Middle phase

           

【〜エルフィーナとの再会〜】


北方の山々も、広大な草原を覗く南方の山麓に入れば印象は様変わりする。この国を豊かにしていたのはこの平原であり、そしてこの厳しい山々ですら、王国にとっては豊かな山なのだ。


GM:宰相夫人の別荘は、その身分に等しく警備兵がひしめいている。

イヴァン:俺がこんなところにいると知れば、サラミスの奴も真っ青になるぞ。

GM:まったくだ。

イヴァン:俺はフードと鳥の仮面。つまり、当時の医師の格好をして入っていく。

GM:強烈だな。そしてカッコイイ。相手はびびるが(笑)

爆笑!

訓練をつんだ兵士はそれ自体が優秀な騎士団であり、この辺りの村々まで残らず彼らが警備しているようであった。彼らはサラミスの側近の騎士である。


GM:「ドーモ。薬を持ってきたぞ」とイシュカが挨拶を交わす。剥げ頭のバロン髭の騎士は、胸にいくつの紋章をつけた人物であったが、おそらくサラミスの信頼する側近だろう。「おお。ではこちらに回ってくれ」とやぐらの上から声をかけ勝手口に案内する。

イヴァン:なるほど警備も厳重だな。

GM:勝手口のドアが兵士によって開けられると、スキンヘッドの騎士は部下を伴いイシュカを出迎えた。そして表情を固くする。「そちらは?」

イヴァン:「……助手だ。」


GM:イシュカからも説明がされる。治療の日々の間に信頼関係が築けているのか、騎士も納得をする。そして彼はこちらを通してくれる。

イヴァン:「俺はともかく、お前が信頼されて顔パスするのにどれだけの時間がかかった。」

GM:「アタシがサラミスの愛人だった時代の騎士はここにはいないよ。宰相となったアイツの周りは普通は舌先三寸指示できない高名な騎士ばかりだ。」

イヴァン:「なるほどな。さっきの奴もそうなのだろう。」


GM:「ヒヒヒ」といいながら彼女は歩いていく。

イヴァン:「そんな怪しい口調でよく信頼されたな。」とついて階段を上がる。

GM:「この方が箔がつくのさ」

イヴァン:「もし治療が上手くいかなかったら大変なことになるぞ。」

GM:「ああ信用問題だ。」

イヴァン:「相手は公爵夫人だ。信用問題どころか命に関わる。」

GM:「そりゃそうだ。アタシのところに辿り着く前に何人かの医者が首を跳ねられた。」と一室の前で立ち止まる。「お嬢さん。今日はよくきく薬を持ってきましたよ。」


奥からはかつて聞き覚えのある声が響く、「ああ、いつもの方ね。どうぞ」とその声を合図に警備兵は退出し、廊下で待つ。数人の侍女はいるが、それも今は遠くに離れているという具合だ。


イヴァン:エルフィーナ…

GM:「こちらが元気の出るお茶。そしてこちらが…」とイシュカは荷物を取り出していく。「これを煎じて飲んでください。そして今日は効くかどうかの劇薬を容易したよ。」

イヴァン:近くに言ってマスクを外す。「エルフィーナ」

GM:「イヴァン!」

イヴァン:「しっ」(指を立てる仕草)


GM:随分長く別れていた彼女は、いくらか痩せ、そして弱っているようだったが、その瞳にはかつて少女のときのあどけなさの物陰が感じられる。



イヴァン:花を取り出し手渡す。「効くかどうかわからないが、薬を持ってきた。」

GM:彼女は駆け寄り、そして一瞬腕に飛び込む幻を見たが、彼女は数歩の距離で見詰め合っていた。

イヴァン:手だけ…握ろうか。「久しぶりだ。」

GM:「いつもの夢かと思った。」

イヴァン:「いつも夢では会っているのか?」


GM:彼女はイヴァンの頬を撫でる。その姿は以前より儚く弱々しいものであった。

イヴァン:「体調は…悪いのか?」

GM:「昔から、それほど体は強くないと医者に言われていたから。」とケンケンと咳き込む。「でも、ここにいると少し気分がいいの。」

イヴァン:「空気のせいかな。サラミスに頼んで、ここに都を建てさせたらどうだ。」

GM:彼女は少し困った顔をする。

イヴァン:「マジメなあいつの事だ。本当にやりかねない。気をつけないとな。」

GM:「フフ」久しぶりに彼女は笑った。


イヴァン:「あの時はすまない。折角力になってもらったのに、それを生かせなかった。悪いのはあいつだ。」とイシュカを指差そう。

GM:「えへへ。嘘じゃない。その通り。言葉どおりだ。反省してる。マジで。まぁこれ以上言葉を重ねるのはよそう。どんどん疑わしくなるからな!」まぁ彼女はどういうことかわからなかったようだ。

イヴァン:「俺もサラミスも和解できるギリギリで上手くいかなかったのさ。今は完全に敵同士だ。」

GM:「会えてよかった。あの時のこと夢で見るの。草原に二人でいて、私は端がどうなっているか知りたくて……」

イヴァン:「端までつけば望みが叶うかもな。また夢の中でも雨に降られたりするのか?」

GM:「あの時は怖かった。でも大丈夫。」そして遠くを見る。「私…いつまでもいつまでも端につかなければいいと……でもだいたい途中で目が覚めてしまう。」

イヴァン:「振り返ればいいこともある。お前には子供がいるんだろう。」

GM:「……」


イヴァン:「いじわるな言い方をしたか。」

GM:まっすぐに見ていた彼女の瞳がそれる。白いうなじが髪の間でゆれる。

イヴァン:「お前には借りがある。何か望みがあるか?貸し借りなし、なんていいたいんだろうが、知っての通り、俺はこういう男だ。叶いはしなかったが、君には恩を感じている。何か恩返しできるといいんだが。」

GM:黙って瞳が見つめられる。

イヴァン:「今の病んだ君を、草原の彼方までつれていくのは遠慮したいが…」

GM:「……そうね。」彼女は少し俯き、「私もあの時のようには遠くには飛べないし、あなたも私を奪い去ってはくれないでしょう。」

イヴァン:「奪い去って欲しいのか」

GM:と彼女が見つめ近づいたとき、声がかけられる。「お母さん。その人は誰。」と少年が見つめていた。

イヴァン:「医者です。」ずいぶん大きくなったな。

GM:「お医者さん?」と訪ねる子供。「古い……」

イヴァン:「……古い友達だ。」

GM:「え、ヤダ。少し、怖い。」

爆笑!

GM:少年はイヴァンを不信そうに見ている。

イヴァン:「見ろ。初めて合った時の君みたいな顔をしているぞ。」

GM:「ヤダ。そんな顔をしていたかしら?(笑)」

イヴァン:「いや。もう少し良かったか。自分で言うのもなんなんだが、俺自身も昔の自分のほうがもっといい男だと思っていた。」

爆笑!

GM:「友達?」とその言葉に疑問を返す。

イヴァン:「ああ。昔から一緒に悪いことをやった仲だ。」

GM:「母様。もういい?」と母親の傍による。「お願い…もう少し、もう少しだけ」と願うような言葉を子供にかけるエルフィーナ。

イヴァン:「エルフィーナ。君の子はきっと檻から解き放たれて生きていくよ。」

GM:「私もそれを考えていた。あの子の風切り羽を切らなくてすむ世の中になればいい……」

イヴァン:「誓おう。そんな世の中をつくる。」

GM:「それなら、借りはなし。草原の向こうに何があるのか、それはあの子に話して。」

イヴァン:「あの子にか?俺たちの見つけられなかった先までいつてしまうかもしれんぞ。」

GM:「そうね」と彼女は少し寂しそうに笑う。

イヴァン:「本当は……このまま君を連れ出してしまいたい……」

GM:「あの時…あなたはそうしなかったし……あなたは今でもそうしない。」

イヴァン:「あの時からずっと迷い続けている。連れ出せば良かったのかと……エルフィーナ。お前は俺にとってこの国そのものだった。連れ出すことが正しいこととは俺には思えなかったんだ。」

GM:「……イヴァン」

イヴァン:「ああ、お前はこの国を檻と思っていたかもしれないが、俺はそこに入っても良かった。そこに腰を降ろしたかった。でも君はここから出たくて、俺もたまには連れ出してやろうと…そう思っていた。」

GM:「……」

イヴァン:「君が今もそこにいて、俺は今も檻の外にいる。二人共望んだ通りにはならないな。」

GM:「そうね。」

イヴァン:「でもあの子が俺の代わりに君の隣にいる。俺の子じゃないのが…残念だが……」

GM:「イヴァン。」

イヴァン:「忘れてくれ。失言だ。」

GM:「わかった。駄目ね。ずっと色々なことを話したかったのに、いざという時は何も出てこない。そしてあなたも饒舌になるときは……」

イヴァン:「ろくな話題が出てこない。」

爆笑!

イヴァン:「ネズミの捕まえ方とか、そんな話題しかない。」

GM:「……懐かしい。」と笑い「少しだけ」と彼女は距離をつめて「少しだけ」と身を合わせる。

イヴァン:「今、幸せか?そのサラミスは」

GM:目線をそらせるエルフィーナ。「マジメな人よ。あなたと少し似ているところがある。すぐに仕事の話になってしまうところとか。」

イヴァン:「あいつもボキャブラリーが少ないのさ。ウェットにとんだ小粋なジョークも出てこない。」

GM:「そうね。」と二人の会話の背後でイシュカが慌てる。「そろそろいいか?」

イヴァン:わかったと頷く。「エルフィーナ。お大事に。」

GM:「お元気で。」


イヴァン:「俺は…君を守るパラディンになりたかった。」

GM:「っ……」

イヴァン:そしてマスクを被り、出て行く。

GM:出て行った後、彼女の呟きが残る。「神様……感謝します」


王国内部から辺境に送られる人々の列は大挙していた。
サラミスに疎まれた名士だけではなく、今では多くの北方人が難民と成り果てていた。

馬車を止めたサラミス夫人エルフィーナは、御者に声をかけた。
「止めて」
飢えた子供達が列をつくり、道端に座り込む姿が目に入る。
「可哀想に…何か食べるものを…」
その時、馬車の後方に視線が注がれ、
「ひっ」と子供達の顔がこわばると……



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