Middle phase 

          

【北方の蛮族】


北に広がる土地は広大であったが、そこは異民族が支配していた。勇猛果敢であり、度々国境を脅かす彼らの存在は、常に恐怖の対象であった。銀峰領の砦により、王国はその危機を脱したが、その内側たるイヴァンの領土において、彼らはいまだ恐怖の対象であった。


イヴァン:騎士団を用いて相手の領土に入っていくのがいいだろう。ある程度前進した後、キャンプを張って相手の出方を待つ。そうすれば相手の方から尋ねてくる。

GM:それを見かけた相手の部族の人々は、少数に関わらず襲い掛かってくる。通りがかった若者が突然襲い掛かってくるのだ。

イヴァン:軽くあしらって追い返す。「放っておけ。じき相手も名のあるヤツが訪れる。」俺の経験上。堅固に張った陣形さえ維持していれば、戦らしい戦は中々始まらない。相手に相応の準備ができるまでな。


GM:「グワー!」何度目かの戦士が襲撃してきた時、その倒れて転がる男を足が止める。

イヴァン:「なんだ?」

GM:「なんだぁ、はこちらの台詞だっ!」そう言った娘は腕を組み、戦士を足蹴にしたまま、こちらに視線を送っている。極彩色の旗を掲げたその部隊はイヴァンと同様に鍛えられた兵を纏め上げた部隊であった。

イヴァン:いよいよ来たな。俺は立ち上がってそちらに歩みだす。


巨大な斧や槍を構えた屈強な偉丈夫達に囲まれているのは、頭一つも二つも下の娘であり、その出で立ちは毛皮を纏って女王然としていた。




GM:正面から堂々と歩み寄るイヴァンに対して、全く物怖じせずその娘は腕を組みながら不敵に出てくる。

イヴァン:北欧かケルトか知らないが、彼らの中には女の戦士の話もある。それも嘘ではないのだろうが……。

GM:胸がドン…むにゅっと付き合わされる。「大変な命知らずがいると聞いていたが、何をしにきた。喧嘩か?」

イヴァン:「俺はレルムのイヴァン。名前を聞いておこうか。」

GM:「フラガッハ」

イヴァン:報復の剣がフラガラッハだから、そういう感じの名前だな。


GM:「お見合いに来たわけではあるまい。それとも見合いにでも来たのか」と屈強な戦士たちがその挑発にガハハと笑う。

イヴァン:「領地を得るために来た。」

GM:戦士たちの表情がこわばり険しくなる。フラガッハは目を細めて冷ややかに視線を送る。「ならば……話が早い。」

イヴァン:「魔物を倒す。」

GM:「あれっ」


イヴァン:「行くぞ。でくの坊の集まりではあるまい。」と俺はアゴでしゃくって指示を出す。

GM:その後ろを駆けてくるフラガッハ「お前はもしや私と同じようなことをしているのか?」

イヴァン:「というと?」

GM:「遍歴の旅。私は名声を集め、かつての部族の威光を取り戻そうと各地を回っている」そして後ろを振り返る。「戦士たちは屈強だが、かつてに比べれば数が減った。散り散りになったのだ。それを取り戻すためにも必要な旅であり、これは試練だ。」

イヴァン:「正直だな」自分の窮状を喋ってしまうなんてな。


GM:「レルムという名に覚えは無いが、イヴァンという名には心当たりがある。」

イヴァン:「ほう、どんな噂だ?」

GM:「私の母の代に、王国にイヴァンという勇猛な戦士がいて、王国の軍勢を強力な戦士の集団に変えたという。中でも山脈砦の戦いは激戦だった。」

イヴァン:「恨みに感じるか?」

GM:「さぁな。少なくとも私は気にしない。それよりどうして魔物を退治しようというのだ。」

イヴァン:「俺は土地が欲しい。」

GM:「渡すと思うか?」

イヴァン:「さあな。魔物を倒すところまでは一緒だ。」


戦士達に緊張が走る。
一触即発、その沈黙の中、思案していたフラガッハが沈黙を破る。


GM:「よかろう。私も魔物を追ってここに来ている。お前は何か知っているか?」

イヴァン:「いや。話を聞きたい。」

GM:「酒を持て」とフラガッハは早速部下に指示する。かくして即席の酒宴が用意される。


出会ったばかりの対立する二人の王が酒宴をするなど、世の人々の常であるならば狂気の沙汰であった。
即席の宴席の中で腰を降ろし、互いに酒が酌み交わされる。戦場では祝い事にことかかない。戦には勝利がつきものなのだから。



GM:部族の戦士がイヴァンの席を訪ねる。「山脈砦の戦いに指揮を取ったイヴァンだな。」

イヴァン:「ああ」

GM:「俺もあの戦いに参戦した。何故捕虜に寛大な扱いをした?」

イヴァン:「事情があった。何より、惜しいからだ。興味があるのは戦で、虐殺ではない。」

GM:「ほぅ。」

イヴァン:「あの時はこちらも手ひどくやられた。手ごわい敵だった。」

GM:「……ふん。」彼は無愛想だが、イヴァンの杯に酒を注いで立ち去っていった。

イヴァン:悪い奴らではない。


GM:イヴァンの視界の中に、戦士たちの群の中では不似合いな少年が目に入る。どうも部族の戦士とは思えない華奢な出で立ちだ。

イヴァン:場違いなヤツがいるな。

GM:杯を勢いよく煽るフラガッハ。「フン。部下ではない。こいつも遍歴の旅をしているものらしい。」

イヴァン:「誰だお前?何者だ。お前のようなヤツが遍歴の旅を」正直信じられん。「武名に自信があるのか?」

GM:「いえ、あなた方のような武名は持ち合わせておりません。」と平伏する。「ははは!それでは駄目だ!」とその態度を卑屈に感じたのかフラガッハは一笑する。「それでは、誰もついて来ないぞ」

イヴァン:「何者だ。フラガッハ。何処で出会った。説明しろ。」

GM:「だから〜旅の途中だ!」と上機嫌なフラガッハ。少年は「ジェミニと申します」と頭を下げる。

イヴァン:「何処の生まれだ?」

GM:「南の部族です。」

イヴァン:「ふむぅ。戦士とは思えんな。見聞でも広める旅をしているのか?」

GM:「そのようなところです。」


イヴァン:「南にそんな土地があるのか。俺はそんな部族には心当たりがない。」情報収集をしてみてもいいか?

GM:どうぞ。

イヴァン:(コロコロ)13.まぁ出目は悪くないが……

GM:南にはそれといった部族に心当たりは無い。少数部族であるのならば知らないのもおかしくはないが。

イヴァン:「南の部族など俺には心当たりが無いがな。」

GM:「私はお二人の名前は聞き及んでいます。」

イヴァン:「それはどうも。」…腑に落ちん……

GM:「それはそうだ!そうでなくては困るのだ!」とフラガッハは快活に笑って自信満々に腕を組む。「そうだ、そろそろ魔物の話をしよう。」

イヴァン:「そうだな。酔って話が聞けなくなる前に聞いておきたい。」


GM:「私の生まれは知っているか。母である女王と獅子の間に生まれたのが私だ。」

イヴァン:「獅子?」

GM:「獅子だ。」

イヴァン:「何かの例えか?」

GM:「違う。真実だ。私の母である女王が、この魔境に攻め入った時、魔物と母は七日七晩戦うも決着がつかなかった。二人は互いの力を認め合い、一夜の契りを結んだ。その間に生まれたというのが私だ。」

イヴァン:「その魔物が魔境に関係しているのか。」

GM:自慢げな彼女の表情が暗くなる。そして杯の水面を見つめる。「…その魔物は…今では祟り神となり、周囲に害をなしているらしいのだ。」
イヴァン:「それを倒そうというのだな。」

GM:「ああ」

イヴァン:「それは……親殺しになるのか?」

GM:「どうだろうな」彼女は正直どう考えていいかわからない様子で、悩みこむ。今度はじれているようにも見える。「どの道、私が倒さなくてはならない因縁でもある。」

イヴァン:「俺もやろう。」


GM:ブレず小気味いい返事に、笑みとともに視線を投げるフラガッハ。「討伐は明日だ。今夜は酒宴をやろう。辛気臭い顔をするな。さぁ飲め。」



イヴァン:では俺も杯を煽ることにしよう。「ところで、その魔物について知りたいのだが、何か詳しい情報は知らないか?毒をもっているとか、火に弱いとか?」

GM:「私もあったことはない。しかし周囲の村々に病気が広まったとか、氷の霜が村を閉ざしたなどと聞いているがねそれが魔物の力によるものかわからない。ただ……」

イヴァン:「近年起こったことなのか?」

GM:「そうだ。」そして杯を空にする。「こちらも聞いていいか?」と酔いの回った赤ら顔でフラガッハが声をかける。「そういえばお前は、あの壁の向こうの国の出だったのだな。」

イヴァン:「かつては、な。」

GM:「どうしてここに来た。壁先にも領地が欲しくなったのか?まぁそれは自然なことだが。」

イヴァン:「……そうじゃないさ。」

GM:「………」

イヴァン:「……」

GM:「……」

イヴァン:「国を追われた。」

GM:「?」

イヴァン:「あの国は俺の祖国。住まうものは兄弟達だ。だが、それと戦うと運命が決めたようだ。」

GM:「私と同じようなもの、か。」と酒を唇でつつくように啜る。「この土地は私の土地だった。とはいえ…私はこの土地を……いや、湿っぽい話になるか。よそう。」

イヴァン:「ああ、そうだな。明日は勝利の美酒を飲まなくてはならん。その時の酒の肴にしよう。」

GM:フラガッハもニヤリと笑う。


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