Middle phase
【〜森の魔女〜】
それから数日後
イヴァンは森の中、イシュカが居を構えている庵に訪れる。人々の集落から少しはなれた辺鄙な場所であるその庵は、魔女の住処として周囲から忽ち恐れられていた。
GM:君が尋ねると開いた扉から出てきたのは少年でありイヴァンを見上げて凝視する。
イヴァン:…誰だ。「イシュカはいるか?」
GM:「お師さん。お客さんですよ。」
イヴァン:「家族がいるのか?」
GM:戸口にまで出てきたイシュカはなんともいえない不満そうな顔をしている。「それで、どうした?」
イヴァン:「近くまで来ただけだ。差し入れを持ってきた。生活力は無さそうだと思ったのでな。」
GM:イシュカは眉を潜める。
イヴァン:「あの子は?」
GM:「あのガキは気晴らしに夜盗を殺したらついてきた。帰る場所が無いそうだ。」とかつての笑みはどこかに消えたようだ。
イヴァン:「お前の境遇と変わらないじゃないか?」
GM:「フン。入ってくれ」と中に案内する。中はウィッチドクターのように薬草が各所に吊るされた部屋となっている。
イヴァン:「まるで魔法使いだな。ようやくお前がヒーラーだと思い出した。」
GM:イシュカは持ってきた差し入れを空けると、少年は歓声を上げる。その少年をしっしと追い払うイシュカ。
イヴァン:「いい弟子になる。」
GM:「魔法など教えていない。」
イヴァン:「今はな。だがじきに教えるようになるさ。」
GM:「本当は……ともすればアタシも忘れてしまうのが怖いんだ。」
イヴァン:「何がだ。」
GM:「ヒーラーに一つだけできないことがわかるか?」
イヴァン:「人を生き返らせることか?」
GM:「違う。つけられた傷を消したとき、その傷を戻せないことだ。」とその少年を見てから、自分のお腹をなでる。
イヴァン:「惜しむような傷でもあるのか?」
GM:「はは。」
イヴァン:「……」
GM:「多分出来ると思う。全部忘れて新しい人生を生きることを。だがアタシにはそれが許せない。」
イヴァン:「なら、腐ればいい。俺もそうだった。」
GM:「そうなのか?」と驚きの表情を返す。
イヴァン:「女を取られて惨めで情けない面を晒していたのさ。国王への忠誠も20年間の日々も無駄だった。」
GM:「ほぅ。お前でも、な。」
イヴァン:「枕を涙で濡らす日々さ。何もかも忘れて生きるより、そんな生き方も男らしい生き方だと思う。」
GM:「世間一般の男らしさとは違う、面白い見解だな(笑)」
爆笑!
イヴァン:「俺とお前の共通点はサラミスに対する重要性だ。抱いている感情は置いておいてもな。だから……わかるだろ?」
GM:「うん?」
イヴァン:「お前は話を大きくした。俺たちの感情を置いてきぼりにしてしまった。もう俺とサラミスの気持ちなんてどうでもいいものになってしまった。」
GM:「それは……そうかもしれないな。」
イヴァン:「あの事件は。もう、俺たちの問題じゃない。そう突きつけられただけさ。」
GM:「なるほど……なるほど……おいてきぼりにされたのか……」
イヴァン:「お前に対する俺の憎しみがわかるか?」
GM:「今なら……参った…参ったな……」そして視線を窓の外に移す。「雪が強くなってきたな。」
イヴァン:「そろそろ帰らなくてはならんな。」
GM:「アタシは自分の責任の取り方がわからん……」
イヴァン:「自分で考えろ。俺にも答えはわからん。時間はあるさ。」
GM:「……しばらく、ここで考えさせてもらう。」
イヴァン:俺は立ち上がり帰り支度をする。「そうしろ。もし再び運命の糸に絡まりたくなったら、尋ねて来い。」
GM:「いいのか?」
イヴァン:「気の迷いかもな。だが言葉を取り消すつもりは無い。」
GM:イシュカは君を見送りに出る。戸口で君の背中を見送る。
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