ガープスサイバーパンク ガーディアン・オブ・アグノシア
《アジトに帰還》
アクロス「―で、あんた達一体何しにいったわけ?」
アジトに返るなり浴びせられたアクロスの罵声に、シュウならずとも萎縮する。
アクロスには不機嫌が見てとれた。
ニコ&シュウ「しかし、無理強いは…」「そうそう」
アクロス「ドンパチやって子供を守った、そんな美談に酔いたいだけなの?」
シュウ「あの子は、社会の何もかもから無理強いされてああなった。だから―」
アクロス「だから何?
あなたは無理強いしない一番の理解者になりたい?
馬鹿言わないで理解だけで人は生き残れないわ。あなたも大人だったら実行力を持ちなさいよ。
大人は無理強いするものよ。そこに大人の一抹の正義があるんじゃないの?」
ニコ「でも、ほら、何もシュプルに危険な仕事させなくても。どうしてシュプルが必要なのさ?」
アクロスは理由を知っているのだろうが口論に疲れた為か、さっさとボスであるバルシュタインとの通信を開始する。
一同の報告から聞き出した必要なデータを送る。
バルシュタインからの返事が来るまでの気まずい沈黙。ニコは耐えられず常に視線をシュウとアクロスに往復させていた。
★バルシュタイン
バルシュタインには上司がいた。シュプル勧誘はその上司の命令であったが、バルシュタインにもそれは疑問であった。
バルシュタイン「無力なストリートキッズ達を加えて、なんの情報網になるのですか?」
バルシュタインはストリートキッズを過小評価はしていないつもりだったが、仲間に加えることには疑問があった。
―何故?
シュプルはただのストリートキッズではない。彼は以前より電脳犯罪に手を染めており、ハッキングの能力は大変なものらしい。痕跡を消すのもうまい。
彼はあらゆる面で重要な情報屋だった。
しかし本当にそうだろうか?
スラム育ちの彼がどうやってその技術を得たのか。
疑問があった。
今回浮上した名前:バッカーナがその答えだった。
バルシュタインは上司に訪ねる。
「バッカーナをご存じで?」
男は振り替えることなく椅子の背を向けたまま答える。視界の前に広がるのは、支配層だけが見えるこのアグノシアの景観である。
「バッカーナはこの都市の電脳犯罪者の管理をしていた男だ。我々の仲間だった。
退職した後は我々に害を成すようになった。」
バルシュタイン「―“退職”ですか?」
男の言葉の歯切れが悪い。苦悩しているといってもいいのか。
しかしそれでも平静を装って返す。
「離反といってもいい…。意見の相違があってな。彼は単純な技術家ではなく、
この都市には理想を抱いていた。」
バルシュタイン「よろしければ伺っても構いませんか…どのような考えを?」
男は椅子を回し向かい合う。髭の濃い中年男性で、眉は潜め、目は細められている。男は無言でバルシュタインを見る。
しかしバルシュタインを見ているのか、遠い過去に思いを馳せているのか。
沈黙の時が流れる。
「かつては理想を抱いていた。今はもう無い。彼はただの犯罪者だ。」
バルシュタインは小さく頭を下げる。必要なことは聞いたのだ。これ以上はいらぬ詮索だろう。
立ち去り際のバルシュタインに再び男の声。
「彼は君達と同じ仕事をしていた。彼等が離反して、君達が組織されたんだ。」
バルシュタイン「…というわけ。もしかしたらシュプルは必要な人物じゃないかもしれないね。でも浮上したバッカーナは検挙しなくてはならない。」
モニター越しにバルシュタインはそう告げる。
→バルシュタイン「今後はバッカーナ確保に動いてくれたまえ」
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