。でも僕は母上の思い通りには――。

GM:カルディアは隣のフィンチに目を向ける。「フィンチ。戦を見ておけ、戦というものは美醜入り混じるものだ。教本通りにはいかぬ。」

フィンチ:「それは……」そうなのかな。何が言いたいんだろう。ネフィリア姫はどうする?

ネフィリア:私は……隠れてついていこうと思うんです。このままじゃ私は何もしなかったことになってしまう。「フィンチと一緒にいけば大丈夫でしょう」

GM:じゃ変装でもするのかな。

ネフィリア:魔法で姿を隠して陽炎のようなものがついてくると考えてください。

GM:カルディアは大声を張り上げる。「ネフィリア!いるのだろう!こそこそせず出てこい。」

ネフィリア:「アッハイ」ついてくるだろうとバレていた。

GM:「本当に困った奴だな。お前は、父の気持ちを汲んで生き延びると約束したばかりではないか。」と呆れ顔をする。

フィンチ:あれ、母上……ウラヌス国王とネフィリア姫の会話を知ってる。

GM:「どこぞ知らぬ場所で死なれては気分が悪い。フィンチの傍におれ」

ネフィリア:「ご配慮ありがとうございます。」でも、私は父と戦うことはできない。私は……。

フィンチ:僕一人だと心もとないな。フランクはついてくる?

GM:元々近侍の少ないフィンチとしてはあとはフランクぐらい。周りはこんなところ。カルディアは馬を歩ませる。

ジィク:あいも変わらず、何を考えているのか読み解くのは困難だ。

GM:不意に馬が足を止める。「カーウッドを呼べ」

フィンチ:「ん、何か作戦を?」

GM:カークウッドは、新鋭の騎士で多くの献策をすることから重用されている騎士だ。武名のほうはまだまだだが、実践を多く重ね最近は頭角を示している。

ジィク:前作にも出てきたな。

GM:相談の末、カルディアは端的に指示を出す。カークウッドに別働隊として工兵隊を指揮させ迂回させる様子だ。


指し伸ばされた手――

GM:バルチモア・アスラハンの戦場は川を挟んだ平原である。アスラハン軍はユニオン・バルチモア方面の橋を占拠しユニオンは孤立。そこへ救援に訪れていた。

ジィク:これもアスラハンとユニオンが示し合わせた上でのことなんだな。大軍に責められない要所を守るアスラハンか。

GM:そう、もしバルチモアが乱れたらアスラハンは攻勢に打って出る。そして病のウラヌスは長期戦をしたくない。

フィンチ:ウラヌス王にはまったく勝ち目が見つからない。

GM:後方からやってきたバストラール軍にはさまれたウラヌス軍は大混乱を起こした。矢が放たれ、ウラヌス国王の白馬はそれを受けて倒れる。

ネフィリア:ああ!お父様。私は馬で駆け出す。止められても!

フィンチ:「あぁネフィリア!待って!」僕も馬を飛ばす。ネフィリアを追いかけないと。

GM:立ち上がり刃を抜いたウラヌスに人々の怒声と喧騒が飛び込む。バストラール軍だ。カルディアの近衛でありジェームズは槍を掲げ、兵を指揮してウラヌス軍の合間を抜けては防戦を引いた。あっけにとられるウラヌス。

ネフィリア:「お父様!」私はお父様を助け起こす。

GM:「何故このようなところに!?馬鹿者!」

フィンチ:「これは!どういうことですか!母上。」

GM:カルディアが横に訪れる。そして手を差し出す。「手を貸そう。ここで捨てる命ではないのだろう。お前の国が大変なときだ。」

フィンチ:「母上!」(瞳を輝かせ)

GM:ウラヌスは膝をついて祈りを捧げた。「神よ。ありがとうございます!」娘がやってくれたのか、気持ちが通じたのか?!

フィンチ:「ウラヌス国王を助けてくれるんですね。」

GM:「……」カルディアの表情には読み解くことのできない複雑なものがある。届かぬ願いを夢見たものの微笑が。

フィンチ:???


GM:状況の推移を受けアスラハンの攻撃は中断される。互いに天幕を用意し並んでアスラハンの軍勢を警戒するバストラール・バルチモア両軍。ネフィリア姫は?

ネフィリア:お父様のところへ行きます。「行って構いませんね?」

GM:「行くなと言っても行くのだろう?」とカルディアは呆れたように投げかけた。挨拶もおざなりにカルディアは早速騎士を集め布陣を決めていく。

フィンチ:「僕も行ってきます。」ネフィリア姫の後を追いかけよう。

GM:「お前は帰ってくるのだぞ。」

フィンチ:「はい!」

GM:夕食も父親と一緒。戦場であるのに随分と穏やかな時間があった。「カルディアが許してくれれば、時間はある。大国二つが力をあわせればもはやなんの憂いもないぞ!」と咳き込むウラヌス。

ネフィリア:「お父様。そんなに興奮なされては。」でも気持ちはわかります。バストラールが支援してくれればこれほど頼もしいものはないのだもの。

GM:「ロアンの代でバルチモアは終わりなのではないかと案じていたところだ。しかしこれで大丈夫。ロアンはやり直せる。あいつはまだ若い。きっとやり直せる。」

フィンチ:そうなのかなぁ。(苦笑)

GM:そして、束の間といえど、戦場であることを忘れる団欒が訪れる。「そうだ、お前は暫くはカルディアと一緒にいなさい。危ないからな。」

ネフィリア:「はい。でもお父様と一緒のほうが」お父様は……病が。

GM:そう、その言いよどんだ意味はウラヌスにも通じている。でもだからこそウラヌスは娘を手元には置けない。ここは危険な戦場なのだ。今のウラヌスには娘を守ることはできない。「心配いらん」

ネフィリア:「はい。」私たち二人とも嘘をつきまたね(苦笑)

GM:「ロアンにはわしがついていてやる。」難しいことだったが喜びが父を満たしていた。

フィンチ:お。これで未来が変わったんだ!。母上!バルチモアとバストラールは力をあわせてやっていけます!

GM:しかし、カルディアがウラヌスを助けたことが、美談のままで終われば、どれほど美しかったであろうか。事態は恐るべき展開を見せる。

フィンチ:え?


振り払われた手――

ウラヌスは姫と王子を送り返し、バルチモア国内の建て直しを誓ったとき……天幕に不意に気配を感じる。
そこには自分しかいないはずなのに……
「今、帰国しても成果は上がらないでしょう。」天幕の中、暗闇から歩み出たのはかつて見知った男だった。

「アナハイム」
「私をお探しのようでしたので。」

ウラヌスの表情には焦り以上、不吉なものを見たという恐れが浮かんでいる。この魔法使いアナハイムは穏やかに近づいた。

「子供たちの戦いは、もはやあなたの手を離れたのです。
  だからこそあなたはここにいるのではありませんか?
 でもあなたは子供たちのためにその命を使いたい。そうですね。」

剣も帯びぬこの男にウラヌス国王は圧倒されていた。脂汗が流れ恐怖で唇が乾く。
「何を?」

「バルチモアの憂いとは何ですか?
 暗愚な世継ぎ?いえ、違うでしょう。バストラールですよ。」

「は!お前、カルディア女王を裏切れというのか、救援に来た女王を裏切れと!?」

アナハイムは何も言わない。
しかし、彼の言葉は既にウラヌスに迷いの灯火をつけている。
そうなのだ……今でなくとも、いずれカルディアはバルチモアを落とす。討てるタイミングは今しかない。



フィンチ:ちょっと待てー!!

ネフィリア:お父様!?


「恨まれますな。カルディア女王。凡庸な私が戦に勝つには卑怯な手も打たなくてはならないのです。」


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