王はガタリと席を立ち上がった。「なんだってっ……」
「ソレイユ。あなたは座っていて。」レトワールの有無を言わせぬ口調。彼女は側近の騎士を連れ立って、その場を後にした。
残されたのはソレイユ王一人。
「姉上は…勝てると思っているのか。そもそも……彼我の差は絶対だ。篭城し持ちこたえればまだ戦えるが、その為には指揮官が必要だ。」
「こんなこともあろうかと、念のためにブランバンに使者を送り、呼び戻しておきました」
虚空に視線を送るソレイユ王。幻聴だ。
爆笑!
サラミスの言葉、サラミスの声が脳裏に響く。
「事の是非はともかく、身を守れなければ元も子もありますまい。」
そうだ。その通りだ。王は顔を上げた。
「誰か…使者を!」
しばらくし、訪れた侍従。
書をしたためるソレイユ。「南方でバストラール王国と戦うブランバン将軍に本国への帰還を促すのだ。これは国家の危機だ。」
早馬は出立した。
「……だが、とても間に合うまい。全てが……後手だ。」
僕は…貴重な時間を生かせなかった。
GM:森に入ったというのに、追撃の手はやまない。どうしてもここで討とうという意気込みだけは伝わる。兵士達も忌々しいと舌打する。
イヴァン:「うっとおしい連中だな」
爆笑!
GM:危機感無いから!
イヴァン:仕方無い。俺が予想外の事態に陥っていれば、実力はともかく狼狽しただろうが、予想内では驚くに値しない。
GM:そんな時にイシュカも到着する。「イヴァン。お前、来てたのか。凄ぇーな。国はどうしたんだ?」
イヴァン:「俺がいないことに大騒ぎだろうが、帰ったら収拾する。それより丁度いいところに来た。イシュカ。お前は俺たちの撤退を装って移動してくれ。兵は下馬し、馬をイシュカが伴えばいいだろう。」
GM:「ああ、手取り足取りだな。ちょろいもんだ。」では軍略を振ってもらおう。
イヴァン:了解。目標は?
GM:相手の指揮官は普通なら10。もう有能な奴はいないから。でも12ぐらいでいっておこうか。で、準備していたから+2のボーナス。
イヴァン:(コロコロ)15。これに+2。17だな。まぁ専属軍師よりは下ぐらいのものだな。
GM:「よーし。こっちだよ。猫ちゃん♪」と馬を率いて移動していく。「猫ちゃん。お前等が相手にしている連中は、本当に怖い連中なんだよ〜♪」
イヴァン:あいつらは奇襲したが失敗した程度だと思っているのだろうな。
GM:こちらが想定内だったこともおそらく気がついていないね。素人と玄人の差ぐらいだ。
イヴァン:それでも将軍と軍師にはまだ大きな差がある。俺は孔明の足元にも及ばん。ようやく一段落ついたな。スターシャを覗き見る。「驚かせただろうな」
GM:「イヴァン様……」
イヴァン:「お前を行かせると決めた時、お前の命が危ういこともすぐにわかった。……お前を失うのは惜しい。」
GM:「申し訳ありません。和平の話を……」
イヴァン:気落ちさせたくはないが、ふむぅ……
GM:ほとんど彼女の悲願と言っても良かった。それをサラミスのスクロールまで用意してもらい挑んだ交渉だったからなぁ……
イヴァン:ここは…どうしよう……どのように言葉をかけるべきか「スターシャ。俺は、お前がしくじると思って助ける準備をしていたわけではない。」髪を掻き分けて頬に手を添えよう。
GM:彼女は同じ馬上でじっと見つめている。
イヴァン:「俺は王であり、お前は王の言葉そのものだった。だが覚えておけ、誤解しがちだが、俺たちは時代を作るが、時代そのものではない。」
GM:「……」
イヴァン:「俺とサラミスが起こしたと思ったこの戦乱は、もはや俺たちの問題ではなかった。そういうことなのだ。この戦には実に多くの人々が巻き込まれた。思うに、俺やサラミスですら発端に過ぎなかったのだ。」
GM:「……はい。ですが……報告しないといけません。」
イヴァン:「ああ。してくれ。」ずっと隣で聞いていた。頷く。
GM:俯く。「……これは…レトワールの独断でした。国王の意思は、王国の意思は和平に傾いていました。とはいえ……とはいえこうなっては……」
イヴァン:「お前の言うとおりだ。確かにレトワールの独断が和平を崩した。王の意図せざる結果だ。戦になる。」
GM:「私の落ち度です。」
イヴァン:「お前の落ち度ではない。」
GM:「私の……ぐっ」
イヴァン:「お前を頼もしく思った。俺の意図を理解し、よく準備し、忍耐強かった。」
GM:「でも……上手くいきませんでした。」
イヴァン:「ああ。王国には準備ができていなかった。戦も、和平もな。」
GM:「それは…」
イヴァン:「王国は……滅亡する。このままならな。だが、お前が戻る場所はもう王国ではないのだ。」
GM:ああ、そうなのだな、というように返事をする。「……はい。」
イヴァン:「ああ。」
,
GM:「ああ。」
GM:「いいんです。」
イヴァン:「どうぞお先に。」
GM:「あの…その、気を使わせました。申し訳ありません。もう少しこのままいてもいいですか。」
イヴァン:「そうとも、お前は馬上で、前から俺にしがみついたまま帰るんだ。」
GM:「ええっこれは恥ずかしい。」
イヴァン:「おっと。俺の機嫌を損ねるな。今ここで放り出されたらもっと恥ずかしいぞ。」
爆笑!
GM:「恥ずかしい!」
イヴァン:「スターシャ。お前の使命はまだ終わっていない。この戦の最後の決着と収拾の時まで、王国の為にできることが存在するのだ。」
GM:「…はい」
王国からの追撃は、そのままイシュカの追撃に移動し、見事に陽動されていく。そして一同は無事本隊と合流した。
王国の人々に伝えられたのは誤った情報だった。
ソレイユ王が祖国防衛を宣言し、王妃レトワールがアドホックレルムの無礼な使者を追い払い、追撃して領土から駆逐したというのだ。
敗戦続きの都では、その景気のいい知らせに大いに沸き立った。
GM:王座で報告を聞いたソレイユ王に笑顔はなかった。
イヴァン:正確には伝えられない。
GM:「大勝利です。勝利ではありません!敵は散を乱して逃げました。」
イヴァン:(ソレイユ王)「なのに負けたのか?」
爆笑!
GM:いい突っ込みが入るよね!(笑)
イヴァン:(ソレイユ王)「そこまでやったのなら、勝利してもらいたいよね」
爆笑!
イヴァン:(ソレイユ王)「駄目だ…僕の周りには三百代言ばかりだ。」
ソレイユの机の上にはサラミスの文章と、イヴァンがかつて送り返してきた指輪があった。
サラミスの文章。直筆だ。何故、こんなものを書いた。
二人の私闘……ということは、この一件を王の仲裁で終わらせようとしたのではないか?
こんなことはイヴァンとも意思疎通できなければできたものではない。
意図は……元々侵略ではなかったのか?
「だが……それも遅きに逸した…」
ソレイユは物言わぬスクロールと指輪を見つめていた。
GM:現在アドホックレルムの北部の拠点となっている城砦に帰還したイヴァン。程なくしてイシュカも帰還してくる。
イヴァン:「無事だったか。だが、心配してはいなかったぞ。お前なら難なくやり遂げられる仕事だ。」
GM:「ああ。大したことのない奴らだった。」とイシュカは君を見上げる。そして馴染みのスターシャに声をかける。「災難だったな西の魔女。」スターシャは咳払いする。「ふむ。今回ばかりは礼を言わなくてはならないようですね。」
イヴァン:腕を組んでほくそえんでよう。「ふふん。では次の仕事だ。事態は動き出した。これからは忙しくなるぞ。重臣を集めろ。」
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