Middle phase
【〜魔女イシュカ〜】
国王と宰相の対立は、自然なことであった。
物心つくにつれ、国王は自分の言葉が宰相によって遮られていることを感じ取り、その専横に眉をしかめていた。
王国の騎士団はサラミスの私兵となり、それに不満を抱えるものも多かったが、彼らは中央から遠ざけられ、唯一の意見番であったブランバン将軍も、南方への遠征を命じられると、もはやその憲政の生涯はないかのように思われた。
イヴァン:イシュカに会いにいくとするか。「馬を持て」
冬を終え、春が訪れる時、イヴァンはイシュカの元を訪ねることにする。前に顔を会わせてから、既に数年の歳月が流れていた。
GM:イシュカの庵の傍、薬草取りの少年が、新芽を求めて駕篭を抱えていた。彼はイシュカのところで見かけた少年だ。
イヴァン:「久しいな。坊や。」
GM:「イヴァンさん。お師匠様に御用ですか?」
イヴァン:「ああ。息災か」
GM:「はい。今庵のほうにいます。」と彼は案内する。
イヴァン:「お前、名は?」
GM:聞かれると思ってなかった。えーと、名前は「トミー」
イヴァン:「トミーか。」
村はずれの偏屈な魔法使いの噂は既に周囲に広がっていたが、その正体はいまだ謎のままだった。彼女…イシュカはいまだに人々と距離を開いていた。
GM:「お師様!」とトミーが声を張り上げ、足早に室内に向かっていく。「なんだ煩ぇ」と悪態を突きつつ出てきたイシュカに師としての名に否定がなかったところを見ると、うまくいっているのだろう。
イヴァン:「忙しいところすまんな」
GM:「おっと……」その顔を見て久方ぶりの再会に言葉を詰まらせるイシュカ。「まぁ入れや。」
イヴァン:「師匠なのだな」
GM:「まぁ、そういうことになるな。」
イヴァン:椅子に腰掛けよう。「お前が新たな人生を踏み出しのであれば、俺はさしずめ迷惑な客人というものなのだろう。」
GM:「ほー。何か剣呑な用事なのか。」と弟子が薬草茶を出す。
イヴァン:「……美味いことを期待する」
GM:「薬草茶は体にいいのがウリだ。味は二の次だ。ま、ハーブは気が和らぐが、剣呑な話題に適さないというのなら刺激的なヤツを用意しよう。」
イヴァン:「元気そうで何よりだ。」お茶に口をつけ…不味っ
GM:「ああ。なんといっていいかわからないが。」
イヴァン:さて言葉に困るな。指を組んで困っていよう。「今でも…報復を考えているのか?」
GM:イシュカもその返事には困る。「どう、思う?」
イヴァン:「あると思う。いいことかわからんが、区切りが欲しいと思っているだろ。」
GM:「キズなら残っている。」
イヴァン:「その考え方はよせ。」頭を振ろう。
GM:「ああ、いつか消そうと思っている。」
イヴァン:「イシュカ。俺は勝手に物事を終わりにしないために来た。」
GM:「つまり…終わりの始まりが、そろそろ来る、ってことか。」
イヴァン:「難しい言い回しだな。そういうことだ。」
GM:「ふん…礼を言ったほうがいいのか?」
イヴァン:「まだだ。雇うとは限らん。3つ、約束を守れ。」
GM:「いいだろう。言ってみろ。魔法使いは約束を守る。」
イヴァン:「俺の命令を聞け。」
GM:「ふふん。当然だな。」
イヴァン:「サラミスは討つ。だが、その裁定には異論は認めん。従え。どんな結末を迎えるか俺にもわからんが…な。」
GM:「いいさ。アタシは、区切りがつくのならそれでいい。」
イヴァン:「3つめは失敗は許さん。前のことはいい。失敗じゃない。だが、次は失敗はできん。俺たちだけじゃない全てが関わる。私闘のつもりで参加されてはかなわん。」
GM:「…いや、前のあれは失敗だ。」
イヴァン:「そう素直に言ってくれれば話が早い。」(ニヤリ)「次は勝つことが絶対だ。OKか?」
GM:「ああ、誓う。」
イヴァン:共有できそうな誓いだな。言葉にはしないが、俺も勝利を誓っている。この戦は私情抜きにしても勝たなくてはならん。
GM:「お師様言っちゃうの」とつぶらな瞳の少年が不安げに見ている。
イヴァン:背負い袋を放り投げ「お前も来るんだ。」
GM:「おいおい。コイツもつれていくのか?」
イヴァン:「イシュカ。お前の身に何があるかわからん。もしもの時、この子の面倒はみれるようにしておかなければならんだろう。」
GM:「ほぅ…こいつには最低限の勉強を教えたが……」
イヴァン:「なるほど」とトミーと向き直ろう。「次はそれを世に役立てるんだ。いいな。」
GM:イシュカはその後ろで腕を組んでいる。「おいおい。マジでメイジになっちまうぞ。」
イヴァン:「ああ、マジでなっちまうんだよ。」
GM:「なるほどね。そりゃいいや。そうしたらトミーなんてしけた名前はおしまいだ。いい名前をつけてやる。考えておくか。」
イヴァン:「そうだ。言っておかなきゃな。」
GM:「ん、なんだ。そっちから言ってくれ」
イヴァン:「キズを消せ。」
GM:「ああ、そうだ。」これを誓いにしよう。「よく見ておけ」魔法の言葉を唱えキズに触れた指先がなぞる。
それは跡形も無く消えていくではないか。
GM:「どうだ。アタシのハンサム顔は?」
イヴァン:「いかしてる。イケメンだな。俺が女だったらほうっておかないだろう。」
GM:「ナンデ?」
爆笑!
イヴァン:「無理を強いるつもりは無い。だが、お前のキズは目立ちすぎる。密偵には派手な目印はいらん。」
GM:「まぁそうだな。そのくらい私にもわかってる。」
イヴァン:「ついでにこの仕事が私情ではできないこともわかるな。」
GM:「あーそーだな」と振り返る。トミーが視界に入る。「確かに、もう一人の話じゃなさそうだ。やれやれ」荷造りをしていくトミーを尻目にイシュカは何か考え込む。「アタシのほうからもアンタに伝えとかなきゃいけないことがあるんだ……」
イヴァン:「ん、なんだ?」と荷物を背負う。
GM:「いや……言わないほうがいいのかな。」
イヴァン:「言ってみろ。」
GM:「戦をこれからするって時に…こういうことは水をさすことかもしれないけどさ。エルフィーナに会えるかも。」
イヴァン:「何?」
GM:「アタシが治療師として働いていたことは知っているだろう。」
イヴァン:「ああ、風の噂程度では。エルフィーナは治療が必要なほど悪いのか。」
GM:「あの人は前から体が弱かった。最近は体調を壊し気味でな。転地療法。各地をめぐっているんだ。山脈を隔てた山麓の別荘に今はいる。」
イヴァン:なるほど。「お前が彼女を治療することになるとはな。そのほうが驚きだ。」
GM:「まったくだ。アイツをブっ殺すって思っていた時は、そんな話は一言も入ってこなかった。なのに、世間から干されてそんな話が入ってきちまったよ。因果なもんだ。なんだこりゃ。」
イヴァン:「ぶっ殺してやろう…なんて雰囲気の医者に、誰も治療なんて頼まんだろう。」
GM:「なるほど。そりゃそうだ。」とニヤリと笑う。
イヴァン:確かに戦が始まったら会えなくなるだろう。
GM:「お忍びだし、戦が始まったら会えなくなる。この辺りは鉄火場になる。彼女も引き払うだろう。」
イヴァン:「ああ。」
GM:「薬師として会いに行く。助手としてつれていくから準備しておいてくれ。」
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