Middle phase 

          

【希望的展望・あるいは望まぬ運命】


執務室となった一室で、イヴァンは窓の外の景色に目線を送る。外では吹雪が広がっているようだった。松明に照らされた石造りの壁、時折暖炉の薪が音を立てる。


イヴァン:「北部には異民族がいるようだな。それについて何か知らんか?」

GM:傍らで執務をしていたスターシャが手を止める。「噂であれば。度々王国に攻め込んでいる部族で、イヴァン様が何度か撃退したこともおありでしょう。いくつかの小部族の群のようです。領土には魔境も多く、それを討伐することで名声を得て統治していると聞きます。」

イヴァン:「なるほど」


GM:「和睦を申し込まれますか?」

イヴァン:「お互いの関係の筋道は立てたほうがいいかもしれぬ。だが、和睦など申し込んでも足元をみられるだけだな。信服するか、従属させねば背後の憂いとなろう……。」

GM:「遠征を考えるのならばそうでしょう。」

イヴァン:「王国と揉める前に……一度北方に足を向けるほうがいいかもしれぬな。」

GM:「食料が足りませんが…いくらほどご用意すれば」

イヴァン:「俺の部隊のみでいいだろう。それならば行けるか?」

GM:「ふむぅ……それならば」頭の中でソロバンを弾く。遠征の規模はわからないが、一部隊では統治はできない。これは様子見という程度だろう。そういう意味ならそれほど長い期間の兵糧もいらないだろう。「ご用意できます。」

イヴァン:「ああ。」


GM:「サラミス公爵の話ですが……イヴァン様は事を王国との戦いにせずサラミス公爵との戦いに留めようとしているとお察します。」

イヴァン:「この間の可能性、の話か。確かにそのとおりだ。」

GM:「少し話をしておきましょう。」

イヴァン:「聞いておこう。」

GM:「サラミス公爵様とエルフィーナ様が結婚すると、子供も王位継承権をもちます。」

イヴァン:「そうなのか?」公爵ってものは王位継承権は持つが…。

GM:「現王に子供が生まれなければ、そうなります。摂関政治の完成です。」

イヴァン:「………」

GM:「彼がどのように考えているかはわかりませんが、宰相は臣下の地位ではもっとも高みにある地位。これ以上の優遇は見込めません。新王に即位した今の代、新王はどれほどサラミスに報いようとしてもこれ以上の待遇はできません。サラミスに野心があるのならば、両者の間にはいずれ不和がおきるでしょう。」

イヴァン:「…………考えすぎだ。」


GM:「両者の対立……その時、王の指示を得られれば、我々は逆賊追討の詔を受け、サラミスを排除することもできます。」

イヴァン:「王には感謝の念を抱いているが、戦を起こすほどの借りを感じてはいない。それで自分の汚名を返上できるとしてもな。」

GM:「そうでした…あなたはそのような方でした。」スターシャはその不満を理解し申し訳なさそうにする。


イヴァン:「避けたい選択だ。運命以外では受け入れられない。サラミスとの戦いもな。」

GM:「それはそれ…ということですか。」

イヴァン:「俺とサラミスが戦うのならばいずれ戦うだろう。二人の道がぶつかるのならばな。」

GM:「運命…ですか」

イヴァン:「男というのは野心以前に自分道を歩いていなくてはならない。それが王道だ。権力闘争を制したものが天下を取ると考えるのならば間違いだ。天下には辿り着くものだ。」


GM:「なんとなく、少しわかりました。」

イヴァン:「ご不満か?」

GM:「いえ。今、わかりました。貴方というライバルがいなければ、サラミス様はああも極端にならなかったのでしょう。」

イヴァン:「俺もサラミスには成長させて貰った。感謝の念は抱いているが手心は加えない。」

GM:「私が異民族の間を渡り歩いていなければ…あなたの考えを理解することができなかったでしょう。」

イヴァン:王国では理解されないわけだな。


GM:そして目線を逸らして話題を変えるように告げる。「イシュカですが、領内の一角、庵に居を構えているようです。」

イヴァン:そうだな。イシュカのところに顔を出してやろう。


次へ

リプレイへ

トップページ

Copyright(C)ゴスペラードTRPG研究班 (c) 2017.