老騎士ワトキンス


領主の館はこの辺境に作られたバストラール式の堅牢な館で、周囲に堀と高い塀に囲まれていた。警備の兵士も常時数十人はおり、今もこの土地に平安が訪れていないことを物語っていた。



GM:ワトキンスは質素な服装をした老人で、愛嬌のある顔立ちの白髭の人物である。しかし顔に刻まれた傷は古参兵であることが伺える。

アルテイ:おお、領主がすんなり会ってくれるんだ。


GM:「よく来てくれた」と大いに喜んでいるように見える。「なかなか協力が得られなくて困っていたんだよ」白い髭の老騎士が迎える。

アルテイ:「俺はアルテイ」嘘はつけないんだよ。名乗っちゃう。

GM:「……ウルス族か!?」

アルテイ:「そのとおり、あなたがワトキンスか」

GM:「ウルス族にしては言葉が上手いな」

アルテイ:「都会暮らしが長くてね。まず山賊の話が聞きたい」

GM:「あ、ああ」と再びワトキンスは話し始める。「君には言いにくいことだが、おそらく戦の生き残りだろう……今でも抵抗を続けているのだ。このまま抵抗されていては、この領地の復興はままならない。山賊行為は……取り締まらなくてはならないのだよ」

アルテイ:「復興…か……。あんたにはそのつもりがあるのか。この土地を元の平和な土地に戻すというつもりが」

GM:彼は首を振る。「それは無理だ。もう歴史は動いている。過去に戻ることはできない」

アルテイ:「あんたも俺たちを蛮族と罵るか?」

GM:「生活態の違いだ。すり合わせは必要だと思う」

アルテイ:「そうだな。それは同意見だ。しかし、知らなかったよ。バストラール人が人を木に吊るす蛮行を行う種族だとはな」

GM:彼は表情を硬くする。「そう言われても仕方ないな……」

アルテイ:「そんな生半可な気持ちで復興を口にして欲しくないな!」

GM:「なんと言われても仕方ない。私は領土の環境を改善できるが、法を変えるような立場ではない。それにガレス王子は処遇が苛烈だったとしても、まったく道理が無いわけではない」

アルテイ:「あんたにそれができなきゃ、山賊が矛を収めることはできないだろうな」とガタッと席を立つ。「正直がっかりしたよ。俺はあんたの話し次第ではあんたの力になってもいいとすら思っていた。そんな中途半端な覚悟では山賊も矛を収めないだろう」

GM:「待て! 山賊行為で物事が解決するのか! 私を倒して軍隊を呼ぶのか? 残念だが、そのやり方では何も変わらんのだぞ? 私の統治はこの地に必要なんだ!」

アルテイ:「あんたは確かについてない。あんたは火中の栗を握らされているだけだ。軍隊が出てきたら、あんたはお役御免だ。違うか?」

GM:少し目を伏せる。「その通りだ……だが、勘違いしないで貰おう。私は望んでこの仕事をしている。私は女王陛下にご恩がある! ここでこの命を使うことが、女王様の為、バストラールの為になるのだ!」

アルテイ:「でも今のままじゃ、逆効果だ、あんたが腹を切っても収まらない。あんたの忠誠心なんて何事も無かったように消えるんだ」

GM:「お前は……女王様を知らんのだ」

アルテイ:「おたくの女王様がどんな人かは知らない。少なくともいいイメージは持っちゃいない! 名乗らせてもらおう。俺はアルテイ・ウルス。ウルス族の族長の息子だ」

GM:「おお!? ……そうか、山賊討伐など……やるはずがなかったな。私がお前に話を持っていくことが愚かな事だったのだな……」

アルテイ:「俺は……」

GM:「お引取りを願おう。……バストラールに従うつもりが無ければ、お前はバストラールの敵の旗頭……放ってはおけん。かといって、ここで兵を出して捕らえるのは非礼に値する」

アルテイ:そうか、そうなるか。そうだよな。バストラールの騎士だものな。


「そりゃあ……当たり前だよな」
暖炉の前で一人、白湯を飲むワトキンス。すっかり倹約癖が染み付いてしまった。貧乏くじは今に始まったわけではない、ガレスの尻拭いに、占領地を統治に向かうのは一度や二度ではない。上手くいくこともあれば、反乱があり、虐殺をせざる得ないこともある。
アルテイという若者、なるほど勢いがある。人々を先導するだろう。
それは叛旗の火種になるのだろうか……
なるならば先手を取って討ち取らなくてはならない。



アルテイ:処分される!?

GM:翌日、情報収集から帰ってきたコニーが報告する。街に立て札が立っているというのである。

アルテイ:お尋ね者か(苦笑)

GM:『街の郊外で待つ。ワトキンス』という内容だ。「なんかやったんスね?」とコニーはジト目。

GM:決闘じゃないか! 決闘からは逃げないぞ「ワトキンス! それがお前の答えか!!」勿論向かう!


GM:その場所には君を捕らえに来た兵士の姿一人も無く、只一人、一騎打ちに望む老人の姿があった。老いたりとはいえ、そこには長年使った甲冑を携えて戦いに望む騎士の姿があった。ワトキンスだ。

アルテイ:コイツ! カッコいいんだけど!!

GM:「どうしても叛旗を起こそうというのかね。そこには未来は無いだろう。君たちの反乱は失敗する。しかし、私もここに来て長い……立場上気持ちがわかるとはいえないが、理解は出来る」


アルテイ:「ワトキンス! 反旗と言ったか! 勘違いしている。俺はここでウルスの自治をバストラールに認めて貰いたいと思っているんだ!」

GM:「バカな! 敗戦国が自治を願って叶えられたためしがない。自治には時間とバストラールへの貢献がいるのだ。山賊を上げて戦うこのやり方に自治の許しなど絶対に降りない!」

アルテイ:「俺と国づくりをしてくれ! ワトキンス。バストラールの軍人で女王に忠誠を尽くすお前がウルスには必要なんだ!」

GM:「話は終わりだ! 私と一騎打ちしてはもらえないだろうか。騙し討ちはしたくない」

アルテイ:「あんたとは話が合わないって思っていたが、そうでもなかった。俺も騙し討ちは嫌いだ!」と槍を構える。

GM:「私はバストラール軍人だ。女王陛下にご恩がある。どちらに重きを置くと言われたのなら、祖国だ!!」

アルテイ・行動値は9
ワトキンス・行動値は4

GM:距離は目前エンゲージしているとして戦闘を開始します。

アルテイ:「風の民は風とともに生きる。ゆえに穢れを知らない。手加減はしない」<鋭刃の印><疾風剣の印>から繰り出される突風のような一撃!「しゃああ!」命中(コロコロ)18。

GM:(コロコロ)7。回避は失敗。彼もロード・パラディンなんだよ。

シルヴァナ:さっきの再現になるんじゃ……

GM:ガードを宣言する。

アルテイ:ならないよ。ダメージは33点の斬りダメージ。ワトキンスが気がついたとき、既にアルテイはその後ろに駆け抜け、槍をくるくると回していた!

GM:ワトキンスは負傷する。さすが風の民「予想通り早い!」続いてワトキンスの攻撃。命中(コロコロ)目標値9。あれ……

シルヴァナ:友よ!

アルテイ:(コロコロ)17。よけた!

GM:ワトキンスが振るう剣は宙をかき、「アルテイがいない!?」

アルテイ:「どこを見ている」と剣の切っ先に乗ったアルテイ!
















GM:これは……うん。これは一方的な勝負になる。老人の剣では若者を捕らえられず、しばらく斬りあった後、ワトキンスは剣を地に着いて荒い息をする。「歳は取りたくないものだな……」

アルテイ:「自分の歳を考えるべきだな」

GM:ワトキンスは突然短剣を取り出すと、自分の喉元に――

アルテイ:それは止める。短剣を去ったのはアルテイの手だった。掴んで止める。「お前は卑怯者だワトキンス。ウルス族の決闘は負けたら相手に捧げるものだ。お前の命は今お前にはない」

シルヴァナ:私は今同じことをガルデンに言われていた。

爆笑!




GM:彼は地面に屈する。サーシャとコニーが追いついてくる。「こんなことだと思ったっスよ」

アルテイ:「悪いな」と槍を収める。「心配したか?」

GM:「酒びたりのろくでなしだけど、やるときはやる。それを一番傍で見ていたっスから」

アルテイ:「だよな(笑)」

GM:コニーは耳打ちする。「こっちの話の目鼻立ちのつかないうちから力を貸してくれる人物じゃないっスよ。ちゃんと部族との和解の目鼻立ちをつけてから話し合うべきっス」

アルテイ:「ああ、そうだな」

GM:「でも、バストラール本国は独立自治なんて絶対認めないっスよ? そして戦になれば、確実に負けるっスよ?」

アルテイ:「そりゃそうか……。まだ準備は整っていないんだな。でもこの決闘の噂は広がってしまうかもな。早く他の部族と合流しないと。ワトキンス。あんたの命を預かっておくよ」

GM:というわけで、ワトキンスから、山賊についての情報を貰える。どこ辺りを根城にしているかとか、どこで遭遇できるとか。

アルテイ:「姉さんもそこにいるといいんだけど……」



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