Ending phase
【歴史はかくも語る】
バルチモアは滅亡した。
バストラールの主導でその政権を参加に組み込まれることとなる。
ウイリアムが目論んだ通り、その政権はバストラール内での議会政治となり、同じく議会政治の先駆け・インダストリアの友邦として地位を高めていくだろう。
バストラール王宮にて、ウイリアムは新たに属国となったバルチモアの書面を宰相に捧げていた。
GM:帰国したフィンチは心身にキズを負い、今女王の傍でその報告を聞いていた。バルチモアの災禍を何よりも知る彼であったが、その真相は知り及ぶところではない。
フィンチ:僕の見えないところで何かがあった。僕は結局黒幕にもたどり着くことができなかった。
あの国はもう滅んでいたのかもしれない
フィンチ:そうかもしれないけど……「母上、あの国はこれからどうなっていくんでしょう。」
GM:その悩みを知ってか知らずか、カルディアは言う。「バルチモアはヒルダに任せる。宰相にウイリアムを置いて王政をしくことになる。」
ジィク:まぁヒルダなら、国もまとまるだろう。
GM:ウイリアムの願いも遠からぬところに理想があるし。まだ若い民主制ゆえに血も流れるだろう。「芽吹いたばかりの民主制の芽を摘み取りたくないのでな」とそして今度はカルディアが尋ねた。「お前は、どうしたい?」
フィンチ:「僕は……」……今まで、本当に考えてこなかった……。バルチモアをどうしたいかなんて……考えてこなかったんだ……。
GM:「フィンチ?」
フィンチ:反乱が起きた時だって、僕は民主制が近代的だから、だから市民の反乱も正しいって信じてきたんだ。バルチモアの人々が立ち上がったのも、いいことだって……。
ジィク:どこの物語でも、大抵は民主制は正しいからな。
フィンチ:でも人々は王はいらないといっている。貴族が殺されている。民主制では血は流れないと思っていたけど間違いだったんだ。そしてこのままじゃやはりバルチモアは弱体してしまう。このままじゃ誰かに蹂躙されることになる。バルチモアには、この国を守ろうという強い組織が必要だったんだ。
ジィク:それがメイジ達か……今ならレグルスがやろうとしていたことがわかる。
フィンチ:母上が精一杯気を使ってくれたのに答えることができなかった。悔しいよ。
「それだ」
フィンチは言葉の意味がわからずカルディアの顔を覗き見た。
「それが王の苦しみだ。ウラヌスの苦しみだ。」
そしてカルディアは手を差し出した。
悩み苦しむウラヌス王に差し伸べたように、その手を
バルチモア王国の滅亡の中、血の気納まらぬ人々は生贄を求めて練り歩いた。それは怒りと憎しみに駆り立てられた走狗にすぎない。
その目を避けるように二人のフードの影が通りを見ていた。
「これで本当にアンダードックになっちまったな。」
巨漢の男は、今しがたまで浸っていたその地獄の戦いすら、いい夢だったように人心地呟いた。
「でもいいさ。俺はアンダードックだ。」
フードから顔をのぞかせた娘・ガラティアは焼け落ちる都を、略奪される邸宅を見て押し黙った。
(「ああ、いろんなことがあった。この町が私の青春やったな。」)
(「エンゲルスは酷い男やった。
国王も普通の人で英雄なんかとちゃう。凡も凡もやったな。
せやけど、下の人の上の人も、
普通は普通なりに必死に生きとったんやな。
そこにうちもいた。それがうちの幸せやったとちゃうかな。」)
二人は姿を消す。いずれ会う日まで。
そして呟き
「民などに国を背負えるものですか。」
――彼女は国と言うものの重さを知っている。
「ただ悪戯に駆り立てられて、血に酔いしれているばかり……」
――彼女は悩みながらも道を選んだ者達を知っている。
「本当に国を背負えるのは―――」
少女は、窓の外、煉獄と化したバルチモアを
落日のバルチモアを見下ろしていた。
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