Middle phase
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【バストラール王国〜バルチモア〜】

GM:バストラールの都に戻った一同を待っていたのは、宰相からの厳しい叱責だった。「なんということをしたかわかっているのですか!」杖を握り締めた老人・宰相コーネリアスの激昂は凄まじいものだった。

フィンチ:あ…はい……

GM:「ヒルダ王女。フィンチ王子。お二人の行いは明らかな内政干渉。これはまともな王国でしたら決して許されない大問題なのですよ。」 フィンチ:「でも、ネフィリア姫は殺されるところでした。」

GM:「民も飢えていたのだ。」とヒルダも続く。

ジィク:それはそうだが。でもなぁ。

GM:杖が壊れんばかりに握り締められる。「馬鹿な!戦争になったらその何倍も人が死ぬのです。お二人は戦をしたくないとあれほどおっしゃっていたではないですか!」

ジィク:宰相にとってはこれはバルチモアを攻める口実なのにな。

GM:そう、でも、宰相は二人の教育係だ。二人には自分の夢を生かす生き方を見つけて欲しいと思っている。だから怒る。「二人のやったことは余りにも幼すぎる!しばらく謹慎をしていただきます。」

フィンチ:「はい……」ふー。部屋に帰って、僕はバルチモアのことを思い出していよう。

GM:フランクがため息。「怒られちゃいましたね」


フィンチ:「うん。でも驚いたよ。凄い優秀だよね。メイジって。」

GM:「はい。」

フィンチ:「忠誠心はあるし、頭はいいし、あれだけ国が乱れてもある意味メイジがいるから国が守られているんだ。それは凄いよ。」

GM:「あーそうですねー。」

ネフィリア:(フランク)「僕は怖いって事しか覚えていなかった。(笑)」

ネフィリア:私はバストラールに入ったんですね。

GM:そう。バストラール王国はやはり真新しい国だった。文化的に洗練されたバルチモアに慣れているとこの国がまだまだ発展途上にあるということが実感できるが、同時にこの国が今日の出の勢いだということも実感できる。

ネフィリア:「人々の目に輝きがある。バルチモアとは違う。」バルチモアのような貴族の搾取が国民の貧困という構図はないよね。

フィンチ:でもバストラールは他所の国を搾取しているけどね(苦笑)。

GM:そうだね。軍事国家なのは違いない。気質も随分違うかもね。

ネフィリア:気質?

GM:性格傾向というか。バストラール人は行動的で結果を出す。理論とか体裁は軽視している。あと国民的にちょっと荒々しいとバルチモア人には感じるだろう。

ネフィリア:確かに。

GM:バルチモア人は繊細で道徳的。というか保守的で、考えている割に中々答えが出せない。悩む。思い悩む。実際的ではないけどそういう感性は芸術的には優れている。

ネフィリア:そうかもしれません。。

GM:でも近年他所の国ではバルチモア文化は古いんだけどね。なんせ落ち目の国の保守的バルチモアだから。

ネフィリア:失礼な!

GM:後は人々の考え方が多彩だ。

ネフィリア:考え方?

GM:インダストリアは民主制議会政治。バストラールの元々は帝政だ。そういう考え方が違う人々が許されている。

ネフィリア:ランカスター伯は海賊でしたし。

GM:カルディア女王の下ではそれぞれが許されている。

ジィク:指導者っていうのは、そういう手綱を握る人をいうんだ。清濁を併せ持たなくては天下は握れない。

レグルス:それがウラヌス国王にはできない……か。


亡命の姫と女王

GM:では謁見の間だ。


カルディアは女王は王座にあって、今国に訪れた娘に視線を投げかけていた。確かにその瞳には生来のものか好奇心があり、そして表情には愛嬌があったが、その沈黙には思慮があった。


GM:宰相はフィンチ王子に問う。「フィンチ王子。ならびに亡命を希望されるバルチモア人を連れてまいりました」それは同じく謁見の間に控えるネフィリアを指した言葉だった。

ネフィリア:「はい、私は……」

GM:カルディアの視線。沈黙。それは言葉を続かせない力を持っていた。

ネフィリア:これは……

GM:「フィンチ。その者はなんだ?」

ジィク:これはよく考えて答えないとならないんじゃないのか?

GM:うーん。バルチモアの王女だということを隠してもいいのかな。でもそういう嘘をつくことはよくないだろうし。よし決めた。「彼女は僕の友達なんだ。命を狙われていたから助けました。」

GM:「……」

フィンチ:「……」

GM:「……そうか。」カルディアはその言葉の意味を反芻するように、沈黙する。まるでその言葉の意味がとても重たいもののように。

フィンチ:

GM:「ネフィリアといったな。」

ネフィリア:「はい。」

GM:「好きなだけ…国にいるといい」そして椅子に深く座りなおした。

ネフィリア:「はい。ありがとうございます。」良かった。でも、私の生活はこれからどうなるのかしら?やっぱり軟禁ということになるのかしら?

GM:バストラールにおいてはまバルチモアの脅威はない。行動の制限というのは勿論多少あるが、姫の警護にはフィンチとヒルダが命じられる。監視つきという見方はあるが。

ジィク:これは事情を知るものとしては良い配慮だろう。

フィンチ:「ありがとうございます!母上!」

ジィク:俺も警護に加われるということだな。

フィンチ:ジィクがいれば安心だよ。

ジィク:いや……俺はバルチモアのメイジには一度も勝てていない。安心できない。まさかこれほどとは……。ハバリク達の援護も必要だろう。


GM:カルディア女王は、「それはそうと」と呟き、横に控えるフィンチに視線を投げる。「バルチモアはどうであった?」

フィンチ:「はい。酷い貧困で、国も民をないがしろにしていました。理想の国とは程遠い印象を受けました。」

GM:「そうか。ではどうあるべきだと思う?」

フィンチ:「でも……バルチモアの政治について、僕は口出ししたくないんです。」

GM:カルディアの表情には不満の色が浮かぶが、それを払うように咳きこもる。君主がこういう顔をすると臣下は話しにくいということを心得ているのだ。それが物事をはっきり言う王子でも。「ほぅ」

フィンチ:「バルチモアにはバルチモアのやり方があると思うんです。僕がそこに乗り込んで、それを壊して、これが正義ですっていうようなのは間違っていると思うんです。」


未来地図

GM:というわけで、王宮の一室に部屋が設けられ、中庭など自由に歩き回ることができる。

ネフィリア:「フィンチ。私にも何かできることをさせてもらえないかしら、お世話になるだけだとあまりにも申し訳ないです。」そういえばハンナは?

GM:連れてきている。

ネフィリア:「ごめんなさいね。こんなところまでつき合わせてしまって。」

レグルス:ふー。もう俺は姫の傍にいる意味はないんだろうな。このまま姫がここで生活できるのなら、それでいいんだろう。この国に野心はありそうですか?

GM:端的に言ってあるだろう。

レグルス:うーん。

GM:ネフィリア姫がバストラールに来てしまい。バルチモアの王位継承権に介入する可能性がある。そしてカルディアが噂どおりの人物なら、その大義名分を利用して侵略してくるだろう。

レグルス:ほぅ。ま。……そうだな。予想していたことだ。じゃあ俺は……やっぱりやることをやらないとならないな。(まじめに)国に戻らないと……。

フィンチ:「もしかして母上はネフィリアの身分について気がついているのかな。」

レグルス:「そりゃあ気がついているでしょう。(苦笑)この待遇を見てみなよ。警護にせよ軟禁にせよ。しっかりできてる。」

フィンチ:「ねぇレグルス?バルチモアとの戦争になっちゃうと思う?」

レグルス:「うーん。確かなのは女王がその気になれば戦争ができる条件が整ったってことだ。」

ネフィリア:「あなたは?カルディア女王に会っていかないの?」

レグルス:「俺は王宮とか近寄りたくないぐらいだから、謁見もご遠慮するよ。国に帰られなくなったらまずいからな。」

フィンチ:「そんなことにならないよ。」

GM:「わっかんないよー?切れ者の女王様なら、俺を拘束するかもしれない。バルチモア攻略のために。」


フィンチ:そういえばフランチェスカは?

GM:一緒に来ているね。成り行きというか。面白そうというか。

フィンチ:「君はこの国だったら一番の魔法使いになれそうだね。」

ジィク:「一人もいないからな(笑)」

フィンチ:「ねぇフランチェスカ。君はアルケミストで武器を作っているんだよね。」

ジィク:確か出会った事件でも武器を売ったことが発端だったな。

GM:「うん。国中をめぐって武器の材料を集めていたわ。鉱石とか水とか」

フィンチ:「この国じゃ貴重な技術だよ。」

ジィク:「ああ。前回実感したよ。俺も武器を考えてみたほうがいいのかもしれない。こんなナマクラじゃなくて、正直いい剣を探さなくちゃならない。何か考えないとな。」

GM:「そりゃそうよ!」フランチェスカは鼻高々に答える。「父さんの受け売りだけど、剣豪って言うのは良い腕の剣士と業物の剣がであって初めて生まれるの。腕前だけじゃどんなにいっても剣士どまりよ。」

ジィク:「……ふー。……そうか。……そうかもな。」

GM:ジィクを指差し。「そりゃああなたも腕を磨いているんでしょうね。でも私たちアルケミストもそうなの。私たちは生涯をただ一振りの剣を作るために生きているの。たくさんの剣を作りたいんじゃない。私は只1本の剣になりたいの。それがアルケミストの人生よ。」

ジィク:「そうか……俺は、まだ喧嘩屋か。」

フィンチ:ジィク。

ジィク:「じゃあ剣を作ってくれといったら、作ってくれるのか?」

GM:フランチェスカが困る。「え、あ、無理、私の武器じゃ……」と声小さく。「あなたに釣合わないわ」フランチェスカはジィクの実力をちゃんと理解している。「私のお父さんでもないと……」

ジィク:「そのお父さんはどんな人なんだ?まさかだけど両手剣を持った剣士みたいな奴じゃないのか?」

フィンチ:そうだ!そうだ!

GM:「スミス。メイジネームはブラックスミスよ。」

ジィク:「俺!お前のお父さんと殺し合いをしたよ!」

GM:「お父さんも久しぶりに楽しかったんじゃないの?今じゃ工房の奥にひっこんじゃってるけど、昔は名の知れた武官だったのよ。」

ジィク:「どうりでな。」

GM:「でも負けちゃったの。バストラールに攻め込んで負けた。」

ジィク:「そうなのか?」

フィンチ:「ここの国じゃないか。」

GM:カルディア女王が即位したばかりの時、バルチモアはまだ弱小国だった。国は傾き、貴族の反乱は多く、政権は不安定だった。名君カルディアはこの時12歳。歴史の表舞台に出たばかりのときだ。

ジィク:でたよー!

GM:バルチモアは難癖をつけて内政干渉。王位継承は認めないなどといって理由をつけて攻めてきた。

ネフィリア:今のバルチモアの境遇は完全にインガオホーなんだけど。

GM:「で、戦場で出会ったお父さんは、カルディア女王に一騎打ちを挑み破れたわけ。」

フィンチ:そっか。

GM:「私の家は敗戦して没落。」

フィンチ:没落。

GM:メイジが負ければ、何もできない貴族はすぐに没落。

フィンチ:なるほど。

GM:「お父さんは酔っ払うたびに泣いて私に謝るの。ゴメン。ゴメンって。おかげで私は平民で、かろうじてお父さんの工房にしかみついてる。最低よね」

フィンチ:「そんなこと……。」

GM:「何が最低って謝る親父!本当!最低!」

ジィク:娘は娘で辛口すぎる……

GM:フランチェスカは怒りのボルテージが高まり、衣服の裾を握り締めて唇をかみ締める。「ロードにしてあげられなくてごめん!?ごめんですって!?」彼女はタクトを握り締める。それは大切に両手に包まれている。でも口から出る言葉は「……クズ」

フィンチ:「じゃあ王室の鍛冶屋なのかな。」

GM:「まぁ。」

ネフィリア:「王様の命令で動いたりするものなの?その君たちは?」

GM:「そんなことないわよ。お父さんは国王陛下のお気に入りだったから確かに仲は良かったかな。国王は家が潰された時も工房を建ててくれたりしたから、恩は感じてるわ。」

フィンチ:「じゃ個人的には関係があるんだ。」

レグルス:ああ、読めたわ。多分国王は俺がいないから、姫の確保に知人を使ったんだ。

GM:「でも国王ともなれば、国王つきの魔法使いがいるのよ。国王には信頼する宰相もいるし。」

ネフィリア:宰相……エンゲルス達ですね。

フィンチ:国王の傍にはもう信頼できる人がいないんじゃないかな……。


フィンチ:「気になっているんだ。今の時点でバルチモアの貧困具合が深刻っていうことなんでしょ。」

ネフィリア:「そうですね。」私も修道院の状態で十分わかります。

フィンチ:「余計のお世話といったらそれまでだけど、あの国の人たちが心配だよね。レグルスさんはあの国どういう風になっていくと思うの?」

レグルス:「そりぁもう……衰退の一途でしょう。(苦笑)」

爆笑!! ジィク:国王付きの魔法使いが言うと説得力がある。

レグルス:「経済はボロボロ。国は分裂。このままでは、麻薬が氾濫して瓦解するでしょう。まぁ裏社会の吹き溜まりみたいな国になってしまいますよ。」

フィンチ:「なんであなたはネフィリアさんを国の女王に据えて自分達の旗印にしようとしたんですか?」

レグルス:「そりゃあもう…フフ(苦笑)。自分達の保身の為ですよ……」

ネフィリア:「・・・・・・」

レグルス:「国のためを思って言った意見じゃありません……。たとえ掲げて無事に王妃の座につけても、それは名文のためです。我々は属国の貢物で国政を賄うばかりの国です。正統な継承者でなれければ盟主の地位も維持できません。」

ネフィリア:「……そうでしたか。あなたたちメイジってどんな感じで雇われているんですしょう。何故、国に全てを捧げているんですか?」

レグルス:「さぁ、どうでしょう。……家柄なのかなぁ。実のところ自分でも、よくわからないんですよ(笑)」

ネフィリア:この人が特別なのかしら?

レグルス:「あの、ネフィリア姫。生まれでロードって決められてしまったらロードになるしかないんです。でもロードには既得権益もあるんですよ。」

ネフィリア:「そうですね。私にも何かできることがあるんでしょうか?メイジをもっと取り立てたりするとか?」

レグルス:「それもありますよね。たとえばメイジの雇用先を貴族以外にするんです。」

フィンチ:ああそういうような手もあるね。

レグルス:「仕官したメイジの投票制でもいいですし、金で雇い入れてもいいんです。」

ネフィリア:「それだと金を持っている人が全部メイジを雇ってしまうんじゃ?」

レグルス:「それでもいいんです。メイジが誰に仕えたいか選んで、どんな生き方をしたいか選ぶ。金が欲しい奴、名誉が欲しい奴、恩義を返したい奴、それを自由に選んでいけば、少なくとも満足なんです。それでもいいんです。」

ネフィリア:「そういうこともあるのですか……」

ジィク:メイジも本当はわかっているのか。バカなロードを支えるメイジっていう構図に一番苦しんでいる。

レグルス:「……そう。俺たちメイジに一番必要だったのは旗印だったんですよ。(苦笑)」

ネフィリア:「あなた国を崩すつもりなのですか?」

レグルス:「ふふふ……(自嘲)。いやぁ。この国は滅亡寸前です。壊すことは簡単にできますよ。でもみんな、壊した後、どうしたらいいのかに悩んでいるんですよ。」


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