◆◆◆ ミドルフェイズ 18 ◆◆◆ magi 〜金沢教授〜 |
GM:はい、というわけで、教授の建物まで行くんだね。教授の建物は結構おっきな建物だね。
弘:はぁ〜。
GM:研究都市の中でも、なかなか大きな場所にあります。
金沢教授の研究施設は遠かった。
電車で1時間程にある地方の研究都市で、新開発区画という小綺麗な場所だった。
周囲にはこれから建物が立つ予定の更地が広がっていた。
君がやって来ると、金沢教授はグラブをはめてサンドバッグを殴っていた。
室内はトレーニングジムのような完備された健康マシーンがある。
奥にはマホガニーの机があるのだからアンバランスだ。
GM:「よく来てくれた!相川君!」
弘:「……不本意ながら」
GM:満面の笑みの金沢教授だよ。
「さあ、弘君。僕の所に来たって事は相当なピンチって事だね?」
「そうだ。ちょうど面白い事が始まるんだ。ぜひ見てくれ」と言って案内される。
ガラス越しの窓から見える部屋のすみに、痩せた体毛の無い男が体育座りをしている。
周囲には何本か巨大な松茸が転がっている。松茸は白衣を着ていた。
「あれはかつての職員の成れの果てだ。彼は松茸が食べたくて周囲の物質を松茸化する」
GM:「焼き肉の匂いを出せ」
中に一匹のハムスターが出される。ハムスターはたちまち焼き肉へと変貌した。
GM:「ここで重要なのは、ハムスターが焼き肉になったことではなく、松茸が焼き肉にならないということだ。」
コギト:つまり?
弘:「いやあの……変わったモノが焼肉ってところに問題はないの?」
GM:「そこは……今日の論点ではない!」
一同:(笑)
コギト:コギトもいていいのか?
GM:コギトはいないね。
コギト:そうか。まあ、そうかも知れないな。
GM:「え〜と。何の話をすればいいのかな?ミラクル物質の話をしてあげよう」
コギト:ミィラァクゥルゥ物質ぅ!(大山のぶ代風)
GM:「まず、それがなんなのか、君には大きな疑問だろう?」
弘:「まあ……」
GM:突然なんかバァーッと出して、ホワイトボードに書き始める彼ね。
「ミラクル物質ぅ」と花マルを描いて……
「ミラクル物質というのはね。進化の触媒になるものなんだ。それは生物から発散される情報物質を受けて反応する……」
弘:「あの、そういう所はいいんで、どうしたら直せるかを……」
GM:「非常に珍しい例だが、後退進化という突然変異がある。1つは進化した物が、元々の姿になるもので、
弘:「あの、別の方法で……」
コギト:ホワイトボードに書いてあるんだな。ミラクル物質←みんなの願い
GM:「そうそう。生物がなんらかの欲求を抱くと物質が発生する。
多分君はこう思っているはずだ。
そういうところだと思う」
弘:「うん」
GM:「その答えはこれだ。『いい願い』と『悪い願い』を叶えると結局最後はフリーズしてしまう。」
コギト:実行中の願いが矛盾すると止まっちゃうってことか?
弘:「う〜ん」
GM:「色んな願いを継続的に叶えたら、自身もフリーズしていなくなりました。そういうのは崩壊する。
ミラクル物質というのは毎秒数億誕生しているんだが、安定することなく崩壊するのが普通なんだ。」
弘:「うん」
GM:「ところが長期間残っているのに安定する物質というのが存在する。
なんで安定するか?簡単に言えば矛盾のない願いだけを叶えればいいんだ。
一律の方向にだけ限定してしまうのだよ。
例えば『人を不幸にする』だ」
コギト:なるほど。『不幸にしよう』だけなら矛盾しない……か?
GM:「そう。例えば『この人のこういう傾向の願いを』とかね。
『その人が本当に願ってる願いではなくて表面的に思ったちょっとした願い』そういうとこでも安定する。
例えばあの患者ね。要するに『そういう事』だけをやっているウイルスは長く存在してしまうんだ」
弘:「はあ……」
GM:「しかも、そういう長く存在するウイルスは、周囲のウイルスを吸着しさらに学習巨大化する」
弘:「……すると?」
GM:「すごく偏った願いを叶え続ける・それでいて高度な存在が生まれてしまうんだな」
弘:「それとあのぅ……元に戻したいという奇跡がなぜ起きないのかっていうの繋がりは……」
GM:「まあ、簡単に言うとだ。『元に戻したい』というのは、長い連綿とした時の中の時間的な逆行。
つまり、もっと深い望みなんだ。しかも難解で難しい。
生まれたばっかりのウイルスにその知識はない。できることといえば、変貌させて、ちょっとこうするというだけだ」
コギト:そうか。松茸が焼肉に変わらないのは……。
GM:「そうそうそう。要するに松茸を焼肉に変えるというのは、すごく『浅い』能力だろう?
ところが本当は『人に戻す』とかいう能力があってもいいはずじゃないか」
弘:「うん」
GM:「それはできないんだ彼らには。そんな進化はしてない。
弘:「ということは……ザックリ言うと無理と」
GM:「いや、無理ではないと私は思う。
善の方向に安定化・進化したミラクルウイルスさえ見つければ、無理ではないと私は思うのだ」
弘:「で……その善の方向に進化したウイルスっていうのは……」
GM:「まだ、観測中だ」
弘:「はぁ〜」(溜め息)
GM:「ここがガッカリなところでね。私もずっとそれを探しているのだが、今のところ見つかってはいないんだよねぇ」
コギト:理論的にはあるはずだが、なぜか存在しない?
GM:「だが、今のミラクル物質はほとんど、そういった作用をしてないんだ。
ちゃんと情報を受け取らせることができればうまく行くと私は思うんだけどねぇ」
コギト:情報を受け取らせる?ヒュッ!ペチン?(情報物質を投げるジェスチャー)
GM:そういうことだ。
コギト:ふむ。
GM:要するに、本当は不幸の塊みたいな願いしか叶えないというミラクルウイルスも、情報を受け取れば……。
コギト:そうか。
GM:できるはずなんだ。
コギト:そいつにその願望をぶちこめばいいんだな。
GM:うん。ところが、ぶちこもうにもなにも、結局この博士も「見えてない」んだ。
「私ができることは空気中に漂う情報物質を観測して、その量が少ない所を探す。そこにはウイルスが存在する」
コギト:ほう。
GM:「君の家がそうだ。だから、君の家には確実になにかがあるんだ。
多分、家庭内の問題が起こる。必ずそういう家なんだ。ミラクルウイルスがいる場合は、一定方向の傾向があるはずだ。
例えば家族に不幸があるとか、最近話が通じないとか、喧嘩が絶えないとか。そういうのがミラクルウイルスがしてる」
弘:「う〜ん」
GM:「君の家はその危険性がかなり高かった」というのが彼の意見だね。
コギト:う〜ん。
GM:「残念ながら今のところ、私がその情報物質を直接届くようにする手段を持っていない。
また、その奇跡の、いわゆる善の部分を発見することもできていない。
だから……すぐにどうこうはできない」とね。
弘:「……」
GM:「結論を言おう。真白さんを助けられる確率は限りなく0に近い。だが、諦めるな。君には奇跡がついている!
コギト:この人メチャメチャポジティブシンキングだよ。根拠は無いけど。
弘:「……さしあたって僕はどうしたらいいんですかねぇ?」
GM:「ん〜、そうだね。
その妹さんなのだけど、ここからの考え方は非常に違うが『治す方法があるかどうか?』将来的には治ると思うんだ。
ただ、それに対して、一般的な人達っていうのは、もうすぐに駆除を始めてしまうだろう。
実は警察も駆除しようと考えている人が凄く多い。
裏の人達……UGNという組織がいるが、彼らは進んでそういうものを駆除しているんだ」
弘:「御堂……」
GM:「御堂もいる。君は詳しいね」彼のほうは言うんだね。
「私達の所に運び込まれている患者は、いわば『患者として受け持ってほしい』という依頼を受けて保護している。
ここにいる人達は、一応解体処理されなかったり、駆除されないように私が保護している。
治療法はあると思っているからね」
弘:「じゃ、うちの家族もお願いします」
GM:「私もそれを……そういうことになっているんだから、早速手配しよう。
ただ……UGNと今、すごく仲が悪いんだ。見ての通り……」と言って、あの松茸にする男を指差し
コギト:なんとかしてよ(笑)。
GM:「私はあのぐらいのことは、大目に見ているつもりなのだが……」
一同:(苦笑)
GM:「そりゃあ少し問題がある。
多分、君の妹さんの症状が悪くて、同じぐらいのものだったとしても、まあ、私は受け入れるけど、UGNは駆除するね」
弘:「じゃあ……一刻も早く」
GM:「よし!じゃあ……準備をまとめてきてくれ。私が迎えにきたら迎え入れられるように話をしておこう。
ただ、UGNには決してばれないようにしてくれ。彼らは強硬な手段を取るからね」
弘:「あの、それが、もう……」
GM:それを聞くと、博士、目をまん丸にして「ばれたの!?」
弘:「今日あの……昼休みに、御堂って人と話を……」
GM:「遅いよ。おっそいよ君ィ!僕の所に来るの遅過ぎ!!」
コギト:ふ〜(笑)。
GM:「すぐに家に帰りなさい。もしかしたらすでに色々問題が起こっているかも知れないぞ」
コギト:なんと?
GM:彼の方は「あんまりやりようがないな。なにかできることがないかなぁ」と言ってる。「……」(←考えている)
一同:……。
コギト:正直な人だねぇ(笑)。
GM:「そうだねぇ。とにかく、これを持って行きなさい」
弘:「これ、これなんすか?」
GM:「これはミラクルスプレーといってね。この中にはミラクルウイルスが入っている。
……多分入っているという状態に等しい。面白いものを見せてあげよう」と言って彼はコーヒーカップを出すんだね。
そして、君の方にコーヒーを注ぎ、自分にも注ぐ。そしてそれを「まあ、飲みたまえ」
弘:「……はい」
GM:自分にはミルクを入れ、そして飲んだ後、君のコーヒーカップがあった場所にスプレーをかけると、カップが生成されていくね。
コギト:ふぉ!
GM:「ここに、情報物質があるんだ。それをこのウイルスが、固着させたのだ。だが、残念なことに」
と言ってカップをひっくり返すと中身が入っていない。
「君のカップの中にはブラックのコーヒーが入っていた。私はミルクを入れた。
私と君の情報を共有して作ったコレは、中身の再現はできなかったようだ」
弘:「ふ〜む?」
GM:「でも、これは情報があるものに対してかければ結構役に立つと思う。例えば怪我をした君の傷を治すとかね」
弘:「あ、そういうのもあり?」
GM:「でも、気をつけてくれ。怪我をした事を沢山の人間が認識していると、それは治らない」
弘:「それって……基準あるの?」
コギト:何人ぐらいかな?
GM:あえて言うんだったら、そのラウンド中に使った傷は回復する、みたいな。
コギト:なるほど。
GM:5D!
コギト:大きいねぇ!
GM:「一つだけだけど持って行きたまえ。もしかしたら役に立つかも知れない」
弘:「じゃあ、お借りします」
GM:「うん。このぐらいのことしか今はできないな」
弘:「で、ちなみに……」
GM:「な〜にぃ?」
弘:「その、UGNっていう人達が家に来てたら……」
GM:「家には入らない方がいい。多分……妹さんは助からない」
弘:(溜め息)
GM:「どうしても助けに行きたいのだったら、う〜ん。私にも相応の準備が必要だ。
UGNと戦争するような装備はここにはなにもない。
妹さんがこっちに来るのを知られたら、今度は逆に我々が襲撃されてしまうだろう。
一応、我々は、危険視されてるけど、放任されている。
あの、松茸の男を見ればわかるように、動かないんだよあいつは。
彼の願望は『動かずにおいしいものが食べたいな』なんだよ」
コギト:矛盾してないねぇ(笑)。
GM:「それは、UGNから放任すべき理由なんだ」
コギト:怖ぇぇ〜。
GM:「だが、君の妹さんが来たら、私達がどういう扱いを受けるかわからない。内密に連れてきてもらいたい」
コギト:内密にかぁ。はぁ〜。(溜め息)そうか!コギトが情報物質を食いまくりながら行くんだ!
かなりわかりにくくなるんじゃない?
弘:そしたら、情報物質ないからって気付かれるやん。
GM:ん〜。情報物質がないとちょっと気付かれにくいのは事実なんだけと、カメラに写るんだよね。
コギトにはそういうのよくわからないかもね。
コギト:……カメラはわからない。
GM:「ま、ともかく……もし、ここに無事に連れてくる事ができたら、うん、なんとかしよう」
弘:「はい。……なんかスゴイことになってきたよぉ?」
GM:「はっはっは。すごいよねぇ。私も初めてアレを見たときは感動したよ」
コギト:全然違う事言ってる!?(笑)
GM:「ミラクルウイルスっていうのはね」と君を駅まで車で送りながら説明してくれるんだね。
もう嬉しそうメチャメチャ。
「ミラクルウイルスって色んな情報を吸着して集めるじゃない?
言い換えてみると、ミラクルウイルス自体に自我があってコンタクトが取れれば情報が手に入るかも知れないな〜
なんて思ってるんだよね。
人間の持ってる情報なんて僅かなものじゃない。
それを全て獲得できたら、いわばなんでも、全ての回答が手に入ると思わない?」
弘:「う〜ん?」
GM:「君達が多分こうして欲しいと思っている方向に至る方法も、多分コンタクトでわかるようになるかも知れない。
私の経験上わかっていることは、長年存在しているミラクルウイルスはスゴイ深い情報を得るんだ。
生まれたばっかりのウイルスは表面的な物しか集められない。
つまり、実は君達を救う方法を持っているのはミラクル物質自身かもしれないよ」
コギト:ふ〜む!クラウドぐらいしか心当たりがない。
GM:偏ってるね、クラウドも。
コギト:うん。おそらく。結構凶悪な願いを叶えていた。
GM:巨悪だからね(笑)。
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