Opening phase
【カナタ〜極小セルのひと時〜】
暗い薄明かり。剥き出しの電球と古い蛍光灯がチカチカと明滅する倉庫の一角。
積み上げられた廃材は、錆び付きこの場には普段人が立ち寄らないことを教えている。
机の上にはパソコンが一台光を放っている。
そこには二人の影があった。
一人はスパナを片手にもった男。野球キャップにボサボサの髪、セルフレームメガネの兄ちゃん。無精髭なんかもチラホラある。地味な服装でヘッドホンを首に下げている。
GM: もう一人は君なんだね。パソコンが喋ってる。画面の中の男がこのセルのリーダーなんだよ。
士朗:これが噂のセルリーダー(笑)。
GM: 彼の名前は後藤重成。『スクリーム』と呼ばれているね。後藤重成っていうのは実は政治家です。みんな知ってます。
士朗:え?
壮年の眉の濃い男。への字口で意志が強そうで笑うときも目は笑わない。強引な手腕で知られる大物政治家で、やることは極端だが確かな実績と結果を残す。ブラックユーモアやジョークが下手でハラハラするが、些細なことでは動じない支持基盤とタフネスさを持つ。
GM: で、オーヴァードじゃありません。
士朗:それでセルリーダーなのか。
GM: で、オーヴァードとオーヴァードの手を結ばせる、人間。
士朗:お〜。仲介屋だホントに。
GM: というわけで、君に声をかけてくるわけだ。
カナタ:後ろから「コレもう喋れるのぉ〜?」(ピコピコピコ)「通じてる?」(パチパチパチ)
GM: 「やめろ。やめるんだ」と言いながら兄ちゃんは操作してるね。
一同:(笑)
GM: その揺れた画像の中で彼は話すんだね。「君に一つの仕事を依頼したい」
カナタ:「やっほう『スクリーム』久しぶり〜。今度はなに?」
GM: 「コードネーム『ベナンダンテ』が日本に入国した」
カナタ:「へ〜」
GM: 「我々は彼の居住地の確保や、彼の面倒を見る必要がある」
カナタ:「外国人?」
GM: 「いや。本名は大神帯刀(おおがみたてわき)。日本人だ」
カナタ:「うぃ〜っす」
GM: 「10年前に日本から姿を消していたが、それまではFHの多くのエージェントが彼にやられた」
カナタ:「なんだ。ウチがやられてたんだ。なんでまた?」
GM: 「UGNにいたらしい」
カナタ:「は〜」
GM: 「しかしUGNから離反し、彼は海外に渡った。しかし彼は帰ってきた。我々は彼を敵に回すことは絶対に避けなければならない」
カナタ:「なるほど〜。ずいぶん弱気じゃない」
GM: 「敵に回せば我らのセルは完全に壊滅し、おそらく再建は不可能になるだろう。ここは彼に協力し、彼を仲間に加えるべく交渉するのだ」
カナタ:「……そんなにすごい奴なの? っていうかそいつは何しに来るのさ?」
GM: 「詳しい話は彼に聞いてみたほうがいいだろう」
カナタ:「あたしに任しちゃっていいの? そこ」(笑)
GM: ん〜。なんていうのかな。「一応ある程度話は通してある。あとは話の成り行きや展開は君たちに任せる。オーヴァードと一般人が普通に話をしてもちゃんとした交渉にならないことも多いんでね」
カナタ:「まあ、そうかな」
GM: 「有利に持ってこれるだけのソースはこちらのほうで前々からずっと用意してきた。結果は得られるだろうが、しばらくの間は彼の身柄の保護」
カナタ:「保護」
GM: 「それが仕事だ」
カナタ:「OK。OK。任せておいてよ。ここに住まわせていいんだよね?」
GM: 「まあ今回は君一人じゃなくて後ろの」と言って兄ちゃんのほうに視線を送るんだね。「彼とともに協力してやってくれたまえ。他のエージェント達にも援軍を頼んだが連絡がつかない。おそらくすでにUGNにやられてしまったのだろう」
カナタ:「早いよ〜! もうちょっとなんとかなんないの〜? まあ、いいか。うん」
GM: 基本的に戦闘員らしい奴も呼んだんだけど、UGNはFH狩りしてたんで。
カナタ:「ってことは、あいつらにはもうばれてんの? それとも普通にやられただけ?」
GM: 普通に町の中で。「おまえFHだろ」ズバァみたいな。
カナタ:おおい! 怖ぇぇなUGN(笑)。
GM: というわけで、兄ちゃんのほう。君は知ってるんだね。彼の名前は戸塚シンジ。コードネームは『デジタルコカローチ』
カナタ:デジタルコカローチ?(笑)
GM: そうだよ。電気ゴキブリ。
士朗:うわぁ。そういうことか。
GM: 彼曰く。イージーエフェクトしか使えないらしい。
士朗:それを先に言っちゃうんだ。「イージーエフェクトしか使えないよ」って。
GM: 元々ハッキングの技術があるらしく、いろんな車両を盗んだりするという悪い癖がある。
カナタ:ほう。
GM: あの、例えば、自衛隊から戦闘機を盗んだり。
カナタ:……すごくね?
GM: とにかく、彼はそういうことをしまくってしまったんだね。で、それも何かしらの力があったおかげで成功したんだ。
カナタ:なるほど。
GM: で、盗むところまではよかったとしても、保管場所に困った挙句にばれてしまい。
カナタ:そりゃあ……ばれますよ。
GM: それをFHが匿ってくれんだね。彼は「タクシー」という仕事についてる。要するに逃がし屋なんだ。
カナタ:な〜るほどぉ〜。
GM: 彼は「俺は戦闘員じゃないからな」って顔をしている。ここはそのシンジの隠れ家なんだね。廃工場。
カナタ:そうなんだ。
GM: で、君はその、隠れ家に一緒に生活してるわけだ。
カナタ:じゃあこれはロイスを取っておいたほうがいいな。
GM: シンジは二次元の恋人しか愛せないので。
士朗:(笑)
GM: 彼に言わせると愛せるのはあくまで生々しくないものなので。
サクノ:ずっとPSPやってるんですね。
GM: 自分の生活費とかも工面してくれたり色々やってくれたり、飯もピザ注文して宅配とかやってくれるんだけど、あまりそのなんでしょうね。親とかそういう関係ではない。
カナタ:んまぁ。
GM: なんかね。付き合い方が難しくて困ってるみたい。
カナタ:へ〜ほ〜。
GM: シンジの方はそういう年頃の女の子の友達もいないし「ゲームのようにはうまくいかないな」っていつも言ってる。
士朗:おまえが一番生々しいわ!
カナタ:「どこまでが生々しいの?」
GM: 「俺の何とかちゃんはトイレとか行かない」っていつも言ってる。
カナタ:「そりゃ行かないでしょうよ。パソコンの中なんだから!」(笑)
GM: 「おまえは行くからな」
カナタ:「行っちゃいけないわけぇ!?」
GM: 「なんかがっかりなんだよね」
カナタ:「なんだと〜 !? こっちががっかりだよ!」
士朗:俺、幸せモンだよ。同居人が夏樹さんでさ。
カナタ:そういえばあたしも侵食率を振ってなかった。(コロコロ)2です。
士朗:みんな低いですねぇ。いやぁ順当順当。オーヴァードって大変ですねぇ? おぉ〜ばぁぁ〜どってたぁいへんっすねぇ〜。
カナタ:マジタイヘンッスヨ〜!
士朗:……俺《リザレクト》すらできないんだよ。危ねぇ危ねぇ。
カナタ:おお、そりゃ恐ろしい。
士朗:それどころか《ワーディング》で一撃ですよ。
カナタ:確かに。「見られたらまずいから《ワーディング》しとこう」とかすると横でバタリ。
士朗:《ワーディング》苦手なキャラなんでね。「《ワーディング》ってなに?」
カナタ:「それどうやってるんだかわかんないよ!」
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